台湾時間2015年6月2日,MSIが台北市内のホテルでゲーマー向け製品ブランド「
G Series」の報道関係者向けイベントを開催したというのは
既報のとおりだが,同社はそこで,「Intel X99」チップセット搭載の新しいマザーボード「
X99A GODLIKE GAMING」を発表した。
動作デモ中のX99A GODLIKE GAMING。名称は,FPSでKilling Streakが続いたときによく表示される賞賛「Godlike!」と,挨拶で使われる「GG」(Good Game)をかけた命名だという。拡張スロットはPCI Express x16×5,PCI Express 3.0 x4接続のM.2×2。Serial ATA 6Gbps×10で,Serial ATAポートのうち2つはSATA Expressにも対応する
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Android版の設定アプリ。色と光り方を調整できる
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その後訪れたMSIブースでは,製品担当者と筆者との間で,「機能の名称は『Mystic Light』。25個のLEDを本体のそこかしこに埋め込んであって,Windowsもしくはスマートデバイス上のアプリから,Bluetooth接続で色や光り方を変更できます!」「確かにキレイだけど,これはゲーム用途でどういう意味があるんですか」「(一瞬言葉に詰まってから)ク,クールでしょ!」「お,おう……」というやり取りがあったりもした本製品。ただ,突っ込んで話を聞いてみると,MSIがSkylake世代のゲーマー向けマザーボードで狙っているものの一端も見えてきたので,今回は,そのあたりをまとめてみたいと思う。
X99A GODLIKE GAMINGの新機能をまとめて確認
X99A GODLIKE GAMINGに載るAudio Boost Pro 3の概要
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「光る」という要素以外で,X99A GODLIKE GAMINGの大きな特徴として訴求されたのが,新しいオンボードサウンド機能「Audio Boost Pro 3」だ。マザーボードの基板上の独立したブロックに,チップレベルで129dBのS/N比を実現したESS Technology製D/Aコンバータ「SABRE9018AQ2M」を採用し,オーディオグレードのヘッドフォンアンプやOPAMP(オペアンプ),コンデンサを組み合わせ,ヘッドフォン出力には6.3mm径の標準プラグすら利用できるという凝りようだ。そこに,最近になってMSIとの提携を拡大させている仏Nahimic(ナヒミック)製のオーディオプロセッサソフトウェアスイート「Nahimic Audio Software」を組み合わせてあり,それによってバーチャルサラウンドサウンドや,マイク入力時のノイズ低減などを図れるという。
Nahimic Audio Softwareのユーザーインタフェース。直感的だが,普段からオーディオに触れていない人だと,取っつきにくく感じるかもしれない
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あくまで,極めてがやがやとしたMSIブース内での体験結果だと断ってから続けると,出力系やマイク入力時のAGC(オートゲインコントロール,小さすぎる声や大きすぎる声を適正な音量に調整するもの)にこれといった個性は感じなかったが,マイク入力時のノイズ低減機能は,非常に優秀な印象があった。
もう1つは,「Killer DoubleShot-X3 Pro」だ。これは,Rivet Networksの1000BASE-T LANコントローラ「Killer E2201」とIEEE 802.11ac対応無線LANコントローラ「Killer Wireless AC 1535」を併用し,ゲームやゲーム関連アプリケーションのパケットを優先して通すことで,体感レベルのネットワーク性能を引き上げるとされるもの。MSIはこれまでも有線LANと無線LANの併用による「Killer DoubleShot Pro」などを採用してきたが,それが最新世代のコントローラと仕様にアップグレードされたという理解でいいだろう。
ちなみに,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)はこれを「Killer DoubleShot Pro X3」と呼んでいるのだが(
関連記事),MSIが示したロゴバッジ画像を見る限り,MSIの表記のほうが正しい気はする。
GIGABYTEの話が出たので続けると,X99A GODLIKE GAMINGでMSIは,GIGABYTEが「Intel Z170」チップセット搭載のゲーマー向けマザーボードで採用しているのと同じアイデアに基づくPCI Express x16スロット用の金属カバーを「Impregnable Steel Armor」(Impregnable:強固な)として採用している。スロットの破損を防ぐことができ,EMIシールド機能を持つというのも,GIGABYTEのアイデアと同じだ。ほぼ同時に,MSIとGIGABYTEの両社が,同じ機能を実装するというのは面白い。
Impregnable Steel Armorに寄ったところ。ブース内に展示されていたX99A GODLIKE GAMINGのうちいくつかはImpregnable Steel Armorを採用していなかったが,最終製品版には間違いなく採用される
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X99A GODLIKE GAMINGでは,「Turbo U.2」カードを同梱するのもトピックとなる。Turbo U.2は,SFF-8639コネクタを追加するM.2接続型ドーターカードで,誤解を恐れず簡単に紹介すると,これは,2.5インチディスクドライブ互換の形状と,SFF-8639と呼ばれるコネクタを採用したNVM Express接続のSSDを接続するためのものとなる。現時点では事実上,Intel製SSD「Solid-State Drive 750」の2.5インチディスクドライブ版を接続するためのインタフェースと言い切ってしまってもいいだろう。
本文とは直接関係しないが,MSIブースのX99A GODLIKE GAMING展示コーナーには,本製品用となる液冷ブロックも展示されていた
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G SeriesオリジナルのSLIブリッジコネクタも発表された。2-way用の小型版はすでに量産が始まっているとのこと。国内発売は検討中で,ひょっとすると非売品にして,カードを2枚以上買った人へのプレゼントにするかもしれないと,エムエスアイコンピュータージャパンのAki Lin氏は話していた
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いずれもSkylake世代のマザーボードで対応可能。これらを採用したゲーマー向けZ170&H170マザーが出るかも
MSIがブースで展示していたIntel Z170マザーボード「Z170A-G45-GAMING」に,X99A GODLIKE GAMINGの新機能が採用されている気配はほとんどない。今回公開されなかった上位モデルでサポートしてくるのではないかと思われる
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ここまで説明してきたポイントで重要なのは,いずれも,X99A GODLIKE GAMINGでなければ使えない機能というわけではないということだ。もちろん,MSIの現行ラインナップに限っていえば,いま挙げた機能をサポートするのは新世代フラグシップたるX99A GODLIKE GAMINGのみだが,Skylake世代のデスクトップPC向けCPU「Skylake-S」(開発コードネーム)がリリースされた暁には,対応マザーボードがこれら新機能をサポートしていても,何ら不思議ではないのだ。
「光るマザーボード」というところに目を奪われがちだが,Intel 100シリーズチップセット搭載のゲーマー向けマザーボードに向けた,技術ショウケースとしても,X99A GODLIKE GAMINGは,チェックしておく価値があるのではなかろうか。