インタビュー
伊藤賢治氏が“全編バトル曲”のライブに向けて意気込みを語る。11月23日開催「THE NEXT STAGE 〜gentle echo meeting 3〜」を間近に控えたリハーサル現場に潜入
なお,THE NEXT STAGE 〜gentle echo meeting 3〜では,伊藤氏の名を広く知らしめたスクウェア(当時)在籍時の曲から,フリーの作曲家として手がけた最新の作品まで,氏の20年あまりのキャリアの中で制作された“熱い”バトル曲の数々が終始フルボルテージで演奏される。
その開催を間近に控えた某日,都内で行われていたリハーサル現場を取材する機会を得た。バンドのリーダーも務める伊藤賢治氏に,ライブの見どころなどについてミニインタビューを行ったので,ここに掲載する。ライブを楽しみにしている人は,ぜひご一読を。
「THE NEXT STAGE 〜gentle echo meeting 3〜」特設ページ
バンド編成によるバトル曲ライブは,
パフォーマーとして一つの究極形
4Gamer:
本番まで一週間を切り,今回が3回目のリハーサルとのことですが,手応えのほどはいかがですか。
僕以外のメンバーがすごい!(笑)
みんなほとんど20代で,吸収力が半端じゃないですね,やっぱり。こっちのアレンジ作業が遅くなってしまい,リハーサル当日に初めて練習するという曲が1〜2曲あったんですよ。みんな「えーっ」と言いながら,それでもできちゃうという。
4Gamer:
今回のライブについて,以前「体力的に大丈夫かなあ」と仰っていましたが(関連記事),そのあたりはいかがですか?
伊藤氏:
最初はずっと立ちっぱなしで演奏しようと思っていたんですけど,「無茶はよそう」と(笑)。なのでなんとか調節して,何曲かは椅子に座りながらピアノを弾くような感じにします。どうして20〜30代でこういうことをやってこなかったのかなと,あらためて思いますね。もうロックンロールらしくない年代になっちゃって(笑)。
4Gamer:
では今回,以前の「gentle echo meeting」とは異なり,ロックバンドという編成を選んだのは,なぜでしょうか?
伊藤氏:
去年(2011年)が作家生活20周年だったんですけど,今年はフリーになって10年目なんです。去年,今年と自分にとってアニバーサリーな年が続いたのと,過去2回のgentle echo meetingのアンケートで,「バトル曲をやってください!」という声を本当にたくさんいただいたので,ここでやっとかないとダメだろうと。そのためには,バンドを編成してライブするのが最適だったんですよ。
4Gamer:
例えば,ライブの構成として,バトル曲を織り交ぜつつ緩急をつけるような案はなかったのでしょうか。
伊藤氏:
いえ,どうせバトル曲をやるのなら,パフォーマーとして一つの究極の形まで見せつけるところまでいこうかなと。だから,そういった保険をかけるのはやめておこうと思って(笑)。
4Gamer:
すさまじい気合いの入れようですね(笑)。
今回のように,バンド形式でライブを行うのは伊藤さんにとって初めてのことではないですか?
伊藤氏:
初めてですね。クラシックの編成でバトル曲をアレンジして演奏することはやってきましたけど,こういう典型的なバンドスタイルでやるのは初めてなんです。意外にも(笑)。
4Gamer:
バンドの編成はどのような感じでしょう?
キーボード,ギターが2人,ベース,ドラム,それに今回,マニピュレーターも一人います。ストリングスなどの楽器を上乗せしているので,音が厚くなっていますね。
4Gamer:
マニピュレーターの音源は伊藤さんが作られているんですか?
伊藤氏:
僕が今回のアレンジをMIDIで作って,それをマニピュレーターの和田(貴史)君が直して,という感じです。和田君とは,前から一緒に仕事をしてきているので,意思の疎通もバッチリでした。
4Gamer:
今回のライブに向けて,各楽曲のアレンジも変更していると思うんですが,どのあたりが“聴きどころ”になりますか?
伊藤氏:
バンドメンバーはみんな,ミュージシャンとしてきっちりやっている連中なので,アドリブやソロパートをけっこう入れています。原曲にはないフレーズだったり,各ミュージシャンのプレイの力量だったりを見せつけることも含めて,あえて原曲のメロディ以外の部分にも注目してほしいなと思います。
4Gamer:
単純に今までのゲームで体験してきた曲そのものではなくて,その場でしか聴くことのできない演奏もあると。
伊藤氏:
そうですね,一期一会的な。だからきっとアドリブなんかは,二度と弾けないフレーズも飛び出すと思うんです。
4Gamer:
つまり,原曲を忠実に再現するだけでは飽き足らないわけですね。
伊藤氏:
ええ,格好良く言っちゃうとそんな感じですね。
この前,「聖剣伝説」生誕20周年でアレンジアルバム「Re:Birth」を出したんです。アルバムでは,当時からのファンはもちろん,ゲーム音楽ファン以外にも聴かせられるようなクオリティを追求した部分がありました。そこが受け入れられたということも大きかったんですけど,中には「手を加えすぎ」だとか「原曲にもっと忠実にしてくれれば良かった」という意見も少なからずありました。
そういう気持ちも分かるんですけど,今回は,新しく生まれ変わったバトル曲を楽しんでいただこうと思っています。
4Gamer:
個人的には音楽って,時代とともに変わっていったり,作家さんの気持ちの部分が変わっていったりすることによって,常に変化するところも面白さだと思うんです。そういう意味で今回は,バンドサウンドでいろんなフレーズが加わっている部分についても,楽しみにしています。
伊藤氏:
ありがとうございます。
原曲ファンも根強くて,皆さんに支えられているというのも大きいんですけど,作り手として,立ち止まるわけにはいかないじゃないですか。いつも同じサウンドを繰り返すわけにはいかないですし。
4Gamer:
まったく同じことを繰り返していると,それはそれで批判の声も出るでしょうし……。
ところで今回,公演全体の尺はどれくらいになるんでしょう。
伊藤氏:
休憩込みで2時間を切るくらいですね。
4Gamer:
今まで作られたバトル曲も,全部繋げたら相当な長さになりますよね。そこから厳選して,2時間に収める感じにしたのだろうと思いますが,曲の選定は何を基準にしたんですか?
今回はとにかく楽しんでもらおうということで,完璧に“定番中の定番”で決めていきました。
4Gamer:
どんな曲が飛び出すか,かなり楽しみになってきました!
それでは最後に,当日に向けての意気込みをあらためて伺わせてください。
伊藤氏:
意外に(バンドスタイルを)楽しんでいる自分もいたりして。そういう意味では,楽しみすぎちゃって大きい失敗もあるかもしれない――それも踏まえてみんな楽しんでもらえればと思います。
3月の震災以降,沈んだ時期もありましたけど,そういうものを吹っ飛ばせるくらい,我々も聴いてくれるみんなも,気持ちのいいステージにしたいなと。たとえ一日だけでも,お互いがそういう気分になれたら嬉しいですね。
4Gamer:
ありがとうございました。
さらに,伊藤氏以外のバンドメンバーからも,当日に向けての意気込みをうかがったので,ここに紹介しよう。
寺前 甲氏(ギター) ゲームの曲自体を子どもの頃から聴いていたので,伊藤さんの曲を演奏するというのは変な感じですね(笑)。光栄です。気合いを入れてやります |
上倉紀行氏(ギター) 自分は元々ゲーム音楽を作る仕事をしているんですが,今回イトケンさんに呼んでいただいて参加しています。イトケンさんのいろいろなバトル曲をお届けできると思いますので,来場者の皆様にも楽しんでいただければと思います |
榎本 敦氏(ベース) 最近,ゲーム音楽関係で演奏させていただくことがあるのですが,今回はハードな曲も多いので,体力を付けて,気合いを入れてがんばります |
山内 優氏(ドラム) ゲーム音楽に関わるのは初めてで,(BPMが)速い曲ばっかりで最初はびっくりしたんですけど,みんなに付いていけるように頑張っていきたいと思います |
和田貴史氏(マニピュレーター) いつもは観る側でしたが,今回は裏方として頑張りたいと思います。機械を使う仕事なので,事故がないように(笑) |
腕利きのミュージシャン達をメンバーに迎えたバンドサウンドは,リハーサルの時点ですでに息のぴったり合ったグルーヴ感が出ており,まさに圧巻のひと言。ゲームで流れる原曲を知っていればいるほど,生演奏ならではの迫力の大きさも存分に味わえるはずだ。無事にチケットを入手できた伊藤氏のファンは,サントラなどで“予習”をしつつ,当日を楽しみに待とう。
なお,残念ながらチケットは既に完売してしまっているが,4Gamerでは当日のライブレポートもお届けする予定なので,足を運べない人はそちらをお待ちいただきたい。
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