スマホゲームにレイトレーシングをもたらす次世代ハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 2」をQualcommが発表

　米国時間2022年11月15日，Qualcommは，スマートフォンやタブレット端末向けの次世代ハイエンドSoC（System-on-a-Chip）「Snapdragon 8 Gen 2」を発表した。Snapdragonシリーズとしては初となるリアルタイムレイトレーシング対応GPUの搭載や，AI処理性能の強化，「AV1」ビデオコーデックのハードウェアデコード対応などが主な特徴となっている。
　Snapdragon 8 Gen 2を搭載するスマートフォンは，2022年末から市場に投入される予定で，採用メーカーにはASUSTeK Computer（以下，ASUS）やソニー，シャープ，Xiaomi，Oppoなどの名が挙がっている。

Snapdragon 8 Gen 2のパッケージ

　例によって，QualcommはGPUコアの詳細を明らかにしていないが，Snapdragon 8 Gen 2に統合されたGPUコア「Adreno」は，リアルタイムレイトレーシングに対応するだけでなく，既存のハイエンドSoCである「Snapdragon 8 Gen 1」と比べて25％ほど高性能で，消費電力あたり性能では45％優れているという。
　また，Qualcommによれば，Snapdragon 8 Gen 2は，Epic Gamesの新世代ゲームエンジン「Unreal Engine 5」が対応する人物表現機能「MetaHuman framework」も利用できるそうだ。

Qualcommが公開した，リアルタイムレイトレーシングオフの状態（上）とオン状態（下）の例。オン状態では，水面に男性や周囲の情景が映り込んでいる

　CPUである「Kryo」は，Armが設計したCPU IP「Cortex-X3」1基を「プライムコア」，つまり最も処理性能の高いCPUコアとして採用した。プライムコアは，最大クロック3.2GHzで動作できるそうだ。
　ほかにも，4基の高性能コア（最大クロック2.8GHz）と，3基の高効率コア（最大クロック2GHz）を組み合わせており，必要な処理性能に応じてCPUコアを使い分ける仕組みとなっている。

　Snapdragon 8 Gen 2におけるもうひとつの特徴であるAI処理は，Digital Signal Processor（DSP）でもある「Hexagon」プロセッサが担当する。Snapdragonシリーズとしては初めて，「INT4」（4bit整数）での演算に対応しており，音声認識などに用いる自然言語処理での処理性能が向上しているそうだ。

　そのほかにも，5G対応の新型モデム「Snapdragon X70 5G」や，次世代無線LAN規格「Wi-Fi 7」に対応する無線LAN機能，Bluetoothベースのワイヤレスサウンド技術「Snapdragon Sound」に対応するサウンド機能なども統合しているという。

表　Snapdragon 8 Gen 2と前世代SoCの主なスペック

	Snapdragon 8 Gen 2	Snapdragon 8 Gen 1
型番	SDM8550-AB	SDM8450
製造プロセス	4nm	4nm
CPUコア	Kryo	Kryo
CPU物理コア数	8（プライムコア×1，高性能コア×4，高効率コア×3）	8（プライムコア×1，高性能コア×3，高効率コア×4）
CPU最大動作クロック	3.2GHz	3GHz
GPUコア	Adreno	Adreno
ISP	Spectra	Spectra
カメラ	1億800万画素（シングル），6400万画素＋3600万画素（デュアル），3600万画素×3（トリプル）	1億800万画素（シングル），6400万画素＋3600万画素（デュアル），3600万画素×3（トリプル）
統合型DSP	Hexagon	Hexagon
APIサポート	OpenGL ES 3.2，OpenCL 2.0 FP，Vulkan 1.3	OpenGL ES 3.2，OpenCL 2.0 FP，Vulkan 1.1
メモリコントローラ	LPDDR5X 4200MHz 最大容量16GB	LPDDR5 3200MHz 最大容量16GB
統合型モデム	Snapdragon X70 5G	Snapdragon X65 5G
通信仕様	5G，下り最大10Gbps	5G，下り最大10Gbps

　通例どおりであれば，Snapdragon 8 Gen 2は，ASUS製のゲーマー向けスマートフォンを皮切りに，各社のハイエンドスマートフォンに採用され，国内でも2023年夏商戦には搭載製品が登場してくるだろう。

QualcommのSnapdragon 8 Gen 2製品情報ページ