第3世代Coreプロセッサ
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2012年4月24日11:00,Intelの日本法人であるインテルは,開発コードネーム「
Ivy Bridge」(アイヴィブリッジ)として知られてきたCPUを,
第3世代Coreプロセッサとして正式に発表した。
新世代プロセッサは,「Sandy Bridge」(サンディブリッジ)コアの第2世代Coreプロセッサを置き換える製品群となる。
※2012年4月24日14:00頃追記
インテルは24日に報道関係者向けイベント「IAアップデート」を開催し,そのなかで第3世代Coreプロセッサのボックス版を29日(日曜)から販売すると発表した。
インテルの吉田和正代表取締役社長は,「22nmプロセスにより,高性能化と多機能化,低消費電力化を実現し,優れたユーザー体験を提供する」と,第3世代Coreプロセッサをアピール。届いたばかりというウェハも披露した |
吉田氏がボックス版プロセッサを用いて自作したPCが動作デモに用いられた。なおインテルは,ボックス版プロセッサの販売が始まる29日の10:00〜18:00に,秋葉原のベルサール秋葉原で発売記念イベントを開催する予定だ |
3次元トライゲートトランジスタの採用がIvy Bridge世代における最大のトピックだ
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Intelはここ数年の間,約1年ごとに製造プロセスの微細化と新世代アーキテクチャの導入を交互に行い,約2年でプラットフォームを一新するという「Tick-Tock」(チクタク)戦略を導入しているが,今回のIvy BridgeはTick,すなわちプロセス技術微細化のターン。Sandy Bridgeで採用されたマイクロアーキテクチャ「Intel Microarchitecture(Sandy Bridge)」を引き続き採用する一方で,Sandy Bridgeの32nm High-kメタルゲートプロセスから,Ivy Bridgeでは,
3次元トライゲート・トランジスタを用いた22nmプロセスへの移行を果たしている。
22nmプロセス技術を採用して製造されるx86アーキテクチャのプロセッサが登場したのは,もちろんこれが初めてである。
22nmプロセス世代のTickとなるIvy Bridge
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発表当初のラインナップはいずれもクアッドコアCPUで,14億個のトランジスタが160mm
2のダイに集積されている。
第3世代Coreプロセッサ,クアッドコアモデルのダイブロック図
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ラインナップはデスクトップPC向けが通常消費電力版5モデル,低消費電力版4モデル,ノートPC向けが通常電圧版6モデル(
表1〜3)だ。
※IntelのOEMとなるPCメーカーやシステムビルダーに向けた,1000個受注時の単価。店頭価格の目安ではないので注意してほしい
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Ivy Bridge世代となる第3世代Coreプロセッサの詳細や性能はレビュー記事や基礎検証レポートを参照してほしいと思うが,ざっとまとめてみると,製造プロセスの微細化を除けば,以下の点がSandy Bridgeからの主な強化点となる。
・I/Oの強化
CPUおよびプラットフォームとしてPCI Express 3.0(PCI Express Gen.3)に正式対応。
・メモリコントローラの強化
Sandy Bridge世代ではノートPC向けの一部モデルでのみサポートされていたデュアルチャネルDDR3-1600に全面対応。ノートPC向けモデルではDDR3の定格より0.15V低い1.35V駆動のDDR3L-1600もサポートする。
・統合型グラフィックス機能の強化
CPU,チップセットレベルでは3画面出力に対応。ただし,実際に3画面出力が行えるかどうかはマザーボード側の実装による
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Sandy Bridge世代では,12基のExecution Unit(以下,実行ユニット)を搭載する「Intel HD Graphics 3000」と6基のExecution Unitを持つ「Intel HD Graphics 2000」が用意されていたが,Ivy Bridge世代ではこれが
16基の「Intel HD Graphics 4000」と6基の「Intel HD Graphics 2500」となり,上位モデルで実行ユニットが増えている。DirectX 11とOpenGL 3.1,OpenCL 1.1に対応する点も大きな変更点だ。
マザーボード側の対応が必要なので,必ずしも確実に利用できるわけではないが,DisplayPort 1.1およびHDMI 1.4aに対応し,最大3画面出力を利用できるのもトピックといえるだろう。
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Ivy Bridge世代とSandy Bridge世代のCPU統合型グラフィックス機能のスペックを比較したもの。実行ユニットの拡張とDirectX 11対応がポイントになるだろう |
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こちらは両世代の機能面を比較したもの。DirectX 11対応を果たしたこともあってか,ゲームでの互換性が向上したとも謳われている |
・Intel Quick Sync Videoの強化
統合型グラフィックス機能有効時のみ利用できるビデオトランスコード用固定ハードウェアである「Intel Quick Sync Video」(QSV)を拡張。特定条件ではSandy Bridge比で2倍の性能を発揮できるようになっているという。
Ivy Bridge世代とSandy Bridge世代との互換性を示したスライド。PCI Express 3.0対応などを諦めるなら,Intel 7シリーズチップセット搭載マザーボードでSandy Bridge世代のCPUを使ったり,Intel 6シリーズチップセット搭載マザーボードでIvy Bridge世代のCPUを使ったりできる
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組み合わされるチップセットは,4月上旬から先行して搭載マザーボードの販売が始まっている
Intel 7シリーズ。デスクトップPC向けのIvy BridgeではSandy Bridgeと同じLGA1155パッケージを採用しており,実際,Ivy BridgeとSandy Bridgeではピン互換が確保されている。「利用できる機能は低いほうに引っ張られる」のを覚悟すれば,Intel 7シリーズチップセット搭載のマザーボードでSandy Bridge世代のプロセッサを利用したり,逆に(Ivy Bridge対応を謳う)Intel 6シリーズチップセット搭載のマザーボードでIvy Bridge世代のプロセッサを利用したりすることも可能だ。
Intel 6シリーズチップセット(左)とIntel 7シリーズチップセット(右)の主な違い
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そんなIntel 7シリーズチップセットにおける最大の特徴は,最大4ポートを利用できるUSB 3.0コントローラを統合したことだろう。IntelのチップセットにUSB 3.0コントローラが統合されたのは今回が初めてである。
開発コードネーム「Panther Point」(パンサーポイント)ことIntel 7シリーズチップセットのブロック図
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デスクトップPC向けとなる「Intel Z77 Express」(左)および「Intel H77 Express」「Intel Z75 Express」(右)のブロック図
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発表時点におけるチップセットのラインナップと主なスペックは
表4,5のとおりだ。
Rapid Storage:Intel Rapid Storage Technology。AHCIのNative Command Queueing機能やRAIDボリューム管理機能をまとめたもの
Smart Response:Intel Smart Response Technology。Intel Rapid Storage Technologyの追加機能で,SSDをHDDのキャッシュとして利用することにより,HDDの性能を引き上げようとするもの。第2世代&第3世代Core i3プロセッサ以上を搭載した環境で利用可能
Smart Connect:Intel Smart Connect Technology。スリープ時にもメールやSNSなどのアップデート情報を取得することで,スリープからの復帰後,最新の情報をすぐにチェックできるようにするもの
Rapid Start:Intel Rapid Start Technology。休止状態に入るとき,メモリのデータをHDDだけでなくフラッシュメモリにも待避させ,復帰時の読み出しにかかる時間を短縮しようというもの
Anti-Theft:Intel Anti-Theft Technology。ノートPCが盗まれたときに,リモートからデータを削除するもの
※USB 3.0ポートはWindows XP環境下だとUSB 2.0ポートとして機能する
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ノートPC向け第3世代Coreプロセッサのイメージ
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以上,駆け足でまとめてみた。
ゲーマー的に重要なポイントは,22nmプロセス技術の採用による消費電力面でのメリットと,PCI Express 3.0対応といったところだと思われるが,実際にどのようなポテンシャルを持っているかは,ぜひレビュー記事や基礎検証レポートを参照してほしい。