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E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
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印刷2011/06/25 00:00

インタビュー

E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた

画像集#013のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
画像集#011のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた

 KONAMIが開発中の「NeverDead」(ネバーデッド)PlayStation 3/Xbox 360)は,2010年に開催されたE3で初めてお披露目されたアクションゲームだ。KONAMIのプレス向けカンファレンスでは,ゲームの開発を担当するスタッフの首が,話の途中で落ちるというイリュージョンを見せてメディアの度肝を抜いたが,そのときは「首が落ちても大丈夫」な不死身の主人公の姿が収められたムービーが公開された程度で,詳しいゲーム内容は発表されなかった。
 今回のE3 2011では,6月8日に掲載した記事でもお伝えしたとおり,NeverDeadのプレイアブル展示がKONAMIブースで行われたほか,翌9日には公式サイトで最新ティザームービーが公開されるなど,発売に向けて情報公開が加速度的に進んだ印象だ。


 NeverDeadの主人公,ブライスは不死身の男だ。突いても叩いても死ぬことはなく,また爆発などにまきこまれてバラバラになっても,飛び散ったパーツが再び元どおりにくっついたり,再生したりするので平気という,異色の主人公。なるべく敵にやられないように戦うのがアクションゲームの基本だが,それを覆す,大胆なゲームシステムが採用されているのだ。
 そんなユニークなNeverDeadについて,同作のプロデューサーを務めるKONAMIの野尻真太氏と,アートディレクターを務める辻本厚至氏に話を聞いた。ご存じの読者も多いと思うが,野尻氏は「メタルギア」シリーズの外伝的な作品であるPSP向けタイトル「METAL GEAR AC!D」(メタルギア アシッド)の企画,監督などを務めた経験を持つ。“トレーディングカードを使ったアクション”という新機軸を打ち出し,続く「METAL GEAR AC!D 2」(メタルギア アシッド 2)でも脚本を手がけるなど,プレイヤーの想像を超えたユニークなゲーム作りには定評がある人物だ。
 その野尻氏が,イギリスのデベロッパ,Rebellionで制作するNeverDeadとは,果たして,どんな発想で作られたのか? 不死身の主人公は,どうやって戦うのか? 死なないなら楽勝じゃん,などと思ってはいけないみたいだ。

画像集#006のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
ゲームソフトコンテンツプロダクション プロデューサー 野尻真太氏
画像集#005のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
ゲームソフトコンテンツプロダクション アートディレクター 辻本厚至氏

「NeverDead」公式サイト


画像集#014のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
画像集#015のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた 画像集#016のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた


ラフプレイ推奨のNeverDeadとは,どんなゲームなのか


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。2010年のE3で行われた発表会では,ムービーが見られた程度で,あまり情報はなかったのですが,2011年のE3からいよいよ本格始動という感じですね。

E3 2011のKONAMIブースにプレイアブル展示されていた「NeverDead」
画像集#017のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
野尻真太氏(以下,野尻氏):
 そうですね。今回,E3に合わせて公開したムービーは,ストーリーテリングトレーラーというか,物語を見せる内容になっています。最初のムービーでふざけたゲームだと取られてしまいそうだったので――まあ,ふざけている部分もあるんですが――そろそろ,そのイメージを払拭して,NeverDeadが割とシリアスな作品であることをちゃんとお見せしなければと思いまして。

辻本厚至氏(以下,辻本氏):
 500年前にデーモンハンターだった主人公のブライスが,魔王に破れて不死身になった場面などが見られると思います。

4Gamer:
 ああいう過去があったというわけですね。首が取れても大丈夫というイメージが優先して,ちょっとおバカっぽい作品だと思っていただけに,シリアスな設定に驚きました。では,改めてゲームの内容について説明していただけますか。

野尻氏:
 はい。このゲームは基本的にサードパーソンのシューターなんですが,銃で撃つことよりはむしろ,環境を利用して倒す要素が重要になっています。つまり,爆発するオブジェクトを撃ったり,壁や天井天井を破壊したりして,敵を吹き飛ばしたり押しつぶしたりするわけです。E3で展示されていたNeverDeadをプレイされました?

4Gamer:
 ええ,かなり人が並んでいましたね。

野尻氏:
 試遊台のデモでは弾薬が比較的豊富なのですが,製品ではもっと節約しなければならないバランスになっています。したがって,たくさんの敵を相手にするときに,いちいち撃ち倒していくわけにはいきません。
 そこで――例えば腕を取って投げると,モンスターがそれを追いかけていきますから,適当な場所に集めて天井を壊し,敵を下敷きにするとか。また,壁などをグレネードで撃つと派手に吹き飛びますから,それに巻き込むとか。

4Gamer:
 本人を巻き添えにしてもいい,というわけですか。

建物を破壊して,自分ごと敵を巻き込んで倒していくのが,NeverDeadの戦闘のキモ
画像集#021のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた

画像集#018のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
画像集#020のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
野尻氏:
 むしろ,積極的に自分を巻き添えにしちゃってください。もちろん,やられないに越したことはないんですが,ときには自分がバラバラになりながらも敵を倒すことが必要になったりします。ゲームには車がびゅんびゅん走る道路が出てきますが,車は敵も味方もおかまいなくはねていきますので(笑),そこに敵を誘導すればいいわけです。
 もちろん,ブライスもはね飛ばされるでしょうけど,それは仕方ない。車のほかには,電車などもあります。

4Gamer:
 電車は,ムービーにも出ていましたね。

野尻氏:
 電車にはねられると,本人もバラバラになりますが敵は死にます。とはいえ,敵は数頼みでどんどん出てきますから,パーツを回収しつつ,相手を線路や道路に誘導して一緒にはねられながら戦うわけです。グレネードなんかも敵に向かってではなく,自分の足もとに撃ち込んで,寄ってきたヤツらを一気に片付けるといったプレイができます。

4Gamer:
 うーん,なんかもう,いろいろとゲームの常識に反していますね。

野尻氏:
 「ラフプレイ」というか,きれいによけて戦うのではなく,割といいかげんにプレイしてもらうのが私の理想です。自分の体を犠牲にしながらも,どれだけ敵を倒すか。死ぬのを避けるのではなく,多少の荒っぽさというか,簡単に言うと,肉を切らせて骨を絶つ的な感じでいってもらいたいなと思っています。

4Gamer:
 しかし,絶対にやられることがないのであれば,プレイの緊張感を維持するのが難しいんではないですか。

グランベイビー
画像集#026のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
野尻氏:
 いえ,それがですね,頭だけになるとさすがにちょっと危険なんです。というのも,グランベイビーというヤツが出現くるんです。グランベイビーは体のパーツにやたら強く,頭だけになると即食べにくるんです。で,そいつに吸い込まれると,まあ,いくらか抵抗はできますけど,基本的にゲームオーバー。

4Gamer:
 そういえば,デモプレイで見たような気がします。

野尻氏:
 そういうわけですから,グランベイビーがいた場合,まずそいつからやっつけて次のが出現するまでの時間で,ほかの敵を倒すとか,そのあたりがゲームの基本的な戦略になります。ステージに入ったとき,周囲をよく見て,どこがどう使えるのか考えてほしいですね。例えば,消化剤が噴き出す消化器ですとか,さっきもいったように,壊れる天井ですとか。いろいろな倒し方を用意していますので,それを見つけてください。

もう,何がなんだか……
画像集#024のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた 画像集#025のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた

4Gamer:
 E3のプレアブル展示では,最初から最後まで銃で敵を倒している人が多かったような気がしますが,実は,それ以外のところにも面白さがあったわけですか。

辻本氏:
 また,“不死身”という要素は,基本的には戦闘で使用するわけですが,そのほかにステージのギミック的なものに利用するときがあります。
 例えば,プレイヤーが通れない通路や,高くて行けない場所があった場合,頭だけ投げるというような。頭一個あれば,主人公のブライスは自己再生ができるので,体を破棄して,行った先で体を再生すればいいわけです。あるいは,暗闇で周囲が見えないところでは,自分の体を燃やして灯りとして利用したり。

4Gamer:
 おっと。それはまた,なかなか思いつきませんね。

野尻氏:
 しかも,体に火がついた状態で銃を撃つと,ファイアーショットになって敵に持続ダメージを与えられたりします。ゲーム中,ブライスはいろいろとひどい目に遭いますが,ほかのゲームでは避けなければならないところを,積極的に当たりに行ったほうが道が開けるんです。当たったあとに頭さえ食われなければいいので,むしろ,なるべく当たって同時にヤツらをやっつけろみたいな。

華麗なファイアーショット
画像集#027のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
画像集#028のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた

辻本氏:
 緊張感を維持するためのゲームメカニズムは,ほかにもいくつかあります。例えばゲームの序盤は割とガチャプレイでも大丈夫なんですけど,後半になると敵のバラエティが増えて,飛んでいったパーツの回収に手間取ったりします。そのため,あまり激しいプレイは難しくなり,頭を使ってプレイしないと進めないといったこととか。

4Gamer:
 銃のほかにはどんな武器があるんですか。

辻本氏:
 ソード(剣)ですね。ソードは使っても何も消費しないので,弾が切れたらそっちを使うことになります。なかなか威力もありますが,ただ,敵に近づきすぎると頭をはねられる可能性があり,そこを食べられると終わりです。

ソード(剣)による攻撃
画像集#023のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた

4Gamer:
 頭だけになったとき,グランベイビーから逃れる方法はないんですか。

野尻氏:
 一応「ヘッドスピンアタック」があって,それが微妙に抵抗の手段ですかね。一応,それで敵を倒せないこともないですが,基本はやはりダメです。

4Gamer:
 つまり,グランベイビーを先に倒すかあとで倒すか。どのオブジェクトがどう利用できるか。そしてバラけたパーツを戦いながらどう回収するか。荒っぽいゲームのようでいて,かなり頭を使う作品のような気がしてきました。

野尻氏:
 いやあ,それは,どうでしょうね(笑)。ともかく,私の希望はある意味とてもマゾ的な戦いをして,最後はボロボロになって勝つ! みたいなのがいいなあ。ブライスは基本,1人で戦うのですが,たまにアルカディアという女の子と一緒に戦うときがあります。ちなみに,彼女が死んだ場合もゲームオーバーですから気をつけてください。一応,ダウンと死亡という二段階の行動不能状態があるのですが,ダウンのうちに助けてあげれば回復します。

主人公のブライス(左)と,相棒のアルカディア(右)
画像集#009のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた 画像集#010のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた


絶望を心に秘めた,シニカルで不死身の主人公


4Gamer:
 アルカディアとの関係は,どういうものなんでしょう。

野尻氏:
 彼女はNADA(National Anti Demon Agency)のエージェントで,ブライスはその仕事を手伝っています。ムービーにもあるように,ブライスは500年前のデーモンハンターで,当時の彼は本当にハンサム。そこで魔王との戦いに敗れて,最愛の女性を失って,不死身になる目玉を埋め込まれる。で本人も死にたくても死ねず,夢も希望も何もかもなくしてただ生き続けている。まあ,そうなると,いろんなことがどうでもよくなってくるんですね。
 ゲームの開始時点は,魔王に勝つすべもなく,なんで自分が不死身なのかも分からない。で,やることもなくてNADAのために働き,弱い悪魔を倒してお金をもらっているという状況です。まあ,ブライスにお金は必要ないんですが。

4Gamer:
 不死身ですからね。

辻本氏:
 でも,腹は減るみたいです。もっとも,お金の使い道のほとんどが酒代なんですけど。

4Gamer:
 なんだか,いかにも飲みそうです。ともかく,普通の正義感にあふれた主人公とは微妙に毛色が異なると。

野尻氏:
 アルカディアはそんなブライスの絶望感を分かっていないか,分かっていても詳しくは聞こうとしない。ブライスも昔のことはあまり話したくないんですが,その絶望を隠すようにふざけてアルカディアにセクハラしたりとか,そういう感じになっちゃってます。

4Gamer:
 なるほど。ストーリーは,どういう感じで進んでいくんですか。

野尻氏:
画像集#001のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
 今の段階ではあまり詳しく言えませんが,ベースとなるのは「復讐」で,さっきも言ったようなブライスの日常が次第に変化し,物語が動き始めます。最初に登場する彼は,ホントにもう,どうでもいいことを言ったりやったりする,いろんな意味で残念な人物。ときどき「オレは昔,超ハンサムだったんだぜ」と主張するけど,アルカディアをはじめ誰も信じてくれない(笑)。また言ってるよ,こいつ,みたいな。
 これもあんまりお話しできないんですが,ゲームは過去と現在を行き来するような感じです。というわけで,プレイヤーには真面目なブライスと,不真面目なブライスを交互に見てもらうことになります。
 ……なんですかね,世代的には私,こういうキャラクターにダンディズムを感じるんですが,どうなんでしょう。例えば「シティハンター」とか「コブラ」とか「キン肉マン」とか,普段はセクハラしてふざけたことを言っている残念な人なんですけど,それは深い憂鬱や絶望感を隠すためのもので,本当にアルカディアのパンツをみたいわけではない。もちろん,やるときは徹底的にやる。

辻本氏:
 物語の展開にもそんなところがあって,ある意味それが本作の「野尻イズム」でしょうね。

画像集#034のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた


マルチプレイも,NeverDeadらしいユニークなシステム


4Gamer:
 なるほど。ところで話は変わりますけど,マルチプレイは用意されていますか。

野尻氏:
 ありますよ。マルチプレイはシングルプレイと連動していて,説明していませんでしたが,NeverDeadの経験値システムを使って得られるアビリティに関係しています。敵を倒すことで経験値が得られ,それを使ってアビリティを手に入れ,ブライスの能力をアップできますが,無制限に使えるわけではなく,装備しなくてはならない。でもスロットに限りがあるので,どのアビリティを使うかはプレイヤー次第というわけです。
 アビリティには,銃の攻撃力を上げるものや,体がバラバラになりにくいものなど,さまざまなものがあります。先ほど,ラフプレイをオススメしましたが,もしそれがイヤなら,銃を強力にして,クリーンな戦いをすることもできます。
残念ながら今のところこれ以上詳しい話はできないんですが,ともかくアビリティが重要な要素になります。ですから,見かけは同じブライスでも,能力は全然違うということも起きます。

4Gamer:
 ということは,キャラクターは全員ブライスになるんですか?

野尻氏:
画像集#031のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
画像集#032のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
 そういうわけではないんですが……まあ,今のところお話しできるのはこれくらいで。ちなみにマルチプレイは,ストーリーとは無関係の完全に独立したモードなんですが,そこで使えるアビリティは基本的にシングルプレイで手に入れなければなりません。武器も同じで,シングルプレイとマルチプレイで同じ武器を所有することになります。

辻本氏:
 ただ,アビリティの中には相当変なものもありまして,例えば「無駄口」とか「びびり」とか。

4Gamer:
 びびるアビリティというのは,ちょっと想像できませんが。

辻本氏:
 「隊長,あいつを狙ってください」みたいな(笑)。私自身,どうやって使っていいのか分からないのですが,どうやら何の効果もないみたいです。

野尻氏:
 プレイヤーの好みに応じて,「最低のブライス」を演出してみたい人向けですね。

画像集#033のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた


欧米のスタッフと仕事をする面白さと,難しさ


4Gamer:
 相当ユニークなゲームに仕上がっていくような感じですが,ところでRebellionの人は,そうしたフィーチャーについてなんて言っているんですか。

野尻氏:
 それがですね,実は全力で嫌がっているんです(笑)。変な言い方なんですけど,NeverDeadは完全な新規IPなので,やりたい放題なんです。とくに誰かからいいとか悪いとか言われないので,レーティングなどでクリアしなければならないことはありますが,例えば「ブライスはこうでなくてはならない」というようなことはありません。私が好き勝手をやっているという感じですね。

辻本氏:
 野尻は日本でもやりたい放題ですけどね。

野尻氏:
 私が本当に気に入っていて,企画当初から考えていたことなんですが,ブライスがパーツを拾うとき,ウニみたいにゴロゴロって転がる場面があります。ところがある日,一緒に開発を進めているRebellionのイギリス人スタッフが私を呼んで,「真太,キミ以外の全員が,これをイヤだと思っている」(笑)。で,僕もキレて,「いや,やるんだよ!」みたいな。最近また「前に嫌がっていたアレはどうなった?」と聞いてみたんですが,「もう慣れた」と。

4Gamer:
 文化の違いは,なかなか難しいですね。

辻本氏:
 いやいや,あの場面は私もイギリス人スタッフと同意見で,かなり抵抗がありました。自分のイメージとしては,例えパーツを全部なくしても,ある程度プレイヤーが共感できる部分を残しておきたかったんです。没入感というか,ボロボロになっても戦うみたいな。でも,頭に手がくっついた瞬間,もうプレイヤーがブライスに自己投影できなくなるじゃないですか。
 で,そのへんは大モメで,このままじゃどう評価されるか分かりませんよ,などと野尻に言ったりしたんですが,出してみたら意外に大好評で,自分の考えを改めることになりました。

「頭に手がくっついた瞬間,もうプレイヤーがブライスに自己投影できなくなると思ったんですが,意外に好評で,考えを改めました」(辻本氏)
画像集#022のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた

野尻氏:
 これが人気シリーズの新作だったりすると話は別なんですが,新IPならルール無用だと思っています。みんなが見たことがないもの,不死身なら不死身で,むしろそれを逆に利用していくようなプレイを提供していこう,という作品ですからね。
 危ない物は避ける,ではなくて,危ない物をどんどん使っていく面白さを出す。例えば,さっきの火に関しても,体が燃えると,まあ普通は熱いんですけど,彼の場合は不死身なので,それをどう利用するかといったことを考えます。危険にわざわざ近づいていくようなゲームにしたい。ここで我々の新しいルールを作るのだと,いつもスタッフに要求しているんですが,まあ,うまくいっているかどうかは分からないです。

4Gamer:
 やはり,日本人スタッフと仕事をするのとはだいぶ違いますか。

野尻氏:
 違いますね。文化が異なるというか。やはり私達のほうが細かいところがあると思います。こちらのコンセプトに対して,彼らは豪快というか不真面目なところがあって,まあだいたいケンカになるんですけど。

辻本氏:
画像集#003のサムネイル/E3 2011でプレイアブル展示された,「NeverDead」の常識を覆すゲームプレイはどうやって生まれたのか。ゲームクリエイターの話を聞いた
 よく「マイクロマネジメント」と言われますが,日本人は細かいですね。ですから,ゲームにもそういう日本人の細かいところがいい意味で出ればいいなと思います。
 イギリスに限った話ではないと思いますが,最近は効率性とか生産性が重視されています。日本人だとやはり,日々思いついた新しいアイデアなどを次々に取り入れていきたいと思うでしょう。ですが,それをやるとバックデート(遅延)するとかコストがかかるとかいう答えが返ってくる。彼らは,最初に決めたことをカッチリやりたいという感じですが,そこで「ごめん,ここもうちょっと直してくれれば,もっとよくなるんだけどなあ」みたいな感じで説得しています。

4Gamer:
 欧米のほうが,なんというか,もっといろんな思いつきを取り込みながら,ある意味,行ったり来たりしながら作っているような印象でしたが,違うんですね。

辻本氏:
 まあ,それでもRebellionはかなり柔軟なほうで,我々の要求をかなり呑んでくれます。ただ,自分達が理解できないものはかなり抵抗します。実は,アルカディアについてもかなりもめましたね。

4Gamer:
 どんなところがですか。

野尻氏:
 ただセクシーなだけじゃダメだろう。なんでミニスカなんだと(笑)。普通ミニスカだろ,といってもなかなか分かってもらえません。

辻本氏:
 向こうには向こうのこだわりがあるので,キャラクターの制作にはかなり時間がかかっています。

4Gamer:
 なるほど。今後,こういう海外とのコラボは増えると思いますが,どうですか,もう一度やれと言われたら,やってみたいですか。

野尻氏:
 どうでしょうねえ。まあ,まだ全然終わったわけではなく,これからが本番だという状況なので,今まで以上に辛い日々が来るのではないかと思っています。ですから,またやりたいとかやりたくないとか,今は言えません。

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「不死身」から想像できるものを,全力で裏切っていく


4Gamer:
 それはそうでした。では最後に,読者に対するコメントをお願いします。

辻本氏:
 分かりました。……ようやく発売に向けて完成系が見えてきたところで,まだまだ作らなければならないところは多々あるんですけど,やはりNeverDeadの根幹にある,今まで見たことのないゲーム性やイメージをお届けできると思うので,楽しみに待っていてください。

野尻氏:
 基本的には,「ワケの分からないもの」を提供するので,それが合えば新鮮な経験になると思います。“不死身”から誰しも想像するものはあると思うんですが,我々としては,全力を挙げてそれを裏切りに行きたい。もちろん,すでに紹介されている部分は入るんですが,なんでしょうね,できる限りバカなものにしていきます。ストーリーも,想像の斜め上をいっているので,そこを楽しんください。まだ,言えない部分もいっぱいあるんですが,ともかく予想していなかった体験が得られるのは間違いありません。

4Gamer:
 本日はどうもありがとうございました。

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