レビュー
あのお騒がせコンビが,今度は上海を舞台に大暴れ
ケイン アンド リンチ2 ドッグ・デイズ
2010年8月26日,スクウェア・エニックスから発売された三人称視点のクライムアクション「ケイン アンド リンチ 2 ドッグ・デイズ」(PlayStation 3/Xbox 360。以下,ドッグ・デイズ)は,2008年に発売された「ケイン アンド リンチ デッドメン」(PlayStation 3/Xbox 360)の続編として,デンマークのデベロッパ,IO Interactiveによって開発されたタイトルだ。欧米ではPC版もリリースされているが,日本ではPlayStation 3版とXbox 360版の二つが発売されている。
前作に引き続き,今回もケインとリンチの二人組を中心としたストーリーが展開する。というわけで,前作をプレイしていない人のために,まずは,この二人について軽く紹介しよう。
・リンチ(CV:麦人)
ドッグ・デイズのメインキャラクターで,ストーリーモードを遊ぶ場合は,主に彼を操作することになる。もともとは金さえもらえればなんでもやる傭兵組織,「The 7」のメンバーで,ケインとはそのときからの知り合い。前作におけるThe 7との戦いのあと上海に移住し,地元組織の手下として活動している。
・ケイン(CV:内田直哉)
リンチと同じく元The 7メンバー。任務中にミスを犯し,組織を壊滅寸前にまでに追い込んでしまったため,The 7の残党に家族を誘拐される。The 7との抗争終了後も家族の問題は片付いておらず,逃亡生活を余儀なくされている。今回,一部のステージでケインを操作して,ミッションに挑むことになる。
ゲームモードとしては一人で遊ぶだけでなく,画面分割もしくはオンラインによるCo-op(協力プレイ)が可能な「ストーリーモード」や,武装強盗団のメンバーになる「アーケードモード」,そしてオンラインを介して世界中のプレイヤーと遊べる「マルチプレイヤーモード」の三つが用意されている。
ローカライズ版には日本語/英語の2か国分の音声が収録される。一般市民やザコキャラを含め,完全な吹き替えが行われており,日本語字幕の表示も可能だ。また英語音声を選ぶと,ダーティワードがバンバン飛び交い,いかにもな雰囲気だが,ムービーシーンで字幕が出ないため,英語が苦手な人は内容を理解しづらい。まずは筆者のように,日本語吹き替えで遊んで,それから雰囲気を味わうため英語音声を選ぶのがいいだろう。
日本語版は,英語版と比較してグラフィックスなどで異なる描写があるが,サーバーは全世界共通なため,日本語版でも世界中のプレイヤーとオンラインで遊ぶことが可能だ。詳しくはスクウェア・エニックスの告知ページを参照してほしい。
今回のレビューはスクウェア・エニックスに提供してもらった開発バージョンを使用している。そのため,記事の内容が製品版と異なる可能性があることを,あらかじめご了承いただきたい。なお,レビューに使用したのはXbox 360版だ。
「ケイン アンド リンチ2 ドッグ・デイズ」公式サイト
上海を舞台にケインとリンチが大暴れ!
独特の映像表現にも注目すべし
ドッグ・デイズの舞台になるのは,中国の上海。The 7との抗争のあと上海にやってきたリンチは,シウというガールフレンドと一緒に暮らしている。ある日,所属する地元の犯罪組織から武器の取引を仕切るよう頼まれ,これを無事に済ますためにケインに協力を求める。だが,簡単に終わるはずだった仕事は,当然のように予定どおりにいかず,ケインとリンチは,上海中のマフィアや警察,軍に命を狙われるようになってしまうのだ。
と,このような設定でゲームは始まる。ストーリーモードは11ステージで構成されていて,難度は「EASY」「MEDIUM」「HARD」「EXTREME」の四種類から選べる。EASYなら多少撃たれても平気だが,最高難度のEXTREMEともなれば,弾丸一発でも致命傷。なかなか難しい。
ゲーム画面を見てまず感じるのは,その独特な映像表現だろう。実際のカメラで夜景を撮影するときにISO感度を上げると,ざらついた写真になったりするが,それに近い表現が行われている。暗いところではノイズが増えて視認性が落ちたり,撃たれるとブロックノイズが発生したりするのだ。
公式サイトから引用させてもらうと,「ハンディカムで撮影した映像を,YouTubeで見ているような画面」とあるが,カメラが手ブレを起こしているのか,絵がボケたり,爆発が起こると一時的にカメラの音声が飛んだりと,その場に居合わせたかのような臨場感を再現することに主眼が置かれている。「クローバーフィールド/HAKAISHA」や,「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」といった,いわゆる疑似ドキュメンタリー映画は多いが,本作はそれをゲームでやろうとしているわけだ。
ただし,この映像表現はオプションで無効にすることはできず,海外のフォーラムなどを見ると,その点についてはやや賛否が分かれているようだ。
上海の描写に関しては,上海のイメージがうまく再現されていると感じる。空を見上げれば近代的な高層ビルが建ち並んでおり,一方,その下には庶民的な町が広がっており,場所によっては,なんともいかがわしい,猥雑な雰囲気を見事に再現している。
操作はアナログスティックでキャラクターや照準を操作し,トリガーで狙いを定めたり,銃を撃つもので,普段からFPS/TPSを遊んでいるという人なら,苦もなくなじめるだろう。
戦闘シーンにおける敵の攻撃はかなり激しく,棒立ちのままだと格好の標的になってしまう。そのためドッグ・デイズでは「カバー」というアクションが用意されており,壁や木箱といったオブジェクトを遮蔽物として利用できる。カバーによって敵の攻撃を防ぎつつ,狙いを定め倒していくというのが基本だ。とはいえ,すべてのオブジェクトの背後が安全というわけではなく,木製の壁や箱などは敵の攻撃で壊れていくので要注意だ。
ただし,ボタンを押してもキャラクターがしばらく動かなかったり,遮蔽物から遮蔽物に移動するときの動きが遅いなど,カバーポジションに関しては,ちょっとクセが強い印象。
敵AIは,同じタイミングで身を乗り出して攻撃してきたり,こちらの接近に気づかなかったりと,ちょっとおバカさんっぽい。また,銃撃戦が起こっているのに平然と住民が歩いていたりもする。こういう物騒な出来事には慣れているのだろう,たぶん。なお,一般市民に銃口を向けても,撃つことはできない。
ほかにLBボタンでダッシュ移動が可能だが,このときはカメラがガクガク揺れ,見た目の印象としては,走りながらビデオカメラで撮影しているようになる。3D酔いにはそれなりに耐性があると思う筆者だが,それでもちょっと気分が悪くなったときがあった。3Dに弱いという人は,オプション画面で「固定カメラ」という項目ををオンにすれば,多少揺れはおさまるので,ぜひお試しを。
戦闘では武器を二種類携行できる。武器としてはハンドガンやショットガン,サブマシンガン,アサルトライフルなど,この手のゲームでは定番といえるような銃が用意されている。ゲームスタート時に持っているのはハンドガンのみだが,敵を倒して武器を拾うことも可能で,ステージが変わっても武器を持ち越せる。
銃器には架空の名前がつけられているが,実在のものをモデルにしていると思われ,サブマシンガンは距離があると弾がばらけやすいとか,スナイパーライフルは強力だが弾数が少ないとか,性能面ではリアルな作りになっている。
グレネードやフラッシュバンといった投擲武器は用意されていないが,ガスボンベや消火器などを投げ,それを撃って爆発させることができ,複数の敵をまとめて倒せる。ステージ内には攻撃に利用できるものがいくつもあるので,それをうまく利用するのが攻略のコツだ。
人間を盾にすることもでき,これで攻撃を防ぎつつ敵を倒していける。ただ,割と早いうちに使い物にならなくなるため,過信は危険だ。また,盾として使えるのは,こちらを攻撃してくるマフィアや警官,軍人などで,一般市民をとっつかまえて……ということはできない。
被弾した際は,遮蔽物などに隠れてそれ以上のダメージを受けなければ,自動的に回復する。自分が受けたダメージは画面の色によって判別が可能で,少し撃たれた程度なら画面の一部に血痕が残る程度だが,瀕死の状態になると画面全体が真っ赤に染まり,自分がどこを狙っているのか判別がつかないほどになる。
ある程度ダメージが溜まった場合,プレイヤーが倒れてしまう。こうなっても這って動いたり,ハンドガンで攻撃ができるので,周りの敵を倒しつつ,遮蔽物まで移動して体力の回復を待とう。Co-opではもう一人のプレイヤーから回復処置をしてもらえるが,時間内に処置が間に合わないと力尽き,セーブポイントからやり直しだ。
前述したとおり,ストーリーモードは全11ステージあり,だいたい一ステージが15分程度,長くても30分程度でクリアできるため,ぶっ通しで遊べば,5時間程度でエンディングに到達できるだろう。一人で遊んでステージ構成を覚えてから,難度EXTREMEをフレンドと一緒にプレイしてみるといったプレイも可能だが,ストーリーモードに限って言えばボリュームは少なめだと思う。
アーケードモードでは
武装強盗団のメンバーになってスコアを競う
ストーリーモードとは別に,アーケードモードが用意されており,ここでは武装強盗団のメンバーとなって,「FRAGILE ALLIANCE」(フラジール・アライアンス)というゲームをプレイできる。
これは,仲間と共に金庫を襲撃してお金を集められるだけ集め,さらに妨害してくる警官を倒し,制限時間内に脱出できればクリアとなるものだ。プレイヤー以外にAIが制御する7人のメンバーがいて,脱出に成功したらメンバー同士でお金が山分けされ,それがスコアとして記録される。獲得したスコアはアップロードされ,ランキングボードで競うことも可能だ。
マップは全部で9つ収録されているが,そのうち3つはダウンロードコンテンツを購入することで,アンロックされるようだ。
ユニークなのは,味方を裏切ってお金を横取りできる点にある。これでスコアをさらに稼ぐこともできるが,当然ながら裏切り者として仲間から攻撃されるため,腕に自身がなければ脱出は難しい。ほかに,脱出地点にある逃走車両に一人だけ乗り込み,仲間を見捨てて自分だけ生き残ることも可能になっている。ただ金庫を襲うだけでなく,いろいろなやり方でプレイができるところが面白い。
アーケードモードではライフは三つあり,警官に倒されたり,脱出に失敗するとこれが減り,ライフを使い切るとゲームオーバーとなる。ライフが残っている限りプレイを続けることが可能だが,ラウンドが進むほど敵AIの反応が鋭くなり,生き残るのが難しくなるというシステムになっている。
マルチプレイヤーモードは複数のルールを収録
プレイヤー同士の腹の探りあいはスリリング!
マルチプレイには,ランクマッチとクイックマッチの二種類があり,FRAGILE ALLIANCEのほか,「潜入捜査官」「警官vs泥棒」という三つのモードで遊べる。どういった内容なのか,順に紹介しよう。
●FRAGILE ALLIANCE
上記のように,武装強盗となってお金を集め,制限時間内に脱出すればクリアだ。アーケードモードと違い,ゲーム中に敵AIに倒された場合は警官として復活し,強盗団へ妨害ができる。ただし,裏切って失敗した場合は観戦モードになってしまう。マルチプレイでは4人〜8人でチームを組め,制限時間は3〜5分,ラウンド数は3〜5ラウンドの間で設定できる。
●潜入捜査官
基本的には,FRAGILE ALLIANCEと同じくお金を集めて,制限時間内に脱出するというものだが,こちらは武装強盗団の中に潜入捜査官が一人紛れており,誰が裏切り者か,お互いに腹の探りあいをするという緊張感の高いルールだ。プレイ人数は4人〜8人,制限時間は3〜5分,ラウンド数は3〜5ラウンドの間で設定できる。
潜入捜査官はゲーム開始時にランダムで選ばれるが,警官への攻撃はNGであるため,どう立ち回るかが重要になる。潜入捜査官になった場合,疑心暗鬼に陥って「あいつおかしいぞ」と銃撃戦を始めたりしている様子が面白い。
強盗団側は潜入捜査官を始末して強盗を成功させればクリアとなり,潜入捜査官は強盗の仕事を失敗させればOKだ。
●警官vs泥棒
その名のとおり,警官と泥棒の2チームに分かれて戦うルール。強盗団の場合はお金を集めて脱出すること,また警官の場合は強盗団の計画を阻止するのが目的となる。このルールのみ最大12人でのプレイが可能で,ラウンド数は4ラウンド,もしくは6ラウンドのどちらかを選べる。プレイ時間は先の2つのルール同様,最大で5分間だ。
一般的なFPS/TPSの対戦で,味方を裏切る行為はタブーだが,ドッグ・デイズではこれを積極的にゲーム内に取り込んでおり,「いつ誰が裏切るか分からない」「こいつは信頼できるのか?」と思った以上に気が抜けない。味方だと思っていたプレイヤーに出し抜かれたときなど,「やられたー」と声が出てしまうこと請け合いである。
プレイスタイルは記録されており,組織の一員として任務に尽力すれば,忠誠度のレベルが「献身的」から「信頼できる」という感じで上がっていき,反対に裏切りを繰り返していれば,それに応じた汚名を被ることになる。この忠誠度はマッチングしたときにロビーで確認できるため,ここで「この人,裏切るかもなあ」と目星をつけ,用心しておくこともできるだろう。
アーケードモード,マルチプレイモードともに,スコアとして記録されたお金がそのまま自分の所持金となり,これで強力な銃を購入してパワーアップできる。ただ,一部の銃はロックされており,これを買うにはダウンロードコンテンツの導入や,ランクマッチ/プレイヤーマッチ問わずスコアを稼ぎ,自身の階級を上げなければいけない。
階級は「ランク8:ひったくり」からスタートし,遊び続けることで「詐欺師」「殺し屋」と,犯罪者としての格(?)がグレードアップしていく。
ストーリーモードはプレイする人を選びそうだが,
マルチプレイモードは文句なく面白い
ストーリーモードはCo-opプレイに対応しているとはいえ,結構あっけなく終わってしまう。ほかにもノイズが乗った独特の映像表現,揺れるカメラなど,リアリティを追求したためか,プレイしたときの気持ちよさが,若干損なわれているような印象を受けた。ある程度FPS/TPSを遊びなれたプレイヤーなら楽しめるかもしれないが,初心者が初めて遊ぶタイトルとして手を出すには,ちょっとハードルが高いかもしれない。
マルチプレイモードはルールもユニークだし,現時点で遊べるマップには適度な広さがあり,バラエティに富んでいる。仲間を裏切る瞬間は,手に汗握る。成功すれば味方が集めたお金を奪い取れ,スコアを大幅アップさせられるが,失敗すればそのラウンドでは復活できないし,裏切り者として警戒されるだろう。まさにハイリスク・ハイリターンだが,プレイヤー同士の心理戦を制すことができたときは,かなりの快感だ。
プレイヤーはストーリーモードのCo-opよりも,マルチプレイに人が集まっている印象で,一緒に遊ぶプレイヤーに困ることはなさそうだ。あとは,日本のホストが増えれば,より快適に遊べるだろう。
独特の映像表現に賛否はあるものの,遊べるTPSであるのは間違いない。マルチプレイもほかに類を見ないものだ。PlayStation 3,Xbox 360ともにストーリーモード/マルチプレイモードを楽しめるデモが配信されているので,ドッグ・デイズが気になる人は,まずそれをチェックしてみよう。
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(C)2010 Square Enix Ltd. All rights reserved.Published by SQUARE ENIX CO.,LTD. Developed by IO Interactive A/S.
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