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【PR】「4Gamer.net×アプリ&レビューPresents『HTML5ゲームコンテスト for スマートフォン』」開催中。提出作品を開発中の学生チームの事例を紹介
先日もお伝えしたとおり,現在,NTTドコモが運営するAndroidアプリ紹介サイト「アプリ&レビュー」と,4Gamerのコラボレーション企画として「HTML5ゲームコンテスト for スマートフォン」(関連記事)を実施中だ。
この企画は,今後,スマートフォン市場を切り拓いていくであろう学生達(個人あるいはチーム)を対象としたコンテストで,募集している作品はHTML5で作成された,容量20MB以内のオリジナルスマートフォンゲームである。ゲームのテーマやジャンルに制限はなく,また,知的所有権が応募者にあれば,今回のコンテスト期間前に企画開発したゲームも審査対象となる。
現在,本コンテストのフェイズは書類選考による一次審査を終え,二次審査に入っている。二次審査は,一次審査で提出した企画をもとに開発したゲームが選考対象となり,提出の締め切りは2012年8月下旬だ。
今回,4Gamerでは京都精華大学にお邪魔して,コンテストの二次審査に提出するゲームを鋭意開発中の学生チームと,講師として彼女達を指導するRoute24の西 健一氏に話を聞いてきた。
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分業制の採用によって
大規模ゲーム開発の現場をシミュレート
その変化の大きな理由は,同講義が国内大手のソーシャルゲーム企業やコンシューマゲームメーカー数社に勤務する人材を輩出していることにあり,今回取材対象となった2012年度の受講生も,ほぼ全員が卒業後にゲーム関連企業への就職を希望しているそうだ。
現在,同講義では,受講生の女子学生11名が2チームに分かれて,それぞれコンテストに向けたゲームを開発している。なお,このコンテストは基本的に学校単位ではなく,個人や有志のチーム単位での参加が原則。そのためコンテストに参加してみようという学生達の希望を,学校側がサポートするという形だ。
このタイトルの目下の課題は,繰り返し遊ばせるための動機付けだ。当初は規定数の星をキャッチすると次のステージに進むというスタイルを考えていたそうだが,そのシステムを締め切りまでに実現するのは困難なことが判明したのだ。
しかし,ただキャッチした星の数をカウントしたり,背景が綺麗になっていったりするだけでは,プレイを続けるモチベーションとしては弱い。そのためチームでは,ランキングの導入などさまざまな代替案を検討しているが,まだ決定案は見つかっていないようで,取材当日も,西氏による指導のもと,ああでもない,こうでもないと学生達は知恵を絞っていた。
もう一方のチームが手がける「MIRROLE」は,画面中央に配置された鏡に向かって上下対称に落ちてくる線形を組み合わせ,図形を作ってポイントを稼いでいくゲームだ。シンプルかつスタイリッシュな内容を目指したとのことで,近未来的なグラフィックスなど,こちらもビジュアル面にこだわっている印象だ。
その開発の過程では,実際にリアルの鏡と線が書かれたボードを組み合わせ,どんな図形ができるのかを確認したりといった,アナログな手法も駆使してきたそうである。
こちらのタイトルは内容がシンプルなだけに,ゲームデザイン上の大きな問題はとくに生じていないようだが,プログラマーがもともとFlashでの開発に特化していたとのことで,HTML5の仕様を理解するのに時間がかかったという。
また余裕があれば,お題として提示された図形を作っていくステージクリアタイプのモードを追加することも考えているそうだ。
ゲームの企画はチーム全員で持ち寄り,その中から最も優れたものを提示したメンバーがプランナーとなる。プランナーという言葉からは,思い付きをほかの担当者に伝えて実現させる役割というイメージを持つ人がいるかも知れないが,実際にはゲームに関するあらゆる知識に精通している必要がある。今回のケースでいえばプランナーは,HTML5上で何ができて何ができないのかを把握し,各担当に発注しなければならない。
そのほかのメンバーにしても,自分のアイデアではない他人の企画を実現するべく注力することとなる。そして,それぞれが担当する役割に立って,プランナーに意見しつつ,最善の努力を重ねるのだ。
すなわち受講生達は,今回の取り組みを通じて,ゲームメーカーに勤務したり,あるいはいちクリエイターとしてゲーム開発チームに参加したりする場合に,直面するであろう課題のいくつかを経験することになる。
無論,社内で予算を確保したり,投資家から出資を募ったり,あるいは複雑な人間関係を調整したりといった踏み込んだ領域まで体験することはないものの,受講生達は,あまり詳しく報じられることのないゲーム開発現場の実態を,実際に自分達の手を動かしながら学んでいくのだ。
西氏いわく,そこまで意識している受講生は少ないとのことだが,今回の経験はゲーム業界を志望する彼女達にとって大きなアドバンテージになるのではないだろうか。
スマートフォンゲーム開発のハードルを下げるHTML5
ゲーム開発の入門にも最適
上記の講義取材後,講師を務める西氏に,京都精華大学のゲームに対する取り組みや,学生の反応,今回のHTML5ゲームコンテストへの参加意義,そしてスマートフォン用ゲームの将来などについて聞いてみたので,興味のある人は続けて読み進めてほしい。
4Gamer:
すごく基本的な質問ですが,京都精華大学は,もともと美術系の大学ですよね。なぜゲーム系専門ではない学校で,毎年,ゲーム開発に関する講義を行っているのでしょう?
西 健一氏(以下,西氏):
これは世の中の流れと関係があります。デザイン系のクリエイティブというと,代表的なものは紙に絵を描いたり,造形物を作ったりすることですが,一時期からそれにWebデザインが加わりました。
そこで京都精華大学のデザイン学科にデジタルクリエイションコースが創設されたわけですが,今では動的なWebも求められるようになってきて,ゲーム的なセンスも備えていたほうが社会に出てから有利になってきました。当然,学生達のゲーム業界への関心も高まります。そんな世の中のニーズと学生のニーズが一致した結果,現在のような形になったんじゃないでしょうか。
4Gamer:
今日,取材してみて意外だったのが,受講生のほぼ全員がゲーム業界志望だったことです。皆,しっかり目的を持っているんだなと。
僕は常々,「これからは少子化がさらに進むから,その中でゲーム業界に就職することが何を意味するのか自覚したまえ」と言っていますけどね(笑)。
とはいえ,学生達のゲームに対する意識も,僕が講義を担当してきた4年間でずいぶん変りましたよ。最初はゲームを作りたいと言っても,コンシューマゲームをやりたいという学生ばかりだったんですが,昨年度くらいからは,ソーシャルゲームをやってみたいという学生も増えていて。
4Gamer:
確かに,西さんが教鞭を振るうようになった2009年から現在に至るまで,ゲーム業界は劇的に変化してきました。
西氏:
業界もそうですが,僕自身も変わりました。当初は僕もコンシューマゲームを手がけていましたが,それがiOS向けのゲームに変わり,今はAndroid向けのソーシャルゲームばかり作っていますから。もちろんそこには僕自身の意思も存在しますが,世の中の流れに合わせて変化している側面も強いです。
4Gamer:
なるほど。それでは受講生のゲームやゲーム業界に対する理解の変化についてもう少し教えてください。
西氏:
ゲーム業界志望という目的が明確になってきたので,講義をしていても勘どころがよくなっています。その代わり,実現できるかどうか分からないような斬新な発想は少なくなっていて,わりと型にはまった考え方になっている印象はあります。まあ,良くも悪くもですけどね。
4Gamer:
西さんとしては,斬新さと型どおりのどちらが望ましいと思いますか?
西氏:
うーん,若い頃は型にはまらず,ぶっ飛んだ発想でもいいかな,とは思いますね。まあ,1年かけて作るというのであれば,もっと爆裂したアイデアが出たかもしれません。今回のコンテストでは開発期間があまり取れないので,企画を深く練り込むことができず,シンプルな方向に行かざるを得ないという事情もありました。
ただ,今回のHTML5ゲームコンテストのようにきちんとした目標と締め切りがないと,学生ってダレてしまうものなんですよね(笑)。
4Gamer:
やっぱりコンテストに応募するとなると,受講生のモチベーションは変わりますか。
西氏:
全然違います。まず出席率が高くて,ほぼ欠席がありません。コンテストがなかったら,雨が降ったとか風が強いとかいう理由で,皆休みますからね。
4Gamer:
ああ,自分の学生時代を思い出しても心当たりがあります(笑)。
ところで西さんの講義では,毎年のように異なる開発環境を教材として取り上げていますよね?
西氏:
2009年度はiOS向けということでObjective Cを使いました。しかしプログラマー志望の学生はともかく,Flashくらいしか扱っていない学生にはかなり難しかったようです。そこで僕自身やり残し感が出てしまったので,2010年度はFlashベースで作ったものをiOSで動かすという形で,そして2011年度は京都コンピュータ学院と共同でPlayStation Vita用ゲームの開発に取り組みました。
4Gamer:
それらを経て,2012年度はHTML5を取り上げていますけれども,実際,開発上の感触はいかがですか?
僕はどっぷりプログラムに取り組んだ経験がなく,HTMLやFlashを少しかじったり,コンシューマゲームの独自スクリプトを書いたりするくらいなのですが,それでもHTML5はすごくフレンドリーだと思います。
制約が多く,C++ほど手を入れられるわけではないのですが,それでもHTML5のフレンドリーさがもたらすメリットは大きいです。またHTMLだとWeb寄りに特化していますけれども,HTML5ならゲームにも十分対応できますし。これだけハードルが下がると,今後はHTML5のゲームもどんどん増えるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
ハードルが下がる──つまりアマチュアや,それこそ学生がゲームを作るのにもピッタリという感じでしょうか。
西氏:
ええ。ゲーム開発の入門には本当にオススメです。とくにPCでもスマートフォンでも動くゲームを作りたい場合にはいいですね。作ったゲームを,外出先でスマートフォンを使って友達に試してもらうなんてことも簡単にできますから。
また,よく聞く話ですが,スマートフォンでゲームを動かす場合,同じような処理であってもFlashよりHTML5で作ったほうが軽くなるようです。
4Gamer:
なるほど,HTML5とスマートフォンはさまざまな点で相性がいいと。
それでは,今後,スマートフォン用ゲームはどうなっていくとお考えですか?
西氏:
間違いなく,さらなるリッチコンテンツ化が進むでしょうね。しかし,それがコンシューマゲームのようになるかというと,そうではないでしょう。
4Gamer:
それはなぜでしょう?
西氏:
コンシューマゲームは,見た目がリッチになっていくのと同時に,操作も複雑になっていきましたよね。でもスマートフォンの場合,タッチパネルを使ったユーザーインタフェースが基本になっていって,何個ものボタンを同時に使うようなことにはならないと思うんですよ。
4Gamer:
Xperia Playのような端末もありますが,多くはタッチパネルだけで完結する形ですよね。それどころかAndroid端末ではハードウェアキーがどんどん減ってきています。
そうなんですよ。見た目がいかにゴージャスになっても,スマートフォンの場合は,Aボタンを押しながらLボタンを押して,さらに斜め上にアナログスティックを入れる! といったような操作は無理です。ユーザーインタフェースが限られている以上,スマートフォンのゲームは,コンシューマゲームとは別の方向に向かうだろうと思っています。
また,スマートフォンのゲームではネットワークが必須となります。今後はソーシャルゲームであっても今より同期性が問われるようになり,もっと“繋がっている”感じというか,カジュアルに一緒に遊んでいる感覚が味わえるようになるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
となると,ゲームデザインも変っていきますよね。
西氏:
そうですね。今は同じようなゲームばかりが流行っていますし,例えばチュートリアル一つとっても,ボタンを押しているだけで次々にアイテムが手に入るような内容ばかりです。しかし,そればかりではいつか飽きられてしまうでしょう。
実際,そういったゲームのブームも冷めつつありますし,今はまた試行錯誤しながら新しいタイプのゲームを作る時期に入っていると思いますよ。僕自身も自分で新しい何かを作り出そうと思っていますし。
4Gamer:
そう言えば西さんは,流行のカードゲームを作らないですよね。
西氏:
作らないというよりも,作れないですね。作ろうという話もあったんですが,カードゲームでは自分なりに楽しいと思えるアプローチが見えないんです。
4Gamer:
今は,どんなゲームを作っているんですか?
西氏:
「コビッツ」の発展形のようなものに取り組んでいます。まだ詳しくは言えませんが,少し違った形になるよう仕込んでいます。
4Gamer:
なるほど,期待しています。
それでは最後に,今回のコンテストについて,学生を指導する立場から思っていることなどがあれば,教えてください。
西氏:
学生達にとっては,非常にいい機会だと思っています。京都精華大学のような美術系の大学では,将来ゲーム業界に進みたいとは言っても,プログラムではなく絵の仕事がしたいという学生もたくさんいます。しかし,そういった学生であっても参加できるHTML5ゲームコンテストのような場は,まだまだ少ないんです。
また,こういったコンテストに参加することで,同じくゲーム業界を志す全国の学生がどのくらいのレベルなのか,その中で自分達はどうなのかといったことも確認できるかと思います。ちょうど高校野球における甲子園のようなものですよね。
必要な機材もスマートフォンとPCがあれば十分ですし,僕はもっとこういうコンテストが盛り上がってほしいです。こういう取り組みの積み重ねが,どこか元気がなくなっているゲーム業界に,燃料を投下することにもつながるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
ありがとうございました。
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