レビュー
「映画のような」ゲームとは,まさにこのシリーズのためにある言葉
アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-
第1作目「エル・ドラドの秘宝」は,発売後にプレイヤーからの高い評価を受け,数々のアワードを受賞。そして,続く2作目「黄金刀と消えた船団」では,ゲーム界最高の栄誉とも言える「AIAS 2010 Game of the Year」を受賞。
そして,世界中のファンが期待するなか,シリーズ3作目となる「砂漠に眠るアトランティス」がついに発売されたのだ。日本においても,映画「インディ・ジョーンズ 」シリーズでお馴染みのハリソン・フォード氏が出演した,非常にインパクトのあるCMが話題となり,大きな注目を集めたことは記憶に新しい(関連記事)。2011年12月現在,シリーズ全世界累計出荷数は1300万本を突破している。
すでに発売から1か月が経っているため購入済という人も多いと思うが,本稿では改めて本作の魅力について語っていきたい。まだ購入していない人はもちろんだが,すでに購入済みという読者にもぜひ目を通してほしい。
「アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-」公式サイト
映画へのオマージュを取り入れつつ,アンチャーテッド流の味付けでプレイヤーをグイグイ引っ張る見事な演出
――ネイサン・ドレイク(ネイト)と相棒のヴィクター・サリバン(サリー)は,幻の古代都市「砂漠のアトランティス」を求め,再び世界中を飛び回る冒険に旅立つ。そこに現れた謎の秘密組織と冷酷な指導者マーロウに行く手を阻まれ,ネイト達はまたまた一大組織と戦うことに。そして,組織に隠された秘密を暴いたとき,ネイトはこれまでにない危機に直面し,彼自身の持つすべての力を試されることになる――
とある目的のために,ネイトが世界中を冒険をするというストーリー展開は,前作,前々作と変わらず,お馴染みの「アンチャーテッド」といった印象の本作。しかし今回は,シリーズが3作目に突入したこともあってか,人物がこれまで以上に深く描かれているのが特徴だ。
中でもネイトとサリーの出会いが描かれているシーンなどは,ファンにとっては必見。さらに,いつもおちゃらけている2人だが,互いの絆をしっかりと確認できるエピソードも盛り込まれており,シリーズ経験者であれば思わずグッときてしまうことは間違いないだろう。
若き日のネイトとサリー。2人はどのように出会い,今に至るのだろうか |
エレナ・フィッシャー(左)とネイト(中),そしてサリーの3人。エレナとネイトの関係はどうなった? |
またシリーズの特徴でもある,映画的な迫力ある演出ももちろん健在だ。「一難去ってまた一難」という言葉がこれほど似合うゲームも珍しいのではと思うほど,展開が目まぐるしく変わっていく。プレイヤーを一瞬たりとも飽きさせないこの演出は,見事と言うほかないだろう。
よくゲームを「映画のような」と表現することがあるが,それはまさに,本作のためにあるような言葉ではないだろうか。アクション/アドベンチャー映画でよく見られる街中での逃走劇や,その過程で起こる人や車との衝突,高い建物からのダイブなど,挙げたらキリがないくらい,プレイヤーをハラハラさせる展開が連続する。ネイトではないが,思わず「やべやべやべっ!」と叫んでしまいそうだ。個人的には,逃走シーンで民家を走り抜けるとき,住人の「何事っ!?」といった感じの反応がたまらなく面白かった。
また,苦労してやっと脱出したら銃を持った兵隊に囲まれていたとか,冒険アドベンチャー映画にはつきもの(?)の虫の大群に襲われるといったシーンも用意されている。このように,本作にはアクション/アドベンチャー映画が好きな人であれば,一度は見たことのあるお約束シーンが数多く盛り込まれている。同シリーズが様々なエンターテイメントの影響を受けた作品であることは,容易に想像できるだろう。
本作はその“影響された部分”を,オマージュとしてアンチャーテッド流にアレンジしてプレイヤーを楽しませている点が素晴らしい。また,こうした演出を行う作品では,1本の長いムービーシーンを用意することも多いが,本作では演出の合間にボタン操作が要求されるなど,プレイヤーをゲームの没入感から引き戻さないための配慮も忘れていない。
さらに,本作で忘れてはならないのが,ストーリーを彩る声優陣だ。主人公のネイトを東地宏樹さん,サリーを千葉 繁さん,そしてヒロインのエレナ・フィッシャーを永島由子さんが演じているのだが,会話の掛け合いやノリは,まさに映画の日本語吹き替え版そのもの。機会があれば,英語で話すネイト達の会話も聞いてみてほしい。会話の雰囲気が,日本語版と英語版で大きく異なっていることが分かるだろう。道中のネイトのボヤキや,サリーの何気ない冗談など,“日本語吹き替え”ならではの劇中の空気感を楽しんでいるプレイヤーも多いはずだ。
ゲームデザインはシンプルながら,シューターとしてみると中々骨太?
シリーズも3作目に突入し,ゲームとしてはすでに完成の域に達している感の強い本作。ゲームデザインは,前作,前々作と変わらずのTPSスタイル(3人称視点シューティング)を踏襲しており,シリーズ経験者であれば問題なくプレイできる。また本作はシューターとしては比較的シンプルで,操作感もよく,プレイしていてかなり心地良い。そのため,シリーズ未経験者であっても決してハードルは高くないはずだ。
そして,「アンチャーテッド」シリーズではお馴染みのクライミング要素ももちろん健在だ。「よくそんなところ掴めるな!」と,思わずツッコミを入れたくなるような出っ張りを利用して,スイスイと駆け登っていくネイトの身体能力は,相変わらず素晴らしいの一言。掴んだ部分が脆くて崩れ落ちそうになるお決まりの演出もあり,安心していると不意打ち気味にドキッとさせられる。
またステージのいたるところで発生する謎解きは,オブジェクトを動かすだけで簡単に解けるものから,じっくり考えないと解けないものまで多彩だ。とはいっても,お馴染みのネイトの手帳にヒントが書かれているし,仲間達からの助言も得られる。その上,仕掛けによっては時間が経過することで回答を教えてもらえるものもあるので,謎解きに自信がないと言う人も心配をすることはないだろう。
ちなみにネイトの手帳は,進行に応じて内容が書き加えられていくのだが,現在の攻略とは関係のないページを見てみると,面白い落書きが発見できることも。こんなお遊び的な演出も,ネイトの人間臭さが感じられるところだ。
さて先述のとおり,本作はシューターとしてのデザインはシンプルであるが,難度に関しては結構歯ごたえがある印象だ。筆者は決してTPS初心者ではないのだが,中級という難度で始めたストーリーモードで100回以上は死んでいる。
しかし本作はこれまでのシリーズと同様に,プレイ開始時のロード以外は,ほぼシームレスでゲームが進んでいくのが特徴だ。ゲームオーバーになったときもその部分は変わらず,一切のロード時間を感じることなく,即座にチェックポイントからリトライできるので,高難度でなければ,先に進めなくてフラストレーションが溜まるということは少ないはずだ。
とは言っても,後半になるとかなり耐久力が高く,倒しづらい敵が頻繁に出てくるようになるし,ゲーム全体を通して即死ポイントも多い。さらにカバーポイントに隠れて安心していても,手榴弾が飛んできて……と,簡単にクリアできるものではない。ちなみに今作では,手榴弾を相手に投げ返すことも可能になったが,タイミングに慣れていないと失敗も多いだろう。
ただ,死んだ回数自体は多いものの,それが理不尽に難しいと感じることはない(ただし最高難度の“プロ”については,この限りではない)。リトライが早いこともあり,倒されてしまったら「じゃあ,どうやって切り抜けるのか」を,プレイヤー自身が考えながらプレイできるからだ。なお本作では,ゲーム中にいつでも難度を変えられるので,どうしても行き詰まる人は変更してみるのも良いだろう。
また本作は,シューター的な要素の強い作品だが,敵の不意をついて一撃で仕留めるステルスアクション的な一面もある。物陰に隠れながら敵に近づくだけではなく,カバーポイントから不意打ちしたり,敵の真上から飛び降りてそのまま仕留めたりと,ステルスアクションのバリエーションは豊富だ。
正面から突入するだけではなく,ステルスメインでどこまで見つからずに,敵を倒していけるかに挑戦してみるのも面白いだろう。なお,敵に発見された状態のときは,その敵がプレイヤーを見失った状態に戻るまでステルスアクションは使えなくなる。
そうなれば,銃撃戦となるわけだが,何も銃を撃つだけが戦いではない。間合いを詰めて殴り合うことも可能だ。ボタン連打で連続攻撃ができたり,タイミング良くボタンを押すことでカウンターを食らわしたりと,その攻防はなかなかに熱い。また,戦う場所によって発生するフィニッシュコンボのようなものも,爽快感があって気持ち良い。
ただ個人的には,殴った時の効果音が若干地味かなと感じることも(逆に,リアルではあるのだが)。このあたりは,好みの問題といったところか。
シングルプレイを堪能したら,充実のマルチプレイにも挑戦だ
これまではシングルプレイのみ紹介してきたが,本作は協力/対戦といったマルチプレイにも力を入れている。ゲームタイプも「チームデスマッチ」「バトルロワイヤル」「3チームデスマッチ」「サバイバル」を始め,数多くのモードでプレイできる。
ネットワークでのプレイは快適で,筆者がプレイしている環境では大きなラグもなく楽しむことができた。もっとも筆者の場合,腕が未熟なためか,対戦タイプのモードだとあっという間にやられてしまい,いつも悔しい思いをしていた。そのため現在は協力プレイで腕を磨いている最中だ。そうして腕を上げた筆者を対戦モードで見かけたら――どうか,お手柔らかにお願いします……。
さて,ここまで「砂漠に眠るアトランティス」の特徴と魅力を紹介してきたが,いかがだっただろうか。先にも述べたように,作品としては,非の打ち所がないほどの完成度を誇る本作。若干エイミングがし辛いように感じることや,武器の種類をもっと増やしてほしいなど,要望がないわけではないが,それによって作品の評価が下がることまったくない。
トロフィーに連動した,100にもおよぶ宝物の探索などのやり込み要素に挑戦すれば,シングルプレイだけでもたっぷりと遊べるボリューム&内容の濃さがあり,マルチプレイも含めれば,年末年始はこれ一本でも過ごせてしまうだろう。
さらに,来る12月17日には,PS Vita向けのシリーズ最新作「アンチャーテッド -地図なき冒険の始まり-」が発売されるということもあり,まだまだシリーズファンの盛り上がりが止むことはなさそうだ。筆者も「アンチャーテッド」シリーズの一ファンとして,今後のネイトの活躍に期待したい。
「アンチャーテッド -地図なき冒険の始まり-」公式サイト
「アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-」公式サイト
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(C)2011 Sony Computer Entertainment America LLC. Created and developed by Naughty Dog, Inc.
- アンチャーテッド - 砂漠に眠るアトランティス - (初回封入特典:プロダクトコード同梱)
- ビデオゲーム
- 発売日:2011/11/02
- 価格:¥3,999円(Amazon) / 4119円(Yahoo)