レビュー
小さな島の羊飼いから世界中を旅する復讐の冒険者へ……ドイツ生まれのRPG「アルカニア ゴシック 4」レビュー
村長の娘を妊娠させたところからスタート……それはもういい?
アルカニア ゴシック 4
2011年3月24日,サイバーフロントより,ドイツ生まれのファンタジーアクションRPG「アルカニア ゴシック 4」(以下,アルカニア)のXbox 360版が発売された(PC版は2011年4月14日発売予定)。これまでに3回のプレイレポートでゲームの内容を紹介してきた本作だが,今回はレビュー記事をお届けしたい。
■第1回■
「アルカニア ゴシック4」の楽しみ方を紹介。西欧ファンタジー世界を舞台に,戦いだけではない自由な暮らしを満喫するのだ
■第2回■
3月24日に発売される本格シングルRPG「アルカニア ゴシック4」
“サブクエスト”と“スキル”の魅力にググッと迫る
■第3回■
村長の娘を妊娠させたところからスタートする「アルカニア ゴシック4」
冒険の舞台となる各エリアを大紹介
アルカニアはタイトル名から察しがつくように,「Gothic」シリーズの最新作となるRPGだ。本シリーズはこれまで,PC専用タイトルとして3タイトルが発売されてきたが,4作目にして初めてコンシューマ機もサポートされることとなった。
本作はサイバーフロントによって,膨大な量のテキストやUIなどすべてが日本語化された。気になるローカライズだが,英語音声に日本語字幕が付くほか,メニューまわりのテキストなどが日本語に置き換えられているという,一般的なスタイルになっている。丁寧に作業が行われたことをうかがわせるクオリティで,安心して遊べるものと思う。
「アルカニア ゴシック 4」公式サイト
キャラクターメイクがない思い切った作風
無名の羊飼いを操作し冒険の世界に旅立とう
ゲームのスタート地点となるのは,フェシルという名の小さな島にある村で,ここは人間とオークが共存する世界になっている。主人公はこの島で羊飼いをしている青年だ。
主人公は村長の娘アイヴィーと交際しており,結婚前にもかかわらず彼女を妊娠させてしまったため,結婚を許可してもらおうと村長のもとへ頼みにいく。しかしおかんむりの村長は,そんな主人公にさまざまな“試練”を与え,それを達成するよう命じてくる。なんというか,海外製RPGにしてはずいぶん軟派な展開というか,ここだけは妙に現代的な話だ。
この“試練”がいわばチュートリアルクエストとなっており,基本的な操作方法,クエストの受け方や進め方などを学べる。
チュートリアルの終盤では,島内に住む魔女から魔法の巻き物を借りて,敵を倒すというイベントがあるが,これを終えるとフェシルに突如ミルタナ王国の騎士団が押し寄せてきて,村は壊滅してしまう。たまたま難を逃れた主人公は,自分のすべてを奪ったミルタナ王国と,その王ロバール3世に復讐するため,アルガーン島へと向かうのであった。
……以上のような流れで,いよいよ冒険の旅が本格的にスタートする。
メイン・サブあわせて300以上のクエスト
アルカニアでは,エリアごとに達成しなければいけない「目的」(=メインクエスト)があり,それをクリアすることでストーリーが進んで,移動できる範囲も拡大していく。海外製のオープンワールドRPGにありがちな,チュートリアルを終えたら「じゃあ,あとは好きにやりなよ」という投げっぱなしな感じは少なく,割と遊びやすい印象だ。
もちろん,昨今のRPGでは定番要素となっている「サブクエスト」も豊富に用意されている。こちらはプレイヤーの好きなタイミングで挑戦できるので,息抜きとしても楽しめるだろう。クリアすれば経験値やお金,アイテムなどが報酬として得られるので,ぜひ挑戦しておきたい。
メインクエスト,サブクエストは合わせて300以上用意されており,コンプリートを目指そうとすると,80時間ほど必要になるそうで,ボリュームはかなりのものがある。
これだけ数があると管理が大変そうだが,現在発生しているクエストやクリアしたものは,すべて「クエストブック」から確認できる。未達成のクエストに関してはハイライト表示が可能で,目的地をマップ上に表示することもできるので,非常に分かりやすい。
なおメインクエストは,ある程度進めてしまうと,たまに後戻りできなくなることがある。やり残したサブクエストもあきらめざるをえなくなり,その点は注意が必要だろう。
大自然たっぷりの広大な世界……少々たっぷり過ぎ?
舞台となるアルガーン島はかなり広く,要所要所に集落や城下町など,大小さまざまなコミュニティがある。この世界での基本的な移動手段は徒歩だが,特定の場所には「ストーンサークル」という一種のテレポーターが用意されている。これは主人公が近づくと自動的に起動し,サークル同士の間を瞬時に移動できるのだ。
ちなみにフィールド上にはいくつものコレクタブルアイテムが落ちていて,これをコンプリートすれば解除できる実績が,複数用意されている。しかし漠然と探し物をするには広すぎる世界なので,ここは攻略サイトなどを参考にしたほうが効率はいいかも。
物語を進めていると,たまに選択肢が発生する場面がある。ただ,選択肢次第で後々のストーリー展開に大きな影響が出ることは,あまりない。あくまでクエスト中の問題の解決方法がいくつかあるだけで,どれを選んでも結末は変わらないものが多いようだ。
恋人である村長の娘からして強烈だが,キャラクターデザインは全体的にかなり「濃い」ので,日本のRPGに慣れ親しんでいる人から見ると,度肝を抜かれてしまうかもしれない。これらのキャラクターモデルは,本作の特徴の1つといえるだろう。
ただ,肝心のキャラクターモデルのバリエーションが少ない点が少々気になる。同じ物の使い回しが多く,服装と名前は違うが,よく見てみると「この人,さっき別の街で見た人だなあ」というのが分かってしまうのだ。
フィールドに関しても同様で,バリエーションの少なさが気になる。大半は野山と畑,森林という状態で,なんだかいつも同じ場所を歩いているような錯覚を覚えることがある。
人物モデルの使い回しや景色の変化が少々乏しい点は残念なものの,松明に照らされた岩の質感,木々が生い茂りどこか不気味な雰囲気のある森林など,グラフィックス自体のクオリティは全体的にかなりのレベルだ。なお,ゲームエンジンには「Vision Engine 8」というものが使われている。
フィールドを探索し素材を入手してアイテムを作る楽しみ
アルガーン島を探索してみると,フィールド上や洞窟などで,自生している植物やキノコなどを見つけたり,場所は限られるが鉱物を採取できたりする。さらに敵を倒すと動物の肉や角などが入手可能だ。
これらは,単体ではなんの効果も発揮しないただの素材アイテムだが,「レシピ」または「錬金調合書」を入手することで,料理やポーションに加工できる。材料さえ揃っていれば量産がきくため,自給自足で回復アイテムを調達するといったことも可能になる。
回復アイテムなどを作る以外に,剣や盾などの装備品も自分で作れる。この場合は「鍛造の極意」というレシピが必要になり,中には鍛造でしか入手できない装備品もあるようだ。
素材アイテムはフィールド上ではキラキラ光を放っているので,見かけたらとりあえず採取しておくという癖をつけておけば,後々の冒険が楽になるはずだ。
これらアイテム生成に必要なレシピ類は,サブクエストの報酬で獲得したり,店で購入したりなど,さまざまな方法で入手できる。中には特定の場所でしか買えないものもあるので,コンプリートを目指すなら,新しい街を訪れた際に必ず商人に声をかけてみよう。
ただし,レシピはいずれも非常に値が張るアイテムなので,購入の際はお財布と要相談。なお同じレシピを複数入手した場合,1つだけ使用して,あとは売り払ってOKだ。
敵を倒したり,クエストをクリアして経験値を獲得
スキルの選び方も重要だ
アルカニアの戦闘はアクションRPGということもあって,リアルタイムで進行する。たいていの場合は複数の敵を同時に相手にしなければならず,見た目は難しそうにも見える。しかし,実際に遊んでみると,簡単な操作で連続攻撃を繰り出すことができ,一人で次々と敵を倒していく,爽快感のあるプレイを楽しめる。
難度はイージー,ノーマル,ハード,ゴシックの4段階が用意されいる。難度が低いモードなら,攻撃ボタンを連打しているだけでも十分勝てるが,難度を上げてみるとAIの動きが賢くなり,一筋縄ではいかなくなる。高難度モードでのプレイには,敵の攻撃をガードし,その隙を狙ってみるとか,距離をとって弓矢で攻撃,もしくは魔法を使ってみるなど,状況にあわせた対応が求められる。このあたりは戦略を立てる楽しみがあり,面白いところだ。
RPGといえば,キャラクターの育成も楽しみの1つに挙げられるだろう。アルカニアでは,レベルが上がるたびに体力や攻撃力などの各種パラメータが上昇するほか,3ポイントのスキルポイントを得られるので,これで新たなスキルを覚え,戦闘を有利に進めていくことが可能だ。
スキルは「規律」「気骨」「活力」(近接攻撃系),「正確」「隠密」(遠距離攻撃系),「熱情」「沈着」「威圧」(攻撃魔法)という3系統8種類が用意されている。全スキルをマスターすることはできないので,自分のプレイスタイルに合わせて習得していくのがいいだろう。
8種類のスキルいずれかを選んでポイントを1割り振るごとに,スキルレベルが上がってパラメータが上昇していくほか,特定のレベルになれば特殊操作で発動できる連続攻撃が可能になったり,弓矢で狙いをつける際にズームインして命中精度を上げられたりなど,新たな技も習得できる。
一通りスキルを使ってみたが,使い勝手がいいのは攻撃魔法のカテゴリ「威圧」を強化すると覚えられる「ライトニングボルト」だ。これは相手を一定時間麻痺させて無防備にできるため,非常に重宝する。最大まで鍛えれば同時に複数の敵を麻痺させられるという強力っぷりだが,消費するマナも激増するため,即座にマナを回復できるようにポーションを用意しておくなどの対策は必要になる。
逆に微妙なスキルもあり,あまり使えないものにポイントを注ぎ込んでしまうと,あとで悲惨な目に遭うかもしれない。
魔法に関してはスキルのほか,使い捨ての巻き物を使用して自分が覚えていない魔法を唱えることも可能だ。また,リチャージ時間がかかる代わりに,何度でも利用できる「ルーン」という魔法アイテムもある。状況に合わせて使い分けるといいだろう。
ライバル作品のような自由度はないが
しっかり遊べるクオリティのRPG
アルカニアはある程度,世界を自由に歩き回り,自分でクエストを始めるタイミングを決められる。サブクエストも豊富に用意されており,それなりに自由度の高いRPGといえる。
一部では「オブリビオンキラー」とも称されていた本作だが,遊んでみると方向性はだいぶ違っていた。「The Elder Scrolls IV: オブリビオン」が,とにかく自由なオープンワールドRPGであるのに対し,アルカニアは展開自体はメインクエストに沿った一本道であり,悪人プレイなどもなく,割とオーソドックスなRPGといった印象。このあたり,どちらが好きかは人それぞれだろう。
ストーリーに関しては,主人公が復讐を果たすために冒険に出るというのが最初の動機だったはずだが,冒険を進めていくうちに当初の目的はどんどん影が薄くなり,最終的には「完全に忘れ去られているのでは……」と思えるような展開となる。まあ,復讐よりも大きな話に発展していくわけだが。
ゲームとしては,戦略性を求められる戦闘や,武器やポーションなどを自作できるアイテム生成などのさまざまな要素が用意されており,しっかり遊べる作りになっている。「海外製のRPGは自由すぎて遊びにくい」と感じているビギナーに,入門用のタイトルとして遊んでもらいたい。
最後に,当初予定されていたダウンロードコンテンツに関しては,開発元であるJoWoodの倒産により,配信できるかどうかは不透明な状態にあるようだ。こちらは続報を待ちたいところ。
「アルカニア ゴシック 4」公式サイト
- 関連タイトル:
アルカニア ゴシック 4
- 関連タイトル:
アルカニア ゴシック 4
- この記事のURL:
キーワード
Arcania - A Gothic Tale (c) 2009 by BVT Games Fund III Dynamic GmbH & Co. KG, Germany. Published by JoWooD Entertainment AG, Austria. Developed by Spellbound Entertainment AG, Germany. The JoWooD design and mark are registered trademarks of JoWooD Entertainment AG. The Dreamcatcher design and mark are registered trademarks of Dreamcatcher. All other brands, product names and logos are trademarks or registered trademarks of their respective owners. Gothic und Piranha Bytes sind eingetragene Marken der Pluto 13 GmbH. All rights reserved.
Arcania - A Gothic Tale (c) 2009 by BVT Games Fund III Dynamic GmbH & Co. KG, Germany. Published by JoWooD Entertainment AG, Austria. Developed by Spellbound Entertainment AG, Germany. The JoWooD design and mark are registered trademarks of JoWooD Entertainment AG. The Dreamcatcher design and mark are registered trademarks of Dreamcatcher. All other brands, product names and logos are trademarks or registered trademarks of their respective owners. Gothic und Piranha Bytes sind eingetragene Marken der Pluto 13 GmbH. All rights reserved.