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「ファンタシースターシリーズ25周年記念コンサート シンパシー2013」のリハーサル実施。指揮者 天野正道氏,酒井P&小林SDが,本番に向けた意気込みを語る
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印刷2013/03/28 17:05

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「ファンタシースターシリーズ25周年記念コンサート シンパシー2013」のリハーサル実施。指揮者 天野正道氏,酒井P&小林SDが,本番に向けた意気込みを語る

 セガの「ファンタシースター」シリーズが,2012年末に25周年を迎えたことを記念し,東京の日比谷公会堂で2013年3月30日に,コンサート「ファンタシースターシリーズ25周年記念コンサート シンパシー2013」が開催される(関連記事)。そのリハーサルが都内にて実施されたので,直後に行われた合同インタビューの模様をお伝えしよう。

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「ファンタシースターシリーズ25周年記念コンサート シンパシー2013」
特設サイト


 「シンパシー2013」の当日に指揮をするのは,作曲家の天野正道氏だ。天野氏は,クラシック音楽から現代音楽,ジャズ,ロック,歌謡曲までと多岐にわたる音楽活動の中,2004年よりファンタシースターシリーズのオーケストラを指揮している。当日は,ファンにとって馴染み深いファンタシースター作品の楽曲の数々が,天野氏の指揮のもと,東京フィルハーモニー交響楽団の演奏によって行われる予定だ。

 演奏の内容などについては当日を楽しみにしていただくことにして,今回はリハーサルを終えたばかりの天野氏と,最新作「ファンタシースターオンライン2」PC / PlayStation Vita。以下,PSO2)のプロデューサーにして,今回のコンサートのオーガナイザーである酒井智史氏「ファンタシースターオンライン」(以下,PSO)以降の作品でサウンドディレクターを務める小林秀聡氏が,3月30日の本番に向けた意気込みを語ってくれた。

合同インタビュー


――まずは,このシンパシー2013を開催することになった経緯からお聞かせください。

ファンタシースターオンライン2 プロデューサー/シンパシー2013オーガナイザー 酒井智史氏
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酒井智史氏(以下,酒井氏):
 昨年(2012年)ファンタシースターシリーズが25周年を迎えたということで,何かひとつ大きなイベントをやりたいなと考えていて。シリーズを見わたしてみて,音楽でシリーズを感じてもらいたいと思い,オーケストラやバンド演奏などを含めたコンサートを開きたいと思ったのがきっかけでした。


――コンサートの実現に至った経緯はどのようなものでしたか?

酒井氏:
 以前から小林とも「25周年に向けた何かをやりたい」と話をしていて「もしコンサートをやるんだったらオーケストラだよね」という話は出ていたんです。とはいえ,それを実現するためにはいろんな人に協力していただかなくてはならないんですが,非常に運良くやらせていただけることになり,ありがたいと思いましたね。

――ファンタシースターシリーズの楽曲は過去にもオーケストラで演奏されていますが,何かこだわりなどはあるんでしょうか?

ファンタシースターオンライン2 サウンドディレクター 小林秀聡氏
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小林秀聡氏(以下,小林氏):
 ファンタシースターシリーズはセガを代表するRPGであり,宇宙というスケールの大きさを感じさせる作品ですので,それを表現するためにオーケストラサウンドは欠かせない存在だと思っていて,“ここぞ”というところで使わせていただいてます。


――天野さんとのお仕事はどのような形でされていたんですか?

小林氏:
 天野先生はセガとお仕事をよくされていて,僕が初めてご一緒させていただいたのは「ファンタシースターユニバース」(以下,PSU)でした。そのときに楽曲をオーケストレーションをお願いして,ワルシャワ(国立フルハーモニックオーケストラ)で指揮をしていただきました。

――今回のシンパシー2013のコンサートを開催するにあたり,天野さんにはどのようなお話しをしたんでしょうか?

天野正道氏(以下,天野氏):
 いろいろあったよね(笑)。

小林氏:
 そうなんですよ(笑)。天野先生もお忙しい方ですので,打ち合せの時間も少なかったんですが,僕のほうではなるべく天野先生に分かりやすいように,お渡しする原曲の準備をがんばりまして,あとはお好きなように料理していただけるようにしましたね。

作曲家/指揮者 天野正道氏
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天野氏:
 実は13年ぐらい前から,小林君を始めとするみなさんとファンタシースターの演奏をやらせていただくこともあって,今回は25周年ということで,参加できたのは嬉しかったですね。
 もとがゲーム用の曲をオーケストラに編曲するのは結構大変で,そのためにやりとりするデータを,彼はすごく一生懸命作ってくれて,本当に助かりましたね。


――今お話しされた,ゲーム楽曲のオーケストラアレンジで苦労される点はどこなのでしょうか?

天野氏:
 一番大変なのは,原曲が生演奏されることを想定されて作られていないことですね。
 例えば管楽器を演奏するには,奏者は息を吸わなくてはならないんですが,原曲をそのまま演奏するとなると息が吸えないくなってしまうんです(笑)。機械で演奏していた音楽を,人間が演奏するためにはいろんなところを変える必要があって。昔の曲はそれを想定されて作っていないんですが,最近の彼が作る曲は生でも演奏ができるよう考えて作られているんですよ。当時の曲と最近の曲をアレンジするのに,かなり時間の差があることに気付いて,この13年でずいぶん成長してくれたと思いましたね(笑)。

小林氏:
 いやあ,恐縮ですね(笑)。去年このコンサートの企画が持ち上がってきたとき,まだPSO2の楽曲制作の最中で,後半のステージやボスの曲など,シンパシー2013で演奏したらこうなるのかな,なんて思いながら作っていた曲がありまして,それを今回生演奏で再現していただいたのは僕も嬉しかったですね。

――今回のシンパシー2013についてのやりとりをされる中で,何か印象的なエピソードはありましたか?

小林氏:
 やはりデータをやりとりする中で,内容が説明しづらいうえに天野先生が解釈するのに難しいデータなどがあって,それをうまく伝えるために試行錯誤した覚えがあります。
 ユーザーの方もファンタシースターの音楽を聞いてくださっているので,その中の1フレーズでも間違っていたら申し訳ないので,なるべく原曲のフレーズを生かしつつ,オーケストラでも表現できるように,僕が料理しようと思いながらデータを作っていました。

天野氏:
 やっぱりそれは同じですね。オーケストラだけで演奏する曲は問題ないんですが,コンピュータの打ち込みの曲とシンクロさせる曲などもあって,それを僕だけがクリップを聞いてアレンジするのでとても大変なんですよ。幸い彼が作ってくれたSEやシンセサイザーの音のクオリティが高かったので,安心できましたね。とくに昔の曲などは,足らない部分などがあってもちゃんと探してきてくれましたしね。
 ユーザーの方が聞いてきたのはすべてがオーケストラ曲ではないですから,オリジナルの音色も同時に演奏できるようになったのはよかったですね。

小林氏:
 今回のシンパシー2013ではオーケストラ楽曲だけでなく,原曲で使われたリズムトラックやシンセトラックをオーケストラと一緒に鳴らすという試みをやることになりまして,それによって原曲のフレーズを楽しみつつ,オーケストラ演奏でゴージャスになった音を楽しんでいただけるんですね。この提案をしてくれたのが天野先生でしたので,僕もちゃんとしたものを準備してやりとりをさせていただきました。

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――酒井さんは今回のリハーサルをご覧になってどう思われましたか?

酒井氏:
 すごい(笑)。聞いてるだけで涙が出そうになりましたね。とくにプレイされている方はずっと聴いているので,体の中に曲が染みついていると思うんですが,音を聞いた瞬間にそれが呼び覚まされましたね。
 僕も先生が指揮棒を振っている後ろで泣きそうになって聞いていました(笑)。本番はもっと泣けると思います。

天野氏:
 打ち込みと生演奏を一緒にやるというのは,日本ではあまりやっていないんで,すごく画期的だと思いますよ。あと,それとは正反対に初期の楽曲をオーケストラで演奏するというのも面白いよね。

酒井氏:
 それもありますね。初期シリーズの曲や歌ものをオーケストラ演奏するのもすごくいいアレンジで,楽しんでいただけるのではないでしょうか。

――すでに何曲かは発表されていますが,(コンサートでは)どのあたりの曲を演奏されるのでしょうか?

酒井氏:
 PSOシリーズに関しては,もしかしたら全エピソードの曲をやるんじゃないかと思っています(笑)。あとはPSUのシリーズも多いと思います。

――当日演奏予定の曲の中で,とくにオススメの曲などはありますか?

小林氏:
 今回のシンパシー2013では,ユーザーの方が今までに聞いたことがない特別な音楽もお聞かせしたいと考えています。例えば「ファンタシースターZERO」のエンディング曲の「たいせつなもの」などは,もともとボーカル曲だったものをフルオーケストラアレンジしたことで,曲の印象はかなり違うにもかかわらず,いい曲になっていますね。

酒井氏:
 さっき聞いたんですが,すごくよかったです。泣くかと思いました(笑)。ファンタシースターZEROの曲は結構好きで,オーケストラになったことであらためていい曲だと思いましたね。
 それとPSOの曲を後半に固めて演奏する予定なんですが,かなり美味しいところ取りなので,現役プレイヤーの方々は興奮しまくりだと思います。とくにラストは注目していただきたいですね。ラストは自分が戦ったときの熱さを思い出して,みんな泣くと思います。そんな構成ですね。

――逆に先ほどお話しに出た初期シリーズの曲はいかがでしたか?

酒井氏:
 当時の音源がオーケストラアレンジされたことで,懐かしくて新しいものを聞けると思います。「これがこうなるのか!」と思っていただけるのではないでしょうか。

――今回のコンサートのタイトルの「シンパシー」は,PSO2のサウンドツールと同じ名前でしたが,そこにはどんな理由があるんでしょうか?

酒井氏:
 タイトルは僕が考えました。シンパシーには共鳴という意味があって,音楽を通してファンタシースターファンのみなさんが共鳴するということを,このコンサートのテーマにしたかったんです。よくシンフォニーと間違えられてしまうんですけど(笑)。

――今回のコンサートには来られない方もいらっしゃると思うんですが,今後何か別の手段で聞く機会などはあるんでしょうか。例えばCD化ですとか。

酒井氏:
 そうですね,何かしらお聴かせできる機会は作りたいですよね。
 でもまずは当日の演奏をコンサート会場で聞いていただくことで,それが会場に来ていただけるみなさんだけの宝物になると思います。

――せっかくの機会ですので,小林さんから天野さんに何か聞きたいことなどがあったら質問していただければと思うのですが。

小林氏:
 えっ,それは恐縮しますね(笑)。天野先生とはこれまでも今回も,一緒に仕事をさせていただいて,僕が作った原曲のイメージを汲んで,リスペクトしていただいたのが嬉しかったんですが,その熱意はどこから来ているんでしょうか?

天野氏:
 それは曲がいいからよ!(笑) 僕らが他人の曲をアレンジする場合,原曲がいいか悪いかでかなり変わりますからね。変なたとえですけど,腐った素材はどんな料理人が料理してもダメですからね。とくにゲーム音楽はシリーズがたくさんあって原曲もピンからキリまであるんですが,その中では小林君の作る曲はかなりいいものだと思っています。
 そういう曲があると,老体にむち打ってでも作りたくなるんですよね(笑)。

――天野さんはゲームに限らず,映画やアニメなどの曲も手がけていらっしゃいますが,曲作りに対するこだわりはどこにありますか?

天野氏:
 それはジャンルによっても変わるんですが,商業音楽の場合は必ず目的があっての音楽だと思うんです。それは純音楽とは違って,そこを使い分けなければならないことですね。これは若い作曲家の方にも言っておきたいことですが,商業音楽をやっているのに自分のこだわりばかりを追求してしまうのは,やってはいけないことなんです。商業音楽はいかにユーザーさんや発注主の意向に添うかというのが鉄則ですからね。その代わり,純音楽で自分の作品を作るときは,いくらでも好きなことをやっていいんですよ。
 私のこだわりというと,そこの使い分けを一番に考えるところです。最近はそういう考えが世の中で減っているのが残念なところですね。

――最後に,今回のコンサートの見どころと,来場されるみなさんへのメッセージをお願いします。

酒井氏:
 25周年ということで,夢に見ていたコンサートをやっと実現できることを非常に嬉しく思っています。ファンタシースターシリーズの音楽を好きな方も,新しい発見をしていただけるような内容になるんではないでしょうか。小林君もPSO2の仕事があって作業が倍増しながらもがんばってくれたので,一緒に僕らと共鳴して,ファンタシースターを楽しんでいただければと思います。
 チケットは当日券があと少しあるだけなんですが,物販コーナーは入場無料ですし,僕達が作った同人誌なども売っているので,併せて楽しんでください。

小林氏:
 去年から今日まで準備をしてきて,楽曲もすべて完成して,あとは演奏するだけとなりました。当日来ていただくファンタシースターを愛してくださっている方々のために作り上げたコンサートですので,ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

天野氏:
 2時間ちょっとの演奏に,映像なども加わって,ファンタジーを同じホールの中で共感して,お客様一人ひとりが“良かったな”と思えるコンサートになると思うんです。ぜひその2時間の間は,日常を忘れて浸ってほしいですね。

――ありがとうございました。

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 3月30日のコンサートは,昼と夜の2回,公演が行われる予定となっている。前売りは全席完売したが当日券は若干数あるとのことなので,チケットを持っていない人は,早めに会場に足を運んだ方がよさそうだ。
 当日は特別ゲストとして,初代ファンタシースターの制作にも関わった中 裕司氏や,特別ボーカルゲストの光吉猛彦氏なども登場する予定。4Gamerでは,コンサート本番の模様もレポートする予定なので,楽しみにしてほしい。

「ファンタシースターシリーズ25周年記念コンサート シンパシー2013」
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