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「頭文字D ARCADE STAGE 6 AA」中国大会の優勝者来日。“セガ流おもてなし”で頭文字Dゆかりの地を巡ったツアーを密着レポート
このツアーは,シリーズプロデューサーの新井健二氏がコンダクター役となり,優勝者のTMR@03さんとともに「頭文字D」ゆかりの地を車で巡るという,いわば“セガ流のおもてなし”。4Gamerでは,ツアーへの1日同行取材を行ったので,優勝者と新井氏へのインタビューによる中国のアーケードゲーム事情と合わせて,その模様をお届けする。
「頭文字D ARCADE STAGE 7 AA X(クロス)」公式サイト
レポートに入る前に,簡単に中国での「頭文字D ARCADE STAGE」事情を説明しておこう。すでに日本国内だけでなく,中国や韓国,シンガポール,マレーシアなどのプレイヤーとオンライン対戦ができることから,東南アジア圏での展開が進んでいることはご存じの方も多いだろう。その中でも中国本土での頭文字D ASの人気は非常に高く,公式大会には総勢数百名のエントリーがあったという。ゲームセンター事情も,現在の日本のそれとほぼ変わりなく,繁華街には大型店舗が存在し,日夜大勢のプレイヤーが対戦で盛り上がっているそうだ。
横浜の日産ギャラリーでの歓迎セレモニーからツアーはスタート
TMR@03さんがツアーの最初に訪れたのは,横浜にある日産ギャラリー。これは,中国大会のスポンサーを日産が受け持った縁によるもので,プロモーション担当者が直々に,ギャラリーの案内や会食などでTMR@03さんを歓迎。ゲームでは,原作の主人公・藤原拓海と同じ86トレノを駆るTMR@03さんだが,「次回大会での優勝も期待しています。その際はぜひ日産車にお乗りください」と自社アピールも忘れていなかった。
広大なギャラリーにはファミリーカーからスポーツカー,最新の電気自動車など展示車がずらり。休日には1万人以上の来場者で賑わうそうだ |
普段は車に乗らないというTMR@03さんだが,ゲーム中に登場するスポーツカーには興味津々で接していた |
日産IPプロモーショングループの担当部長より,TMR@03さんにはGT-Rのモデルカーが贈呈された |
当日の珍事その1。ギャラリーに設置されていたエコドライブゲーム(なんとバンダイナムコゲームス制作で登場するのはパックマン!)をプレイするTRM@03氏。ゲームと見ると触ってみたくなるのは,国を問わずゲーマー心理のようだ |
頭文字D AS 6中国大会優勝者 TMR@03さんインタビュー
中国大会の優勝者TMR@03さん。上海出身の27歳で,普段は上海で働く会社員。王者というと強気な人というイメージを持つかもしれないが,素顔のTMR@03さんは冷静でもの静かな印象 |
初めての来日とのことですが,日本の印象はいかがですか?
TMR@03さん:
空気は上海よりずっとキレイで景色もいいけど,建物と建物の間が近いですね。道路が中国よりも揺れる印象です。
4Gamer:
今回の来日で一番楽しみなのは?
TMR@03さん:
秋葉原のゲームセンターに行けることですね。中国ではまだ「頭文字D ARCADE STAGE 7 AA X」がリリース前で,いち早く遊べるのはとても嬉しいです。でも,初めてプレイするので,日本の皆さんと対戦したら,たぶん負けてしまうのではないでしょうか。
4Gamer:
「頭文字D AS」の一番好きなところはどこですか。
TMR@03さん:
ドリフトが気持ちいいところですね。アニメ版も見ていますが,実は私は免許を持っていないんです。車を運転するのは,ゲームの中だけです。
4Gamer:
シリーズのプレイ歴はどれくらいですか。
TMR@03さん:
2000年に「頭文字D AS 3」をプレイしたのが最初です。中学生の頃にゲームセンターに行って「面白そうだな」と始めました。それからずっとこのシリーズだけをプレイし続けています。ほかのレースゲームもプレイしてみたのですけど,頭文字D ASが一番技術が必要なので,やりがいがあります。
4Gamer:
上海での頭文字D AS人気はどうでしょうか。
TMR@03さん:
上海だけでも2〜300人くらいの上級プレイヤーがいます。実は昨日来日してすぐに都内のゲームセンターに行ったのですが,雰囲気は上海と似ていますね。時間が遅かったのでプレイヤーが少なかったのは残念でした。
4Gamer:
大会で優勝したときの気持ちは?
TMR@03さん:
すごくワクワクしました。優勝したときはすごく嬉しくて,ステージ上で飛び上がってしまいました。もちろん勝つのは嬉しいですけど,ゲームを楽しむことのほうが比重は大きいですね。それと,TMRというのは中国最速のチームの名前なんですよ。私はその中で3番目に速いから03。30人くらいいるメンバーの中には,日本やシンガポールに留学している者もいます。
4Gamer:
普段はどれくらいプレイをするのでしょうか。
TMR@03さん:
だいたい毎週土日はゲームセンターに行きます。お昼すぎから夕方までの5,6時間をずっとプレイし続けています。シリーズが続く限り,ずっとプレイし続けるでしょうね。
新井氏自らがGT-Rを駆って東京ジョイポリスへご案内
新井氏の運転するGT-Rの助手席にTMR@03さんを乗せ,日産ギャラリーから東京ジョイポリスまで移動 |
当日の珍事その2。経路として使われたのは,(峠ではなく)首都高湾岸線。当然ながら,バトルなどせず安全運転でしたのでご安心を |
なぜジョイポリスが頭文字D ASゆかりの地かといえば,ここには「頭文字D ARCADE STAGE 4 LIMITED」が設置されているから。頭文字D AS 4をベースとして,藤原拓海のAE86,高橋啓介のFD3S,藤原文太のGC8と,人気キャラクターの愛車を模したリアルスケールの筐体には,TMR@03さんも興味津々。初プレイでは慣れない可動筐体に,CPUに負けてしまうハプニングもあったが,その後のプレイでは,着実に勝利をゲットしていた。実は筆者,助手席に乗せてもらったのだが,TMR@03さんは躊躇なくハンドルを切ってドリフトを決めていくため,筐体は上下左右に跳ね回り,さながら原作のイツキ気分であったことを付け加えておきたい。
実車の姿そのままが筐体となっている頭文字D AS 4 LIMITEDに驚くTMR@03さん。思わず記念写真をパチリ |
間髪を入れずに86に乗ってプレイを始めるTMR@03さん。初プレイは,慣れないライド筐体に振り回されていた様子 |
90インチのモニターを見ながらの臨場感あふれるプレイ。車体そのものが,ゲームと連動して3軸で動きまわる |
助手席からプレイ中のTMR@03さんを激写。ハンドルを勢いよく切るたびに,車体が大きく左右に揺れる(※特別な許可を得て撮影しています) |
シリーズプロデューサー新井健二氏に聞く,中国の頭文字D事情
中国大会は,どういう規模が行われたのでしょうか。
新井健二氏(以下,新井氏):
中国を東西南北の4地区に分けて,それぞれにある大都市の北京,上海,広州,重慶にて地区大会を行いました。そこを勝ち抜いた10名のプレイヤーが1月に行われた上海での決勝大会に参加しました。セガが主催したのは地区大会以降なのですが,2012年の夏から行っていた店舗や地区予選には,総勢の参加者は数百人はいるはずです。
決勝大会には観客だけで200人くらいの人が駆けつけて,日本でいうYahoo!のような大手ニュースサイトが取材に来ていました。その日の夜に女の子がいる飲み屋に行ったんですが,「それ今日,ニュースサイトで見た!」というくらいの大きな話題になっていました。
4Gamer:
では,中国での頭文字D ASの人気はかなりのものということですか。
新井氏:
正直,盛り上がりは日本以上かもしれないですね。中国での頭文字D ASの展開を始めたのは2003年頃のAS 3からなんですが,ようやくAS 6で火が付いた印象です。先日,広州でAS 7のお披露目をしてきたのですが,規模はあまり大きくないのに,ものすごく参加者が駆けつけてくれたんです。日本の市場はある程度成熟しているんですが,中国の今は,熱のあるコア層から一般層へと広がっている途中なんです。プレイヤー層も若い人が多く,決勝戦まで残った多くが10代でしたね。
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中国大会にてステージ上からコメントする新井氏。中国のプレイヤー間での新井氏の認知度は高く,イベントに参加するたびにサイン攻めにあうのだとか
4Gamer:
中国本土で頭文字D ASがヒットした要因はどこにあるのでしょうか。
新井氏:
2003年に,実写版「頭文字D」が公開されたのですが,それが中国・香港・台湾でものすごく大ヒットしたんです。それこそ同時期に公開された「スター・ウォーズ エピソード1」を超えるほどに(笑)。それに加えてゲーム的な面白さが中国のプレイヤーに刺さったようで,現在でも頭文字D AS 3が3000台ほど稼働していると聞きます。海外向けに販売したものの,ほぼ半数が中国にある計算です。
4Gamer:
日本では“走り屋”の存在があって,原作コミック,ゲームと展開していきましたが,中国ではそういう背景はあるのでしょうか?
新井氏:
中国では映画とゲームが起点となっているように思います。というのも,中国の若い子は車を持てないですし,ましてや峠を攻めるといった文化はありません。そもそも,北京や上海といった大都市の近くに山がないですし。ですから,86が実在の車かどうかもあやふやなところに映画のヒットがあったので,彼らの中では“86最強伝説”が,リアルに存在しているんです。
4Gamer:
ある種,ウルトラマンや仮面ライダーが本当にいたかのような!
新井氏:
遊びの文化が少なかったところにいきなりガツン,ですからね。そりゃハマると思います。
4Gamer:
中国のゲームセンター事情についてお伺いします。日本ではワンプレイ100円が相場ですが,中国ではどうですか。
新井氏:
日本円に換算すると,40〜50円くらいがワンプレイの相場ですが,現地の貨幣価値からすると,日本とそう変わらない感覚でしょうね。店舗の雰囲気も日本と似ていると思います。大きな街にはクラブセガのようなキレイな大型店舗がありますし,ローカルな人が集まるプレイ料金の安い小型店舗もあります。日本とやや異なるのは,デートスポットとして活用されているということでしょうか。現在の日本のゲームセンターは,ゲーム好きな人が集まる場所になっていますが,中国では女性客も訪れる,オシャレな感覚の場所という認識です。
4Gamer:
中国でゲームセンターが人気になった理由はどこにあるとお考えですか。
新井氏:
僕は2004年頃から中国を訪れているのですが,その頃から中国の景気が上向いたのが最大の理由でしょうね。お金はあっても使い道が分からなかった人たちが,娯楽にお金を落とすようになってきました。中国では,海外の家庭用ゲーム機が正規に販売されていないことも関係あるかもしれません。
4Gamer:
セガのタイトルで,ほかに中国で展開しているものはあるのでしょうか?
新井氏:
三国志大戦やWCCFの中国版を展開中ですが,セガの代表作というと,現状では頭文字D ASシリーズですね。カジュアル向けには「舞萌」(まいもえ)という名前で「maimai」を展開しています。日本のアニメ・マンガ文化が若い層に入ってきているので,受け入れられつつありますね。ただ残念ながら,セガという会社の名前は,ほとんど知られていません。中国では数年前まで,アミューズメント展開が国から制限されていたんですよ。現在は特定の地区なら問題ないのですが,それでも日本から直輸入はできないので,現地法人を設立しています。
4Gamer:
これから先の中国,アジア圏での展開の予定を聞かせてください。
新井氏:
すでにオンライン対戦が導入されている国には,頭文字D AS 7 AAXを導入していきます。中国では5月下旬から稼動予定ですね。もちろん日本もですが,次の柱として中国市場は頑張っていきたいと思います。人口が多いこともあって,かなりの可能性を秘めていると思います。今回のツアーもそうですけど,頭文字Dをきっかけに日本をもっと好きになってもらいたいですよね。僕らが小さい頃に「アメリカ横断ウルトラクイズ」を見て,ニューヨークに憧れを持っていたように(笑)。
いよいよ聖地・セガ秋葉原にて頭文字D AS 7をプレイ!
頭文字D AS 7 AAXが稼働しているフロアは,金曜日の夜だけあって,四つある座席すべてが埋まる混雑ぶり。TMR@03さんは,すぐにプレイを開始するかと思いきや,現地で合流した日本に留学中のTMR@10さんに話を聞いたり,うまいプレイヤーの走りをじっくり見たりと,しっかりと情報収集。この冷静さも,王座を獲得した理由の一つと感じさせた。
金曜の17時過ぎとあって,店内には大勢のお客さんが。頭文字D AS 7は常にシートが埋まっていた |
すぐにプレイに飛びつかず,じっくりと観察をするTMR@03さん。同じチームのTMR@10さんからの情報収集も欠かさない |
新規作成した免許証(記録カード)にて,GT-R(R35)を駆ってプレイを始めたTMR@03さんは,まず秋名湖の左周りを「タイムアタック」で攻める。AS 6と7の操作感覚の細かな違いや,コースレイアウトを確かめるような走りだが,いきなり店舗ランク5位(2回目で2位)に食い込むという,さすがの腕前を披露。
続いて,隣のシートに座った新井氏とのタッグにて,AS 7からの新モード「関東最速プロジェクト」でCPUの高橋兄弟を軽く撃破すると,その勢いのまま「全国タッグ対戦」へ。マッチングの結果,コースは秋名湖の右回りとなった。レース序盤こそ相手タッグにスコアで先行されるが,冷静な走りで追い上げ,中盤で逆転に成功。その後は一進一退の競り合いとなるも,着実にスコアを獲得した二人の勝利となった。
プレイを見守っていた新井氏によれば「AS 6と7ではハンドルの感触などが,かなり異なるので面食らっているはずなのですが,一発でハンドルの角度を決めてきますからね。やはりうまい!」と太鼓判。それを裏付けるように,店舗内でも常連プレイヤーらしき人達からの注目を集めていた。
なお,頭文字D ASに関連した日々の出来事は,Facebookの頭文字D AS公式ページにてレポートされている。海外で行われたイベントの模様も確認できるので,興味を持った人は一読されてみてはいかがだろうか。
「頭文字D ARCADE STAGE 7 AA X(クロス)」公式サイト
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