レビュー
“物足りない性能”は動作クロックの引き上げで打開できるか
MSI N450GTS Cyclone 1GD5/OC
Galaxy GF PGTS450SuperOC/1GD5 FUJIN 2.1
Palit GeForce GTS 450 1GB Sonic Platinum
GIGABYTE GV-N450OC-1GI
となると気になるのは,これらクロックアップモデルが,“物足りない感”の払拭を実現しているかどうかである。
4Gamerでは,MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパン,Galaxy Microsystems(以下,Galaxy),Palit Microsystems(以下,Palit)の販売代理店であるサードウェーブ,GIGABYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)の販売代理店であるCFD販売から,以下に挙げる4枚のクロックアップ版GTS 450カードを貸し出してもらうことができた。今回はこれらを用いて,クロックアップ版GTS 450の可能性を探ってみたいと思う。
- MSI製「N450GTS Cyclone 1G OC/D5」
- Galaxy Microsystems製「GF PGTS450SuperOC/1GD5 FUJIN 2.1」
- Palit Microsystems製「GeForce GTS 450 1GB Sonic Platinum」(型番:NE5S450HF1101)
- GIGABYTE TECHNOLOGY製「GV-N450OC-1GI」
N450GTS Cyclone 1G OC/D5 メーカー:MSI 問い合わせ先:エムエスアイコンピュータージャパン Tel 03-5817-3389 実勢価格:1万5000〜1万6000円程度(※2010年9月25日現在) |
GF PGTS450SuperOC/1GD5 FUJIN 2.1 メーカー:Galaxy Microsystems 問い合わせ先:info@galaxytech.jp 実勢価格:1万5500〜1万8000円程度(※2010年9月25日現在) |
GeForce GTS 450 1GB Sonic Platinum(NE5S450HF1101) メーカー:Palit Microsystems 問い合わせ先:サードウェーブ(販売代理店) ドスパラ販売ページ 実勢価格:1万3980円(税込 ※2010年9月25日現在) |
GV-N450OC-1GI メーカー:GIGABYTE TECHNOLOGY 問い合わせ先:CFD販売(販売代理店) サポート案内ページ 実勢価格:1万5000〜1万6500円程度(※2010年9月25日現在) |
動作クロック以外もかなり異なる4製品
カード長や搭載するGPUクーラーに注目
テストに先立って,まずは4製品の仕様を順番にチェックしておこう。
コアクロックとシェーダクロックはそれぞれ850MHzと1700MHzで,リファレンスクロックとなる同783MHzと1566MHzからは8.5%ほど高い計算。搭載するメモリチップはSamsung Electronics製のGDDR5「K4G10325FE-HC05」(0.5ns品)で,リファレンスの3.608GHz相当から1割程度高い,4GHzという動作クロックに設定されている。
カード長は実測208mm(※突起部含まず)で,これはGTX 460のリファレンスデザインとほぼ同じだ。
動作クロックは,コア888MHz,シェーダ1776MHz,メモリ4GHz相当で,コアとシェーダはリファレンス比で約13.4%引き上げられている格好だ。
カード長は実測208mm(※突起部含まず)で,N450GTS Cycloneと同じ。ただ,6ピンの補助電源コネクタは,PCI Express x16スロットに差したとき,マザーボードに対して垂直方向を向くように実装されており,この点はN450GTS Cycloneと異なっている。
搭載するメモリチップはSamsung Electronics製のGDDR5「K4G10325FE-HC04」(0.4ns品)で,メモリクロックに大きなマージンが用意されている点も特徴として挙げられるだろう。
動作クロックはコア930MHz,シェーダ1869MHzで,リファレンスと比べると約18.8%高い。今回用意した4枚のなかでは最高の値だ。一方,メモリ周りは0.5ns品を搭載して4GHz相当の設定になっており,つまりはN450GTS Cycloneと同じである。
外部出力インタフェースはDVI-I×2,Mini HDMI×1。今回CFD販売から貸し出しを受けられたのは製品単体だが,製品情報ページに,変換アダプタが付属するかどうかに関する言及はない |
ツインファン仕様の大型GPUクーラーを搭載 |
ちなみにこのクーラーは,GIGABYTEのGTX 460カードにも採用されているオリジナルモデル「WindForce」。2本のヒートパイプで放熱フィンへと熱を運び,2連ファンで冷却するという仕様だが,ユニークなのは,「Dual Power Mode」と「Smart Alternate Mode」,2つのファン動作モードが用意されており,前者では2基,後者では1基のファンが動作することで,冷却能力と動作音のバランスを調整できるようになっていること。後者は,回転しているほうのファンを故意に止めてみたところ,もう一方のファンが回転を始めるという安全な設計になっており,ファンの冗長性を確保するといった目的でも利用可能だ。
動作クロックはコア830MHz,シェーダ1660MHzで,リファレンスからは約6%の引き上げ。一方,搭載するメモリチップはN450GTS CycloneやGTS 450 Sonic Platinumと同じSamsung Electronics製の0.5ns品だが,メモリクロックはリファレンスと変わらず3.608GHz相当となっている。
GeForce Driver 260.63を用いてテスト
GTX 460やHD 5770にどこまで迫れるか?
そのほかのテスト条件は,基本的にレビュー記事と同じ。CPUの自動オーバークロック機能である「Intel Turbo Boost Technology」は無効化する一方で,「Intel Hyper-Threading Technology」は有効化する。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション10.0準拠。解像度は1680×1050/1920×1200ドットの2つだ。比較対象には,クロックアップモデル4製品が上位製品にどこまで迫れるかをチェックすべく,GTX 460搭載カードと,「ATI Radeon HD 5770」(以下,HD 5770)リファレンスカードを用意してある。
128bitメモリインタフェースという制約が
GTX 460 768MBとの間を断絶する大きな壁に
4製品を紹介したため,いつにも増して前置きが長くなったが,テスト結果の考察に移ろう。
グラフ1,2は,3DMark06の総合スコアをまとめたもの。GTS 450 Sonic Platinumに次いでPGTS450 FUJIN,そしてN450GTS Cyclone,GV-N450OCが続くという,見事なまでにクロック順の結果となっている。
ただ,GTX 460 768MBとの間には明らかな差がついており,そのギャップはまったく埋まっていない。また,128bitメモリインタフェースを採用しているという点では条件が同じHD 5770と比べたとき,「標準設定」ではGTS 450 Sonic PlatinumやPGTS450 FUJINがHD 5770と互角の勝負を演じている一方,「高負荷設定」の1920×1200ドットではHD 5770に置いて行かれている点も見逃せないところだ。
次にグラフ3,4は「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)における「Day」シークエンスの結果となる。1680×1050ドットに限れば,GTS 450のクロックアップモデルはHD 5770とかなりいい勝負を演じており,NVIDIAがターゲットにしたと主張している1680×1050ドットまでの解像度であれば,高クロック仕様に意味があることを見て取れるだろう。
ただし,GTX 460 768MBとの差がはっきりしている状況は,解像度や負荷設定を問わず変わらない。
同じSTALKER CoPから,より描画負荷の高い「SunShafts」シークエンスの結果をまとめたものがグラフ5,6になる。より“重い”DirectX 11テストとなるSunShaftsシークエンスだけに,GTS 450はリファレンスクロックでもHD 5770を上回った。
GTX 460 768MBと比べると力不足も明らかだが,あとは,標準設定ならレギュレーション10.0で規定するプレイアブルなラインを上回ってくる事実をどう判断するか,といったところだろうか。
同じくDirectX 11対応タイトルである「Battlefield: Bad Company 2」(以下,BFBC2)の結果がグラフ7,8だが,ここでのスコアは3DMark06の傾向を踏襲している印象だ。1680×1050ドットではGTS 450 Sonic PlatinumがHD 5770に対して互角以上に立ち回るが,1920×1200ドット設定だと,HD 5770に逆転を許す。
DirectX 9世代のゲームタイトルを前にしたときはどうかを見るべく,グラフ9,10でまとめたのが,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)の結果となる。
GTS 450については,先のレビュー記事で「DirectX 9のパフォーマンスが芳しくない」とお伝えしたが,クロックアップモデルはその状況を多少なりとも改善してみせている。リファレンス仕様に対するパフォーマンスの向上率は,最も動作クロック引き上げがマイルドなGV-N450OCで約5%。最もアグレッシブなGTS 450 Sonic Platinumで約16%。用いているグラフィックスドライバが異なるので,あくまでも参考程度ではあるものの,レビュー記事における「GeForce GTS 250」のスコアに対し,PGTS450 FUJINが一歩及ばない程度,GTS 450 Sonic Platinumなら同等レベルのパフォーマンスを引き出せる,ということになるわけだ。
とはいえ,それでもHD 5770には完敗であり,GTS 450がDirectX 9アプリケーションを苦手としているという事実自体が,クロックアップによって覆ったりはしていないのだが。
グラフ11,12に示した「Just Cause 2」のテスト結果だと,傾向が若干異なる。クロックアップモデルがGTS 450 Ref,に対して順当にスコアを伸ばしている点や,それでもGTX 460 768MBにまったく歯が立たないのはこれまでと同じなのだが,高負荷設定で,クロックアップ版GTS 450カードがHD 5770に対して互角以上のスコアを示しているのだ。
もっとも,HD 5770ともども,レギュレーション10.0で規定するプレイアブルなフレームレートを維持できているかというとそうでもないので,この点は悩ましいところといえる。
Just Cause 2と同じくDirectX 10世代のタイトルとなる「バイオハザード5」でも,GTS 450の持つ128bitメモリインタフェースという制約は,「クロックアップモデルでもGTX 460 768MBにまったく届かない」という結果になって現れている(グラフ13,14)。リファレンスモデルと比べると,クロックアップ版GTS 450カードはHD 5770との差をだいぶ詰めてはいるのだが,GTS 450 Sonic Platinumでも勝ちきれないあたりに,GTS 450というGPUの限界がいろいろ見えてくる印象だ。
一方,DirectX 11特化型GPUたる強みを最大限発揮したのが「Colin McRae: DiRT 2」(以下,DiRT 2)で,グラフ15,16では,N450GTS CycloneがHD 5770と互角以上に立ち回るなど,全体的に優勢といえる。
避けては通れない消費電力の増加
モデルによってはGTX 460 768MB並みのものも
さて,前述したように,今回用意した4枚のカードは,カードによりコア電圧が異なっていた。また,動作クロックが異なるうえ,電源周りもカードごとに異なっていることからして,消費電力がまちまちであることは容易に想像がつくのだが,実際のところはどの程度なのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を計測し比較してみることにした。測定にあたっては,アイドル時に加えて,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
その結果はグラフ17のとおりで,アイドル時こそ130W前後で揃ったテスト対象7製品だが,アプリケーション実行時の消費電力はかなりバラけた。なかでも高いスコアを示したPGTS450 FUJINのスコアは,273〜305Wで,ほとんどGTX 460 768MBと同レベルだった。PGTS450 FUJINだけ極端にコア電圧が高いというわけではないから,カードレベルの設計が影響を及ぼしているのかもしれない。
また,PGTS450 FUJINほどではないものの,GTS 450 Sonic Platiumも高めといえるだろう。一方,N450GTS Cycloneは,クロックアップモデルのなかでは低い値を示している。
最後にグラフ18は,アイドル時と高負荷時の各時点におけるGPU温度をGPU-Zで取得した結果となる。
動作クロックが異なり,さらにGPUクーラーも異なるので,横並びの比較にあまり意味はないのだが,高負荷時におけるN450GTS CycloneのGPU温度の低さが目立つ。これは表1を見てもらえれば分かるとおり,搭載するCycloneクーラーの回転数が高負荷時に2100rpmまで達するためだ。
ただ,だからといってうるさいかというとそんなことはなく,筆者の主観であることを断ったうえで書き進めるなら,ファンの動作音が一番大きかったのはGTS450 Sonic PlatinumとGV-N450OCで,N450GTS Cycloneはその次。PGTS450 FUJINの動作音が最も小さかったが,それもあくまで「4枚を比べたらそんな違いがあった」というレベルに過ぎない。いずれも静音性は高いと述べて差し支えない。
クロックアップモデルで最大の懸念は晴れたが
価格的には上位モデルを選ぶほうが賢明か
以上,大幅な動作クロックの引き上げを果たしたモデルにおいて,GTS 450最大の懸念点だった「旧世代のDirectX APIを採用したゲームタイトルで,GPUアーキテクチャ的には2世代前のGeForce GTS 250よりDirectX 9性能が低い」問題には,一定の解決を見たといっていいだろう。
ただ,問題はクロックアップモデルの実勢価格である。GTS 450 Sonic Platinumの販売価格は1万3980円(※2010年9月25日現在)で残る3製品は1万5000円から1万円台後半(※同)といったところだが,この価格帯だとHD 5770と完全に被り,さらにあと2000〜3000円足すだけでGTX 460 768MBを購入できてしまうのだ。
GTS 450のレビューで筆者はその存在価値を「価格動向次第」とまとめたが,クロックアップモデルはどうしても定格動作モデルより高くなるわけで,いよいよ厳しい。年末にかけて,大きく値下がってくればまた状況も変わると思うが,いまこの瞬間,DirectX 11世代のGPUを1万円台で手に入れたいというなら,HD 5770やGTX 460 768MBを選択するほうが賢明だろう。
- 関連タイトル:
GeForce GTS 400
- この記事のURL:
キーワード
Copyright(C)2010 NVIDIA Corporation