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  • 発売日:2012/01/04
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“新しい”「パワードール」を作る! ブラウザゲームとして生まれ変わった「Webパワードール」への意欲をガマニアと工画堂に聞いてみた
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印刷2011/12/02 16:29

インタビュー

“新しい”「パワードール」を作る! ブラウザゲームとして生まれ変わった「Webパワードール」への意欲をガマニアと工画堂に聞いてみた

画像集#022のサムネイル/“新しい”「パワードール」を作る! ブラウザゲームとして生まれ変わった「Webパワードール」への意欲をガマニアと工画堂に聞いてみた
 往年のPCゲームファンには馴染み深い工画堂スタジオの「パワードール」が,ガマニアデジタルエンターテインメントよりブラウザゲーム「Webパワードール」としてサービスされる。2011年7月に行われたクローズドβテスト以来,表立った動きは止まっていたのだが,ここにきて,プレオープンβテストの発表があり,ようやく正式サービス開始に向けての流れが見えてきた。

 旧作ファンとしては,その出来映えが気になるところだが,今回は,工画堂スタジオ 代表取締役社長の谷 逸平氏,ガマニアデジタルエンターテインメントの商品開発責任者である市崎裕康氏,そして運営責任者である中島秀樹氏に,現在の開発状況や正式サービスの段階でどのようなゲームにすることを目指しているのか,話を聞いてみた。

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「パワードール」の“世界観”を味わえるブラウザゲーム


ガマニアデジタルエンターテインメント市崎裕康氏
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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 「Webパワードール」は,ようやく12月8日からのプレオープンβテストが発表になりましたね。クローズドβテストが行われてから少し間が空いてしまいましたが,これはなぜでしょうか。

市崎裕康氏(以下,市崎氏):
 以前のクローズドβテスト終了後に寄せられたテスターの皆様からの意見の精査とゲーム側への反映を行った結果でしょうか。新たな要素の追加に伴い,パラメータ拡張やゲーム全体のバランスにも手を入れたので,機能の実装とバランス調整に時間を要してしまいました。
 
4Gamer:
 CBT時に出ていたバランスなどの問題は,解決したと考えてよいのでしょうか。

市崎氏:
 はい。ほぼ解決しています。

4Gamer:
 オープンβテスト版でとくに大きく変わった部分はどこですか。

市崎氏:
 まず,戦闘の仕組みを見直し,簡単に操作できるという部分を残しつつも,単調であった戦闘の結果報告を改善しています。
 また,女性兵士の個性を強め,兵士同士を合成する新機能を追加しています。さらに,兵士育成で煩雑だった部分の機能自体を改善しました。

兵士の合成
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4Gamer:
 では,タイトル開発自体の経緯についてお伺いします。
 2010年の東京ゲームショウで,このタイトルが発表されたときには,久しぶりに「パワードール」の名前を聞いた思いでした。「1」のリメイク(「POWER DoLLS1」)が登場したのが,もう2年前のことになりますが,パワードールというコンテンツに再び注目されたのは,どういった経緯からでしょうか。

市崎氏:
 当社のスタッフには昔のPCゲームが好きな者が多いんです。1980年代後半から1990年前半にはPC-9801系にたくさんのシミュレーションゲームが登場し,記憶にも鮮明に残っているゲームがいくつかありました。その中で一番世界観に魅力があって,オンラインゲームに向いたものは何かと考えたときに,パワードールの名前が挙がってきたんです。

4Gamer:
 パワードールと聞いて「懐かしい」と感じる世代は限られていると思うのですが。

市崎氏:
 パワードールのコンセプトである「メカと美少女」というのは,定番の要素ではありますが,当時,それをメインテーマにしているものはありませんでした。ですので,初代パワードールは,メカとキャラクターのクオリティが非常に高かったこともあって,多くの人を魅了しました。そして,このコンセプト自体は,現在でも通用するものだと思います。

4Gamer:
 その段階では,どういうゲームにするかは,決まっていたんでしょうか。

市崎氏:
 いえ,この段階では未定でした。
 商品化するに当たって,いろいろな人に話を聞いてみたんですよ。運営担当の中島にも「売れると思う?」と聞いてみましたし,海外ではどうなのかと,上海の開発や台湾本社のスタッフにも聞いています。すると,意外と好評だったんです。パワードールは海外でも発売されていましたので,海外スタッフの多くは遊んだことがあって,しかも,「懐かしい」というよりは,「またプレイしたい」という声が多かったんですよね。こうした反響を受けて,オンライン向けにするには,どのような形態がよいのか企画を立てることになりました。
 ただし,工画堂さんにお願いに行ったときは,まだ細かい部分までは考えていませんでしたので,「パワードールでオンラインゲームを作りたいのでお願いします」というお話しかできませんでした。

4Gamer:
 話があった段階で,工画堂としてはパワードールに関するタイトルは動いていなかったんですか。

工画堂スタジオ 代表取締役社長 谷 逸平氏
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谷 逸平氏(以下,谷氏):
 「POWER DoLLS 1」くらいでしたね。パワードールは当社の基幹ソフトタイトルの1つですから,それをモチーフにオンラインゲームを作っていただけるというのは,渡りに船といっては不適切かもしれませんが,新しいパワードールを作るというところについては,大きな期待を持ってお願いしました。

4Gamer:
 制作に当たって,工画堂側からなにか注文を付けたところはありますか。

谷氏:
 弊社は,これまでさまざまな形でライセンスの提供をしてきましたが,毎回どの程度注文していいのか迷うんですよね(笑)。自社の創作したタイトルですから思い入れが強いです。しかし,つい「変えたくない」と主張しすぎてしまうと,相手先の自由度が低くなって,極論,何もできなくなってしまいます。ですから,基本的にはそのプラットフォームのエキスパートである,ライセンシーさんにある程度お任せするようにしています。
 とはいえ,最低限のルールは守ってもらいます。例えば,パワードールの世界は火薬の臭いのする世界です。ですから,レーザーとかビームを撃たれてしまうと,それは違うなと。そういった基本ルールに関しては,パワードールを作ってきたディレクターが判断しています。

4Gamer:
 ガマニアさんとしては,当初からブラウザゲームにするという選択肢も持っていたのでしょうか。

市崎氏:
 すでに「キングダムサーガ」や「Web 恋姫†夢想」は開発が始まっていましたので,パワードールを次のブラウザゲームの候補として考えていました。もう一昨年の話ですから,実際に作業に入るまでにずいぶんと時間がかかっています。
 というのも,新しいことをやるにしても,世界観をしっかり把握して,従来の作品と齟齬のないようにしなければなりません。新しいファンを獲得していきたいという狙いもありますが,従来からのファンを裏切りたくなかったですからね。

4Gamer:
 ただ,今回はゲームのシステムが,これまでのものとはがらりと変わっていますよね。

市崎氏:
 パワードールだからヘックスを使わなければいけないとか,元のゲームシステムを再現するという考え方はせず,あの「パワードールの世界」で,あのプレイの興奮を再現するということに重点を置いてゲーム設計をしています。パワードールがWebゲームであれば,戦闘システムはこうなる,コミュニケーションシステムはこうなる,というふうに作っていったんです。

4Gamer:
 世界観をどう落とし込んでいくかということですか。工画堂さんのパワードールがミッションに特化したゲームだったのに対して,自分は完全に司令官になって一歩下がって全体を見る立場になったのは,そういうわけだったんですね。

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市崎氏:
 Webゲームの特質を考えると,やはり自分(プレイヤー)の立場は,部隊を束ねるような役柄だろうというのはありました。最初はヘックスでの戦いを指示して,兵士が自動で戦うというのも考えたんですが,もうちょっと下がった立ち位置のほうが世界観を体験できるんじゃないかと思ったんです。
 それに,今回は敵対する組織が別にいて,ほかのプレイヤーと協力プレイをしていこうという,これまでのWebゲームとはちょっと方向性を変えたところを狙っています。それは新しいコミュニケーションの形を作りたいというところからきています。

4Gamer:
 この手のブラウザゲームでは珍しく,「Webパワードール」では,ほかのプレイヤーは全員味方ですよね。

市崎氏:
 将来的には敵対もあるかもしれませんが,今のところは協力して共通の敵を倒していくというストーリーになっています。

4Gamer:
 魅力的な世界観があり,魅力的なキャラクターやメカがあるという中で,プレイヤーへの訴求ポイントはどこにあるとお考えですか。

市崎氏:
 私がゲームを制作する場合はいつもそうなんですが,自分がプレイヤーだったらどう考えるだろうというスタンスで作っています。ですから,今回のパワードールであれば,先ほど話のあった「火薬の臭いのする世界」,それと「女性だけの部隊」「彼女たちが乗って戦うローダー」といった要素がポイントで,これらを踏まえて,どうすれば楽しく遊べるのかを考えています。
 あとは,最近のプレイヤーのプレイスタイルも考慮しています。面倒なことや過度に手間のかかることをさせずに,パワードールの世界観を一緒に楽しんでもらえるように,システムでどうカバーしていくかがポイントですね。


広がっていく新しいパワードールのカタチ


4Gamer:
 原作のパワードールは,シミュレーションゲームとしても,かなりハードルの高いゲームでしたよね。それをカジュアルに楽しめるようにするというのは相当大変だったんじゃないでしょうか? たぶん,最近のゲームプレイヤーの基準では,原作のゲームバランスはありえないものだろうと思うのですが。

市崎氏:
 そうですね。1面だから簡単だとかいったことがなくて,いきなりスニーク系のゲームみたいに,できるだけ敵に遭遇しないように,戦闘しないように進めていかないといけませんし。美少女やロボットが出てきても,戦闘部分は非常にリアルといいますか,シビアなものでした。

谷氏:
 私自身,初期のものはちゃんとエンディングを迎えましたが,実は「2」以降は,クリアが難しいくらいでした。

4Gamer:
 カジュアルとは対極ともいえますね。

市崎氏:
 ただ,カジュアルというのも幅が広くて,入りやすくて,遊びやすくて,しかも楽しければ,中身がシミュレーションゲームだろうがSFだろうが,あるいは内容がハードなものであってもプレイヤーは遊んでくれるだろうと思っています。

ガマニアデジタルエンターテインメント中島秀樹氏
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中島秀樹氏(以下,中島氏):
 現在のオンラインゲームでは,どちらかというとライトなユーザーが爆発的に増えていますよね。パワードールなら,マニアックな狭い層を獲得するのは簡単なんです。マニアックになりがちなパワードールの面白さを,どう間口を広げて伝えていくかが重要だと考えています。

4Gamer:
 間口を広げる努力というのは,具体的にはどんなことでしょうか。

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中島氏:
 まず,絵ですね。これまでのパワードールはカッコいい系のイラストが多かったのですが,今回は,まず女性兵士でいろんなタイプの絵柄のイラストを用意していきます(新規の女性兵士イラスト参照)。また,パワーローダーについても,工画堂さんと協議のうえですが,新型の機体を登場させたいと思っています。
 従来のファンの方に「うん,これこそパワードールだ」と思っていただけると同時に,新しいプレイヤーさんには「なるほど,これがパワードールなんだ」と思っていただけるようなものを目指していきます。新旧のイラストが不自然に混ざらないように,綿密な打ち合わせのもと,そうした新しいデザインを組み込んで,新しいパワードールというものを作っていきたいですね。

 また,これまでパイロットスーツ姿だけだったので,制服を着たキャラクターとかも描いたりしています。そうやってプレイヤーの裾野を広げていくことで,逆に本家のパワードールをやってみようという流れも作れるんじゃないかと。工画堂さんのほうでも,モバイルで出されていますし。

新デザインのドールズ
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谷氏:
 リメイク版「POWER DoLLS1」をフィーチャーフォン用に移植したものが7月7日から配信されています(配信元:ワーカービー)。パワードールには,Webゲームも,モバイルゲームもある,という環境になってはいます。

中島氏:
 こういったものと同時に展開することで,Webゲームからモバイルへ,モバイルからWebゲームへという双方の流れができるようにしたいと思っています。

4Gamer:
 いろんなプラットフォームで展開していくと,共同で盛り上げやすいですよね。少し調べれば,もともとはPCにあったゲームだということも分かるでしょうし。

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谷氏:
 いろいろなプラットフォームで「パワードール」という同じキーワードを目にする機会が多ければ多いほど,皆さんに注目されやすくなりますからね。 
 誤解されたくないのは,昔からあるパワードールを知っている人だけが集まればいいということではなく,パワードールの持つ,「カッコいいロボットに女性パイロットが乗って戦う」というコンセプトに反応してくれる人達すべてがターゲットなんです。なので,まずはこのコンセプトを楽しんでくれる人すべてに新しいパワードールを提供できればいいなと考えています。

市崎氏:
 オンラインでやる以上は,新しいものを提供しないと意味がないと思うんです。実は,昔のシステムのままオンラインゲームにしてほしいというリクエストもきています。でも,ターン制ストラテジーというのはオンラインゲーム向きではないんですよね。原作のシステム的な部分が好き方には,申し訳ないのですが携帯電話やPCで遊んでいただいて,僕らはオンラインでしかやれないことをやっていこうと思っています。その結果が「Webパワードール」なんですよね。
 これは,いわゆる村ゲーではあるんですけど,仲間と一緒に戦っていくというシステムになっています。もちろんそれ以外に,まだ発表していない仕掛けもいろいろあるんですが(笑)。
 ただ,マニアックな方向に行きがちではありますので,パラメータなど深い階層で作っていたものを,なるべく見せないで済むようにする改良は続けていきます。現状(※7/25までのクローズドβテスト版)のものを改良して,オープンβテストでは画面インタフェースも,パラメータの種類や遊び方も変わったものをお届けします。

4Gamer:
 おっと,そうなんですね。そのあたりもかなり変わるんですか。

市崎氏:
 はい。そのためにクローズドβテストを行ったわけですし(笑)。とくに遊んでいただいて,面倒だと思われたところは簡単にしていきます。せっかく面白いゲームなのに,入口が数字だらけでついていけないと思われても嫌ですので,そこは解決したいですね。
 ただ,もとになっているのがシミュレーションゲームなので,数値主体のバランスは崩したくありません。その矛盾とは現在進行形で常に戦っているという感じです。

4Gamer:
 気に入った女の子で,気に入ったローダーで遊びたいというプレイスタイルでも大丈夫ですか。

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市崎氏:
 最初のうちはそれで構わないと思います。ただ,ある段階で,それではなかなか勝てない状態になると思いますので,そうなったときに数値に着目してもらうことで勝てない理由が分かるようにしたいですね。
 女性のパイロットを集めるのも楽しいし,ローダーを開発するのも楽しいし,改造するのも楽しい。それに,自分の指示でミッションを遂行していくのも楽しい,仲間と一緒にミッションを進めていくのも楽しい,そういうゲームになると思います。

4Gamer:
 効率を優先すると(配属される兵士の数に対して,常時前線に配置できる兵士の数が限られているので)どうしても,兵士を配置しては下げてというのを繰り返さなければならないですよね。疲労の要素もあるので,一人の兵士を重点的に育てていくということには向いていないように思われますが,どうしてこういうふうにしているのでしょうか。

市崎氏:
 バランスは調整中ですが,少なくとも,疲労でなにもできなくなるという方向はやめます。「疲労」というパラメータは,パイロットをモノ扱いにしたくなかったので導入したものですが,プレイの足枷になっている印象もあります。そこで,疲労度そのものは残しますが,疲労した兵士をどう扱うかを再検討しています。
 ただ,たくさんの兵士を集めていただきたいというのと,基地にいるパイロットすべてを育ててほしいとも思っていますので,特定のキャラだけで進めていくスタイルは想定してないんですよ。

4Gamer:
 といいますと?

市崎氏:
 まだ公開はしていませんが,所有している兵士の組み合わせで発生する特別ミッションも存在しますので,序盤から色々な兵士を入手して均等に育てておくとよいかもしれませんよ。

4Gamer:
 そうでしたか。しかし,序盤で使える人数が少ないこともあって,なかなか複数の兵士をを育てていくという流れにはなりにくいのですが。

市崎氏:
 そこは調整していくことになると思います。もう少し早い段階で人が増やせるようにするつもりです。

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4Gamer:
 お願いします。むしろ1人でミッションに送り出して,本当に大丈夫かなと不安になるくらいでしたので……(笑)。

谷氏:
 でも,ちゃんと帰還してくるんですよね。このあたりは工画堂的には甘いんじゃないかという意見もあります(笑)。かつては,降下するだけで脚が壊れるなんてのもありましたからね。ほかのローダーに背負ってもらって帰れるんですけど。

4Gamer:
 あれはびっくりしましたね。もっとも,そういったものまでがゲーム性に組み込まれていたから凄かったのですが。

市崎氏:
 そういう深いゲーム性を,Webパワードールにも散りばめておくといいのでしょうね。

4Gamer:
 できれば,送り出したあとに詳細な戦況報告がほしいところなのですが。

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中島氏:
 そこはプレイヤーさんからの要望でもトップ3に入っていたものなので,大丈夫です。

市崎氏:
 ほかにも,勝つことだけが目的ではないというと言い過ぎかもしれませんけど,キャラの育成だけでなく,新しいキャラクターとの組み合わせや,新しいローダーに乗せたときにどうなるかという楽しみが見出せるようにしていきたいと思っています。


ユーザーとともに作り上げていく「Webパワードール」という遊び


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4Gamer:
 今後の目玉要素としてはどんなものを予定されているんでしょうか。

市崎氏:
 元々のパワードールの世界観があって,パラレルワールド的に新しいストーリーが展開していきますので,それをより楽しんでいただけるようにしたいと思います。
 今は序盤なので,敵がいて,「攻めてくるかもしれないので,守ってください」あるいは「敵の拠点を攻めてください」という状態ですが,「その次に来るもの」,そして「最後に来るもの」も用意してます。どう,世界が動いていくのかというのを体験してください。そのときに,自分がどう関わっていくのかを楽しんでいただけるはずです。

4Gamer:
 もっと具体的なもので,なにか教えていただけることはありますか。

市崎氏:
 新しいパイロットやローダーも楽しみにしていただければと思います。ローダーについては,クローズドβテスト参加キャンペーンプレゼントとして,胸元に「漢字」の入ったローダーを用意しました。この世界に漢字があってよいのかというところでは議論がありましたが,ユーザーにレアなものをお渡ししたいということで,工画堂さんに無理を言って用意していただきました。今後も新しい機体を続々出していきます。
 新しいパイロットもいろいろな人に描いてもらって,いろいろなパターンの絵を用意していきます。

4Gamer:
 新しいパワーローダーのデザインはどちらの会社で作られていますか。

市崎氏:
 まだ新しいパワーローダーのデザインを決定する段階には至っていないんです。現状では,色の違うバージョンを用意するくらいですね。
 パワーローダーは,どこまでやれるのか……例えばキャタピラが付いていたらパワーローダーではないですよね。レギュレーションがある程度決まってから,ガマニアサイドでデザインを上げて,工画堂さんにチェックやご提案をいただく予定です。
 武器にしても,レーザーやバリアは違うとして,ロケットランチャーならどこまで許されるのか,鋼鉄の弓みたいな武器ならいいのかとか,この世界にあってもおかしくない武器というのを探っていきます。

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4Gamer:
 どんどん新しいものが出てくるんですね。
 工画堂さんとしては,新しいパイロットなどを見た感想はいかがですか。

谷氏:
 新しいパワードールをより多くの人達に提供していきたいので,それを実現するためであれば,いろんな形があっていいんじゃないかと考えています。以前からのファンの中には,このキャラクターデザイナーの描いた絵じゃないとダメだっていう方もいます。けれど,「カッコいいローダーに女性パイロットが搭乗して戦う」というコンセプトに賛同してくれる新しいファンの方もいらっしゃるでしょう。「駒都えーじさん(※)のキャライラストは無いの? 工画堂でしょ?」と言う意見だってあっておかしくないわけです(笑)。

※駒都えーじ氏は「蒼い海のトリスティア」などの原画を担当し,工画堂の萌え絵系タイトルを代表する絵師

市崎氏:
 オンラインゲームというのはプレイヤーさんが育てるゲームです。そういう意味では僕らがよいと思って出しても,プレイヤーに人気がなければしかたありませんし,どんどんキャラを追加していって,プレイヤーさんに選ばれたものが残っていくことになると思います。

4Gamer:
 なるほど,いろいろなキャラクターを提供して,プレイヤーの人気を獲得したキャラクターが「Webパワードール」を代表するキャラクターになっていくわけですね。「Webパワードールといえば,この子」というような。

市崎氏:
 あとは,自分の部隊は特定の絵師のパイロットのみで構成するという遊び方も可能です。もちろん,従来作のファンの方なら,オリジナルの絵のパイロットで揃えるというのもよいと思います。

4Gamer:
 現状で登場するのは,原作の「3」以降のキャラクターのみですよね。

谷氏:
 時代的に100年の差があるので,「2」以前のキャラクターは登場しません。そこはスタッフのこだわりです。この時代が舞台であるなら,このキャラクターがいてはいけないというのがあるんです。

4Gamer:
 そこはしっかりこだわってチェックされているところなんですね。すいません,お祭り的に過去のキャラも全員登場させるのかと思い込んでました。

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谷氏:
 そこは悩んでいるところでもあるんですよ。とくに「2」のプレイヤーさんには熱い方が多くて,Webパワードールに「2」のキャラクターが出てこないのが残念だという声が工画堂まで届いてるんです。 しかし,「2」のキャラクターを出すといったお祭り的なことを,こちらから率先してやってしまうと,時代考証が取れてないというお叱りも受けてしまいます。ですから,プレイヤーさんからの「強い要望」などがあると動きやすいです(笑)。
 要望があれば,工画堂としては,今後,なんらかのタイミングで「2」のキャラクターを出すことも考えていきたいと思っています。それでも,考証はしっかりしていきたいので,例えば,そっくりの子孫であるとか,そういう形で提供できたら楽しいかもしれませんね。

市崎氏:
 サービスでの期間は1〜2年であっても,ゲームの世界では50〜100年経過することもあり得るわけです。そうすると,何が起こってもおかしくありません。子孫が出てきたり,なにかのイベント限定で時間を超えてもいいかもしれません。そういう楽しみ方,世界観の作り方はできますので,プレイヤーさんの力で,それがかなう可能性は十分にあります。

4Gamer:
 プレイヤーさんも一緒にパワードールを作っていけるわけですね。

中島氏:
 クローズドβテストを経て,「これはないだろう」とか「これはいい」というような,さまざまな意見をいただいてます。いつものパターンなら,クローズドβテストが終わって,負荷テストも終わるとすぐにもオープンβテストという流れですよね。
 けれど「Webパワードール」は,国内で開発をしていますので,プレイヤーさんからの意見を可能な限り吸収していきます。中途半端な形で出したりはしません。パワードールとしてのシステムの根幹は変えたりはしませんけど,インタフェースやパラメータなどの表示の有無などを調整していきます。
 CBTで問題となっていたところはきっちり直しています。これに関しては,工画堂さんのお墨付きをいただけるまでやりました。

4Gamer:
 少なくとも中途半端なものにはしないと。

市崎氏:
 前作の「Web 恋姫†夢想」でも,クローズドβテストの結果を反映させるため,発表からスタートまで半年お待たせしてしまったという前科がありました(笑),それくらいこだわって作っています。そういう意味では時間をかけたぶん,プレイヤーさんにも楽しんでいただけていますので,今回も大幅に手を入れました。楽しみにしていただいていた皆さんには,本当に申し訳なかったのですが,とことん手を入れました。

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中島氏:
 納得いかなければ運営としてもOKを出せません。少なくともWebパワードールは,5〜10年と長く遊べるものにしていかなければ意味がないと思っています。ですから,運営側からもかなりいろいろと注文を付けています。

4Gamer:
 そこまで慎重に検討しているとなると,ファンとしても期待できますね。

市崎氏:
 せっかく,よいキャラクターをいただいているので大事にしたいと思いますし,そういうところをガマニアに期待しているファンの方もいると思いますので,きっちりした作り方は崩したくないですね。今後も(笑)。

4Gamer:
 しかし,5年,10年というスパンで考えているというのは驚きました。

中島氏:
 1年くらいで終わってしまうと,それまで遊んで,キャラクターを育てていたプレイヤーはがっかりしますよね。Webパワードールでは,それはしたくないので,できるだけ長く遊べる仕掛けやアップデートを行っていきたいんです。

4Gamer:
 ストーリー進行に関してはどのような流れになるのでしょうか。

中島氏:
 ストーリーは時間経過で次の段階に進んでいきます。主軸となるストーリー展開は変わらないんですが,プレイヤーの選択や行動によって変化が起こるようになっていますね。期間限定で発生するクエストを追加していく予定ですが,その限定クエストを順々にクリアしたプレイヤーのみが読み解ける裏エピソードなども用意していきます。

市崎氏:
 時間とともにストーリーが進んでいくと,しっかり遊び尽くしたプレイヤーもいれば,まだのプレイヤーもいるはずですので,そのバランスが難しいんですが,遊び尽くしてないプレイヤーでも,次の段階に移行したときに納得できるようなら大丈夫だと考えています。

4Gamer:
 時代のうねりに翻弄されるような感じですか。

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市崎氏:
 はい。しっかり遊び尽くして新しい展開を迎えた方は,すぐに新しいミッションに向かえばいいですし,突然世界が変わって戸惑っている方は,連合に入るなどして,そこで活動することで追いつける,あるいは連合の中で役に立てるような仕組みにしていきます。

4Gamer:
 ちなみに,1日どれくらいのプレイ時間が想定されているのでしょうか。

市崎氏:
 宣伝文句としては「1日10分でも遊べる」ですよね(笑)。ですが,張り付くこともできるというのが理想です。当然,1日のプレイ時間が10分のプレイヤーさんと10時間のプレイヤーさんが同じレベルにはなりませんし,その差をお金で解決させるということも考えていません。
 1時間のプレイ時間をかけて10分のミッションを6回するのか,1時間のミッションに1回指示を出して大きく稼ぐのかといったふうに,どう楽しむかの違いにしたいと思っています。

4Gamer:
 PvPではないので,寝ている間に基地がなくなっているということはないんですよね?

市崎氏:
 はい。安心して眠っていただけます(笑)。もちろん,1日中張り付いて細かく指示を出したほうが,細かくアイテムを稼げますし,取引でも有利です。けれど,時間がかかる代わりに,大きく稼げるミッションを設定することで,双方の差をかなり埋めることができるのではないかと思っています。大きく狙って失敗すれば,大きく差が開く可能性はあるわけですけどね。

4Gamer:
 時間で増える資源もありますので,それを取引して武装を強化していってもいいですよね。

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市崎氏:
 時間のかかる探索で手に入れたアイテムを合成して装備させたり,取引で売って稼いでもいいでしょう。いろいろな楽しみ方があって,それぞれかかる時間が違います。自分にあった遊び方ができるように作っているつもりです。

4Gamer:
 武器もデザインがいいからという理由で選択するというのもアリですよね。

市崎氏:
 どちらかというと歩兵の戦いですので,いろいろな可能性を探れると思っています。歩兵の持てる武器の種類にはかなり幅がありますし,遠距離戦用も近距離戦用もありますからね。それでいて,この世界の科学で作ることができて,ローダーがある理由にもかなったものを作っていきます。

谷氏:
 パワードールの新タイトルとして,あのパワードールがこんなに楽しいものになったと思っていただけるような新しい遊び方を提供していきたいですし,和製コンテンツの底力というのがここに結実すればと考えています。

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4Gamer:
 私も久しぶりにパワードールを遊んでみましたけど,今遊んでも楽しめる世界観なんですよね。実際,こういうメカ物は貴重だと思います。

谷氏:
 それこそパワードールの持つキーワードにひかれる老若男女全員に楽しんでいただきたいですし,世の中も求めていると思うんです。新しいパワードールを。

4Gamer:
 これまであったパワードールの世界観や魅力を,新しいプラットフォーム用に展開したものが,このWebパワードールであるということですね。
 以前もOVAとかありましたけど,いろんな形での展開があってよいはずですよね。コミックがあってもいいかもしれません。恋姫もPCゲームが原作ですが,Webゲームという形でプラットフォームを変えて提供されているわけですし,アニメもコミックもあるように,パワードールもそういう展開があってもいいんじゃないかとは思いますね。個人的にはぜひプラモデルとかで出てほしいですよ。

谷氏:
 最初のパワードールを出したのは,世の中的にはメディアミックスが流行っていた時代なんですよ。実は,工画堂がメディアミックスに力を入れた最初のタイトルがパワードールです。実際,ライセンシー企業から,サントラ,小説,コミック,ガレージキットなどが発売されましたし,工画堂からもたくさんのグッズを出し, OVAも存在します。
 けれど,こういった展開は,当時のファンの方から厳しいご意見をいただくこともありました。それは長くやっていることのメリットであり,当社の貴重な財産になっています。
 ちなみに現在も当社の通販窓口になっている「オムニショップ」はパワードール初期のこの時期に,オムニ軍のPXで販売しているアイテムを具現化しよう,というコンセプトで発足したものなんです。今でも継続してパワードール関連の商品を開発していますよ。
 今回のWebパワードールは,それこそ20年の時を超えて,本格的に新しいプレイヤーから古いプレイヤーまで,幅広い層に提供できるものなんです。ですので,新しい遊びを楽しんでもらうための最新のツールとして見てもらいたいと思っています。

4Gamer:
 ガマニアとしては,どんなゲームにしたいですか。

市崎氏:
 たくさんの人に,遊んでもらえるゲームにしたいですね。「いいゲームだったけど……(売れなかった)」と限定的な評価をされるゲームがときどきありますが,やっぱりたくさんの人に遊んでもらえてこそ,いいゲームなんですよね。

中島氏:
 それには,たくさんのプレイヤーをどう誘導していくかが運営的な課題ですね。Webゲームは,MMORPGのようにチャットでがっちりコミュニケーションを取るというわけではありません。しかしWebパワードールは,みんなで協力して敵を倒すゲームですので,コミュニティが重要でもあります。

4Gamer:
 CBTでは,積極的に仲間を集めないといけない展開でも,みんなシャイなのか,いま一つ反応も薄かったように思います。もっと気軽に連合が組めるようにしてもらえるといいですね。今後の改修や仕掛けにも期待しています。
 本日はありがとうございました。


画像集#035のサムネイル/“新しい”「パワードール」を作る! ブラウザゲームとして生まれ変わった「Webパワードール」への意欲をガマニアと工画堂に聞いてみた
 7月に行われたCBTから4か月。ようやくWebパワードールが再始動を迎えた。ガマニアのブラウザゲーム展開は,国産ゲームのIPを使ってじっくり作り込んでいく傾向にある。「工画堂さんのお墨付きがもらえるまで直す」との言葉どおり,CBTの結果からゲームを修正しての再登場となる模様だ。乱造されがちなソーシャルゲーム界隈では珍しい開発体制といえるだろう。
 ソーシャルゲームというと,とかく利益率の高さに注目する人が多いのだが,多くのデベロッパではどちらかというと,開発のハードルの低さからブラウザゲームを選んでいるように思われる。利益だけ目指すなら国内開発にこだわったりもしないだろう。とにかく,話を聞いていて自分達がかつて好きだった思い入れのある名作ゲームを,再び世に広めようと非常に楽しんで作っているという印象があった。こういった環境でパワードールというマニアックな素材が,どのように生まれ変わるのか。OBT以降の展開に注目したい。

「Webパワードール」公式サイト

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    Webパワードール

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