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[GDC 2010]ベテラン開発者が設立したインディゲーム開発チームの「マクガイバリズム」
彼らはゲームの開発からその財産権,そして成功したときの報酬を,すべて自分でコントロールできるという,大きな夢を抱いているのである。例えば,元Electronic Artsにいながら,独立してコーヒーショップでゲームを作り上げたという,「World of Goo」の2D Boyもそんな典型例だろう。
前置きが長くなったが,Independent Gamesサミットで「From Big Studio to Small Indie: Guerilla Tactics from Hello Games」(大きなスタジオから小さなインディーズへ: Hello Gamesのゲリラ的戦術)という講義を行った,Hello GamesのSean Murray(ショーン・マレー)氏も,そんな独立志向が高い開発者の一人のようだ。マレー氏は,もともとCriterion で「Burnout」シリーズを手がけており,彼自身も言うように,それなりの経歴を積んでいる割には,まだまだ若い「ヤングベテラン」だ。
そのマレー氏が3人の仲間と共に設立したHello Gamesは,現在「Joe Danger」というサイドスクロール型の3Dレーシングゲームを開発中である。プレイヤーはJoe Dangerという名のスタントマンを使い,自分の好みのコースを使ってJoe Dangerを実験的に走らせるというものである。ループを設置したり,中古車を積み上げたり,果てはサメの水槽のようなトラップを用意したりと,かなりコミカルな印象の作品だ。近々PlayStationネットワークでリリースされ,その後PCとXbox 360でも発売される予定だという。
そんなマレー氏は,「Hello Gamesを設立した当初,僕らは自分達のことを第一級の開発会社,ロックバンドでいえばモトリークルー並みだと思っていました。でも,他人(大企業)から見れば小さな存在なのは認識してましたが」と話す。そこで,彼らは「だから,マクガイバーばりに行動するしかなかったのです」(マレー氏)というのだ。
マクガイバーとは,1980年代末からスタートしたアメリカのアクションTV番組「MacGyver」のことで,日本でも「冒険野郎マクガイバー」というタイトルで深夜放映されていたことがある。主人公マクガイバーが,持ち合わせた知識と行動力でどんな難関も切り抜けていくことから,そんな前向きな姿勢が「マクガイバリズム」という新語を生んだ。マレー氏らも,ヤングベテランの最大の武器であるノウハウと行動力を生かして,とにかくゲームの開発にいそしみ,各プラットフォーマーとの交渉に突進していったというわけだ。
もっとも,もともと大きなゲームスタジオに所属していたことが,そんなマクガイバリズムに大きな影響を与えていたのは確かなようで,Criterion時代に築き上げた経験やプロ意識,人脈などは大いに役に立ったという。自由になったからといって,TwitterやFacebook,そのほか自分の趣味にうつつを抜かすこともないよう,おのおのが就寝以外の16時間のスケジュールをきっちりと決め,比較的スムースに開発を進めていったとのことだ。
マレー氏は,開発の比較的早い段階で作られたJoe Dangerのプロトタイプを公開。Joe Dangerが乗るバイクの後輪のみが表示され,ブロッキーな障害物を乗り越えていくという単純なものであったが,確かにすでにゲームプレイ風の楽しさは存在しており,成功作となる匂いはプンプンと感じさせるものだった。その物理作用を含むゲームエンジンや,使用されるアートも,すべてHello Gamesの自家製ということだ。
このプロトタイプから,最初のインゲームトレーラーのリリースまでに18か月を費やしたとのことなので,現在までに2年程度が経過していることになる。Joe Dangerが,インディーズ系ゲームの開発者達に,インスピレーションを与える存在となるのは間違いなさそうだ。
- 関連タイトル:
Joe Danger ディザスター マスター
- 関連タイトル:
Joe Danger
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