レビュー
ゴーストリコンシリーズ最新作は,連携がカギを握る仕様が熱すぎてたまらない
ゴーストリコン フューチャーソルジャー
「レッド・オクトーバーを追え」や「パトリオット・ゲーム」など,ジャック・ライアンシリーズの原作者として日本でもその名が知られているトム・クランシー氏。そんなクランシー氏が監修した近未来ミリタリーTPS「ゴーストリコン」シリーズの最新作「ゴーストリコン フューチャーソルジャー」(PS3 / Xbox 360,以下,フューチャーソルジャー)が,ユービーアイソフトから7月5日に発売された。
本シリーズは「ゴースト」と呼ばれるアメリカ特殊部隊の戦いを描いたもので,現実味が漂う世界観と映画のような演出でファンを魅了し続けている。前作「ゴーストリコン アドバンスウォーファイター2」の発売から約5年の歳月が流れ,フューチャーソルジャーはどのようなゲームに仕上がっているのか,PlayStation 3版によるマルチプレイの印象を交え,レビューをお届けする。
キャンペーンモードは満足できるボリュームと内容。仲間との同時射撃“シンクショット”にシビれる!
2007年〜2013年が舞台となっていたこれまでのシリーズから少し時間が経ち,本作の舞台は2030年となっている。密輸武器を積んでアメリカに向かうトラックを阻止すべく「ゴースト」が出撃。急襲作戦は無事成功したかに見えたが,積み荷の中に仕掛けられた爆弾が作動し,爆発に巻き込まれて部隊が全滅してしまう。そして新たなゴーストとして4人の精鋭が集められ,プレイヤーはその一人として作戦に従事することになる。
と,ここまでがキャンペーンモードのプロローグだ。武器の密輸に絡んでいた人物を調査するところから本編が始まり,全12ミッションにわたる物語が展開していく。この先の内容についてはネタバレを防ぐためにあえて触れないが,一つ一つのミッションはすぐに終わってしまうようなものではなく,しっかりと中身の濃いものに仕上がっているので,ボリューム不足を懸念している人はご安心を。昨今のFPSやTPSはマルチプレイがメインで,キャンペーンはオマケ程度というものも存在するが,そのストーリー展開の巧みさ,ボリュームなど,どれをとっても満足できるものだった。
ゴーストに与えられる任務は過酷なものばかり。隠密行動が求められるときもあれば,射撃センスが求められることもある |
ガンカスタマイズで自分仕様の銃を組みあげられるというのも,マニア心をくすぐる要素だ。最高10種類のパーツを組み合わせて,威力を重視したり,命中精度を上げたりと,細かく調整できる |
その満足度アップにひと役かってくれているのが「シンクショット」と呼ばれる同時射撃システムの存在だ。本作では一部のミッションをのぞき,つねに4人編成のチームで任務にあたることになるのだが,前作のように仲間の行動を指示できない。その代わりに用意されたと思われるのがシンクショットで,あらかじめターゲットを指定しておき,同時射撃で一掃できるようになったのだ。複数の敵が散開していてもまとめて片づけられるため,敵にいっさい気づかれることなく目的地を目指すこともできる。
また4人以上の敵がいる場面でも,高い位置にいる敵から順に処理していけば死体は発見されない。高所から狙っているスナイパー達をシンクショットで片づけたあと,さらに中庭の敵もシンクショットで一掃というように,処理する優先順位を見極めれば,声ひとつあげさせることなく周囲の安全を確保することも可能だ。うまく決まるとかなりの高揚感が得られ,ゲームへの没入度も次第に高まっていく。敵に見つかってしまうときもあるが,そういう場合は,シンクショットの代わりに「集中攻撃」を指示できる。これはどの敵から倒していくかを決めるものなのだが,自分が脅威だと感じる相手をマーキングしていくだけで,仲間が集中射撃を行ってくれるのだ。高所のスナイパーやLMGを所持した敵を優先的に倒していけば,かなりの激戦区でも優位に立ち回れるようになるだろう。
一人でプレイしていながらも,チームプレイの醍醐味をここまでシンプルに味わわせてくれる作品に,筆者は初めて出会ったかもしれない。キャンペーンにはオンライン協力プレイも用意されているので,フレンドとボイスチャットをしながらプレイすれば,より一層楽しめること間違いなしだ。
シンクショットは,自分も含めて最大4人まで同時射撃できる。自分は加わらず,仲間3人だけに撃たせてもいい |
ドローンと呼ばれる兵器を使って,空中から敵を探すことも可能。この画面からシンクショットのターゲットを指示することもできる |
お前の背中はオレが守る! マルチプレイはOne for Allの精神で挑むべし
キャンペーンだけでもかなりの遊び応えだが,マルチプレイもそれに勝るとも劣らない出来映えだ。キャンペーンと同様にチームプレイを前面に押し出しており,単純にキルデス数を争うような「デスマッチ」や「チームデスマッチ」といったゲームモードは存在しない。さすがに「チームデスマッチくらいはあって然るべきでは……」と首をひねってしまった筆者だが,マルチプレイを始めてラウンドを重ねていくうち,それがいかに浅はかな考えであったかを痛感した。もはやキルデス数を競うことがチープに思えてしまうほど,本作のマルチプレイは仲間と一緒にプレイしている感覚が重視されているのだ。まずはどのようなゲームモードが用意されているのか,以下に概要を示してみよう。
・CONFLICT
2チームに分かれ,提示された目標のクリアを目指して戦闘を行うモード。どちらかのチームが目標を達成するとすぐに次の目標が提示され,制限時間の15分以内により多くの目標を達成したチームが勝利となる。目標達成が困難と思われるときは,次に備えて待機するといった切り替えも大切だ。また制限時間が迫っていても,次の目標達成で逆転が成立する場合は時間が延長されるため,最後まで油断は禁物。
・DECOY
攻撃側と防御側に分かれて,交互に1ラウンドずつ戦う。制限時間は1ラウンド10分。最初に3つの目標がマップ上に設置されているが,このうちの2つはデコイ(おとり)だ。攻撃側は本物の目標にアクセスすることを目指し,それに成功すると最終目標が出現する。そこに爆弾を仕掛けることができれば攻撃側の勝利。防御側はそれを阻止すべく,10分間目標を守り抜けばいい。引き分けの場合は延長1ラウンドが追加される。
・SABOTAGE
2チームに分かれマップの中央付近に置かれた爆弾を奪い合うモードだ。爆弾を確保して,敵陣地の所定ポイントに運び,設置できれば勝利となる。運搬中の敵を倒すと爆弾はその場に落とされ,元の位置には戻らない。必然的に爆弾のある位置が交戦エリアとなるので,チームワークで押し切ろう。
・SIEGE
攻撃側と防御側に分かれて,交互に1ラウンドずつ戦う。制限時間は1ラウンド5分。このモードに限り,1度倒されたらそのラウンド中はリスポーンできない。攻撃側は,敵陣地にある目標を確保するか,敵を全員倒せば勝利。防御側は目標を5分間守り抜くか,敵を全員倒せば勝利となる。引き分けの場合は延長1ラウンドが追加される。
上記のとおり,本作のマルチプレイでは目標を達成することが最優先事項となっており,これを疎かにしては絶対に勝利を得られない。目標の内容は爆弾の設置であったり,情報端末の操作だったりとさまざまだが,アクセスに要する時間は15秒前後と少々長め。しかも目標にアクセスしている最中はほかの行動がいっさいとれないため,単独で突っ込んだとしても返り討ちに合うのが関の山だ。したがって,仲間と行動を共にするのがベターということになる。
進入経路をいかに突破するか,いかに守り抜くか。1人では困難なシチュエーションでも仲間がいればきっと切り抜けられる |
目標にアクセス中,仲間の1人が前方を守ってくれている。このような連携を心がけることが大切だ |
これはアクセス中の仲間を護衛しているところ。右下のミニマップを見れば分かると思うが,仲間が敵の進入経路をしっかりカバーしている |
また,敵の守りが強固で仲間が倒されてしまった場合でも,捨て身で突っ込むなどという行動は控えたい。なぜかといえば,チームはアルファとブラボーの2班で構成されており,同じ班の仲間がいるところにリスポーンできるようになっているからだ。ただしそれには条件があり,リスポーン地点となる仲間が目標に近すぎたり,敵に探知されていたり,戦闘中であったりしてはならない。したがって,孤立してしまったときは,目標からやや離れた位置で建物の陰などに潜み,同じ班の仲間がリスポーンしてくるのを待つことも重要になる。
1人でも生き残っていれば数秒で前線に復帰できるので,さほど時間をかけずに態勢を立て直せるだろう。キルデス数を争うわけではないので,単身で敵陣に潜り込んでなんとかなるようなものでもないのだ。とくに突っ込み型のFPSをプレイしていた人は先行しすぎてやられるパターンが多いようなので,常に仲間と共闘しなければ勝てないということを念頭に置いて挑むのがいいだろう。
センサーグレネードを投げると,範囲内にいる敵が赤く表示される。敵の位置が把握できれば裏をとることも簡単になる |
スタンガンなどで敵を気絶させるとハッキングが可能となる。ハッキングを成功させることでも敵の位置情報を得られる |
ハッキング後はナビゲートキルを狙ってみよう。マーカーがついた敵を倒せば通常よりも多くの経験値が手に入る |
マルチプレイモードの中でもメインとなり,プレイヤーがもっとも集まっているのは「CONFLICT」だ。マッチングでもほとんど待たされることがなく,1か月以上前に発売されている海外版のプレイヤーもまだまだ多い。つまり上級者がかなり多く,そのプレイ振りから立ち回り方を学ぶことができるので,初心者も物怖じせずにどんどんゲームに参加してみてほしい。
ただし,提示される目標の中でHVT(ハイバリューターゲット)の護衛は分かりにくいので注意が必要だ。これは,仲間の誰かがランダムでHVTに指定され,その人でなければ目標にアクセスできない状態となる。このときはHVTが孤立しないようにすかさずフォローにつき,進行方向を索敵。敵がいれば排除しつつルートを確保しなくてはならない。そして目標ポイントに到達したら,HVTがアクセスを完了するまで絶対死守。もしも自分がHVTになった場合は1人でウロウロせず,仲間が来てくれるのを待ってから移動を始めよう。逆にHVTを排除する側になった場合は,闇雲に敵を探すのではなく,目標ポイントでの待ち伏せがオススメだ。
「DECOY」と「SABOTAGE」もプレイしてみたが,こちらは「CONFLICT」と比べると人が少ない印象で,ゲームが始まるまでに10分ぐらい待たされたときもあった。爆弾をめぐっての激戦が熱そうなのだが,経験値があまり稼げないせいもあってか人気は低いようだ。もう一つの「SIEGE」は,ルールのシビアさから敬遠する人が多いように思えるが,そんな印象とは裏腹に大盛況。筆者も挑んではみたものの,倒されたら終わりという緊張感がすごすぎて,カバー状態から顔を出すこともためらわれるほどのチキン状態となってしまい,手汗の量も尋常ではなかった。だからこそ腕に自信のある上級者が集って賑わっているのかもしれないが,筆者の場合は,もう少し「CONFLICT」で精神面を鍛えてからのほうがよさそうだ。
画面右にいるのがHVTに指定されたプレイヤーのキャラクターだ。盾代わりになったつもりで目標地点まで先導しよう |
「来るなあぁぁぁ!」と叫びながら乱射するのは死亡フラグのような気もするが,そうせずにはいられなくなるほど「SIEGE」の緊張感は半端ない |
詰めの甘さが見え隠れするものの,ミリタリーアクションが好きなら間違いなくオススメの1本
キャンペーンもマルチプレイも十分に楽しめる本作ではあるが,不満点もある。これをスルーしたまま皆さんにオススメすることはできないのであえて書かせていただくが,キャンペーンにおいて,仲間が集合場所にやって来ないという不具合があるのだ。ゴーストの4人が1か所に集まることで次のシーンへと進む場面のため,進行不能となり,直前のチェックポイントからやり直すことになってしまう。筆者はエンディングまでに2回もこの現象に遭遇し,せっかくの緊張感が一気に解けてしまった。これはパッチでなんとかしてほしいところだ。
そしてもう一つは,日本語版の特典として用意されている「ダブル・タイム」についてだ。7月19日の時点で公式サイトに掲載されている説明では「マルチプレイでのキャラクターのレベルアップ時に,2つから1つオプション(武器やアタッチメント)を選ばないといけない場所で両方のオプションの解除が可能になる」となっているのだが,実際にプレイしてみるとダブル・タイムが正常に機能していない(?)のである。レベル4とレベル16で装備の選択があるものの,結局どちらか一方を選ばされ,レベル20の武器選択まで来たところでようやくダブル・タイムが機能した。なんだかだまされたような気分になったのは,恐らく筆者だけではないだろう。
ユービーアイソフトの広報に確認したところ,これは公式サイトの記載ミスとのことで,ダブル・タイムが適用されるのはレベル20とレベル32のときだという(武器のみ)。公式サイトはなるべく早いタイミングで修正するということだが,まずはゲームの不具合でないことをここでお伝えしておく。
といった不満点を述べさせていただいたが,それさえ除けばミリタリーアクション好きには絶対遊んでみてほしいタイトルだ。とにかくマルチプレイで味わえる一体感は本作ならではのものなので,キルレートの維持に疲れてしまったシューターの人,次はこちらで腕をふるってみないか! そして新兵として戦いの場を探している人,一緒に背中を守り合わないか! 新たな戦場,「ゴーストリコン フューチャーソルジャー」でキミを待つ!
「ゴーストリコン フューチャーソルジャー」公式サイト
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(C) 2012 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Tom Clancy, Ghost Recon, Ghost Recon Future Soldier, the Soldier Icon, Ubisoft, Ubi.com, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries.
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