Qualcomm，ミドルクラス市場向け新型SoC「Snapdragon 712」を発表。従来製品比10％の性能向上を謳う

　北米市場2019年2月6日，Qualcommは，ミドルクラス市場向けの新型SoC（System-on-a-Chip）となる「Snapdragon 712 Mobile Platform」（以下，Snapdragon 712）を発表した。
　Snapdragon 712は，2018年5月に発表となった「Snapdragon 710 Mobile Platform」（以下，Snapdragon 710）ベースのマイナーアップデート的な製品で，Snapdragon 710と比べて約10％程度の性能向上を実現したという。
　なお，搭載端末の登場時期についてQualcommは明らかにしていない。


　Qualcommが公開した製品情報によると，Snapdragon 712とSnapdragon 710はいずれも10nmプロセス技術を採用して製造されるプロセッサで，CPUコアにQualcomm独自の「Kryo 360」を，GPUコアには「Adreno 616」を採用するなど，違いが見当たらない。統合型DSPに「Hexagon 685」，カメラ用の画像処理エンジン（Image Signal Processor，ISP）に「Spectra 250」，統合型モデムに「Snapdragon X15 LTE」を採用しているのもまったく同じだ。

　なら何が異なっているかだが，目に付く違いはSnapdragon 710でCPUコアの最大動作クロックが2.2GHzのところ，Snapdragon 712では最大2.3GHzに向上している程度である。もちろんこれだけで10％もの性能向上を実現できるとは思えないので，Adreno 616の動作クロックも引き上げているのではないかと思われるが，Qualcommは以前からGPUの動作クロック情報を開示していないので，はっきりしたことは分からない。

表　Snapdragon 712とSnapdragon 710の主なスペック

	Snapdragon 712	Snapdragon 710
型番	SDM712？	SDM710
製造プロセス	10nm	10nm
CPUコア	Kryo 360	Kryo 360
物理コア数	8	8
最大動作クロック	2.3GHz	2.2GHz
GPUコア	Adreno 616	Adreno 616
ISP	Spectra 250	Spectra 250
カメラ	3200万画素（シングル），2000万画素（デュアル）	3200万画素（シングル），2000万画素（デュアル）
統合型DSP	Hexagon 685	Hexagon 685
APIサポート	DirectX 12，OpenGL ES 3.2，Vulkan	DirectX 12，OpenGL ES 3.2，Vulkan
メモリコントローラ	LPDDR4X 1866MHz	LPDDR4X 1866MHz
統合型モデム	Snapdragon X15 LTE	Snapdragon X15 LTE
通信仕様	LTE Cat 15，下り最大800Mbps	LTE Cat 15，下り最大800Mbps

　そのほかの違いを細かく見ていくと，Snapdragon 712ではサウンド機能周りに改良が加わり，左右独立型のワイヤレスイヤフォンへ個別に音声データを伝送できる「Qualcomm TrueWireless Stereo Plus」に対応したという。
　また，急速充電機能がSnapdragon 710の「Qualcomm Quick Charge 4」（以下，QC4）から「Qualcomm Quick Charge 4＋」（以下，QC4＋）に変わったのもトピックだ。QC4ではバージョン2.0〜3.0世代のQualcomm Quick Chargeとの間で互換性が失われていたが，QC4＋ではその互換性が復活するとのことである。

　そもそも国内では，Snapdragon 710を搭載するスマートフォン自体が少ないので，今後，Snapdragon 712搭載スマートフォンが増えるかどうかはなんとも言えないが，ミドルクラス市場向けSoCに新しい製品が加わったことは，覚えておいて損はないだろう。

QualcommのSnapdragon 712製品情報ページ（英語）

Qualcomm公式Blogにおける当該ポスト（英語）