インタビュー
新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー
この9年越しの移植にいても立ってもいられなくなった4Gamer――の担当編集者――が,本作のプロデューサーであるDr.ワタリこと亙 重郎氏に,直撃インタビューする機会を得た。ファンにとっては夢にまで見たフォース移植の裏側や,豪華特典の「フェティッシュ解放コード」「クロニクル 15」の成り立ち,バーチャロンシリーズの今後,亙氏の近況など,盛りだくさんな内容のインタビューになっているので,バーチャロンファンならぜひお読みいただきたい。
「電脳戦機バーチャロン フォース」公式サイト
コンセプトはあくまで「ストレートな移植」,「家庭でフォースを楽しむ」ための要素をプラス
本日はよろしくお願いします。
亙氏:
よろしくお願いします。
4Gamer:
まず初めに,フォース発売に至るまでの経緯からお聞きしたいと思います。やはり前作「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム ver.5.66」(以下,「オラタン」)を受けて,という形でしょうか。
亙氏:
それもあながち間違いではないですが,もう一つ伏流として,オラタンが出るまでに立てていた,色々な企画が全滅している状況がある(笑)。そんな中で,アーケード版でフォースだけ移植されてないのが,ずっと心残りになっていました。
そして,オラタンが突然世に出て,Xbox 360にバーチャロンユーザーが集まってくれた。流れ的にフォースをやるなら,Xbox 360でどう? と。あと,ひそかに4×9×10の法則といってるんですが,フォース(4)を9年ぶりに2010年(10)に移植すると「360」になると(笑)。これはもう逆らえない数式的真実の世界が。必然が。
4Gamer:
え。あぁ,なるほど(笑)。では前作はXbox Live アーケードでのダウンロード販売だったのに対し,今回パッケージ販売になったのはなぜなのでしょうか。
亙氏:
開発費と販売価格の折り合いの面で,パッケージが最善でした。ゼロベースからの移植となるフォースは,どうしてもそれなりの予算がかかってしまいますし,それに見合った価格設定となると,Xbox Liveアーケードの主流の価格帯では難しく,現状でのソリューションではパッケージくらいしかないんですね。
4Gamer:
では,例えば今回追加される「ミッションモード」などは,パッケージで提供するにあたって,ボリュームを考慮して用意されたもの,と考えれば良いのでしょうか。
亙氏:
対戦するだけではなく,いろいろな切り口で遊べるよう,システム内でできることはすべてフォローしておこう,という考え方です。ミッションモードでの機体集めや,二人で協力して遊べる協力プレイなどが実装されていますが,これをボリューム増と呼んで良いのかどうかは分かりません。あくまでコンセプトはストレートな移植です。
4Gamer:
東京ゲームショウ2010では,Xbox 360 4台を繋いで対戦できる,システムリンクも発表されていましたね。
亙氏:
システムリンクもそういった要素のうちの一つですね。でもあれは最初予定になかったのに,ある時,ふとできちゃっていて(笑)。でも実装されて良かったです。
4Gamer:
ネット対戦に関してはいかがでしょうか。オラタンの時とは違いがありますか?
マッチング周りなどは,やっぱり2on2なので,結構変わってると思います。あまり細かな部分まではお話しできませんが,そこはお楽しみということで。
4Gamer:
ちなみにドリームキャスト版のオラタンの時にあった,ルームに入ったメンバーで総当たり戦をするマッチングが個人的には好きだったんですが,ああいうのはやはり難しいんでしょうか。
亙氏:
あれ,実はとんでもないコストがかかってますからね。
4Gamer:
そ,そうなんですか!?
亙氏:
ドリームキャストの時は,インフラづくりからセガが主導権を持って仕様を決めていったので,我々にとって必要なものを最初から盛り込むことができました。Xbox Liveに間借りしている現在とは,比べものになりません。
4Gamer:
当時にしてリアルタイム観戦も可能でしたし,あのマッチング形式は今でも最高だと思ってるんですが……。
亙氏:
あの頃と比べると,今のセガは別の会社になってますからね。当時と比較されるのは,ちょっと勘弁願いたい。双葉山の69連勝と,白鵬の奮戦ぶりのどちらが尊いのか論じるのと同じくらい,噛みあわない話ですよ。
限定版付属の小冊子「クロニクル 15」は渾身の出来
ファンなら垂涎モノの必携アイテム
ゲーム本編からは少し離れて,豪華な特典の数々についてもお聞きしたいと。今回はかなり特典周りがかなり充実してますよね。とくに予約特典の「フェティッシュ解放コード」は,4Gamerでも飛び抜けて注目度が高かったです。
亙氏:
要は,皆おっぱい好きだよね? ってことです(笑)。だったら買ってくれ!ていう,開発からの愛すべき不器用なご提案です。そもそもバーチャロンプレイヤーは99.99%が男性なんですが,そこはもう男同士,意気込みを感じてほしかった。
4Gamer:
いや,それはもうビンビンに感じました(笑)。あれは元々は,アーケード版にもあった要素だと思うんですが,当時の亙さんのアイデアだったんでしょうか。
亙氏:
あれはね,知らないうちに入ってたんですよ。だから最初にそのことを聞かされた時,何のことかわからなかったんですが,言われて確認してみたら確かにそうなってた。後でスタッフを問い詰めたら実は……っていう(笑)。
4Gamer:
しかし後にハセガワから出た“フェイ=イェン”のプラモデルの冊子では,そのあたりの背景設定が,こと細かに書かれていました。交換用チェストパーツの……。
亙氏:
そこはやっぱり必要でしたので。設定周りはだいたい私です。
4Gamer:
そういえば,限定版特典にも「クロニクル 15」という小冊子が付きますね。
亙氏:
全部で150ページ以上あるので,もう小冊子というか普通の本のボリュームですよ。紙質も良いし,手に持ったときの重量感といい,想像しているよりスゴイものになっているのでは。実物を見ると印象が変わると思います。
4Gamer:
実は先週サンプルを見せていただいたんですが,2000円くらいで売っても全然不思議ではないモノでした。あれだけでも買う価値はあるかと。
亙氏:
モノとしても十分満足度がありますし,内容も,もちろんバーチャロンの話はしているんですが,'90年代の,セガがアーケードで一番勢いがあった時代の証言,みたいな側面も書き込んでいるつもりです。とても一日二日では咀嚼できないほどの内容密度なので,ご期待ください。
“フォース”は“オラタン”からではなく,初代OMGからの進化系
4Gamer:
ちょっと昔話になってしまうんですが,アーケード版の当時についてお聞きします。そもそも初代「電脳戦機バーチャロン」('95年/アーケード,以下,OMG※)が出た当時って,バーチャロンっぽいゲームって,ほとんどなかったように思うのですが,何か参考にしたタイトルはあったんでしょうか。
※OMG……オペレーション・ムーンゲートの略。初代「電脳戦機バーチャロン」の世界設定に登場する作戦名。とくに初代を示す際に,よく使用される。
ないですね。
4Gamer:
個人的には,OMGってすごく突然現れたゲームという印象が強くあるんです。革新的なタイトルであっても,その予兆っていうのはどこかにあるもので。例えば「ストリートファイターII」だったら,その前には「ファイナルファイト」があって,その前には……というように,歴史を紐解くことができますよね。OMGにはそれがない。あれは対戦ゲームであることと,ロボットゲームであること,どちらが先だったんでしょうか?
亙氏:
ロボットで何かできないか,という話が最初にあったのは事実ですが,おおもとは,新しい遊びを作りたかったというだけなんです。これは我々も含めてですけれど,ここ十数年来,ゲームに対する見方が何かこう,枠にハマってしまっていますよね。シリーズ化していくのが普通とか,なにかがシームレスに発展・進化していくのが当然みたいな感じで前後関係を認識したがるという。
でも本当に新しい何かというのは,もっと突然変異的に生まれてくることが多い。「テトリス」だって「マリオブラザーズ」だって,突然出てきたじゃないですか。
4Gamer:
それは確かに。
亙氏:
作り手側に新しい遊びに対する貪欲さや,作ってやろうという気概があった上で,何がしかのチャンスやタイミングに恵まれたときに出てきたものって,外側から見ると突然出てきたように見えるときがある。バーチャロンもある意味その一例で,決して頻繁に起こるわけではないけど珍しいわけでもない,ささやかな類型と思っていただければ。
4Gamer:
確か東京ゲームショウ 2010のステージでは,「ロボットゲームを普通に作ったらこうなった」というお話をされていましたよね。例えば攻撃の軸を合わせる,相手を動かして硬直を取るといった,バーチャロンの基本ルールの部分というのは,亙さんの中から自然に出てきたアイデアなんでしょうか。とくに何かを参照したわけではなく。
亙氏:
そんな楽なものではないですけどね(笑)。七転八倒して苦しみながら,このほうがむしろ良いのではないか,みたいな取捨選択,試行錯誤の連続です。プロトタイプを何度も作ったうえで採用したものもあれば,いきなり発明したものもあったりで,一概にはいえないです。
ツインスティックというインタフェースについてはいかがですか。あれはやっぱり,ツインスティックでなければならなかった?
亙氏:
ツインスティックじゃないとロボが操作できないのか? という意味であれば,そんなことは全然ないです。1ジョイスティック3ボタンでも,十分できますよ。
だけど僕らが当時求めていたのは,「ロボを自由自在に操作できて嬉しい!」と実感できる,直感的なインタフェースだったんです。ポリゴンで作られたものがすべて未来指向に見えていたあの時代,夢を動かすためのインタフェースが,ありきたりの1ジョイ3ボタンではダメだろう,と。そしてできたのがツインスティックです。
4Gamer:
あぁ,とてもよく理解できます……。でもオペレーターさん(ゲームセンターなどの経営者)的には,やっぱりちょっと扱いづらい部分があったのでは,と思うのですが。
確かにありました。それ以前に,社内的にツインスティックなんてあり得ない,あってはいけない,という迫害の歴史もありまして,それを乗り越えるのが本当に大変だった。でも,結局はモノをいうのはインカム。金さえ入るのであれば黙る,黙らせることができる,そんな力の論理がアーケードにはあり,結局はそれが機能して今に至っている。
4Gamer:
確かに。ただ自分も当時,アーケードで何本ものスティックをへし折った口なので……あのころの店員さんには本当にご迷惑をおかけしました……。
ええと,それで時系列でいえば,最初のOMGからオラタン,そしてフォースというのがシリーズの流れになりますが,OMGからオラタンというのは,「よりスピーディに,より複雑に」という,ある意味正統的な進化だと思うんです。しかしオラタンからフォースでは,進化の道筋としては,かなり別の方向へ進みましたよね。
亙氏:
OMGからオラタンに乗り換えが成功した人から見ると,そう見えるのかもしれないですが,実はOMGからオラタンに移行できた人っていうのは,OMGから入ったプレイヤーの1/3もいないんです。
4Gamer:
1/3ですか……。かなり少ないですね。
亙氏:
OMGからの流れでみた場合,オラタンの支持派は少数派です。そしてフォースはオラタンの続編ではない。両者には,初代のコンセプトやシステムをベースに新しいものを作るという基本スタンスだけが,共有されている。
4Gamer:
オラタンの続編のフォースではなく,OMGから派生したフォースである,と。
亙氏:
派生……ではないですが。オラタンにしてもフォースにしても,OMGで作ったバーチャロンという枠組みの中で,どうしたら違う遊びが作れるか,というのが基本アプローチです。だからOMGを起点としているという一点においては,我々にとってオラタンもフォースも同じではある。OMGから生まれた可能性の中で,たまたま98年当時にできたのがオラタンで,たまたま2001年当時にできたのがフォースだったと。
プレイヤー考案のテクニックもほぼ「想定内」
“Dr.ワタリ”流のバランス調整術とは
4Gamer:
かねてから疑問だったんですが,バーチャロンの対戦で重要なテクニックの中には,「漕ぎ」であるとか「モーションキャンセル」といった,一見するとバグなんじゃないかと思ってしまうようなものが多くありますよね。あれらはあらかじめ用意されていたものなんでしょうか。
亙氏:
その手のテクニックの大部分は,バグとはいえないものです。仕様上想定可能な組み合わせなんだけど,プレイヤー的に意外性があったり,想定されていなかったりしたものが後に発見され,驚きを伴って認識された,という経緯のものがほとんどです。プレイヤーさんが仕様をうまく使いこなしたがゆえに生まれた現象ですね。
4Gamer:
いやしかし,そういったテクニックを使いこなしたうえで,綺麗に対戦バランスが取れているっていうのが,すごく不思議だったんですが。
例えばキャンセル関連の仕様というのは,実はバーチャロンの中では重要な部分です。この手の対戦型ゲームで,キャンセルをああいった形で実装しているものというのは,ほかではいまだ見たことがない。バーチャロンにおいても,どういう理屈であのキャンセルが機能しているか,理論的に把握しているのは,チーム内でも数人しかいないという(笑)。
4Gamer:
な,なるほど。想定内の現象なんですね。バランス面についてもう少しお聞きしたいんですが,実際にバージョンアップを行ったときなどは,例えば巷の対戦ダイヤグラムなどを参考にすることなどはあったんでしょうか。
亙氏:
見ません。ダイヤグラムというのは,あくまでその時点での状況に過ぎないので,数か月後には,まったく変わってしまうことも往々にしてあります。テンポラリーな状況に目を奪われるのは危険です。
4Gamer:
それは確かにそのとおりです。確か亙さんの当時の発言の中に,キャラごとの相性にはデコボコがあって良い,むしろそれだから面白い,というようなお話があったと思うんですよ。そこで調整にコツなどがあるようでしたら,この機会にぜひお聞きしてみたい,と。
亙氏:
別にいたずらにキャラ差をつけたり,平坦にしたりすることを狙っているわけではないです。フォースだったら9年間,オラタンだったら12年間,OMGだったら15年間の遊ばれ方を時系列的に追っていくと,キャラ評価は結構ドラスティックに変わってるんですよね。
そうですね……ある程度長期間遊んでもらおうと思ったときには,それぞれのキャラクターに,まずどういったキャラクター性を付与するのかを決め,そこに複数の遊び方の存在を許容できる冗長性を加味した上で基礎設計することになります。その上で,それぞれのキャラクターが,互いの立ち位置を侵蝕しないように,収まるべき所に収めていくというのが,根本的な作業になります。これがうまくいくと意外にゲームって長生きするんですよね。
4Gamer:
なるほど。
亙氏:
良くいわれる,例えばヒットポイントの調整なんかは,本当に最後の最後,たこ焼きでいったら最後のかつおぶしの一振りみたいなものです。一番表面にある見える部分なので,目がいきがちかもしれませんが,実はもっと奥の奥,ベース部分の味付けがしっかりしていないと,そもそも遊びこまれることすらなく終わってしまう。
4Gamer:
それは発売後の調整であっても変わらずですか?
亙氏:
基礎設計はリリース前に終わってます。ただ,ちょっとかみ合わせの悪いところがあったりする場合,すこし角を取ってやるみたいなことはある。オラタンの場合,Ver.5.2からVer.5.4に変わる時に,それをやりました。Ver.5.45からVer5.66の時は,新キャラクター以外は,基本的に何もイジってないですね。
「新しい遊び」にこだわり,挑戦を続ける“Dr.ワタリ”
では次は亙さん御自身について,お聞きしていきたいと思います。バーチャロンシリーズとしては最後発の「バーチャロンマーズ」(2003年/PlayStation 2)以来,メディアへの露出は,あまり見られなかった亙さんですが,その間は主にどういったお仕事をされていたのでしょうか。やはり最初にお聞きしたように,バーチャロンの企画を立てては,なかなか通らないという繰り返しですか?
亙氏:
バーチャロンの企画が通りにくかったというより,新規性のあるタイトルが全般的に実現しにくくなってしまった,という現状があります。先にもお話ししたとおり,ゲームの開発をする際,事前に収益性が見えていないと,なかなか難しい。収益性が新規性より優先される傾向は強くなってきていると思う。
4Gamer:
それは例えば,何かの続編であるかとか。
亙氏:
続編ものは,これだけ売り上げたものの続きなので,次はこれだけ売れるでしょう,って話がしやすいですからね。もちろん続編だからといって,実際は何も保証されてないはずなんですけど。
4Gamer:
バーチャロンだってある意味続編なわけですけど,やはり亙さんとしては,新しいチャレンジをしていきたいと。
亙氏:
ボリュームアップ系の続編を手がけるというスタンスを否定するものではありませんが,新しい遊びを作り続ける仕事っていうのも,やっぱり必要なんですよ。
4Gamer:
ちなみにその間,セガないし他社さんでも結構ですが,亙さんの目に止まったタイトルはありましたか?
とくにないですね。今のゲームって,十数年前に作られた遊びのスタイルを継承し,グラフィックを豪華にすることによって商品価値をつけているものが多いじゃないですか。あくまでも想像ですが,かつてゲームをプレイしていた人達の中で,「このゲーム,グラフィックスはしょぼいけど,俺の脳内ではこんなにスゲーんだ!」っていう脳内妄想というか,思い入れみたいなものを,大人になって作り手側にまわったことで具体化してみせてる,そんな段階なんじゃないかと。そんなわけで,とくにゼロ年代以降のタイトルで,意外性のある新規タイトルの事例を見かけた記憶はほとんどないです。皆無とはいいませんが。
4Gamer:
グラフィックスを豪華にするのは,もちろんお金はかかるでしょうが,ある程度は線形的に向上していくわけで。会社としては,その方が分かりやすいというのはあるかもしれません。
亙氏:
その結果,タイトル単価も開発費も膨らんでいって,実は開発自身のクビを締めている。金がかかるから作るタイトルも絞らざるを得なくなりますし。すると,新しいことに手を出す余裕がなくなり,でも従来タイトルは次第に飽きられて……そんな負のスパイラルは,いまどこの会社にも確実にあるんではないでしょうか。
4Gamer:
日本以外,海外を含めても,「これは!」というタイトルはないですか。
亙氏:
遊びとして新しいというのは,とくに思い当たらないですね。強いていえば,日本国内でいえばかつての音ゲーはちょっと新しかったかなぁ。あとWiiはうまくやりましたよね。最近は新しい遊びというよりは,携帯ゲームでアドホックとか,スタイルとしての新しさを提案するのが趨勢になっている気がしますね。
ソーシャルゲームなんかも低価格で何かができそうというポテンシャルは感じるんですが,市場の変化のペースが早すぎて,なにか新しいものをしっかり考えて作る,時間的な猶予を許してくれないのが辛い(笑)。
4Gamer:
「コンテンツの寿命が3か月」とかですからね。
僕らがバーチャロンをやってた頃のアーケードも,コンテンツの寿命は3か月っていわれてて,実際そうだったんですよ。その代わりにアーケードという器(プラットフォーム)自体は,常にそこにあって,そこになにか新しいものを提供するという枠組みは機能していた。
でも今は携帯端末にせよソーシャル系にせよ,プラットフォームもどんどん変わっていってしまうので,そこに乗せるコンテンツに取り組む体制も安定しない。そうなるとよほどうまく波に乗って,ピンポイントでチャンスをモノにしないと,ビックリするような新しいものって生まれにくいんじゃないかなあ。すごくめまぐるしい時代ですよね。
4Gamer:
気になってるハードウェアやプラットフォームなどはありますか? 例えば先程のWiiであるとか,3DSであるとか。
亙氏:
実はゲーム端末で心惹かれるものって,あんまりないんです。また心惹かれるというのとは別の話ですが,僕が気になっているのは,現状だとゲーム以外,例えば音楽とか出版業界。彼らは今,無料化などの波に激しく揺さぶられていて,非常に苦しいじゃないですか。
4Gamer:
紙メディアにおける電子書籍とか,そういったお話でしょうか。
亙氏:
いや,個々のソリューションの話ではなくて,コンテンツの価値の話です。すでにタダで手に入るものがこんなに溢れているのに,わざわざお金を出して買う必要ってないじゃないですか。
そんな中で,音楽や出版の枠の中で戦っている人達がいまやろうとしている工夫や戦略は,ゲーム業界にとっても参考になると思うんです。パブリッシャーとしての新しい姿勢だとか,数年後に出てくる取り組みの成果を見守って,参考にしていきたいですね。
ゲームの場合,そもそもパッケージが高いし,違法アップロードの問題なんかもある中で,それでもわざわざ買いたくなるもの,自分から素直にほしいと思えるモノをどうやって生み出していけばいいのか。課題はいろいろあります。
4Gamer:
音楽は確かに先行してそういう波が来ましたが,出版はとくに日本は遅れていますよね。
亙氏:
とにかくコンテンツの価値や地位の凋落は著しくて,音楽にしろなんにしろ,売り上げがガタ落ちになっている。そもそも文字から得られる情報に金銭的な価値が見いだせるのか否か。その根本がぶっ壊れてしまってます。まるで戦後の焼け跡状態ですよ。でも今,そこにバラック小屋を立てて,新しいことを始めようと汗をかいている人達がいる。それを応援したい気持ちです。彼らの奮闘は,ゲーム業界の今後の参考にもなると思うし。
相対的に,ゲームはまだ安眠の夢を貪ってますよね。パッケージ販売で動く数字って意外とまだまだ大きいので。
- 関連タイトル:
電脳戦機バーチャロン フォース
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