インタビュー
[インタビュー]子どもたちが50年後も「マイクラ」に触れている未来へ。スタジオヘッドに聞く「Minecraft」フランチャイズの展望
2024年7月4日,東京・品川の日本マイクロソフト本社にて,ブレディン氏と「Minecraft」の出会い,「Minecraft」の現状,今度の展望について話を聞くことができた。2人の「Minecraft」プレイヤーの母親でもある氏は,これからの「Minecraft」の歩みをどのように考えているのだろうか。
「Minecraft」公式サイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。ブレディンさんはMojangに入社する前から,ご家族と「Minecraft」を遊んでいたそうですね。
ブレディン氏:
そうなんです。もう10年も前になりますが,2人の息子と一緒にiPadで「Minecraft」を始めました。「Minecraft」は彼らにとって一番のインタラクション(一緒に関わりながら遊ぶ手段)であり,一緒に遊ぶうちに私自身も「Minecraft」をプレイするようになりました。ちなみに,2人は今でも「Minecraft」を遊んでいます。
また「Minecraft Dungeons」にはローカル協力モードがあるのですが,それを子供たちと一緒に遊ぶのも好きですよ。
4Gamer:
お仕事で「Minecraft」に関わるようになったきっかけは?
ブレディン氏:
私のバックグラウンドは工学系のエンジニアですが,さまざまな業界・分野のエンジニアチームでリーダーシップを振るってきました。Kingの「キャンディークラッシュ」シリーズにも関わっていて,当時の知人の紹介でMojangに入り,現在に至るという流れです。
4Gamer:
2023年12月にMojang Studiosのスタジオヘッドに就任されていますが,当時の「Minecraft」開発チームはどのような状態でしたか。
ブレディン氏:
まさに今やっている15周年記念キャンペーンに向けて走っている状態で,私もどんどん情報をキャッチアップしなくてはいけませんでした。なんとか成し遂げることができ,現在の素晴らしい状況を皆さんと一緒に迎えられています。
私の重要な役割は,それぞれのチームが今後どこに向かっていくのか,明確な方向を示していくことです。いわゆる「開発における各チームのリーダーたちを率いる」イメージですね。
そしてプレイヤーの皆さんには,我々が作ったものにフォーカスしていただけるように働きかけることも大切な仕事です。
4Gamer:
それらに臨むにあたり,どのようなことを重視していますか。
ブレディン氏:
1つは,今後「Minecraft」というゲームをどのように開発し,発展させていくのか。次にどんなテーマのアップデートを行うかといったことですね。
もう1つは,このフランチャイズをどのように広げていくのか,今後どのような可能性があるのかを探ることです。今考えているものは,「Minecraft Dungeons」「Minecraft Legends」といったスピンオフ作品,ワーナー・ブラザース配給の映画(2025年4月公開予定),Netflixで配信予定のアニメシリーズなど,さまざまな可能性があります。
4Gamer:
なるほど。ところで,今回の取材のために久々に「Minecraft」Ver1.21をプレイしたのですが,銅のブロックが印象的でした。錆びて緑青の浮いた銅ブロックを叩くと,それが落ちて光沢を放つのが興味深かったです。
ブレディン氏:
まさに同様のフィードバックを世界中の皆さんからもいただいていて,銅ブロックは多くのプレイヤーに気に入ってもらえたと思います。
あなたのように,なにかのきっかけで久しぶりに「Minecraft」に戻ってきたときに継続性を感じられることはとても重要だと思っていて,それが「Minecraft」フランチャイズのコア(中核)を開発するうえでは重要な方針でもあります。
4Gamer:
ほかにも古代都市や考古学の発掘,ラクダなど,本当にありとあらゆるものが入っていて,いつか「Minecraft」は世界のすべてを再現できるのではないかと思っています。銅ブロックから現実世界の銅の性質を学べるように,「Minecraft」を遊んでいるだけでも我々の世界について自然と学べるような。
ブレディン氏:
そうですね。近い例としてはハチを挙げられます。畑にハチが飛んでいると,作物の成長を助けてくれるんですね。サステナビリティ(持続可能性)やダイバーシティ(多様性)についても学べるところがあるのではないでしょうか。
私たちは「Minecraft」を子どもたちだけでなく,老若男女すべての人のためのゲームにするために,あらゆるプレイスタイルを尊重したいと思っています。多くの人に「Minecraft」に少しでも触れていただくことで,地球がより素晴らしい場所になってほしいですね。
とはいえ,こうした“バニラな”(まっとうでけれん味のない)ゲームは好みではない人もいらっしゃるでしょう。そこはスピンオフ作品の「Minecraft Dungeons」「Minecraft Legends」,映像などのエンターテインメント作品でカバーしたいと考えています。
4Gamer:
「Minecraft」を拡張していくうえで,Mojangが大切にしていることは何でしょう。
ブレディン氏:
私たちは3つの点にフォーカスして,ゲームを作っていきたいと思っています。1つ目はクリエイティビティ(創造性),2つ目はセルフエクスプレッション(自己表現),3つ目はコラボレーション(共同作業)。これらを楽しめることが「Minecraft」らしさです。
ほかのプレイヤーとどのように協力してコラボレーションしていくのか。その中では「私はこういう風にしたい。こんな風に作ってみたい」などのやりとりがあるはずで,自己表現にもつながっていくと思います。
また,ブロックを1つずつ積み上げていくという構造がコラボレーションを生む要因にもなっていると思います。
4Gamer:
地球上のあらゆる人に届けたいということですが,多くの人に受け入れてもらうためには,舵取りが難しい部分もあると思います。
もちろん,それはあります。
やはり「Minecraft」が成功を収めている一番の理由は,サンドボックスであることだと思います。ワールド全体が遊び場になっていて,多彩な遊びのツールがそこかしこにある。プレイヤーの皆さんがそこで自分なりの冒険や物語を感じられ,それを許容できる「遊び場」になっていたから愛されてきたのだと思うんです。
その逆に「こういう風に遊ばないといけない」「これをしてはいけない」というものにしてしまうと,限られた人しか遊べないゲームになってしまいます。そうではなかったことが,「Minecraft」を成功させている理由ではないでしょうか。
4Gamer:
ところで,日本では「Minecraft Education」(教育版マインクラフト)を使った「Minecraftカップ」というコンテストが行われています。これは海外でも行われているのでしょうか。
ブレディン氏:
いいえ,そのイベントは日本ローカルのもので,プレイヤーのコミュニティが主導して作ったイベントなんです。まさに,これこそが「Minecraft」の素晴らしさであり,先ほどお伝えした3つの「Minecraft」らしさ,そして「Minecraft」の成功の理由を体現している好例だと思います。
「第5回Minecraftカップ 全国大会」最終審査会レポート。教育版マイクラで作られた「未来の街の姿」
2024年2月11日,「第5回Minecraftカップ全国大会」の最終審査会および表彰式が開催された。教育現場でも活用されている「教育版マインクラフト」で作られたワールドを国内外から募集し,その内容を競う催しだ。エントリー総数500作品の中から地区大会を通過したファイナリストの発表が行われた。
4Gamer:
「Minecraft」が今後目指すものを教えてください。
ブレディン氏:
コアゲームのビジョンとしては,今「Minecraft」を遊んでいる子どもたちに50年後も遊んでいてもらいたいと思っています。これまで話したことにも関係しますが,例えば10年ぶりに触れたとしても,20分も遊べば昔の感覚を取り戻すような,「ここは私の好きな,あの世界なんだ」と馴染んでもらえる「継続性」を大切にしたいです。
同時に,ゲームの深い部分では進化を感じてもらえるというのが理想です。
もう少し近い将来には,マーケットプレイスを進化させたいという考えがあります。ゲームとして攻略するのが好きなプレイヤーからは「冒険マップ」をもっと遊びたいという声がありますし,キャラクタースキン以外にもコスメティックアイテムや室内を飾る家具が欲しいというニーズがあります。そうした声にも応えていきたいと考えています。
4Gamer:
それでは最後に,日本の「Minecraft」プレイヤーにメッセージをお願いします。
ブレディン氏:
日本のみなさんの「Minecraft」へのエンゲージメント(関わり方や参加)は素晴らしく,そしてありがたいものです。ストリーミングの盛り上がり,コンテンツ制作にかける熱意,そして「Minecraftカップ」など,すべてはコミュニティの皆さんが主導してくれたおかげで生まれた成果です。
ストリーミングと言えば,このたびYouTubeにおける「Minecraft」関連動画の視聴回数は1兆5000億回を突破しました。引き続き,このゲームを楽しんでいただくと同時に,たくさんのフィードバックをいただけると幸いです。
そしてもう1つ,よりグローバルなメッセージとして,「Minecraft」は今後もっとフランチャイズを増やし,エンターテインメントのブランドとして進化を遂げたいと思っています。こちらにも期待してもらい,応援していただければ何よりです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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