レビュー
ハリウッド進出も果たしたプリンスが,砂の魔物相手に大活躍
プリンス オブ ペルシャ 忘却の砂
「時間の砂」をめぐる物語に新章が追加
筆者は小学生の頃から現在のような姿(つまり,おっさん)になるまで数え切れないほどのPCゲームをプレイしてきたわけだが,中でも強烈に印象に残っている作品の一つが,1989年に登場した「プリンス・オブ・ペルシャ」だ。滑らかなキャラクターの動き,凶悪なトラップ,そして襲い来る突然死……。イヤというほど聞くハメになった“死んだときに流れる音楽”は,今でもすぐに口ずさめるほどで,あぁ,懐かしい。
そんなプリンス・オブ・ペルシャも,現在ではさまざまなプラットフォームで新作が続々と登場しており,2008年には設定を大きく変えた「プリンス・オブ・ペルシャ」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)が発売されたほか,その前には,いずれも時間の砂をめぐる物語を描いた「プリンス・オブ・ペルシャ 〜時間の砂〜」,「プリンス・オブ・ペルシャ ケンシノココロ」,そして「プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂」という,いわゆる「時間の砂三部作」(命名,筆者)が立て続けにリリースされている。
そんな人気シリーズの最新作が,ユービーアイソフトより2010年6月24日に発売された,「プリンス オブ ペルシャ 忘却の砂」(PlayStation 3/Xbox 360/PSP。以下,忘却の砂)というわけだ。本作は“〜時間の砂〜”と“ケンシノココロ”の間のストーリーが描かれており,ここから最終章である“二つの魂”へつながっていくわけで,だったら時間の砂は四部作ではないか,というツッコミも当然あるだろう。ありゃ?
シャラマン王の息子であるプリンス(主人公)は,兄である王子マリクのもとで修行を積むため,マリクが治める地へ向かっていた。そこは,かつてソロモン王が治めていた土地であり,「守るべき秘密がある」という,割と漠然とした伝説が残されていた。
折悪しく,プリンスが到着したとき,その秘密を手に入れようとする他国との戦争が始まってしまい,苦境に立たされたマリクは,秘密を解き放って状況の打開を図ろうとする。秘密とは,砂の化け物であるソロモン王の軍勢のことであり,解き放たれた彼らは,敵味方関係なくすべての人を砂の塊へと変えながら,勢力を増していったのである。
この危機を見たプリンスは,精霊の女王ラズィアの助けを受けつつ,マリクを救うために砂の化け物どもに挑んでいくのであった。ジャーン。
PlayStation 3版とXbox 360版には,上記のようなストーリーが用意されている。同時発売のPSP版では異なるストーリーになるらしいが,さらにPSP版にはPlayStation 3版とのデータ共有機能などもあるとのことで,両機をお持ちの方は,ぜひ使ってみていただきたい。
ちなみに今回のレビューではXbox 360版を使用しているので,残念ながら連携機能は試せていない。
開発はユービーアイソフトの人気アクション,「アサシン クリード」シリーズを手がけた,モントリオールスタジオが担当しており,アサシンクリードに使われているゲームエンジン,「Anvil」による豪快かつ爽快なプレイ感覚が味わえる。
もちろん,高低差のあるステージをアクロバティックに駆け抜けるだけでなく,敵との迫力ある戦いや,それなりに頭を使うパズルも用意されているので,プリンス・オブ・ペルシャらしさは十分に継承されていると言えるだろう。
余談ながら,2010年5月28日からディズニー映画「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」が公開されており,ストーリー的に関連性はないものの,いいタイミングでの公開だけに,映画も合わせて観ておくと気分も一段と盛り上がるだろう。少なくとも,筆者は盛り上がった。
物語を追っていくストーリーモードと
戦いだけを楽しめるチャレンジモード
ゲームシステムは,時間の砂シリーズ従来作同様,三人称視点のアクションゲームとなっている。足場のない断崖を飛び越えたり,壁にはりついて移動したり,行けそうもないところへ頭(と華麗なアクション)を使って行ったりするという,伝統のスタイルだ。
ストーリーは分岐のないリニアな展開で,基本的に砦や廃墟の中を進んでいき,ステージごとに「現れる敵を全滅させる」「目的の場所にたどり着く」といった目標(明確に指示されるわけではないが)をクリアして次のステージに進むという流れだ。
ステージは,ひたすら剣を振り回して最大で同時に50体も現れる敵と戦う戦闘部分と,先に進むためのルートを探索したり,タイミング良くトラップを交わしたり,壁や柱を登ったり降りたりするアクション部分が交互に出てくる構成になっている。緊張感のある戦いのあとに,じっくり頭を使ってトラップを攻略をしたりと,特徴の異なる二つのパートが順番に出てくるため,ゲーム展開にはほどよい緩急がつく。
高低差が激しく地形が複雑なステージもあり,どこに向かえばいいか分からなくなることもあるだろう。進むべきルートは,ステージに入ったときに分かるようになっているので,おおむね大丈夫だが,万一,行くべき場所が分からなくなっても,あきらめることはない。
というのも,通常なら自由にカメラアングルを変えられるのに,決められた方向にしか移動できないような場合にはカメラの動きが制限されるのだ。そのため,必ず見える範囲に移動すべき場所があり,おのずと「こっちだな」と分かる仕掛けになっている。これを知っていれば,無意味な方向にジャンプしたりしてまっ逆さま,という不幸な事故も減るだろう。
指がつりそうな華麗なアクションを駆使したり,「これ無理でしょ」と言いたくなるようなトラップを切り抜けたりしなければならないため,単純ミスで転落したり,トラップにひっかかって即死したりという目にはイヤというほど出会う。カジュアル指向の強い最近のタイトルの中では骨っぽい部類かもしれないが,この「うわっ。やっちゃった」感覚がプリンス・オブ・ペルシャの面白さ。
基本的にいくら死んでもゲームオーバーはなく,チェックポイントからのやり直しとなる。そのチェックポイントも比較的多めなので,ストレスを感じることは少ないだろう。
しかも,チェックポイントからやり直さなくても,失敗をなかったことにできる精霊の“時の力”を使うと,失敗する直前まで時間を戻せる。時間を戻したら,次は失敗しないように切り抜ければいいのだから,とても便利で多用しがち。ただし,時の力を使用するには精霊の力に必要なエネルギーを一つ消費することになり,肝心なときにエネルギーがなくて使えないなんてことにもなりかねないので,ご利用は計画的に。
敵を倒したり,ステージ内にある壺,石像を破壊すると,赤,青,黄の球が出現してプリンスに吸収される。これらの球の効果は,赤が体力回復,青が精霊の力を利用するエネルギーの回復,そして黄が経験値(EXP)だ。経験値と聞いてピンときた人もいると思うが,そう,一定量の経験値を貯めることでプリンスはアップグレードし,「体力」「攻撃力」そして「精霊の力」(それぞれに「キック」などのサブカテゴリあり)を強められる。どれをアップグレードをするかはプレイヤーの自由なので,プレイスタイルに合わせて選んでいくといいだろう。
また,ストーリーモードとは別に用意されたチャレンジモードでは,いつでも敵やパズルに挑戦して経験値を稼げる。チャレンジモードには,敵を倒し続けて最後まで生き残る「サバイバル」,制限時間内にすべての敵を倒す「タイムトライアル」,そしてエンディングを迎えるとプレイできるようになる「エネミータイド」がある。
どのモードでも,そこで稼いだ経験値やアップグレードがストーリーモードに引き継がれるので,何度も繰り返し挑戦し,十分に強くなってからストーリーモードに戻るのも手だ。
※初出では経験値の引き継ぎに「クリアすること」が必要とありましたが,どのチャレンジモードにおいても獲得した経験値はクリアすることなく引き継げます。お詫びして訂正します。
赤,青,黄の球は自動でプリンスに吸収されるので,いちいち回収に走り回らなくてもオッケー。ライフが少なくなったら,ステージの壺などをせっせと割ろう |
制限時間内に250体の敵を倒すという,タイムアタックはかなり高難度。ストーリーモードを進めて多少強くなってから挑戦しないと,まずクリアできないだろう |
精霊の力を使いこなして華麗に戦い
難儀な地形を軽やかにクリア
ステージ内を移動するのに使う基本的なアクションは,ジャンプして離れた床や柱などに飛び移ることと,レバーを操作すること。先に進めずに行き詰まったら,壁に掴まれるような亀裂がないか,登って行けそうな出っ張りはないか,操作できるスイッチはないかと,まず周りをしっかり見ることが重要だ。基本ですな。
アクロバティックなアクションを代表するウォールラン(壁走り)を使えば,ジャンプでは届かない地点へ移動することができるし,それを繰り返すことで通常では登れない高さまで移動可能になる。冒険では多用することになるから,ぜひマスターしておきたい。慣れれば,地形を見ただけで「あそこに行くにはウォールランからジャンプすればいいな」といったことが分かるようになるから,こうなると楽しさも一段アップする。
アクロバティックアクションの定番,ポール。飛び移るだけでなく,ポールから飛んで壁を駆け上がったりしなくてはならない場合もある |
垂れ幕にナイフを刺せば,高い場所からゆっくり降りてこられる。アクション映画では目にするが,ゲームでは目新しいアクションだ |
空中で羽ばたいている鳥から鳥へ飛び移りながら移動する。面白いアクションだ |
流れの力は,水の流れを止めて水を柱やポールにしたり,滝を壁のように利用できる |
飛翔の力は,ジャンプした際に,近くにいる敵に瞬時に体当たりをかまして反動で移動する |
記憶の力は,オレンジやブルーに光っている床や壁を,元の状態へ復元して利用できる |
もう一つ,精霊ラズィアから授かる能力として精霊の力がある。前述の,時間を戻す“時の力”も,その精霊の力の一つだ。時の力以外に“流れの力”“飛翔の力”,そして“記憶の力”の3つを使うことができ,通常のアクションに精霊の力を組み合わせることで,アクロバティックアクションでも乗り越えられない障害やトラップが克服できるようになる。このへんが,本作のアクションシーンで最も頭と指先を使う部分で,難しいことは確かだが,流れるようにきまったときの爽快感は何物にも代え難く,まるで自分が偉くなったような気になる。
ゲーム後半になるにつれて,複数のアクションと複数の精霊の力をタイミング良く的確に組み合わせて使い分けないと切り抜けられないシーンが増えてくる。文章で説明すると非常にややこしいのだが,例えば,流れの力で水柱にしがみつき,ジャンプした瞬間に流れの力を解除して滝を通り抜け(解除しないと滝は壁状態),滝を通り抜けた瞬間に再び流れの力を使って,水を水柱に変えて飛び移ったり,あるいは記憶の力で再生したポールに飛び移り,ジャンプしてから,記憶の力で再生した床に着地したりなど,そんな複雑なことを普通にやらせるから結構大変だ。
戦闘について触れておくと,プリンスの攻撃はいたってシンプルだ。敵の攻撃をかわしながら剣で斬りつけて行くだけ。通常の剣による攻撃,そしてジャンプ攻撃のほか,敵をひるませたり気絶させたりする“キック”と,攻撃をかわす“回避”を使って戦っていくことになる。
剣を連続して振り回したり,チャージして強烈な一撃を見舞うことはできるものの,ありがちな多種多様のコンボが用意されていないところがちょっと珍しい。そのせいで闇雲に戦うと簡単にやられてしまうので,敵の攻撃を回避し,こちらの攻撃を確実に叩き込むことが重要になる。大量の敵が湧いてくるので,自ずとスリリングな戦いになり,熱くなれる。
また,戦闘時に使用できる精霊の力もあるので,活用したい。どちらかというと攻撃をサポートする魔法のような使い方になり,大量の敵に囲まれた際に併用すると効果的だ。精霊の力としては,敵からの攻撃を弾いたり防いだりする,“石の鎧”,風を巻き起こして周囲の敵にダメージを与える“旋風の舞”,攻撃時に剣の先から冷気が出て離れた敵にダメージを与える“氷の一撃”,そしてプリンスの移動にそって炎が発生して,炎に触れた敵に一定時間ダメージを与え続ける“炎の軌跡”という4種類が用意されている。
というわけで,忘却の砂の魅力は,意地悪な地形を踏破したりトラップをクリアしたりしたときの達成感にある。最初は簡単なトラップにやられ,難解な地形に苦戦するはずだが,トライアンドエラーを繰り返すことで,必ずクリアできる。
これがプリンス・オブ・ペルシャ流のプレイスタイルだ。もちろん,後半になるにつれ,トラップの難度は上がっていくが,このへんのバランスは手慣れた感じで見事だ。
戦闘の難度はそれほど高くないかもしれないが,地形トラップを切り抜けるときにさまざまなボタンをタイミング良く押す必要があるため,このへんに難しさを感じる人も多いかも知れない。それだけに,半泣きになって何度も挑戦し,難所をクリアできたときの喜びはひとしおである。掲載しているプレイムービーの華麗な動きも,そんな根気強い訓練の賜物なので,じっくり見てもらえると嬉しいのだ。オレのほうがうまいという人も相当数いると思われるが,その意見はどうか自分の胸にそっとしまっておいてほしい。
プリンス・オブ・ペルシャシリーズ最新作らしく,最初から最後までコテコテのアクションゲームに仕上がっている。アクションゲームらしいアクションゲームを遊びたいという人は,挑戦してみてはいかがだろうか? 訓練を積み,ぜひ華麗なアクションを繰り出そう。
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