レビュー
「XFX初」となるデュアルファン仕様のGPUクーラー搭載モデル,実力検証
XFX HD-685X-ZDFC
ぱっと見で冷却能力重視の製品であることは想像できるが,実際にはどういった特性を持った製品なのか。XFXからカードの貸し出しを受けられたので,実際に動かして確かめてみることにしよう。
7mm径のヒートパイプ2本とフィン,
80角ファン2基によるGPUクーラーを搭載
GPUクーラーは,カード全体を覆うデザインで,I/Oインタフェース部からPCケース外へ,カード後方およびクーラーと基板の隙間からからPCケース内へそれぞれ排気する仕様だ。
デュアルファン仕様と謳われているのだから当たり前だが,80mm径相当のファンを2基搭載。また,クーラーからは,2本のヒートパイプがはみ出しているのも見て取れる。
フィン部の高さは実測平均して約9mmと,決して大型というわけではないが,フィン部はカードを広く覆うような格好になっているので,総面積はかなりあると述べていいだろう。
付属ソフトウェアとして特別なオーバークロックツールが付属しているわけでもないので,HD-685X-ZDFCの豪華なGPUクーラーは基本的に,オーバークロック目的というよりは,安定動作を目指したものということなのだろう。
冷却能力はさすがに良好
動作音はやや大きいが,問題にはならないレベル
というわけで,今回はHD 6850リファレンスカードと1対1で比較し,オリジナルデザインを採用したHD-685X-ZDFCの特性をチェックしてみたい。
テスト環境は表のとおり。公式最新版グラフィックスドライバ「Catalyst 10.11」はRadeon HD 6000シリーズに対応しないため,今回は「Catalyst 10.10」を用いる。
さて,まずはHD-685X-ZDFCの大きな特徴であるGPUクーラーからチェックしてみたい。
冷却性能のテストに当たっては,3DMark06を約30分間ループ実行し続け,その間のGPU温度推移を,MSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 2.1.0 Beta 4)から追ってみた。テスト対象の2製品について,その結果をまとめたものがグラフ1だ。
グラフを見れば一目瞭然だろうが,HD-685X-ZDFCのGPU温度は,HD 6850リファレンスカードのそれと比べ,アプリケーション実行時で約20℃低く推移した。冷却能力は相当に高いと述べていいだろう。OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」とするが,アイドル時だと順に38℃,42℃で,それほど変わらない。
本製品が搭載するGPUクーラーはデュアルファン仕様ということもあり,Afterburnerはもちろん,「GPU-Z」といったGPU情報表示ツールでもファン回転数は取得できなかった。ファンモーターのパルス出力がつながっていないか,独自のインタフェースになっているのかもしれない。また,搭載するファンの仕様も不明で,アイドル時やピーク時の回転数はカタログ値も公表されていない。
だが,回転数の温度制御はされており,回転率はAfterburnerから得ることができた。そこで,グラフ1における“ファン回転率”推移を比較したのがグラフ2となる。
ここでは,HD 6850リファレンスカードだとピークでも46%に抑えられているのに対して,HD-685X-ZDFCだと60%まで上がっていることが分かるだろう。細かく見ると,後半になるにつれ,HD 6850リファレンスカードはピークに達する時間が増えるが,HD-685X-ZDFCのほうは変わらないか,むしろ短くなる傾向にあるようだ。
もっとも「46%対60%」と言ったところで,後者で最大回転数が公開されていないうえ,ファンも2基あるので,直接の比較はできない。
そこで,3DMark06より負荷の高い「Heaven Benchmark 2.0」(Version 2.1)を30分間連続実行した状態を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,グラフィックスカードから約20cm離れた場所に固定したマイクで,動作音を録音してみた。絶対評価用ではなく,あくまでもHD 6850リファレンスカードとHD-685X-ZDFCとの動作音を相対評価するためのものだが,ぜひ聞き比べてみてほしい。
ファンの径が大きく,風切り音が入り込む関係で,HD-685X-ZDFCの動作音はHD 6850リファレンスカードより大きい。高負荷時はHD 6850リファレンスカードがやや高周波よりの音になっているのに対して,HD-685X-ZDFCはやや低めの音が主体になっているのも特徴だ。
ただ,実使用上,うるさいと感じられるレベルではないため,PCケースに組み込んでしまえばまずもって気にならないだろう。
当然ながら性能はリファレンスと同じ
安定動作志向のゲーマーに勧められる
動作クロックが完全に同じなので,性能面での違いが生じる可能性は低いが,念のため確認しておきたい。今回は,4Gamerのベンチマークレギュレーション10.2から,「3DMark06」(Build 1.2.0)および「Battlefield: Bad Company 2」「Just Cause 2」の3タイトルに絞り,1680×1050&1920×1200ドットの「高負荷設定」でテストし,その結果をグラフ3〜5にまとめてみた。見事に「変わらず」という結果が出たので,参考にしてほしい。
なお,HD 6850というGPUそのものの位置づけについては,2010年10月22日に掲載したレビュー記事を参照してもらえれば幸いだ。
ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用い,各ベンチマークアプリケーションを実行したとき,最も高い消費電力値を示した時点を,アプリケーションごとの実行としつつ,アイドル時ともどもスコアをまとめてみたのがグラフ6だ。
タイトルによって多少のブレはあるが,基本的には変わらないと見ていいだろう。少なくとも,アグレッシブにファン回転数を制御するHD-685X-ZDFCが不利といった結果にはなっていない。
また,今回は試していないが,多少の“無理”にも対応できると思われるので,ややオーバークロック気味にGPUを動作させたいというニーズにも,応えてくれる可能性はありそうだ。
XFX製HD 6850カード製品情報ページ(英語)
- 関連タイトル:
Radeon HD 6800
- この記事のURL:
(C)2010 Advanced Micro Devices, Inc.