インタビュー
「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」「ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜」(&「喧嘩番長」)で,“学園モノはスパイク!”の時代に。その仕掛け人に,ネタバレから今後の展開まで根掘り葉掘り聞いた
3Dモデルのキャラクターを可愛くするため
「実写7割アニメ3割」という指示を出した
DD:
開発中にキャラクターなどの設定を変えたとか,そういったお話はありますか?
寺澤氏:
校長先生と龍ヶ峰市の市長は,当初,性別の設定が逆でしたね。優しい校長先生の女性と,悪い政治家の男性だったんですが,それだとさすがにほかの漫画作品とかぶりすぎるということで,差し替えることにしました。実は声優さんの手配も済んだ段階だったんですけど。
松本氏:
ただ,どちらも丁寧なしゃべり方をするキャラクターとして書いていたので,セリフを大きく変えることなく済んだのは助かりました。
DD:
そういうこともあるんですね。
松本さんの場合,キャラクターを先にかっちり固めてから物語を書いていくそうですが,結果的に大きな出番のないキャラクターになってしまうことはありませんか?
ありますねぇ(笑)。ガチトラだと,真山令子というギャルっぽい女の子と,夏目総司という男の子は,メイン級の扱いで登場するんですが,メインにはならなかったんです。
10話まで書き終えて,よし終わったと思ったら,2人が出ていないことに気付いて,あとからエピソードを足したんですよ。声優さんも決まっているし,モデルもメイン級で作ってるから,使わないわけにもいかなくて。
DD:
ほかのキャラクターに比べて独特な立ち位置になっているのは,そういう理由があったからなんですね。
逆に,キャラクターが足りなくなることはないんですか?
松本氏:
そういうときは使い回すこともあります。もちろん追加モデルを作れる場合は作りますが,メモリの関係でモデルデータをそれ以上載せられないこともありますし,タイミング的に新しいキャラクターを追加するのが厳しかったりする場合は,すでにいるキャラクターを,別の役割としても登場させるんです。
DD:
キャラクターモデルのお話でいうと,ガチトラは全般的に女の子が可愛いですよね。3Dのリアルっぽいシルエットでありながら,アニメ的なテイストも入っていますし。
松本氏:
ありがとうございます。その部分の直しも凄かったですよ。寺澤のこだわりが半端じゃなくて。
寺澤氏:
何度も修正をしてもらいましたが,まだやりきれてないんですよね。美鈴先生だって,もっと可愛くできたはずなんですが,結衣と萌ちゃんへのこだわりで息切れしてしまいました(笑)。
松本氏:
先生ということで服も地味ですからねぇ。
結衣はアイドルだから,一番可愛くなきゃいけないんですよ。萌ちゃんも,あの子が可愛くなかったらみんなメイドぱらだいす(萌のバイト先となるメイド喫茶)に来てくれないですから,相当な力を入れて可愛くしていきました。だから,最初の頃とは全然違う顔になっています。
DD:
3Dのキャラクターモデルって,可愛くするのが難しそうな気がするんですが……。
寺澤氏:
難しいですね。リアルにしていけばしていくほど,可愛くするのは難しいです。
でも今回,ガチトラでは少しアニメテイストを入れることで,分かりやすい可愛さの表現ができました。最初のモデルを見たときから,これだったらもうちょっと直せばもっと可愛くできるだろうというのが見えましたし。
松本氏:
グラフィッカーと話をするときに,「実写7割アニメ3割」という,冷静に考えると意味のよく分からない説明をして,感覚で作ってもらったんです。ある程度までできたら,今度はスクリーンショットを撮って,Photoshopで目の位置をちょっとずらしたりして修正指示を出していました。
スパイクではこれまで,可愛い女の子が出るゲームをなかなか作れてなかったんですよね。それが今回は実現できたのが嬉しかったです。……意外とテニス部の部員がよくできているんだよな。
松本氏:
テニス部の子は開発の後半になってできあがってきたんですけど,メインキャラクターにしたいぐらい可愛いと思いましたね。
「428〜封鎖された渋谷で〜」の御法川実の妹
御法川ミドリ誕生の舞台裏
DD:
可愛さの基準みたいな部分では,お二人の女性の好みなんかも反映されているのでは? という気がしたので,あえてお聞きしますが……お好きな芸能人は?
寺澤氏:
今はダントツで檀れいさんが好きですね。最近は,金麦しか買わないです。
DD:
CMって効果あるんですねぇ(笑)
僕は最近だと,一番好きなのは黒木 瞳さんですけど,昔は浅香 唯さんが好きでした。そういう世代なので。
DD:
もしかして,結衣の名前の由来は浅香 唯さんですか?
松本氏:
それもちょっと入ってますね。
寺澤氏:
そういえば昔,浅香 唯さんのコンサートは行ったことがあるなぁ。
松本氏:
えっ。今知りましたけど,好みが似てたんですね。
DD:
ここまで南 明奈さんが出てないですねぇ。
松本氏:
も,もちろんアッキーナさんのことは大好きですよ! 歴代で1位です。浅香 唯さんは2位です。
DD:
突っ込まないでおきます(笑)。
では,ガチトラで一番お気に入りのキャラクターは誰ですか?
松本氏:
やっぱりトラですね。本当に気持ちいいぐらい,僕が書きたかったキャラクターを表現できました。二番目は美鈴先生です。見方によってはイヤな部分もある女性なんですけど。
僕はね,藤岡のお父さんと,御法川ミドリのコンビが好きです。
DD:
それはキャラクターのビジュアルではなく,キャラクターそのものとして,ですか?
寺澤氏:
ええ。本当はもうちょっと,あのコンビ周辺の話も書き込みたいところでしたけど,それだと学園モノとはちょっと違うお話になっちゃうので我慢したんです。
DD:
ちらっと触れられるバックボーンなんかを含めて,あの2人はほかのキャラクターにはない深みがありますよね。
寺澤氏:
だからこそ,あの2人の発言が,学園の外側で起きている出来事を語るうえで,いい形のスパイスになったんだと思います。
そうそう,実はミドリって最初は「ミドリ」じゃなかったんですよ。ジャーナリストの女の子が出ることは決まっていたんですが,別の名前だったんです。
DD:
なぜミドリになったんですか?
寺澤氏:
当時,兄弟会社のチュンソフトが作った「428 〜封鎖された渋谷で〜」を凄く楽しみながらクリアしたんです。で,当時はイシイジロウさんがチュンソフトにいらっしゃったので直接電話をして,「今作っているゲームにジャーナリストの女の子が出てくるんだけど,428の御法川 実の妹っていう設定にしてもいい?」と聞いたら,イシイさんは「いいよ,いいよ」と(笑)。要望を聞いてみたら「別にない。好きに作ってくれていいから。楽しみにしてるよ」と言ってくれたので,速攻で名前を変えました。
DD:
舞台裏にそんな物語があったんですね。
寺澤氏:
428で遊んだ人達には,喜んでいただけたようです。
だからこそ,本当はもうちょっと掘り下げたサブストーリーを用意したかったんですよね。でもまあ,それはおいおいということで。
バトルスタイルで「プロレス」が強いのは
松本氏がプロレス好きだったから
ガチトラで,実際に作ってみたら想定していた以上にうまくいった要素などはありますか?
松本氏:
それはやはりソウルヌードバトルですね。
元々は,ただ言い合いしながら格ゲーっぽく戦っているだけだったんです。でも,そのままだとちょっとインパクトに欠けるので,何段階かで攻撃パターンが変わるようなことを考えていました。というのも,僕としては精神世界での戦いであっても,ファンタジーにはしたくなかったんですよ。でもどんなに粘って考えてみても,どうしても面白くならなかったんです。
DD:
ただの格闘アクションの枠を超えられなかったと。
松本氏:
ええ。そこで最終的に,敵が巨大化したり分身したり……というネタを入れていって,この形になりました。
プレイヤー同士が戦う格ゲーの場合は,一手先,二手先の読み合いみたいなものが面白いんですけど,CPU相手だとある程度パターンが決まってしまうので,そういう面白さは出せないんですよね。でも,相手が変な攻撃をしてきて,それを回避しながら戦うようなスタイルであれば,CPU戦も楽しんでもらえるだろうという結論に至ったんです。
DD:
試行錯誤の末に,ああいう形になったんですね。
変身後の生徒達って,それぞれのキャラクターが持つバックボーンに沿った形で,特殊な攻撃をしてきますよね。ああいった特殊な攻撃方法も,「こいつなら,こういう攻撃だろう」みたいにあとから付け加えていったんですか?
松本氏:
攻撃パターンはシナリオが完成してから決めたものなので,だからお話に合わせて作ることができました。
DD:
細かいことなんですけど,戦闘中に攻撃を受けたときのモーションが,プロレスの受け方になっていますよね。ダウン時に後転するのは,ロックがストーンコールドのスタナーを受けたあとの受けなんですよ。あれはどなたが決めたんですか?
松本氏:
細かい部分まで見ていただいて嬉しいです。ああいうモーションに関しては,僕が見ていましたね。実際のところ,もっと細部まで突き詰めたかった……。
DD:
え,それはどういうことでしょう?
単純にボタンをポチポチ押しているだけでも,気持ち良く見える形にしたかったんです。
どこでプレイヤーに気持ち良く感じてもらえるかを突き詰めていくと,モーションなど細かいところにどれだけ注力できているかが重要なんですよ。とくに,プロレス的な部分に関しては,以前,「ファイヤープロレスリングG」のスタッフだったこともあって,かなり気を配ってはいましたが,もっと突き詰めたかったという部分があります。
DD:
えっ,ファイプロGのスタッフだったんですか?
松本氏:
実は,シナリオデビューがファイプロGだったんです。あれの8割ぐらいは僕が書きました。ファイプロを作りたくてこの業界に入ったんですけど,早めに夢が叶っちゃって(笑)。
DD:
プロレス自体がお好きなんですか?
松本氏:
最近はあまり熱心に追えていないんですが,数年ぐらい前までは「週刊プロレス」も毎週買っていましたし,かなり好きでしたね。
DD:
離れていってしまった理由として,何か思い当たることはありますか?
松本氏:
ファイプロGのあと,携帯向けのプロレスゲームを二つぐらい作ったんですが,そういうことをしているとプロレスを見るのが仕事になりつつあって,純粋に楽しめなくなっちゃったんです。もちろん,今でも見れば面白いんですけどね。
DD:
好きなことを仕事にしちゃうと,そういうことはありますよね。
バトルスタイルのプロレスって,技のチョイスがプロレスファンっぽいなと感じたんですが,これも松本さんのお仕事ですか?
松本氏:
プロレスは完全に僕です。
DD:
何となく闘魂三銃士や四天王時代のにおいがありますよね。
松本氏:
ああ,そうですね。多分,今リアルタイムでプロレスを見ている方からすると,ちょっと時代遅れかもしれません。
DD:
あの中でいうと,シャイニングウィザードが最新の技かもしれません。
松本氏:
シャイニングウィザードはいいですよね。武藤さんはやっぱり天才だと思います。
DD:
基本的にゲームの中でのプロレスは,打撃が遅い代わりに重いですよね。
松本氏:
そうですね。やっぱりプロレスが好きなので,そこはちょっとひいき目になっているかもしれません。
一方で,バトルスタイルのボクシングは,打撃のスピードが速くて手数を多く出せる代わりに,一発一発が軽いという印象があります。
松本氏:
そうやって,バトルスタイルごとの個性を出したんです。最初はボクシングが速いわ強いわで,デバック中もみんなボクシングばっかり使っていたんで,これはダメだということになって,全部調整し直しました(笑)。
登場人物が死んでしまう後味の悪さより
ハッピーエンドを優先したかった
DD:
ストーリー関連で,ボツになったアイデアなんかはありますか?
実はストーリーを書き始める前,主要人物のうちの誰か一人が死んでしまうことにしようという話をしていたんです。舎弟のツネか,組長か,虎男がその候補でしたね。
そこからさらに詰めていって,ギリギリのタイミングまで組長が死んでしまう話を考えていたんですが,ストーリーを書き進めて行くにつれて,意外と組長に愛着がわいてきて,これで死なせてしまうのはつらいな……と思い始めたんです。じゃあ虎男かな? とも思ったんですが,虎男が死んでしまうとハッピーエンドにはならないですよね。結局,誰も死なない話になりました。
DD:
何となく組長が死んでしまいそうな気配もありますよね。
松本氏:
そうですね。その雰囲気が強い部分は,組長がやがて死んでしまうという前提で書き進めていたところです。
寺澤氏:
僕は最後まで,誰か一人が死んでしまうんであれば,嵐山だろうというオーダーをしていました。途中から虎男のことを慕ってきて可愛くなるんですよね。そんな嵐山にもしものことがあったら,プレイヤーも衝撃を受けるはずだ,と。
松本氏:
でも,僕は嵐山が死んでしまったら,その悲しみを解消できるような物語を作れないという話をして,拒否したんですよ。そのあとでどんなハッピーエンドを描いても,「嵐山先生は死んじゃったしなぁ」ってなると,後味悪いですよね。
寺澤氏:
キャラクターが死ぬというのは,プレイヤーの感情を揺さぶる要素なんですよね。これがあったほうが,メリハリがつくんじゃないかという話もしたんですが,松本は「誰も死ななくてもメリハリはつくから大丈夫」と断言したので,それを尊重しました。
松本氏:
「喧嘩番長2」のときは主人公が死んでしまう話にしちゃいましたし,ガチトラでは明るく楽しくいきたかったんです。
DD:
ほかに,ガチトラでやり残したことはありますか?
松本氏:
全力を出し切ったのは確かなんですが,やっぱりマップが小さくなっちゃったとか,競馬ゲームが作れなかったとか,泣く泣く削った要素はたくさんありますから,欲を言うならそういったものも全部作りたかったですね。
それと,ストーリーを分岐させるというのも,実は挑戦したかったことなんです。今回は完全な一本道の潔さを選びましたけど,繰り返し遊ぶプレイヤーのことを考えると,ストーリーの分岐があったほうが遊びやすいと思うので。
DD:
分岐するストーリーとしては,例えば?
先ほど少しお話しした,登場人物が死んでしまうパターンとかですね。それによって物語が変わっていくというのは,やってみたかったことではあります。
それと……,もうちょっとこう……パンチラしても良かったかなぁ(笑)。
DD:
萌ちゃんを働かせまくって,究極の萌えメイドまで育てたところで,パンチラ写真は撮れませんからね。
松本氏:
「ダメ」って怒られちゃうんですよね。
っていうか,600万稼がせたんですね。ありがとうございます。
DD:
メイドぱらだいすから出られなくて,一時期,ずっとあそこのミニゲームをやっていました。
寺澤氏:
あれ,やっちゃいますよね。僕も開発が終盤にさしかかってからは,ひたすらメイドぱらだいすのデバッグだけをやっていました(笑)。
松本氏:
寺澤から来るバグ報告が,全部メイドぱらだいすがらみでしたからね。ほかもやってほしいんですけど(笑)。
DD:
こうやってはまってしまう人が多いというのは,狙いどおりなんですよね?
松本氏:
ええ。ゲーム内で稼いだお金の使い道として,メイドぱらだいすを作ったので,夢中になっていただけるのは嬉しいです。
DD:
ああ,ミニゲームだけでなく,釣った魚を調理するのも,メイドぱらだいすですもんね。
松本氏:
ええ。ほかのミニゲームの結果が,あそこに集約されるように作ったんです。だからメイドのキャラクターも撮影会のポーズも多く出来るように努力しました。
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ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜
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