レビュー
2つの新エリアにドラゴン系の新種族,数々のシステムアップデートが追加される拡張パック
セイクリッド2 アイス&ブラッド エクスパンションパック 日本語版
2011年2月25日,PC用シングル/マルチプレイ対応RPG「セイクリッド2 アイス&ブラッド エクスパンションパック 日本語版」(以下,アイス&ブラッド)がズーから発売された。本作は,2010年4月に発売された「セイクリッド2 日本語版」に,さまざまな要素を追加する拡張パックとなっている。
セイクリッド2そのものはPC版以外に,PlayStation 3版やXbox 360版もリリースされているが,アイス&ブラッドはPC版のみのコンテンツだ。セイクリッド2自体の世界観や基本的なシステムは,本編のレビューを参考にしてほしい。本稿ではアイス&ブラッドの導入で,どういったことができるようになるのか,そこに的を絞って紹介していきたい。
なお,発売日の2月25日に,ズーからパッチがリリースされている。割と大きな問題点を修正する内容なので,購入者は必ずアップデートしておこう。
「セイクリッド2 アイス&ブラッド エクスパンションパック 日本語版」
公式サイト
2つの新エリア「クリスタル平原」「呪われた森」が実装
冒険の幅がさらに広がる
アイス&ブラッドでは大小さまざまな要素が追加されるが,なかでも最大のトピックスは,2つの新エリア「クリスタル平原」「呪われた森」の追加だろう。
●クリスタル平原
クリスタル平原は,アンカリアの北西に位置するエリアだ。この地は,セラフィムという種族が造った狩猟場となっており,セラフィムの兵士が警備兵として集落の警戒にあたっているのを確認できる。スクリーンショットを見れば分かるように,いたるところでクリスタルが光り輝いており,さらに寒い地域なのか,雪が降り積もっている場所も多い。
敵として,クリスタルに覆われた動物型のモンスターや,イエティなどが登場。そのほか,マップにある一部のクリスタルは電撃を放ってくる……という罠があるのも特徴だ。ちなみにエリアの最深部には「クリスタルフェニックス」というボスキャラクターが待ち構えているようだ。
●呪われた森
呪われた森はアンカリアの南東に位置するエリアで,エルフと深い関わりがある。このジャングルは長いあいだ侵略者を拒み続けてきたというだけあり,スタート地点こそ木々が生い茂る自然豊かな場所に見えるが,森の奥に足を踏み入れると,ゾンビやデーモンがはびこる恐ろしい光景が待っている。
さらに目玉が埋め込まれた樹木や,赤い水を湛えた池などがあり,全体的に不気味な雰囲気だ。呪われた森に生身の人間はほとんどおらず,集落もゾンビで構成されている。
クリスタル平原,呪われた森ともに数多くのクエストが用意されているが,これらはメインストーリーとなるキャンペーンには絡まないため,好きなタイミングで遊べる。
なお,呪われた森のとあるクエストをクリアすると,マウント(プレイヤーの乗り物)を販売する業者が出現する。彼らは「ユニコーン」「フレイムホース」といった,アイス&ブラッドで初登場となる馬を扱っているが,新種族の「ドラゴンメイジ」でプレイした場合は,「ドラコニコン」という竜の血を引く彼ら専用の馬を購入できる。値は張るが,見た目がかなりカッコイイので,ぜひ入手してほしい。
ドラゴンメイジ専用のマウント,ドラコニコン。騎乗すると高速移動が可能で,重宝する |
フレイムホース。見た目は凶悪だが,残念ながら性能は通常の馬と変わらない |
クリスタル平原,呪われた森への移動は,どちらもエルフの首都「サイリサイアム」という街から船を使う。サイリサイアムは本編の序盤で登場する街なので,初回プレイ時でも,それほど時間がかからないうちに到達できるはずだ。
ちなみにこの2つのエリアは,ともに移動用のポータルがなく,復活ポイントとなる「ソウルストーン」がいくつか用意されているに留まる。ただし,集落の周辺などには「熱気球」があり,これを使えば港やほかの熱気球の着陸地点まで瞬時に移動可能だ。
これらのエリアで遊んでみて感じたのは,どちらも出現する敵の数が非常に多いという点。気付くと10体以上の敵を相手にしていたということも珍しくなく,生き残るにはプレイヤースキルが大いに求められそうな印象だ。万全を期すなら,ポーションを多めに用意してから上陸したいところだ。
さらに,いくつかの場所ではボスモンスターが登場する。強力な攻撃を次々と繰り出してくるため,倒すのはなかなか大変。戦闘は全体的にハードといえるだろう。
また新エリアとは関係ないが,フィールド全般に関連して,ポータルの使用条件が緩和されたのはうれしい改善点だ。これまではポータルがある場所まで移動し,そこからアクティブになっている他のポータルを選択するという仕様だったため,移動に大変な時間がかかっていた。セイクリッド2は新エリアを含めない状態でも,35平方kmという途方もない広さの世界を持っているので,正直移動がかなりしんどいのである。
しかし,アイス&ブラッドでは,ポータルが起動さえしていれば,マップから直接クリックして使用でき,移動の手間を大幅に減らせるようになった。コンシューマ版では最初からこの仕様だったのだが,PC版ではようやく実装ということになる。
個人的には,この機能を導入するためだけにアイス&ブラッドを導入してもいいとさえ思えるくらい,大きな改善点だ。
新たな種族「ドラゴンメイジ」登場
強力な「竜魔法」で豪快にプレイ
新エリアに匹敵する重要な新要素として,新種族「ドラゴンメイジ」の導入が挙げられるだろう。彼らは世界の果てに存在するという「ドラゴン教団」のメンバーである。
セイクリッド2本編のキャンペーン:チャプター5でも登場していたが,そこではあくまでNPCという扱いだった。それがアイス&ブラッドでは,実際にドラゴンメイジを操作できるようになるのだ。
ドラゴンメイジは「ライト」「シャドウ」の両キャンペーンをプレイ可能で,信仰する神に関しては,「ケア」という邪神以外の5種を選択できる。
種族の特徴としては,やはりドラゴンの力を利用する「竜魔法」が最初に挙げられる。コンバットアーツ(必殺技のようなもの。以下,CA)には,ドラゴンゆずりの強力な炎で敵を焼き尽くしたり,キャラクター自身がドラゴンに変身し,圧倒的なパワーで敵を粉砕したりするものが用意されており,爽快感があって楽しい。
ほかにも,風や土など自然の力を利用した「精霊の魔法」,精神に作用する「メンタルマジック」など,さまざまな魔法を使えるため,なかなか派手な戦闘を楽しめる種族といえる。敵との距離が離れているなら攻撃魔法で倒してみたり,いざとなったらドラゴンに変身してみたりと,その場の状況に応じて,どんどん攻撃スタイルを変えられるのが面白いところだろう。
個人的には「ドラゴンストライク」というCAが気に入っている。これはドラゴンを召喚して指定した場所を炎で焼き尽くし,敵に時間性のダメージを与えるというものだが,じわじわと敵の体力を奪い,集団を一掃できるのは快感だ。
ドラゴンメイジの追加に伴い,彼ら専用のアイテムが追加されたのはもちろん,既存の種族用の装備品もいくつか登場している。ハック&スラッシュ系のRPGでは定番の要素となっているアイテム収集の楽しみが,さらに増したのも嬉しいところ。
女性型の種族は,このように見た目のカスタマイズができるようになった。より細かく調整できるので,より愛着も湧きやすい |
小鬼の運び屋は呼び出すとプレイヤーキャラクターに近づいてくる。荷物を整理後,またはしばらく放置しておくと,自動的に消える |
キャラクター選択画面を見れば分かるように,ヒーローチェストを背負ったモンスターが追加されている。これには「小鬼の運び屋」という名前がついており,コンシューマ版ではすでに配信されているコンテンツだ。PC版でもアイス&ブラッドから利用できるようになった。
小鬼の運び屋が同行するようになり,ヒーローチェストでのアイテム整理がいつでも行えるようになる。これまでヒーローチェストは特定の街に行かなければ利用できなかったので,非常に便利な存在だ。なお,新規キャラクター作成時には,この小鬼の色も変えられる。
なお,セイクリッド2では武器とCAのスロットが最高4つだったが,アイス&ブラッドではさらに1つ追加され,合計5スロットとなった。これも嬉しい変更点だ。
「クイックキャスト」の実装で戦闘はよりスピーディに
「エクスパートタッチ」はゲームを分かっている人向けか
まずクイックキャストから説明しよう。これはCAを任意のキーに登録でき,それを押せば一発でCAが発動するというもの。これまでは使いたいCAを装着したスロットをクリックし,さらにマウスのボタンを右クリックする必要があったが,クイックキャストなら,キーを1回押すだけでいい。素早くCAを繰り出せるため,柔軟な戦いができるようになるだろう。
クイックキャストはおそろしく便利だが,なぜか初期設定では「無効」になっているため,ぜひオプションから「有効」にしておきたい。
エクスパートタッチはキャラクター作成時にのみ有効/無効を選べる新要素で,「有効」になっている場合,CAのリチャージ速度が「無効」時と比較して,早くなるというメリットがある。
半面,1つCAを使うと,ほかのアスペクト(CAのカテゴリ)もリチャージ状態になるというデメリットがある。例えばセラフィムの場合,アスペクト「天界の魔法」の中にある「ディバインライト」を使った場合,残り2つのアスペクト「高潔なる戦士」「太古の技術」のCAもリチャージ状態になり,発動できないというわけだ。
特定のアスペクトだけ使いたい場合は有効な手段にも思えるが,使ってみた印象としては,“ある程度ゲームが分かっている中級以上のプレイヤー向け”だと感じられた。ゲームを開始してからは変更できないため,初心者はとりあえず「無効」でプレイし,本作がどういうゲームか理解してから試すのがいいだろう。
クローズドネットで育てたキャラクターを
オフラインでも使用可能
セイクリッド2のマルチプレイの中に,「クローズドネット」というモードがある。クローズドネットで育てたキャラクターは,セーブデータがサーバ上に保存される仕様になっており,したがってシングルプレイ用のキャラクターとは別に育てる必要があった。しかしアイス&ブラッドからは,クローズドネットで育てたキャラクターのエクスポートが可能になり,シングルプレイでも使用できる。
エクスポートのやり方はとても簡単。マルチプレイ用のアカウントを作成後,クローズドネットに接続してロビーに入ったら,自分で部屋を作るか,誰かがホストしている部屋に入ろう。ゲームが始まったらESCキー(デフォルト)でメニューを出し,「クローズドネットキャラクターをエクスポート」を選ぶだけでいい。これで,シングルプレイ用のキャラクター一覧に追加されているはずだ。
エクスポートのメリットとして,オンライン上にセーブデータを保持したまま,同じキャラクターをオフラインにコピーできる点が挙げられるだろう。クローズドネットで「どのパラメータを伸ばすか」「どういったスキルを覚えさせるか」に悩んだら,シングルプレイで試して育成方針を固めてみるというのもいいだろう。
システム改善でより遊びやすくなった
未体験のユーザーにもぜひプレイしてもらいたい
前作のレビューで「拡張パックもローカライズされるといいな」ということを書いた。英語版のリリース時期から比べると時間はかかってしまったが,無事に日本版が発売されたことについては,素直に喜びたい。
ローカライズのクオリティも問題ないように思えるし,安心して遊べるレベルになっているといえる。アイス&ブラッドを導入することで,ゲームの世界観が広がるのはもちろん魅力的だが,それ以上にシステムが改善され,より遊びやすくなったという点は,大いに評価できるポイントだろう。
本稿執筆のため,久しぶりにセイクリッド2で遊んだが,やはり面白いゲームだ。広大なフィールドを駆け巡り,膨大に用意されたクエストに挑戦したり,レアアイテムを追い求めて敵をバッサバッサと斬り倒していったりする生活に,またしばらくは浸ることになるだろう。新エリアは手強くてやり甲斐があるし,追加された装備品もいろいろ見てみたいし,またしばらく眠れない日々が続く予感がする。
本体と拡張パックをセットにした「セイクリッド2 ゴールドエディション 日本語版」も同時に発売されるので,もしシリーズ未体験ならば,こちらを手にとって,ぜひとも遊んでみてほしい。
4Gamerではセイクリッド2の体験版(英語)を掲載しているので,「自分のPCで満足に動くかどうか不安」という人は,まずそちらから試してみてはいかがだろうか。
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