Caymanは12月，Antillesは2011年初頭発表へ。AMDのGPU新製品投入計画が若干遅れる

　AMDは，「AMD Financial Analyst Day 2010」において行われたブレイクアウトセッション（分科会。ここでは小規模な会議，くらいの意）で，グラフィックスチップのロードマップについてもアップデートを行った。

AMD Financial Analyst Day 2010の分科会で登壇したMatt Skynner氏（Corporate Vice President and General Manager, Graphics Division, AMD Products Group, AMD）

　同セッションを担当したMatt Skynner副社長へ，独自に取材したところ，すでに一部海外PC情報サイトで報じられているとおり，「Cayman」（ケイマン，開発コードネーム。断りのない限り以下同）ことRadeon HD 6900シリーズの正式発表は，当初予定されていた2010年11月のスケジュールから遅れ，12月初旬になる見通しであることが明らかになった。
　「しかし，噂されている『シングルナンバー』（10％以下，の意）の歩留まりで，チップ製造ができないため，などという理由ではない」（Skynner氏）。ドライバのチューニングなど，新しいGPUアーキテクチャを採用するにあたっての最適化作業に，若干の時間を要しているというのが，氏の説明だ。

ブレイクアウトセッションで，「F1 2010」を用い，Eyefinityによる3画面ゲームプレイのデモを行ってみせたSkynner氏

　Skynner氏いわく「Caymanの出荷は間違いなく年内に開始する。クリスマス商戦にもギリギリ間に合わせたい」とのこと。同会議に参加していたAMDの関係者は，「もし本当に，噂されているとおり，TSMCの40nmプロセスに大きな問題があって，歩留まりが上がらないなら，我々と同じ40nmプロセスを使って，30億トランジスタを集積するNVIDIAが『GeForce GTX 580』を出せるはずがない（笑）」と，競合ベンダーの最新製品を引き合いに出して，噂を一笑に付す余裕すら見せていたほどである。

　一方，Skynner氏が公開した最新のGPUロードマップによると，Caymanを2基搭載する「Antilles」（アンティレス）こと「Radeon HD 6990」の出荷は2011年初頭にズレ込むことが確定した模様。その2011年には，第1四半期中にエントリー市場向け製品となる「Turks」（タークス）と，ローエンド市場向けの「Caicos」（カイコス）も発表される計画になっている。
　TurksとCaicosの両製品は，Bartsコアを採用したRadeon HD 6800シリーズと同様，ATI Radeon HD 5000シリーズまでのアーキテクチャを改良したものという位置づけだ。

Skynner氏が示した，デスクトップPC向けGPUの最新ロードマップ。 Radeon HD 6990の投入時期が2011年にズレ込むことと，2011年第1四半期中にエントリー市場やローエンド市場向けのTurksやCaicosが投入されるスケジュールだ

ちなみにこちらは，AMDがRadeon HD 6800シリーズの発表時に示していた製品投入スケジュール。この時点だと，CaymanおよびAntillesことRadeon HD 6900シリーズはいずれも2010年第4四半期中の投入予定とされていた

ノートPC市場向けのロードマップも明らかに

　Skynner氏は，ノートPC市場向けグラフィックスチップのロードマップも披露。2011年に「Vancouver」（バンクーバー）シリーズを投入する計画を明らかにしている。
　それによれば，当初の予定で2010年内に市場投入されることになっていた，ATI Mobility Radeon HD 5000シリーズのマスクチェンジ版となる「Granville」（グランヴィル）と「Capilano」（カピラノ），「Robson」（ロブソン）は，2011年初頭の投入予定となった。3製品は，現行製品のデザインを製造プロセスに最適化することによって，省電力化や歩留まりの向上を図り，より廉価に高性能なチップも提供できるようにしたものだ。

　加えて，上記3コアと「ほとんど差がないタイミング」（Skynner氏）で，Northern IslandsシリーズのBarts系コアと同様の，第2世代DirectX 11アーキテクチャを採用した「Blackcomb」（ブラックコーム），「Whistler」（ウィスラー），「Seymour」（セイモア）を追加する計画も，AMDは持っている。

　同社が，2世代にわたるグラフィックスチップをミックスさせてラインナップを拡充させるのは，「ノートPCのグラフィックスでは，単体チップにより多くの機能を求めるPCベンダーと，より低価格なソリューションを求めるベンダーがあるからだ」（Skynner氏）。両方の需要を満たすことで，中国など，ノートPC向け単体グラフィックスへのニーズが非常に旺盛な市場に応えることで，現在7割近くのシェアを占める，ノートPC向け単体グラフィックス市場での足固めを図ろうというわけである。

ノートPC向けGPUのロードマップ。現行製品のリファイン版と，より機能を強化した第2世代DirectX 11コア，2つのラインを混在させることで，価格への要求が強い市場でも単体グラフィックスチップの売り上げを伸ばしたい考えだ