インタビュー
アーケードカードゲームがNDSではアクションゲームになった理由とは? 「歴史大戦ゲッテンカ 天下一バトルロイヤル」開発者インタビューを掲載
本作は,戦国武将などをモチーフにしたキャラクターを操ってバトルを繰り広げるという,サイドビュースタイルのアクションゲームだ。タイトルからも分かるとおり,現在稼働中のキッズ向けアーケードカードゲーム「歴史大戦ゲッテンカ」の世界観やキャラクターをベースにしている。
なお本作のイラストは,社会現象にまでなった有名食玩シールのキャラクターデザインを手がけたデザインプロダクション,グリーンハウスによるものだ。
ニンテンドーDS版では,オリジナルのストーリーが楽しめる「天下布武」モードが実装されているほか,戦国武将をモチーフにしたキャラカードをベースに,「武器カード」,「アイテムカード」を組み合わせるカスタマイズ要素,キャラクターごとの決め技である「奥義」を出すための「ラッシュ」など,アーケード版の要素も採り入れている。
また,ダウンロードプレイに対応しており,ソフトを持っていなくともワイヤレス通信による最大4人での対戦が可能だ。
今回は,NDS版「歴史大戦ゲッテンカ 天下一バトルロイヤル」およびアーケード版「歴史大戦ゲッテンカ」のプロデューサーである,セガの渡邉正勝氏にインタビューをさせてもらった。アーケード版からNDS版まで開発に至る経緯や両者の連動要素,そして今後の展開まで,いろいろと話を聞いてきたので,興味のある人はぜひ目をとおしてほしい。
「歴史大戦ゲッテンカ 天下一バトルロイヤル」公式サイト
「歴史大戦ゲッテンカ」公式サイト
子供向けながらあえて歴史を題材にした
「歴史大戦ゲッテンカ」のコンセプトとは?
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは,ニンテンドーDS版「天下一バトルロイヤル」のベースになった,アーケード版「ゲッテンカ」の話から聞かせてください。「ゲッテンカ」では,なぜ歴史を題材にしたのでしょうか?
子供達が楽しめるゲームの中に歴史ものがあまりなかったこともありますが,「こういった人物が実際に日本にいたんだよ」といった歴史上の人物や逸話を,カードゲームを通じて子供達に伝えたい,興味を持ってもらいたいと思ったのがきっかけです。織田信長をはじめとして,歴史上の人物や逸話には,面白いものが多いですから。
4Gamer:
「ゲッテンカ」のメインターゲット層は,小学生男子ですか?
渡邉氏:
小学校3年生から上といったところです。
4Gamer:
となると,小学校低学年だとまだ歴史を学校で習っていないから,戦国武将をモチーフにしても理解できないのでは,というネガティブな要素が思い浮かんでしまうのですが。
渡邉氏:
そこはたとえば,織田信長なら「覇王ノブナガ」,豊臣秀吉なら「モンキー秀吉」といった感じで,キャラクターっぽさを強調して親しみやすくする工夫をしています。
またカードの裏面には,その人物や史実の紹介文を入れているんです。子供向けなのでかみくだいていますが,きちんと史実に基づいていた内容です。子供達がそれを読んで歴史に興味を持ってもらえたら嬉しいですね。
あと,たとえばお父さんが子供に,その武将のことを教えてあげるといったように,このゲームを元に家族でのコミュニケーションが深まればいいなとも考えていました。
4Gamer:
なるほど。歴史なら学生の頃に学んで知識としての蓄積があるから,ゲームについて調べなくても,親子でコミュニケーションが取れると。
渡邉氏:
あと,フックとなる要素として考えていたのがイラストです。「ゲッテンカ」のキャラクターデザインは,有名食玩シールの企画・開発に携わったグリーンハウスさんにお願いしているんです。
イラストのデザインで親に興味を持ってもらって,ゲームの世界観が戦国時代。これならば,親子で楽しめると考えました。
最終的にゲームは子供のほうが上手くなると思うんですけど,「信長といえば火縄銃だろう」といったアドバイスができるのは大人だけなので,そこから親子のコミュニケーションが生まれるだろうと。
4Gamer:
キャラクターデザインをグリーンハウスに依頼するというのは,開発中のどのくらいの時期から考えていたんですか?
実は,アーケード版のディレクターが大ファンで,最初からこのイラストを提案していました。いろいろな案も考えてはいたんですけど,このイラストの魅力と親子のコミュニケーションということを考えると,これしかなかったですね。僕もこのイラストが元々大好きだったというのもあります(笑)。実際,グリーンハウスさんにデザインをお願いして,でき上がったイラストを見たときはワクワクしましたね。
4Gamer:
キャラクターデザインはどのようにして決めているんですか?
渡邉氏:
その武将のエピソードなどを元にして,どのようにキャラクターデザインに採り入れようかということを考えています。
4Gamer:
具体的には,どのようなものなのでしょうか?
渡邉氏:
「覇王ノブナガ」のイラストを見てもらうとわかりますが,新しいモノが好きで火縄銃を使ったり,南蛮ファッションを取り入れたりしたというのは,分かりやすく表現しています。
ほかにもいろいろあるのですが,細かいところでは「真田ユキムラ」のイラストは歯が欠けているところもそうですね。やんちゃっぽいイメージを受けると思いますが,それは歯槽膿漏で歯が抜けていたというエピソードを活かしました。さらに細かいところでは,秀吉と茶々が同じリボンつけているというのもあります(笑)。
4Gamer:
「ゲッテンカ」の登場武将は,どういった基準で選んでいるのですか?
渡邉氏:
アーケード版は桶狭間の戦いから始めようと決めたので,まずはその時の重要な人物から選びました。織田信長と敵側の今川義元はもちろんですし,信長がいれば豊臣秀吉も必要です。そうやって人物相関図を作っていって,必要な人物をチョイスしていきました。
重要な人物はもちろんチョイスするんですけど,史実に縛られすぎてチョイスしてもいけないという考えもありました。なので,「ゲッテンカ」のキャラクターにしたら面白そうな人物がいたら入れてみるというのを意識していますね。
4Gamer:
では,アーケード版「ゲッテンカ」のシステム面は,どのように決まっていったんでしょうか?
渡邉氏:
セガでは,今までもキッズ向けのカードゲームを出していますが,じゃんけんルールのものが多かったですよね。それとは違う形で,漠然と「子供達にもっと面白いものを提供したい」と考えていたので,まずシステムを固めるところから入りました。
「子供達にカードゲームの本当の面白さを伝えたい」ということを第一にシステムを考えていきました。しかし,あまり難しくもできないということでかなり苦労はしました。
カードを重ねてスキャンするシステムや,数字を繋げてコンボを決めるというシステムが決まったあたりから,完成に向けて一気に進んでいきました。歴史ものという世界観も,それに合わせて決まっていった感じですね。
DS版「歴史大戦ゲッテンカ 天下一バトルロイヤル」が
アクションゲームになった理由
4Gamer:
では,そろそろDS版「天下一バトルロイヤル」の話をお聞きしていきたいと思います。
アーケード版「ゲッテンカ」が稼働を開始したのは,2009年の11月でしたが,その当時からDS版の構想はあったんですか?
渡邉氏:
アーケード版の稼働前から,「ゲッテンカ」というIPを広めるうえでは,家庭用ゲーム機版も必要だと考えていました。ただ,DSで出すということまでを最初から決めていたわけではありません。
家庭用ゲーム機で出すなら何がいいんだろうと模索していたのですが,やはり,結果として子供達の間で一番普及しているハードであるDSを選びました。
4Gamer:
「天下一バトルロイヤル」は,トレーディングカードゲームであるアーケード版「ゲッテンカ」とはジャンルががらりと変わり,アクションゲームになりました。これはなぜですか?
もともとアーケードの「ゲッテンカ」は,面白いゲームを子供達に提供したいという思いから作ったタイトルです。
ただアーケード版を移植してもつまらないですし,あの爽快感は筐体がないと味わえません。事前のマーケティングなどから,子供達にはアクションゲームの人気も高いということが分かっていたので,DS版では,アクションにデッキを組む楽しさを足せば,知力でも勝てる新しくて面白いアクションゲームができるだろうと思い,制作を開始しました。
4Gamer:
というと,アーケード版から持ち込んだのは世界観が中心で,直接的な関連性はあまりないということでしょうか?
渡邉氏:
そういうわけではないです。たとえば,DS版に登場するキャラや武器,アイテムは,基本的にアーケードの1〜5弾をベースにしています。
キャラクターはもちろん,武器カードやアイテムカードの名前や数値といったあたりも基本的に同じですから,アーケード版を遊んでいる方は,DS版をプレイするときにアーケード版で得た知識を活かせますし,DS版が初めての方は,DSで得た知識をアーケード版の戦略に活かすこともできます。DS版で初めて「ゲッテンカ」をプレイしていただいた方には,ぜひアーケード版もプレイしてほしいですね。
4Gamer:
DS版には,何人くらいのキャラクターが登場するんですか?
渡邉氏:
操作できるキャラクターでいえば40人ほどで,アーケード版のカードで登場しているキャラクターは大半が入っています。ドラマ部分にしか出てこないキャラクターも含めたらもっといます。
キャラクターのタイプをここまでカスタマイズできるアクションゲームというのは,僕の知る限りほかにないと思うので,大人でも楽しんでいただけると思います。
4Gamer:
DS版のカスタマイズ画面では,アーケード版の実際のカードのように,装備したらズレて表示されることがあって,カードらしさが残っているのが印象的でした。
渡邉氏:
アーケード版のカードを再現していますので,それも「ゲッテンカ」の魅力として楽しんでもらえればと思っています。
4Gamer:
DS版とアーケード版で,ゲームとしての連動要素はあるんですか?
はい。DS版をプレイするとパスワードが出現することがあるのですが,それをアーケード版で入力すると,特別なキャラが登場します。またアーケード版をクリアすれば,DS版でカードを入手できるパスワードが出現するという仕掛けも用意しています。
4Gamer:
アーケード版で,パスワードが書いてある限定カードを出したりはしないんですか?
渡邉氏:
それをやってしまうと,アーケード版をプレイしていないとDS版を100%楽しめないようになってしまいます。子供にとっては,その負担はすごく厳しいですよね。
DS版から入ってくれるユーザーさんも多いと思いますし,あまりがんじがらめになる連動は入れたくなかったんです。
4Gamer:
少し話は変わりますが,「天下一バトルロイヤル」がダウンロードプレイでのマルチプレイに対応しているというのは,やはり子供向けであることを考慮してのものなんですか?
そうですね。たとえば,アーケード版「ゲッテンカ」ファンの子達が「天下一バトルロイヤル」を買ったら,誰かと一緒に遊びたいという欲求が出てくると思うんです。そんなときに,「一緒にプレイしようぜ」って,簡単に誘えるようにしたかったんです。
最終的には1本でも多く買っていただけると非常にありがたいのですが,コミュニケーションを作るうえでは,まず遊んでもらうことが大事ですから。ソフト1本あれば,4人まで対戦プレイができる環境は提供したかったですね。
4Gamer:
ちなみに,ダウンロードプレイではどの程度遊べるものなんですか?
渡邉氏:
ダウンロードプレイは4人対戦ができるというもので,キャラクターは4人,武器・アイテムもそれぞれ4つの中から選べます。タイプ別に特徴的なキャラクターを選んでいますし,カスタマイズも踏まえたらけっこうなバリエーションがあるので,かなり遊べるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
率直にお聞きしますが,アーケード版を遊んだことのあるプレイヤーでも楽しめるアクションゲームになりましたか?
アーケード版だとターン制のカードバトルで,自由闊達にキャラを操作できないというところがありますが,DS版はリアルタイムのアクションバトルで,自由にキャラを操作できます。さらに,必殺技などはアーケード版と違った演出を採り入れています。アーケード版のプレイヤーの方々も十分に楽しんでいただけると思っております。
4Gamer:
ちなみに,奥義を回避する「ど根性」では,タッチパッドをこすりますよね。かなりしんどいと感じたんですが。
渡邉氏:
メインプレイヤーである,子供達は意外にあっさりクリアしますよ。ある程度はこすってもらわないとすぐに勝負が決まってしまうので,最終的に今のバランスに落ち着いたんです。
4Gamer:
子供のほうがど根性があるんですね……。
渡邉氏:
そうですね(笑)。子供達は連打系やこする系の操作が大好きなので,すごく燃えてくれると思います。
4Gamer:
そういえば,DS版ではアーケード版にないシナリオもありますよね。足軽くんにもストーリーが用意されているとは思いませんでした。
アーケード版では,2戦目または3戦目でエンディングとなるので,桶狭間の戦いであったり,信長は最後どのように倒れたかであったりといった,史実の詳細まではさすがに語れません。ですが,DS版のストーリーモード「天下布武」では,それらを補完するオリジナルのストーリーが描かれます。
「ゲッテンカ」なので,ギャグテイストが含まれてはいますが,シリアスなところはきっちりと描いていますので,大人が遊んでも「おっ」って感じてもらえると思います。あと,オマケ的に史実とは異なるシナリオも一部ありますよ。これはギャグが多いかなと思います(笑)。
4Gamer:
クリア後のお楽しみ要素などもありますか?
渡邉氏:
この段階ではまだ詳しくお話しできませんね。言いたいのですが,言うと怒られちゃうので(笑)。
4Gamer:
アーケード版を含め,「ゲッテンカ」はこの先どう展開していくんでしょうか? 徳川家康まで出てきていますし,関ケ原の戦いまで進んで天下統一となったら,ストーリー展開が行き詰まるのではないかと思ってしまうのですが。
DS版にはペリーも出ていますし,予約特典が「サンライズ龍馬」というところから感じ取っていただけるのではないかと。
4Gamer:
ということは幕末ですか……。「ゲッテンカ」ワールドというか,時代考証はかなりかっとんだものになりそうですね(笑)。
渡邉氏:
最初から,さまざまな時代をテーマにしようと考えていたので,タイトルを戦国じゃなくて“歴史”大戦にしているんですよ。
あと実は,ロゴのバックにある丸いものは地球儀なんですね。これもある意味,今後を予期しています。誰も気がついていないと思いますけど(笑)。
4Gamer:
ということは,舞台も日本に限定されるわけではないと。今後は世界に広がる可能性もあるわけですね。
今後,DS版になにかしらの要素が追加される予定はありますか?
渡邉氏:
今のところ予定はないんですけど,ゲッテンカというタイトルは続いていきますから,時期を見て別の展開もできればとは考えています。ちゃんとした土壌ができれば次の作品の可能性も見えてきますし,そのときはもっと新しい遊びを入れていきたいですね。
4Gamer:
それでは最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
渡邉氏:
「ゲッテンカ」は,子供達だけでなく大人の方も楽しめる内容になっています。とくにアクションやカスタマイズの部分を楽しんでもらえればと思います。あとキャラクターゲームとしても登場人数が多いので,それぞれのキャラクターの魅力を,ストーリーとともに楽しんでほしいと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
今回は,インタビューに合わせて「歴史大戦ゲッテンカ 天下一バトルロイヤル」をプレイさせてもらったのだが,対戦プレイがなかなかに盛り上がった。
基本的には,サイドビューのマップ画面に最大4人のプレイヤーが入り乱れるバトルロイヤルで,敵を倒した回数を競うというルール。
奥義を繰り出すときは,トランプのスピードのように,1〜5の数字のカードを順に選んでゲージを溜めていき,それ以外のプレイヤーは,ニンテンドーDSの下画面をひたすらこすって「ど根性」ゲージを溜め,奥義を止めるべく対抗する。これで,ついつい必死になってしまうのだ。
また,カスタマイズ要素も豊富で,装備する武器カードによって,攻撃方法はまったく違うものになる。さらに,武器カードとアイテムカードにはそれぞれ必殺技が設定されているので,どの組み合わせが強いのかを探るのも楽しい。
インタビュー中に渡邊氏が述べていたように,本作は題材が歴史物ということもあり,事前にゲームの“勉強”をしなくとも,親子でコミュニケーションを取りつつ一緒にプレイできる。また,キャラクターの見た目が大きく変わる“レジェンド化”については,そのキャラクターに関連性の高いカードを組み合わせることで発動するので,歴史に詳しければ,自慢できるチャンスが増えそうである。個人的にも,親子で遊ぶタイトルとして,なかなかオススメだと感じられた。
また,連動要素として,DS版を遊ぶとアーケード版に特別なキャラが現れるといった仕掛けもあるので,アーケード版を遊んでいるプレイヤーは,要注目だ。
「天下一バトルロイヤル」は,アーケード版を遊んでいなくとも,DS版単体で十分楽しめる内容になっている。アーケード版に興味はあったが手を出せなかった人や,この記事を読んで興味を持った人は,ぜひ手にとってみてほしい。
「歴史大戦ゲッテンカ 天下一バトルロイヤル」公式サイト
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