インタビュー
笑顔が珍しい“のぶニャが様”が登場する「のぶニャがの野望」「千年勇者」のコラボイベント。両プロデューサーにコラボの経緯を聞いてみた
「のぶニャがの野望」公式サイト
「千年勇者〜時渡りのトモシビト〜」公式サイト
一見,接点がないように思えるこの二つのタイトルだが,どういった経緯で今回のコラボを行うことになったのだろうか。のぶニャがの野望プロデューサーである廣重演久氏と,千年勇者のプロデューサー横山祐樹氏のお二人に,コラボの経緯を聞いてみた。
のぶニャがの野望は企画当初,ガチガチの歴史物だった?
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。最初に,お二人が携わっているタイトルの現状から教えてください。
「のぶニャがの野望」は,2011年2月22日――つまり2011年の猫の日からスタートして3年以上が経過しました。当初はYahoo!モバゲーのみでサービスを行っていましたが,今は,モバイル/スマホでのモバゲーとGAMECITY,ニコニコアプリで展開しています。また,台湾/中国をはじめとするアジアでもサービス中です。
4Gamer:
廣重さんは,のぶニャがの野望の企画立ち上げ当初から関わっているんですか?
廣重氏:
立ち上げからの付き合いですね。コーエーテクモゲームスらしい新しいブラウザゲームを立ち上げようという話になり,そこでのぶニャがの野望がスタートしました。これは……今だから話せることなんですが,当初の企画はネコがモチーフではなかったんですよ。
4Gamer:
ということは,やはり硬派な歴史物だったとか。
廣重氏:
ええ,そのとおりです。企画としてはガチガチの戦国ゲームでした。ですが(コーエーテクモゲームス ゼネラル・プロデューサーの)シブサワ・コウに「これではライト層がついていけない」と企画書をつき返されてしまいまして。それから開発チームのメンバーで「じゃあ,いっそのことネコにしよう」と話して,ネコが主役となるのぶニャがの原型ができあがったんです。
4Gamer:
ネコ姿の信長を見て,シブサワ・コウさんの反応はどうでしたか。
廣重氏:
「その発想はなかった」と言われましたね。
一同:(笑)
廣重氏:
でも,ひこにゃんに代表されるゆるキャラブームの後押しもあってか,その企画が通って,コーエーテクモゲームスらしからぬプロジェクトが始まったんです。とはいえ,出来上がったゲーム自体は,それほどライト向けにはならなかったりするのですが(苦笑)。そこはゲーム屋の宿命とでもいいますか,どうしても凝ったゲームを作ってしまいますね。
4Gamer:
同時期にスクウェア・エニックスでは「戦国IXA」も始まっていて,戦国好きの中では,がっつりプレイするならIXA,まったりプレイするならのぶニャがの野望といった感じで住み分けられていたように記憶しています。千年勇者のほうはいかがでしょうか。
「千年勇者」は2013年7月のスタートですから,のぶニャがの野望からみると,まだまだ歴史は浅いですね。スクウェア・エニックスのブラウザゲームは,先ほどの話にも出たIXAから「MONSTER×DRAGON」「クリスタル◆コンクエスト」「ブレイブリーデフォルト プレイングブレージュ」「スターギャラクシー」と,がっつりプレイするタイプのタイトルが続いていました。そうした流れの中で,気軽にプレイしたいユーザーを意識したタイトルが必要だろうとの判断から,千年勇者の開発が始まりました。
4Gamer:
のぶニャがの野望と同じように,企画段階からライトユーザー向けのタイトルとして開発されていたんですね。
横山氏:
はい。キャッチコピーも「いちにち5分のファンタジー」と,手軽に誰でもプレイできるというコンセプトを強調しています。「一日5分だけでは(遊ぶのは)無理じゃないか」とプレイヤーさんにご指摘いただくこともありますが(苦笑)。のぶニャがの野望のキャッチコピーは何でしたっけ?
廣重氏:
「ゆる〜く楽しむ,ねこ武将戦国絵巻」ですね。サービスが長くなるとアップデートでシステムが増えていきますので,今ではそこまでゆる〜くはないかもしれません(笑)。
4Gamer:
かといって,新しい何かを出さないわけにもいかないでしょうし……。千年勇者もアップデートのたびに,どんどん遊びやすくなっている感じですね。最近では,ワンクリックだけでオートでダンジョンを進むようになっていました。
横山氏:
手軽に誰でもできるがコンセプトのタイトルなので,プレイアビリティを高めて遊びやすくすることは常に意識しています。
接点がなさそうな2作品。コラボの経緯とは?
4Gamer:
では今回,のぶニャがの野望と千年勇者がどのようなコラボを行うのか教えてください。
横山氏:
千年勇者では,コラボ期間中にプレイすると,のぶニャがの野望のゲーム内で使える“ねこ武将”がもらえます。
4Gamer:
それは,どんなねこ武将ですか。
横山氏:
うちの伊藤龍馬(※キャラクター/モンスターデザイン)が描いた「のぶニャが様」です。コラボイベントの目標を達成された方に,もれなくプレゼントしますので,頑張ってください。
逆に,コラボ期間中にのぶニャがの野望をプレイされた方には,千年勇者のゲーム内で使える装備品が報酬でもらえます。こちらも伊藤龍馬が描いたのぶニャが様の身に着けているものですね。
4Gamer:
廣重さんは,コラボのイラストを見てどのような印象を持たれましたか。
率直にかわいいと思いました。のぶニャが様はゲーム内に何種類か登場しているんですが,そのどれも笑わないんですよ。織田キャッぽうし(織田吉法師)という信長の若い頃のイラストは微かに笑っているのですが,それを除くと笑っているのは伊藤さんの描くのぶニャが様が初めてですね。
横山氏:
え,そうだったんですか。こちら,大丈夫ですか(笑)。
廣重氏:
ええ,大丈夫です。ちゃんとOKが出ていますので(笑)。のぶニャがに限らず,コーエーテクモゲームス作品の信長は笑っていることが少ないんです。コラボだからこそ笑わせられたとも言えますね。
横山氏:
伊藤龍馬は,のぶニャが様のテイストをどこまで変えていいのか,どこを揃えるべきなのかというところを気にしていたんですよ。そこで廣重さんに確認したところ,好きにやっていいですと返答をいただいて。
廣重氏:
いやあ,さすがにミケ猫になるとか,猫の種類が変わってしまうと問題ですけど(笑)。基本的に,伊藤龍馬さんの感性にお任せしました。
笑顔の信長……もとい,のぶニャがは必見ですね。千年勇者に登場するのぶニャがの装備品は,どのジョブで装備できるのでしょうか。
横山氏:
やはり侍ですね。侍というジョブがあって良かったです(笑)。
4Gamer:
報酬として手に入るというというお話でしたが,得るための手順は簡単なのでしょうか。
廣重氏:
せっかくの限定アイテムですし,興味を持った方にぜひ使っていただきたいですから,それほど難しくはしていません。これを機に新規でプレイしていただけると嬉しいですね。
4Gamer:
分かりました。ところで,今回のコラボが実現した経緯を教えてもらってもいいでしょうか。
横山氏:
のぶニャがの野望と千年勇者はユーザー層が近いということもあり,最初は私から,先輩である廣重さんに声を掛けさせてもらいました。
4Gamer:
先輩ですか。
横山氏:
ええ,廣重さんは当時所属していた部署の先輩になります。
廣重氏:
職場が(コーエーテクモゲームスに)変わってからも,ゲームショウなどで会うたびに話をしてるんですよ。
横山氏:
当時の部署は,代ごとの先輩と後輩のつながりがかなり強くて,廣重さんにはお世話になりました。入社してすぐ「クロスゲート」のテストプレイをした記憶があります(笑)。
4Gamer:
おお,また懐かしいタイトルが……。せっかくなので,二人がこれまで携わってきたタイトルも教えてください。
廣重氏:
エニックスに入社して最初に携わったのは「ダンスサミット2001」ですね。「バスト ア ムーブ」シリーズのPS2版なんですが,こちらにアシスタントとして関わって,その後は「かちぱか」というPC版の競馬予想ソフトをやってました。これが意外と人気で「2」まで出ました。
横山氏:
「こんちぱか!」ですよね(笑)。
廣重氏:
それです(笑)。その後は,中国のほうがメジャーになりましたがオンラインRPGの「クロスゲート」と……世に出なかったMMORPGとか,ゴルフゲームとかですね。
そして,アーケードのカードゲーム「悠久の車輪 〜Eternal Wheel〜」が出たあたりで,コーエーに入りました。コーエーでは「三國志Online」の開発ディレクターから,のぶニャがの野望,「100万人の大航海時代」「AKB48の野望」といった作品に携わっています。
4Gamer:
オンラインゲームに深く関わっているんですね。廣重さん自身もオンラインゲームは遊んでいたんですか?
廣重氏:
「ファンタシースターオンライン」にハマった時期がありまして……テレホーダイもない時代で,電話代が万単位で請求されることもありました。
一同:(笑)
4Gamer:
うーん,オンラインゲームのプロデューサーさんからは,同じようなエピソードをよく聞きますね(笑)。その当時に面白さを知った人が,いまプロデューサーとして活躍されているのかも。
廣重氏:
それはあるかもしれませんね。あの当時,日本ではオンラインゲームはそれほどメジャーではありませんでしたが,クロスゲートに続いて「ファイナルファンタジーXI」や「信長の野望 Online」がスタートした頃に,ネットワークの世界に常駐するべきだという考えに至りました。
4Gamer:
なるほど。横山さんはいかがですか。
横山氏:
最初に柴さん(スクウェア・エニックス 柴 貴正氏)の下について,「ドラッグオンドラグーン2」やオンラインゲームのアシスタントをしました。その後,ニンテンドーDSの「チョコボと魔法の絵本」からプロデューサーをやらせてもらって,「ニーア ゲシュタルト」「ニーア レプリカント」などパッケージのゲームを中心に関わっています。
4Gamer:
廣重さんはファンタシースターオンラインにハマったということでしたが,横山さんにもそういったゲームはありますか。
横山氏:
オンラインゲームではありませんが,完全にドラクエ世代だったので,子供のころから「ドラゴンクエスト」シリーズが大好きでしたね。それがゲーム会社に入るキッカケにもなりました。
いろいろな方向性のコラボをしてきた「のぶニャがの野望」
「千年勇者」は居酒屋チェーン店とコラボする可能性も?
4Gamer:
プロデューサーという立場から見て,お互いのタイトルの印象はどうでしょうか。
千年勇者はとにかく「良く動く」「見た目が楽しい」と感じましたね。のぶニャがの野望で,Flashをどう動かすかと苦心していたことを思い出してしまいました。
横山氏:
ブラウザゲームとしては後発のタイトルになるので,ビジュアル面でインパクトのあるものにしなければと考えたんですよ。具体的には「Live2D」という技術を使ったのですが,メインビジュアルを担当する伊藤龍馬の絵柄ともうまくマッチして,独特の動きに仕上がったと思います。
4Gamer:
確かに,温かみのある絵柄がスムーズに動く様子は,βテスト時から話題になりました。では,横山さんからみて,のぶニャがの野望の印象はいかがですか。
横山氏:
ゲーム外での取り組みが凄いですよね。舞台だとか,大木凡人さんを起用した主題歌だとか。その手腕は,さすが大先輩だと感じます(笑)。
4Gamer:
大木凡人さんが歌う主題歌「のぶニャがの野望 天下布猫」は,ヘビーメタル調の曲でしたよね。かなりのインパクトがありましたが,評判はどうだったんですか?
廣重氏:
そこそこといったところです(笑)。ただ,カップリングの「まシャムね体操〜猫視眈々〜」は,かなり反響がありました。実際に振り付けもありまして,イベント等でみんなで踊ると盛り上がるんですよ。YouTubeにアップしていますので,興味がある方はぜひ見てください。あと,3曲目に「うつのミャー音頭」というのが入っているのですが,こちらは今年の夏にブレイクする予定です(笑)。
4Gamer:
ああ,たしかCDが発売されたのは冬でしたから。盆踊りシーズンのイベントになれば,まシャムね(伊達政宗)に代わってうつのミャー(宇都宮国綱)が主役になるかもしれませんね(笑)。
それにしても,のぶニャがの野望は,こうしたゲーム外のイベントがかなり多いですけど,ファンの方々はこれをどう受け止めているのでしょう。
廣重氏:
のぶニャが様は,全国各地の戦国イベント,最近だと山形市の観光イベント「よしあきフェスタ」や岐阜の「道三まつり」などに参加しているのですが,のぶニャが様との触れ合いを楽しみに,ファンの方が祭りの開催地まで足を運んでくれていますよ。熱いファン魂を持った方が多い印象ですね。
横山氏:
地方イベントは大変ですね。のぶニャが様は廣重さんより忙しいんじゃないですか?
廣重氏:
かもしれません(笑)。
4Gamer:
いまはのぶニャが様,伊達まシャムね,うつのミャー国綱の3体(の着ぐるみ)が頑張ってますが,今後増えることはありそうですか?
廣重氏:
人気投票の上位をグッズ化するといったことは考えてはいますが,そちらは今のところ増やす予定はありません。
4Gamer:
それは,ちょっと残念です(笑)。
横山氏:
ちなみに,ゲーム内に犬が入る予定ってないんですか?
廣重氏:
犬が入る予定もありませんね。プレイヤーさんからは,いつか“ワン国志”を作ってくれと言われていますが(笑)。
一同:(笑)
4Gamer:
のぶニャがの野望と言えば,ほかにもいろいろなコラボをやってきましたよね。その中で個人的に印象に残っているのは,「髪切デスマッチ」です(関連記事)。
廣重氏:
あー,2011年にプロレスイベント「SMASH.18」とのコラボで,Twitter担当のニャラキヒロシゲが丸刈りにされたという“事件”ですね(笑)。この後も,プロレス団体WNCを率いるTAJIRI選手とのぶニャが様が直接対決をしたんですが,結果はのぶニャが様のリングアウト負けでした。
ほかにもTV番組「戦国鍋」や劇場版「猫侍」,先ほどちょっと話した地方イベントも積極的にコラボしてますね。あとは,タンバリンプロデューサーズさん製作の舞台もやりましたし,本家「信長の野望」シリーズや「真・三國無双」シリーズといった社内コラボも含めると,かなりの数になりますね。
横山氏:
気になっていたんですが,プロレスネタは廣重さんの趣味なんですか?
廣重氏:
髪切デスマッチは,信長の野望 Onlineの「8周年記念ワールド対抗東西大合戦」とのぶニャがの野望がコラボするだけ……のはずだったのですが,ちょうど良いタイミングでプロレス団体からコラボのオファーが入りまして,相談したら後楽園ホールで一緒にやりましょうという話になりました(笑)。
すごいタイミングですね。プロレスイベントではマスクを被られていましたが,あれはメーカーに作ってもらった特注品ですか?
廣重氏:
いえ,手作りです。TAJIRI選手のところで,プロレスラーがマスク作りを教えるワークショップのようなものがあって,そこに一週間通いました。
横山氏:
確かによく見ると,ミシン目に手作り感がありますね(笑)。
4Gamer:
偶然が重なって実現したコラボだったんですね。
廣重氏:
私自身プロレスは嫌いじゃないのですが,のぶニャがの野望の世界観を考えると,そこまで積極的にコラボするつもりはなかったんです。
ちなみに大木凡人さんの件も,彦根で行われたゆるキャラ祭りの会場で偶然お会いしたのがきっかけです。お酒を飲んでカラオケをご一緒したら,「大木さん,歌うまいですね」という話になり,のぶニャがの野望の主題歌を歌ってくれませんか,と話が膨らんでいったんです。
4Gamer:
なんというか,自由ですよね(笑)。
廣重氏:
ええ,会社も新しいIPを拡げてみろと言ってくれているので,比較的自由にやらせてもらってます(笑)。こんな感じでいろいろやってきましたが,個人的に印象深いのは,舞台とのコラボかもしれません。
4Gamer:
と言いますと?
廣重氏:
舞台を見て,そこからゲームをプレイしてくださった方がいらっしゃいまして,集客という観点で効果がありました。のぶニャがの野望というIPが別の広がり方をしたと実感できたんですよ。
4Gamer:
なるほど。ゲームを知らない人にアピールする良い機会になったと。本当にいろいろな方向性のコラボをしていますよね。
廣重氏:
ええ。どうすれば外にアピールできるのか,その基準になるようなものもありません。ですから,思いついたら何でもやるというスタンスです。
4Gamer:
一方,千年勇者では,まだそれほどコラボはしていませんよね。
横山氏:
そうですね。のぶニャがの野望と比較すると,まだまだ少ないです。立ち上げ当初に中川翔子さんとのコラボで,武器と防具のデザインを描いてもらい,その後,ハンゲーム限定ですがFPSの「スペシャルフォース2」と異色のコラボも行いました。あとは,社内コラボですがプレイングブレージュとのコラボを行いましたが,伊藤龍馬のイラストを使ったこともあって評判が良かったですね。
4Gamer:
リアルイベントを行う予定はないんですか?
いろいろと考えてはいるのですが,具体的には決まっていないです。のぶニャが様の歴史や猫のように,リアルと関連しやすいものがまだ千年勇者にはないので。例えばですが,各チームのリーダーがゲームを盛り上げてくれているので,○○の宴(某居酒屋チェーン店)にリーダーをお招きして接待してもいいのではとか,開発陣と話していたりします(笑)。
廣重氏:
それは,ありじゃないですか(笑)。
4Gamer:
あー,○年つながりですか(笑)。今後のコラボ発表も楽しみにしていますね。では,最後に4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。
廣重氏:
スクウェア・エニックスさんとコラボできるということで,私個人としても感慨深いものがあります。伊藤龍馬さんにイラストを描いていただいたのぶニャが様で,新しい一面がお見せできると思います。こうした機会を増やして,これからものぶニャがワールドを広げていきます。ぜひ,のぶニャがを楽しんでください。
横山氏:
旧エニックスからの先輩とコラボができることを嬉しく思います。先輩と後輩という関係からのスタートではありますが,大切にしているポイントはタイトル間で近いものがあると感じていますので,このコラボを機に,また何かご一緒させていただいて,お互いのコンテンツを盛り上げられればと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「のぶニャがの野望」公式サイト
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