インタビュー
ゲームミュージックはどうしたらメジャーになれる?――「すばらしきこのせかい」石元氏דZUNTATA”小塩氏による,2時間にわたる音楽談義。「ミュージックガンガン!2」の裏話からゲーム音楽の将来まで
アニメソングとゲームミュージックの違い。そしてゲームミュージックが普及するための術とは?
石元氏:
ちなみに小塩さんは,普段どんな音楽を聴かれるんですか?
僕はエレクトロ系が一番好きですね。大学の頃はテクノしか聴いてなかったので,それじゃイカンなと思っていろいろ聴いて。今は大体,テクノと……アニソンですね。
(一同笑)
小塩氏:
いや,皆さんアニソンを笑ってバカにするけど,アニソンをバカにしちゃいけないという話で! 「えっ,アニソン?」っていう人がいるけど,そういう人に向かって「違うんだよ,お前アニソンをバカにしているだろ!」と。
石元氏:
なんか「しゃべり場」っぽくなってきましたね(笑)。
小塩氏:
今のアニソンって,今の音楽のエッセンスが詰まっているんですよ。昔のアニメ主題歌って,大体パターンが決まっていて,ある意味画一的だったんですけど,今は番組の個性を強く出しているものが多いんです。アニソンはアニメの顔なので,とにかく覚えてもらわないとしょうがない。なので,“キャッチーで耳に残る”エッセンスだけは,アニソンは外さない。
石元氏:
アニメの曲に使われたからアニソンというのか,それともアニメのために作ったからアニソンというのか,どっちなんですかね?
小塩氏:
昔は後者だったと思うんですよ。でも今は,わりと前者ですね。仮にアニソンを1枚のアルバムに集めて,「J-POPのコンピレーションです」といっても,ほとんどの人が分からないと思うんですよ。昔の曲なら,聴いたら「これアニソンでしょ?」って分かりますけど。
石元氏:
この間,ある人と「ゲームミュージックは一般には敬遠されがち」という話になって。その人はゲーム音楽を広めたいらしいんですけど――さっきのアニソンの話と同様,ゲームをやらない人から,ゲームミュージックがバカにされるようなことがある。それについて,「何でだろう?」と考えてみたんです。
たとえば映画の「アバター」は大ヒットして,大勢の人が見ているわけでじゃないですか。でもサントラがほしいとは思わない。けど「トロン:レガシー」のCMの曲をパッと聴くと,映画を観ていないのにサントラが欲しくなるんですよ。うちのスタッフにも「映画は観てないけど,サントラは買いました」というのが結構いて。その違いがすごく面白い。
ああ,分かる気がします。
石元氏:
「トロン」のCMで,あの曲のあのシーケンスがバッと流れただけで「かっこいー!」「その先が聴きたい!」って感じる。「ゲームに合う」っていうのも,もちろん大事ですけど,「音楽が一人歩きする」こともあって良いんじゃないかと。
「ゲームの売り上げに対して,サントラがその何パーセント売れたか」という数値を僕等は気にするんですが,その方法の一つとしてね。
小塩氏:
存在感がやっぱり違いますよね。「トロン:レガシー」のサントラを買った人の全員が全員,ダフト・パンク(※フランス出身の世界的エレクトロ・デュオ。「トロン:レガシー」のサウンドトラックを全曲担当した)のことを知っているわけじゃないのに。
石元氏:
CMの数十秒聴いただけで,ちょっとイライラしてきますね(笑)。「もう,負けたよ」と思って。僕,良い曲を聴いている最中は「うわー凄い!」と感じるんですけど,聴き終わったあとは嫉妬するんですよ。「何で作った人が俺じゃないんだろう?」と(笑)。
ゲームミュージックがもっと売れるためには……どうしたらいいんですかね? 僕ね,そうやっていっつも逆取材するんです(笑)。
小塩氏:
シンプルな命題として「どういうゲーム音楽だったらみんな買うか」ってことですね。たとえば4Gamerさんは普段から色々なゲームをプレイされると思うんですが,そのゲームのサントラを買うかどうかの基準って,どうですか?
4Gamer:
うーん,自分はあまり普段から音楽に親んでいるほうではないので……そうですね,そのゲームに完全に心酔して,「関連するものなら何でも買わなきゃ」というモードになったときでしょうか。あるいはもう,相当にその作家さんが好きになったか。
小塩氏:
プロデューサーはどうですか?
どうしてゲームミュージックに皆さんの手が伸びないのかといったら,まず「ゲームミュージックという分野自体を知らない」というのが大きいんじゃないですか。さっきの話でいうと,アニソンってもう,ヒットチャートにどんどん入ってくるので,みんな抵抗がなくなっていますよね。昔はオタク的なものに抵抗感があったけど,皆がオタクになって,それが「個性的だね」と認められるようになってきた。だけど,ゲームミュージックは,まだそこまで届いてないのかな,と思います。
石元氏:
いや,お二人の意見は凄く大事だと思います。やっぱり外の人の意見は聞かないとダメですよね。今のアニソンの話だと,ゲームもファミコンの頃は「オタク」なイメージだったじゃないですか。それが,ソニー・コンピュータエンタテインメントがPlayStationを出したあたりから,「女性がゲームを楽しむ」ことが一般的になってきたと思うんです。アニソンも,昔はそんな感じだったはずなのに,音楽に関してはアニメのほうが進んでいますね。
小塩氏:
最近は人気アニメだと,オープニング/エンディングとは別に,キャラクターソングが出ていますよね。ゲームではなかなかそこまでは行かない。クラウド(「FFVII」の主人公)のテーマとか,どうですか?
石元氏:
いやー……多分,「やめてくれ」っていわれます(笑)。
4Gamer:
ゲームでも,そういうやり方をしているタイトルはありますよね。例えば「アイドルマスター」とか。
小塩氏:
「アイドルマスター」はそもそもそういう設定ですからね。……もはや「ミューガン2」とはまったく関係ない話になっている気がしますけど,「アイドルマスター」の曲は「ミューガン2」にも入っていますからね,「エージェント夜を往く」とか「GO MY WAY!!」が!(関連記事)
石元氏:
「どうやって売るか」「どうやったらみんなに聴いてもらえるか」とか,考える事が大事ですよね。それを考えないとやっぱりあとには続かない。
小塩氏:
僕が今まさに「スペースインベーダー インフィニティジーン」(PS3 / Xbox 360)のサントラを作っていて,その真っ最中ですね。スクウェア・エニックスさんの場合は,おそらく音楽出版部署があると思うんですが,うちは担当部署がないからZUNTATAのメンバーがやるんです。本当にどうしたらゲームをやった人に,もっといえばゲームをやってない人にまで,アピールできるんだろうかって。
石元氏:
難しいですね。どうしても「ゲームをやった人が,サントラを買う」という流れになっているんで,それはやっぱりゲームをやった人が「買いたい」と思うようなものを作らないと。
4Gamer:
逆に,音楽を先に聴いてから「このゲームをやってみよう」という気にさせるようなパターンもあるのでは?
石元氏:
それも大事ですね。だから発想を変えて,「ゲームに合わせる」だけじゃなく,「一般層に届く」1曲を作るんです。
4Gamer:
うーん,なるほど。しかし「ファイナルファンタジー」シリーズの楽曲なんかは,すでに届いているのでは? それこそ石元さんの携わった「DISSIDIA 012[duodecim] FINAL FANTASY」のサントラはオリコンのデイリーランキングでチャートインまでしていましたよね。
石元氏:
それはしていましたけど……それで満足していたら駄目だなと。もっと上のところまで行きたいんです。例えば,待ち合わせ場所としての“新宿南口”みたいに,「みんな知っています」というところまで。
小塩氏:
ああー……。凄い。
石元氏:
いや,単に自分の考える目標なんで,言うだけ言ってしまえば良いと思うんです(笑)。目標の設定を凄く高くしておいて――たとえば“レアル・マドリード”といったら一流選手の集まるサッカークラブですけど,「俺はあそこでやりたい」と言って,その結果が“FCバルセロナ”でも良いと思うんですよ。目標が低いところにあると,低いところで満足しちゃうから。周りに笑われても,別にいい。笑われるだけ,まだありがたいかなと思うんですよ。いや僕も,社内でそんなこと言っていたら「あいつあんなこといっていてさ……」ってなりますよ(笑)。でもそれはいいんですよ,それで。
小塩氏:
僕の場合は――こういわれたら笑われるかもしれないですけど――でっかい目標はでっかい目標であったとしても,一つ一つ小さい目標をクリアして,積み重ねて来たタイプなんです。ゲーム音楽を作りたい! というのが先にあって,じゃあまず「曲を作れるように」ならないといけない。その次は「何とかゲーム会社に入ろう」「サウンドに関係する職に就こう」って。RPGのレベルアップじゃないですけど,順番に小さい目標をクリアしていくことで,テンションが維持できるんです。
プレイヤーからの声が,自分達の一番の後押しに
小塩氏:
でもおかげさまで僕も面白い話がいろいろ聞けて……自分もちょっと,人生見直そうかな? 対談が終わってフロアに帰ったら,軽く凹んでいると思います。「石元さんやっぱり凄い人だったわー……」って(笑)。
石元氏:
凄くはないんですけど,ただ「言ったからにはやらなきゃ」って,自分を追い込んではいますね。「人間いずれ死ぬんだ」と思っているので,だったらその時感じたことを,素直にやっていきたい。毎日普通に生きていることが当たり前だったら,喜びも感じないじゃないですか。生きていて,音楽を作れて,聴いてもらって,それで生活できるっていうのは幸せなこと――。
実は冷静に考えると,とてつもなく凄いこと。
石元氏:
だと思うんですよね。
小塩氏:
ただ,ずっと作っているとやっぱり慣れてきちゃうんですよね。僕も昔はもっとピュアだったんだけど……(笑)。石元さんがコンポーザーとして初めて「BEFORE CRISIS -FINAL FANTASY VII-」を担当された頃のテンションに近かったと思うんです。
石元氏:
でもあれも何回か落とされたんですよ,社内コンペで。3回落とされて,4回目で通って。
小塩氏:
え,そうなんですか。でも,3回失敗して4回目に挑戦するというのがなかなか……。
石元氏:
以前,別の人にも「私だったら辞めている」といわれたんですが,でも「諦める」のはいつでもできるから,それは一番最後にすればいいと思うんです。そして一度「あー,やめた」ってなると,次は諦めから入っちゃうから,僕は「諦める」というのはあまり考えない。すみません,説教みたいで(笑)。
小塩氏:
いや,凄く勉強になりましたよ。
4Gamer:
宴もたけなわなところで申し訳ないのですが,そろそろお時間になってしまいました。最後にお二方のファンへ,何か一言いただきたいのですが。
そうですね……僕は逆に,プレイヤーから感想をもらいたいですね。
4Gamer:
曲の感想ですか。
小塩氏:
それは僕も訊きたいです。「ミュージックガンガン!」については,Twitterのハッシュタグ“#mugan”がありますから,このハッシュタグを付けてつぶやいてくれれば,スタッフが拾います! とくに今回,この2人の対談を読んで「何かやってみよう!」と思った方はぜひ,そのことをつぶやいてほしいですね。
石元氏:
感想を読むのは面白いですよね。
小塩氏:
「あ,そこなんだ?」と,全然自分が期待してなかったところを褒められたりしますね。
4Gamer:
あ,そういえば「ミューガン2」のサントラなどのご予定は? きっとアーケードでなく,自宅でじっくり聴きたい人も多いと思うのですが。
小塩氏:
サントラを出してほしい人は,“#mugan”で「出してくれ!」とつぶやいてください。
4Gamer:
その声が,一番の後押しになると。
小塩氏:
いや,本当にそうなんですよ。「サントラを出したい」というと,二言目には「どれだけ売れるの?」と訊かれるわけで。反響が大きければ「じゃあ出そうか」となります。本当に,そこに尽きますよ。
4Gamer:
音ゲーのサントラだと,ゲームに収録されている1分半〜2分バージョンより,もっと長い4〜5分の「フルバージョン」を期待しちゃいますね。
石元氏:
フルバージョンかあ……。たしかに,もっと長くしたいですね。
小塩氏:
ですよね。私も,今井麻美さんや神谷浩史さんのテーマ曲はまた録りたいです。
4Gamer:
おお,それはますますサントラに期待したいですね。本日はありがとうございました。
最終的には,“ゲームミュージックの将来”にまで話題が及んだ今回の対談。この対談をきっかけに,石元氏や小塩氏の作る楽曲に興味を持った人も多いのではないだろうか? その際はぜひ,ゲームセンターに行って実際に「ミュージックガンガン!2」をプレイし,“#mugan”のハッシュタグ付きで感想や要望をつぶやいてみてほしい。
また,対談の中で話題になった「Dreamer」のフルバージョンが聞いてみたい! という人は,サントラの発売を願うTweetをぜひ寄せてほしい。その行動一つで,きっと何かが変わるはず。対談の中でも述べられているように,プレイヤーの一言こそが,実はクリエイターを後押しする一番の力となるのだから。
「ミュージックガンガン!2」 店舗イベント開催!
ZUNTATAによる東方Projectのアレンジ曲CDを限定配布!
業務用ゲーム機「ミュージックガンガン!2」の店舗イベントを東京・埼玉・大阪・名古屋で開催いたします。
本作は、“音シュー(音楽ゲーム+ガンシューティング)”という新感覚のゲーム内容で、充実したジャンルの曲を多数収録しています。
今回の店舗イベントでは、本作収録曲の中でも特に人気の高い「東方Project」のアレンジ曲をプレイ後アンケートにお答えいただくと、当社のサウンドチーム「ZUNTATA」が、「東方妖々夢/ネクロファンタジア」と「東方紅魔郷/U.N.オーエンは彼女なのか?」をアレンジした人気の収録曲「東方散楽祭」と「東方音銃夢」の音源が入った限定CDを各店舗先着100名様(秋葉原「Hey」のみ先着150名様)にプレゼントいたします。
【イベント概要】
■内容:
「ミュージックガンガン!2」をプレイしてアンケートにお答えいただいたお客様、各店舗先着100名様に、ZUNTATAによる東方Projectのアレンジ曲CDをプレゼントいたします。
※プレゼントは、秋葉原「Hey」のみ先着150名様となります。
■プレイ料金:1PLAY(1曲) 200円
■日時/場所:
・5月14日(土) [埼玉] ゲームマグマックス川越 整理券配布10:00〜 イベント開始11:00
・5月21日(土) [大阪] アムパーク BIGJOY 整理券配布8:00〜 イベント開始9:00
・5月28日(土) [名古屋] アーバンスクエア大須店 整理券配布9:00〜 イベント開始10:00
・5月29日(日) [東京] Hey 整理券配布10:00〜 イベント開始13:00
【権利表記】
(C)TAITO CORPORATION 2009,2011 ALL RIGHTS RESERVED.
※東方Projectの原作者ZUN様(上海アリス幻樂団)の許可をいただいております。
「ミュージックガンガン!2」公式サイト
- 関連タイトル:
ミュージックガンガン!2
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