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[GDC 2011]ついにマリオが3DSに登場。任天堂代表取締役社長の岩田 聡氏が語るゲーム業界のこれまでとこれから
岩田 聡氏 講演内容の全文(日本語訳)と動画(英語)
盛大な拍手に迎えられて登場した岩田氏が,最初に語ったのは,2005年から毎年2回行っている,任天堂のアンケート調査結果について。それによると,2007年から2010年にかけてはゲームで遊ぶ人が急増しており,とくにアメリカではニンテンドーDSやWiiがそれを牽引していると紹介した。
さらに,2010年を皮切りに盛り上がりを見せてきたソーシャルネットワークゲームにも言及。“ソーシャルネットワークゲーム”が場合によっては“ソーシャルゲーム”といわれることがあるが,岩田氏はこれを否定し,両者はまったくの別物であるとした。つまりソーシャルネットワークゲームはあくまでも,SNSに付随したゲームであり,ソーシャルゲームとは,ゲームを介してほかの人とコミュニケーションを取るゲームであることを意味しているという。
過去を振り返れば,Atari 2600やファミリーコンピュータにはコントローラが二つ付いており,対戦や協力プレイができた。ゲームボーイが流行っていたときは,端末2台をケーブルでつなぐことで,対戦/協力プレイを可能にし,人と人との繋がりを生み出した。これこそが岩田氏のいうソーシャルゲームとなる。
「コール オブ デューティ ブラックオプス」(PC / PlayStation 3 / Xbox 360)が大ヒットを記録したが,これもマルチプレイがあったからで,そこにはやはり人と人とのつながりが不可欠だったという。
人と人とのつながりを感じるには,そもそも同じ製品を持っていなければ始まらない。そこで人々には「取り残されたくない」という意識が芽生える。
ゲームボーイが流行っていたときは,同じハードを所有することでゲーマーを満たせたが,ハードウェアだけでそれを維持するのは難しいと岩田氏は語り,ソフトの重要さを訴えた。ソニックやゼルダ,Grand Theft Autoシリーズなどの存在が,その代表的な例だ。
なかでもマリオは,つねに進化し続けた結果,誕生から25年以上経った現在でも愛されている。そしてポケモンは,収集,対戦,交換といった“universal appeal”(普遍的な魅力)があるソフトの一つだ。
また,The Simsシリーズが世界中で人気作となった例をなどを出しつつ,人と人とのつながりが生まれやすいゲームが新たなゲーマーを生む要因となっており,記録的なヒットを生み出すと,岩田氏は結論づけた。
そして,ニンテンドー3DSは人々に“Must-Have”(持っていたい)と思わせるハードでありソフトでもあると,岩田氏は語る。3DSには顔シューティングやARゲームズ,Mii Studiosなどがプリインストールされており,これらのソフトには,ほかの人に見せたり,話したくなったりさせる要素が盛り込まれている。
任天堂本社では,3DS本体を持って社内を動き回る人があとを絶たず,岩田氏自身も持って歩いているという。3DSこそが次の必携アイテムになり得ると岩田氏は説明し,ステージをNintendo Americaのプレジデント,Reggie Fils-Aime氏に譲った。
また,アメリカの通信会社AT&Tと協力し,全米のレストランや本屋などでインターネットに無料で接続可能になるサービスを提供することも発表された。加えて日本では発表済みの「ニンテンドーeShop」の北米でのサービスについても説明され,日本と同等の内容が提供されることが確約されている。
ここで,ニンテンドー3DS版の「バーチャルコンソール」には,すでに発表されていた「ゲームボーイ」および「ゲームボーイカラー」用タイトルのほか,新たに「ゲームギア」と「PCエンジン」のラインナップがリリースされることも発表された(関連記事)。
なお,開発は「スーパーマリオギャラクシー」を手がけた東京スタジオが担当していることが明かされたが,スーパーマリオに関する発表はここまで。詳細は2011年6月にロサンゼルスで開催されるE3で明らかにされる予定だ。
ここで岩田氏は話題をゲーム業界の未来に移し,同氏が感じている懸念事項を語った。
一つめはゲーム開発者の職人化だ。ゲーム開発は年を追うごとに複雑化し,誰にでもできるものではなくなりつつある。そして,その教育が行き届いていない現状にも言及。昔はすべての人がゼネラリストで,ゲームデザインからプログラミングまでなんでもこなしたが,ゲームが複雑化した今日では,それは難しい。キチンと教育して,開発者を養成しなければならないが,決して十分に行えていないのが実情であるという。
そして岩田氏の最も大きな懸念点は,スマートフォン向けのゲームが,低価格または無料で大量に提供されている現状だ。それはそれでゲームのあり方の一つではあるが,ゲームの質が犠牲になっているといわざるを得ないという。岩田氏は,任天堂はゲームの質を守るべきだとし,任天堂がほかのプラットフォームにゲームを提供しない理由はそこにあると説明した。
質よりも量を重視するメーカーが増えてきており,質を重視する会社が押されている現状に,岩田氏は不安を覚えている。任天堂にもつらい時代はあった。だが,ニンテンドーDS,Wii Fit,「トモダチコレクション」など,過去になかったものを“発明”することで,その苦境を乗り切った例を挙げ,開発費の高騰や供給過多によって厳しくなったといわれるゲーム業界を鼓舞して,基調講演を締めくくった。
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- 関連タイトル:
スーパーマリオ 3Dランド
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(C)2011 Nintendo