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ゲーマー向け液晶ディスプレイはオーバー200Hz対応の時代に? COMPUTEXで見た最新液晶ディスプレイ事情
ただ,事前に予想していた「HDR対応」や「BT.2020の広色域対応」のディスプレイはなんと皆無。先日掲載したBenQのゲーム製品担当者インタビューでも,「HDR対応,BT.2020広色域対応はまだ対応ゲームタイトルも少ない」というコメントがあったように,現時点では様子見というスタンスのディスプレイメーカーが多いようだ。
そうなると,HDRやBT.2020の広色域に対応するディスプレイが市場に登場するのは,2017年からになりそうである。
では,ゲーマー向け液晶ディスプレイの新製品にはどんなものが目立ったのかというと,垂直リフレッシュレート100Hz以上の高リフレッシュレート対応ディスプレイだ。もちろん,今までも120〜144Hzといった高リフレッシュレートに対応するゲーマー向け液晶ディスプレイは各社から登場していたが,2016年はそれがさらに広がって,「より高いリフレッシュレートへの対応」や「湾曲型液晶ディスプレイの高リフレッシュレート対応」を打ち出す製品が登場してきたのだ。
また,2015年に多くの対応製品が登場した可変フレームレートを表示を実現するディスプレイ同期技術に対応した液晶ディスプレイも,引き続き各社から登場している。ただ,ゲーマー向け液晶ディスプレイの新製品においては,NVIDIAのディスプレイ同期技術「G-SYNC」に対応する製品の優勢が目立っていた。
AMDの「FreeSync」(VESAのAdaptive-Syncと事実上同一の技術)がダメなのかというと,そういうわけではない。実際,ゲーマー向けを強く謳わない製品では,FreeSync対応製品もそれなりに多いのだ。これは単純に,PCゲーマーが使う単体GPUでは,GeForceシリーズのシェアが圧倒的に優勢であることを反映しているからだろう。
以上のことを踏まえ,今年のCOMPUTEXで見かけたゲーマー向けディスプレイ新製品を紹介していくとしたい。
リフレッシュレート240Hz対応が新たなトレンドに?
まずは,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)ブースの製品からチェックしていこう。
お馴染みのゲーマー向けブランド「R.O.G.」から登場したのは,最大垂直リフレッシュレート240Hzを誇る「ROG Swift PG258Q」(以下,PG258Q)だ。この240Hzとは,EIZOの「FORIS FG2421」や,LG Electronicsの「24GM77-B」ような「内部240Hz,液晶パネルは120Hz表示」ではなく,リアルな240Hz駆動であるらしい。
デザイン上の特徴として説明員がアピールしていたのは,ベゼルとスタンドの形状だ。ベゼルは超狭額縁デザインを採用しており,複数台を並べたマルチディスプレイ構成にも最適と主張していた。
三本足のスタンドは,国内でも販売中の「ROG Swift PG348Q」と同じ形状で,スタンドの下にR.O.G.ロゴを投影するギミックも搭載している。
スタンドの可動範囲は,左右回転(スイーベル)と上下回転(チルト),そして高さ調整に対応するとのことだったが,具体的な数値は公表されていない。
発売は2016年末を予定しており,価格は未定とのことだ。
ゲーマー向けブランド「Predator」に力を入れるAcerも,垂直リフレッシュレート240Hz対応のゲーマー向け液晶ディスプレイ「Predator XB251Q」を発表していた。
スペックはPG258Qとほぼ同等で,24.5インチサイズの解像度1920×1080ドット,TN方式液晶パネルを採用して中間調応答速度は1msと,まるで双子のよう。240Hz表示が可能なのは,DisplayPort接続でG-SYNC使用時のみとなるのも同じだ。
240fpsの高速度動画撮影に対応するパナソニックのデジタルカメラ「DMC-TZ70」を使って,240Hzで表示中というPredator XB251Qの画面を動画で撮影してみた。60Hz表示と比較しなければ違いは分からないかと思うが,雰囲気だけでも感じていただければ幸いだ。
発売は2016年第3四半期を予定しており,価格は未定とのことだった。
ところで,垂直リフレッシュレート240Hzで映像を表示するには,当然ながらPCとGPUには,ゲームグラフィックスを240fpsで描画し続けられる性能が必要になる。そう聞くと,「現在のGPUで,そんなに高いフレームレートの映像を描画できるのか」と疑問を持つ人もいるかもしれない。
簡単に計算してみると,フルHD解像度(1920×1080ドット)の240fpsというのは,ピクセルフィルレートで換算すれば4K解像度(3840×2160ドット)の60fpsと同じである。つまり,ミドルクラスのGPUでは難しいかもしれないが,4K解像度で60fpsの描画が可能なハイエンドGPUがあれば,フルHD解像度で240Hz表示は可能ということだ。ディスプレイやグラフィックスカード選択の参考にしてほしい。
湾曲型液晶ディスプレイにも高リフレッシュレート対応製品が増加
日本ではまだ浸透したとはいいがたい湾曲型液晶ディスプレイだが,海外ではそれなりの定番ジャンルになりつつある。ある製品ジャンルが市場に浸透すると,メーカーは続けて,その製品のバリエーション展開を行うものだが,ゲーマー向けの湾曲型液晶ディスプレイにもそうした製品が登場し始めた。
とくに力を入れていたのはAcerで,COMPUTEXの同社ブースでは,画面サイズや解像度,リフレッシュレートの異なる3種類の製品を展開していた。
まず,30インチサイズの「Predator Z301C」は,湾曲型液晶ディスプレイとしては定番ともいえる,解像度2560×1080ドットの製品だ。
画面の曲率は1800R(=半径1800mmの円を描くカーブ)で,対応する最大リフレッシュレートは200Hz。200Hzでの表示は,例によってDisplayPortによるG-SYNC接続時に限られる。2560×1080ドットの200fpsというと,こちらもピクセルフィルレートは4K解像度/60fpsと同等だ。
なぜか144Hzで表示中となっていたが,Z301Cのデモ画面も240fpsの高速度撮影で録画してみた。
VA方式は視野角に対する色の変化という点ではIPS方式に及ばないものの,正面から見たときの黒のしまりやコントラスト感は,IPS方式よりも優れている。湾曲型液晶ディスプレイの場合,画面形状の関係で斜めから見る機会も少なくなるため,VA方式液晶パネルとの相性はいい。リフレッシュレートや応答速度だけでなく画質も気にしたいのであれば,Z301Cはバランスのいい製品と言えそうだ。
発売時期は2016年第3四半期を予定しており,価格は未定である。
2製品めの「Predator Z271」は,27インチサイズで最大垂直リフレッシュレート144Hzに対応した湾曲型液晶ディスプレイだ。液晶パネルの曲率は1800Rとなっている。
特徴的なのは,湾曲型でありながら解像度が1920×1080ドット,アスペクト比は16:9というところ。湾曲型液晶ディスプレイは,アスペクト比21:9の超横長モデルが多いなかで,Predator Z271はスタンダードな16:9モデルなのだ。
液晶パネルはVA方式で応答速度は4ms。144Hz表示には,DisplayPortによるG-SYNC接続が必要という点は,他の製品と変わらない。
前述の3製品に比べれば,解像度,最大垂直リフレッシュレートとも低めなので,GPU性能に対する要求も低めで済む。幅広いユーザー層にアピールできる製品と言えるかもしれない。
発売時期は2016年第3四半期の予定で,価格はこちらも未定である。
最後の「Predator X34P」は,2015年に発売された「Predator X34」の後継となる,34インチサイズ・解像度3440×1440ドットの湾曲型液晶ディスプレイだ。カーブの曲率は1900Rで,前出3機種と比較するとややカーブが緩やかとなっている。
G-SYNCに対応しており,最大垂直リフレッシュレートは100Hzというあたりは,従来機種と変わっていない。サイズや解像度も従来機種と同じなので,新機種でどこが変わったのか,正直よく分からなかった。
従来機種から継承したPredator X34Pの特徴は,視野角によって色調が変わりにくいIPS方式の液晶パネルを採用しているところにある。また,Predator X34Pの対応色域はsRGBカバー率100%で,6軸色補正機能も搭載しているとのこと。ゲーム以外の用途にも適応できるレベルの視野角や色再現性を備える製品というわけだ。
ちなみに,3440×1440ドットの100Hzは,4K解像度の60Hzに近いピクセルフィルレートなので,Predator X34Pの最大性能を活かすには,高性能GPUが必要ということでもある。
AcerのVR戦略は「OSVR」と「StarVR」の両睨み?
2016年のディスプレイデバイスネタでゲーム関連といえば,仮想現実(以下,VR)対応ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)を外すことはできない。COMPUTEXの各ブースでもVR HMDを使ったデモが多数あったわけだが,HTCの地元ということもあってか,それとも単にOculus VR「Rift」を調達できなかったのか,デモに使われていたVR HMDは,圧倒的にViveが多かった。
そんな中,Acerが展示していたのは,オープンソースによるVR HMD規格である「OSVR」(Open-Source Virtual Reality,関連記事)に準拠したデバイスだった。しかも出展されたのは,ヘッドトラッキング用の赤外光LEDをHMD前面部に埋め込んだ,OSVRの最新仕様版である。
ブースで体験できたのは,アイアンマンのようなロボットスーツを着た兵士が,火山地帯を飛び回るという内容のデモだった。
なぜAcerが,COMPUTEXでOSVRの展示を行っていたかといえば,同社がOSVRベースで独自のVR HMDの開発を行うことを表明したためだ(関連リンク)。しかし,実際にどんなVR HMDを開発するのか,その仕様については詳しく語られたことがない。
Acerが手がけている――あるいは,手がけようとしている――VR HMDは,ほかにもある。E3 2015でスウェーデンのゲームスタジオであるStarbreezeが,「5K解像度,視野角210度」という特徴を掲げて,「StarVR」というVR HMDを披露したことを覚えている人はいるだろうか(関連記事)。
実はこのStarbreezeとAcerは,StarVRの開発に協力するパートナーシップ契約を交わしているのだ。
R.O.G.のCOMPUTEX TAIPEI 2016特設ページ(英語)
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