インタビュー
[TGS 2010]“ガマニア第2世代”タイトルで世界進出への大きな一歩を踏み出す。ガマニアグループのトップに,そのグローバル戦略を聞いた
4Gamerでは,TGS 2010を訪れた台湾Gamania Digital EntertainmentのChairman & CEOであり,世界展開するガマニアグループを束ねるAlbert LIU氏に,今回のTGS出展の意図や,今後の展開などを聞いてみた。
TGS出展の大きな目的は,世界にガマニアグループをアピールすること
本日はよろしくお願いします。
ガマニアグループがTGSに出展するのは,2006年以来になりますよね。
Albert LIU氏:
はい,今回で3回目になります。とはいえ,10年以上前から毎年,出展していなくとも視察にはきていますよ。
4Gamer:
台湾でもTaipei Game Showを例年開催していますよね。なぜ今年,ガマニアグループは,そちらではなく,TGSに出展したんでしょう。
Albert LIU氏:
ガマニアグループには,一つの大きなゲームショーへの出展に全力を尽くそうという方針があります。Taipei Game Showはそれほど規模が大きくなく,必然的にメディアの取材も少なくなってしまいます。TGSのほうがより国際的で規模が大きいことから,今年はTGSを選んだというわけです。
4Gamer:
今年のTGSを見て,何か思うところはありますか?
Albert LIU氏:
残念ながら,ビジネス的な打ち合わせばかりで,ほとんど会場内に入っていないんです。最終日にまとめて見て回る予定です。
4Gamer:
注目しているタイトルはあるんですか?
Albert LIU氏:
スクウェア・エニックスさんの「ファイナルファンタジー」関連の出展ですね。以前からチェックしていました。
4Gamer:
オンラインゲームについてはどうでしょう? 例年,TGSへの出展数はあまり多くないのですが。
他社さんの方針に言及することはできませんが,ガマニアグループとしては,やはり大規模なゲームショーに大きなブースを構えて出展し,広くアピールしたいと考えています。私達は,こうしたゲームショーでとくに自社開発タイトルを強くアピールしたいんです。
ひょっとすると,日本のオンラインゲーム企業があまりTGSに出展しないのは,自社でタイトルを開発しているところが少ないからかもしれませんね。
4Gamer:
なるほど。
ところで今回のガマニアグループの出展は,日本だけでなく,アジア全体もしくは世界に向けたアピールという印象を強く受けたのですが,実際のところどうなんでしょう?
Albert LIU氏:
ええ,グローバルにアピールしたいという意図に基づいています。TGSには,日本だけでなく世界中からメディアが集まりますから。
4Gamer:
実際,世界からの反響はありましたか?
Albert LIU氏:
かなりポジティブな実感があります。まだ3日目ですが,世界中のメディアに取り上げていただいていますし,そのフィードバックも好調です。
台湾と日本での成功を足がかりに,中国,欧米への進出を狙う
4Gamer:
それでは,少し踏み込んだお話をお聞きします。
まずは今後,日本のオンラインゲーム市場がどのようになっていくとお考えですか?
この先数年,安定した成長を遂げ,市場が拡大していくと期待しています。
成長率に関していえば,ほかのアジア各国と比較するとあまり大きくないのですが,それはコンシューマ市場の影響が大きいからだと捉えています。
4Gamer:
どういったゲームをリリースすると,日本でヒットする,受け入れられると考えていますか?
Albert LIU氏:
これまでの経験から分析すると,ビジュアル的に可愛らしくて,ファンタジー系の世界観を持つタイトルの人気が高いですね。
もちろん,ほかのジャンルにもチャレンジしていきます。今後は,コンシューマも含めて,ほとんどのゲームでオンライン化が進むでしょうから,そういう意味でもオンラインゲームへの需要は拡大していくと考えます。
4Gamer:
日本のオンラインゲーム企業の業績が全般にあまり思わしくない中で,日本のガマニア(以下ガマニアジャパン)が堅実な成果を収めているのは,どうしてなんでしょう?
Albert LIU氏:
長期的な方針として,サービスのクオリティを向上すること,日本の市場の好みに合わせたコンテンツを提供することを心がけています。短期的には,ここ1〜2年,特別な戦略は取っていないので,あまりお話しできることはありませんね。
4Gamer:
それでは,グループのトップとしてガマニアジャパンの働きをどう評価しますか?
Albert LIU氏:
仕事に対する姿勢や情熱は,非常に高く評価しています。他国のグループ企業と比較しても,学ぶべきところが多いですね。
4Gamer:
ガマニアジャパンからは,ほかの国からは出ないような提案や,開発側が想定していない要望が出ているんじゃないかと予想しているのですが。
Albert LIU氏:
開発の立場からすると,なるべく多くのリクエストをいただけるほうが望ましいんです。リクエストがないと,日本の市場が何を求めているのかというノウハウを蓄積できないんですよ。そうなると,誰も望まないコンテンツをリリースすることになり,徒労に終ってしまいます。なので,リクエストをいただけるのは幸せなことです。
4Gamer:
それでは,話をグローバルに広げたいのですが,その前に,台湾のオンラインゲーム市場について教えてください。
市場自体はそれほど大きくないのですが,台湾だけでなく日本,韓国,中国,欧米のさまざまなゲームが受け入れられています。ただ,最近は飽和気味で,成長速度が落ちています。
4Gamer:
そういった状況を踏まえて,ガマニアグループは世界的な市場に目を向けているわけですよね?
Albert LIU氏:
世界の中でも,キーとして捉えているのがアジア地域です。さらに,その中でも中国が重要ですね。
これまで中国国内でリリースされるタイトルは,武侠系や三国志モチーフのものがほとんどでした。しかし,それ以外のタイトルで成功事例を作ることができれば,さらに市場が拡大し,アジア地域のデベロッパ/パブリッシャが中国に進出しやすくなるでしょう。
また北米・ヨーロッパ市場でも,ここ数年,オンラインゲーム市場は成長傾向にあります。この市場もまた,中国と同様に,さらに規模を拡大できる見込みがあります。
4Gamer:
中国に関しては,中国国内開発タイトルのサービスが非常に増えてきていますよね。
Albert LIU氏:
ええ。ここ数年で,クオリティ面や開発速度に大きな向上が見られます。
しかし,あまりにも同じような内容のゲームが多いです。日本,韓国,台湾と比較したときに,クリエイティビティの面でまだ劣っていますね。
4Gamer:
そこにガマニア自社開発タイトルの優位性が存在する,と。
Albert LIU氏:
各国それぞれに得意とする部分と,そうでない部分があります。もちろん自社開発タイトルは自信を持ってリリースしていますが,それを自慢しようとは思いません。各国から学ぶべき部分は,まだまだたくさんあります。
世界各国に合わせ,それぞれ個別の戦略を持つ“ガマニア第2世代”タイトル
4Gamer:
それではガマニアグループの今後の展開の方針を教えてください。
Albert LIU氏:
短期的には,今回のTGSに出展した8タイトルを“ガマニア第2世代”と位置づけて,注力していきます。
中期的には,アジア各国に進出し,それぞれ一定以上の成績を収めることを目標にしています。同時に,北米・ヨーロッパにも進出し,現地で自社パブリッシングを行います。
長期的には,やはりグローバルパブリッシングが目標です。世界各国でガマニアブランドのタイトルを展開し,オンラインゲームのグローバルリーダーを目指します。
4Gamer:
TGS出展の8タイトルも,グローバルな展開を目指しているのですか?
Albert LIU氏:
そうです。
4Gamer:
まだまだ武侠タイトルが多いように見えるのですが,グローバル展開を考えているとなると疑問に思うところも出てきます。
8タイトルそれぞれに,異なる役割を課しているんです。今現在,グループ全体を見渡したときに,まずどこに力を入れるべきかを考えると,やはり日本,台湾,香港です。これらの国は,主に可愛いビジュアルのタイトルでカバーしています。
次に重視する中国市場向けが,武侠系/東洋系のタイトルです。そして北米・ヨーロッパ市場向けタイトルが「HERO 108」と「Core Blaze」です。
4Gamer:
8タイトルの中にある「Langrisser Schwarz」,そして今回発表された日本のIPを使ったタイトルは,主に日本に向けた戦略と捉えて間違いないですよね?
Albert LIU氏:
はい。「ラングリッサー」も「POWER DoLLS」も,日本のゲーム史の中で重要な地位にあるタイトルです。それをオンラインゲームに落とし込むことで,新しいゲームとして提供していこうと考えました。
4Gamer:
その2タイトルを選んだ理由はなんでしょう? というのは,どちらも有名なタイトルですが,私個人の感覚だと“懐かしい”“思い出のゲーム”といった部類に入るんですよね。2010年の今,多くの人にアピールできるかというと,やや疑問が残ります。
Albert LIU氏:
戦略的に,敢えて懐かしく,かつ重要なタイトルを選んでいます。
というのも,ラングリッサーとPOWER DoLLSは,アジア各国で広く遊ばれており,日本で考えられている以上に有名なタイトルだからです。実際,私自身もかつては熱中してプレイしていました。
それぞれのオンラインゲーム版はリリースまで少し時間が空いてしまうのですが,今回,TGSでフィーチャーしたのはより多くの国にアピールしたかったからです。
4Gamer:
なるほど。日本だけではなく,アジア各国に向けた戦略タイトルでもあるんですね。
Albert LIU氏:
中国では,メディアで取り上げられて以来,ネット上で大きな話題になっているようです。
また有名なIPというだけでなく,優れた世界観とストーリーを持っていることも大きなポイントです。オンラインゲーム版では,それを上手に引き継ぎ,オンラインならではのコミュニケーション要素などを取り入れて,新しいゲームにしていきます。
4Gamer:
POWER DoLLSはブラウザゲーム化するわけですよね。台湾のブラウザゲーム事情はどうなっているのでしょう?
Albert LIU氏:
一時期ブームはありましたが,今は日本や中国には全然及びません。
世界的に拡大しているソーシャルゲームも,農場ゲームが大ブームになりましたが,半年ほどで収束しました。
4Gamer:
ガマニアグループは,ブラウザゲームやソーシャルゲームにどう取り組んでいくのでしょう?
Albert LIU氏:
実は現在,いくつか開発中のタイトルがあります。準備ができ次第,順次,詳細を公開していきます。
日本では,日本のIPを使ったタイトルを重点的に展開。未発表企画も進行中
4Gamer:
それでは,ガマニアジャパンの向こう1年くらいの展開を教えてください。
まず9月21日に「DIVINA」,そして2010年内に「Web恋姫†夢想」の正式サービスをそれぞれ開始します。2011年はPOWER DoLLS,Langrisser Schwarz,「Tiara Concerto」,「ファントム・ブレイブ オンライン」の順で展開していく予定です。
4Gamer:
出展ブースでは,Tiara ConcertoとCore Blazeの反響が大きいように見えました。
Albert LIU氏:
そうですね。Tiara Concertoはなるべく早い時期にサービスを提供できるよう,準備を整えます。
4Gamer:
日本のIPを使った戦略展開は,当面継続する予定ですか?
Albert LIU氏:
はい。それと並行して,完全新規タイトルも手がけていきます。両方ともいいフィードバックを得られているので,バランスよく進めていきたいですね。
4Gamer:
今発表されている,ラングリッサー,POWER DoLLS,ファントム・ブレイブ以外に,具体的に企画が進行している日本IPのタイトルはあるんですか?
Albert LIU氏:
ええ,いくつか話を進めているIPがあります。まだ発表できる段階ではないので,これ以上はお話しできないのですが。
4Gamer:
分かりました。そうした日本のIPを使ったゲームが,発表される日を心待ちにしています。
Albert LIU氏:
ガマニアジャパン企画の日本のIPを使ったゲームに対する食いつきは,世界各国からあるんですよ。例えば中国からは,すぐにでもWeb恋姫†夢想とPOWER DoLLSをやらせてほしいというオファーがありました。
4Gamer:
ガマニアグループとして,展開していく国の順序を決めていたりするのですか?
Albert LIU氏:
最初に日本で展開するのはもちろんですが,そのあとは基本的に台湾と香港を考えています。そこから中国などに拡大していくイメージです。
4Gamer:
それでは,そろそろ時間ですので,まとめに入りたいと思います。
正式サービス開始が間近に迫ったDIVINAに関して,何か一言いただけますか。
DIVINAは,オープンβテストでも非常にいい数字を出しています。それは台湾の開発チームと日本の運営チームとの連携が取れており,プレイヤーの要望をスムースにゲームに反映させることができているからです。「ルーセントハート」と並ぶ,ガマニアジャパンの看板タイトルになることを期待したいですね。
4Gamer:
DIVINAがルーセントハートのプレイヤーを奪ってしまう懸念はありませんか?
Albert LIU氏:
正直な話,少し心配なんです(笑)。しかしゲームシステムや特徴はかなり違いますので,どちらも楽しんでいただけるのではないでしょうか。
4Gamer:
最後に,ガマニアグループのゲームに期待している人や,日本のオンラインゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
Albert LIU氏:
今回のTGS出展のテーマは「グローバル」でした。世界各国の中でも,日本は,ガマニアグループにとって非常に重要な存在です。したがって今回,日本向けの戦略タイトルを幾つか発表しました。今後とも,ぜひご支援をお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
冒頭で述べたとおり,TGSに出展するPCオンラインゲーム企業はあまり多くない。そこには費用対効果が見合わないこと,あるいは日本のゲーム市場を見渡した場合に,PCオンラインゲームはまだまだマイナーなジャンルであることなど,いろいろ理由がある。
そうした状況の中で,今回,ガマニアグループがTGS 2010に出展した最大の目的は,同グループが今まで以上に世界展開に注力していくというアピールである。肌の露出が多いコスプレモデルやゲーム内容とほぼ関係のない水着モデルを使ったステージイベントも,とにかく注目を集め,話題を作り出すための──そして世界中のメディアに取り上げられるための戦略だと捉えれば,その是非はともかく,合点がいくのではないだろうか。
まあ,それはそれとして,4Gamerとして注目したいのは,日本のIPを使ったオンラインゲーム展開である。ラングリッサー,POWER DoLLS,ファントム・ブレイブと,日本のゲーム通が唸るような渋いセレクトもそうだが,それをいかにオンラインゲーム化していくのか。例えばLangrisser SchwarzはシミュレーションRPGから,アクションRPGへと大胆なアレンジが施されているわけで,それが今日のオンラインゲーム市場にどう受け入れられていくのか,大変興味深いところだ。現在,進行中というに日本IP企画ともども,今後のガマニアデジタルエンターテインメントおよびガマニアグループの展開に期待したい。
- 関連タイトル:
ラングリッサー シュヴァルツ
- 関連タイトル:
Webパワードール
- 関連タイトル:
Webファントム・ブレイブ
- 関連タイトル:
Web 恋姫†夢想
- 関連タイトル:
DIVINA(ディビーナ)
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