レビュー
パワーアップして帰ってきた,リコ・ロドリゲスが大暴れ
ジャストコーズ 2
2010年6月10日,スクウェア・エニックスから三人称視点のアクションゲーム,「ジャストコーズ2」が発売された。対応プラットホームはPlaystation 3とXbox 360。
本作の舞台となるのは,東南アジアの架空の島に存在する国家「パナウ共和国」で,フィールドの総面積が1000平方キロメートル(東京都の半分程度)という,とてつもない広さを誇っている。
島内には小さな集落や近代的な高層ビル群,政府軍の基地,反政府組織の拠点などさまざまなロケーションがあり,その数は300以上にもなるとのこと。
2007年に発売された前作の場合,舞台のほとんどがジャングルという印象が強かったが,今回は雪山,砂漠など自然のバリエーションも増え,エリアごとに違った雰囲気がある。これによって,探索の楽しさが大幅に増しているのだ。
前作に引き続き,主人公はとある組織のエージェント,リコ・ロドリゲス。元上官であるトム・シェルドンの行方を追ってパナウ共和国にやってきた彼は,トムの情報を得るために,パナウ国内で活動する反政府勢力に「国際的な殺し屋,“スコーピオ”」と名乗って協力することになる。
国を治めるパンダック・パナイ大統領は強圧的な軍事独裁制を敷いているため,小国にも関わらず,島内各地に軍事基地や研究施設など,政府の軍事施設が多数存在する。村や町には大統領の巨大な石像が建ち,トレーラーがいつもプロパガンダ放送を大音量で流している。メディアも大統領に牛耳られているため,不都合な事実は決して放送されないという,典型的な独裁国家だ。
当然,それに不満を持つ住民も多く存在し,実力行使をいとわない「リーパー」「ローチ」「ユーラ・ボーイ」という,イデオロギーの異なる3つの反政府組織が存在する。リコは,そんな組織の依頼をこなしつつ,トム失踪の真相を探るべく行動を開始していくのであった。
という設定だけ聞くと,政治の腐敗を訴える真面目なゲームなのかなと思ってしまうかもしれないが,前作同様「これはないだろう」と笑ってしまうようなド派手なアクションが本作の大きなウリであり,南の島らしく雰囲気はいたって陽気だ。ちなみに,今回のレビューはXbox 360版を使用して行っている。
「ジャストコーズ2」公式サイト
グラップリングフック&スカイダイビングで
フィールドを縦横無尽に駆け回ろう
本作の特徴的なアクションとしては,「グラップリングフック」という鉤つきのワイヤーが挙げられる。仕組みとしては,鉤をひっかけてワイヤーを巻き取り,素早く移動するというシステムだが,射程はかなり長めで,数十メートル先にも届いたりする。
鉤はたいていのものにひっかかるので,スパイダーマンのように高層ビルを登ったり,走っている車にひっかけてボンネットに飛び乗ったりなど,豪快なアクションを簡単に実行できるのだ。ワイヤーを巻き取っている最中にパラシュートを開くことも可能で,この場合はパラセーリングのように体が宙に浮くので,それを利用してより高い場所へ移動できたりもする。
さらに,敵の兵士(一般市民には無効)に鉤をひっかけて,高所から引きずり落としたり,遮蔽物にひっかけて崩したりと,グラップリングフックは戦闘でも重宝する。
しかも本作から,「ダブルフック」というアクションが可能になった。これはフックを同時に2か所にひっかけるもので,これを使えば,例えば石像に鉤をひっかけ,もう一方を自動車につけることで,石像を崩したりできる。敵に鉤をひっかけ,さらにガスボンベにつないで発火させれば,飛んでいくボンベにつながった人間ロケットのできあがり。このように,アイデア次第で自由自在な楽しみ方ができる。
グラップリングフックはミッション中も多用する。例えばヘリコプターにぶら下がったまま移動し,さらに空中からターゲットの車に鉤をひっかけ,強引にカージャックするなどはお手の物。援軍としてやってきた敵のヘリコプターに鉤をひっかけ,空中でハイジャックしてみたりなど,映画でよく見かけるようなシーンを手軽に再現でき,かなり爽快だ。
なお,人が乗っている車両/航空機を強奪するときは,画面に表示されるボタンを順序よく押すアクションが必要になる。押すボタンを間違えると,失敗とみなされるが,一回ミスした程度で即,叩き落とされるわけではないので,落ち着いてやれば問題ない。
もう一つ,シリーズを象徴するアクションとしては,スカイダイビングがある。一定以上の高さから飛び降りたときにスカイダイビング状態になるのだが,空気の流れに身を任せて空を飛ぶのはなんとも気持ちがいい。
高層ビルからベースジャンプをしたり,ハイジャックした飛行機からダイブしたりなど,楽しみ方はあなたの自由。「高度1000メートルからベースジャンプを決める」という実績もあるので,どういう場所から飛べばいいのか探してみよう。当然のことながら,着地前にパラシュートを開いておかないとお約束の転落死だ。
革命に必要なのは混沌とした世界
暴れれば暴れるほど「カオス」が溜まるのだ
本作には,ストーリーの進行に沿った「エージェントミッション」のほか,反政府組織からの依頼で発生するサブミッション的な「勢力ミッション」と「拠点制圧ミッション」がある。ミッションを受けられる場所への移動は,マップを開いて目的地をマークすることで起動するナビの指示に従うことで,迷うことはないはず。
とはいえ,フィールドが広いぶん,移動はなかなか大変だ。目的地まで数km離れているなんてことも珍しくないが,その場合,そのへんの自動車などをいただいて移動するのが基本。
リコは優れた運転スキルを持っており,自動車以外に,オートバイ,ヘリコプター,戦闘機,ボートとなんでも操縦できる。ゲーム中に出てくるそうした乗り物の種類は非常に多く,奪って試乗するのも楽しみの一つだ。余談ながら,車両を運転するたびに「何に乗ったか」が記録されるので,とりあえずジャックを繰り返していたら,いつのまにか実績まで解除されて一石二鳥であった。
一部の例外を除いて,ミッションの発生条件として求められるのは,「カオス」と呼ばれるポイントで,給水塔やレーダーといった政府の施設を破壊すると得られる。この破壊活動によって政府はダメージを受け,反政府組織は勢いを増し,パナウはますます混沌としていくわけだ。このカオスポイントを必要なだけ貯めることで,次のミッションがアンロックされるというのが基本の流れなのだが,「とにかく暴れりゃオッケー」なゲームシステムがステキだ。
カオスポイントはミッションクリアでも大量に得られる。メイン/サブミッションいずれも,内容としては「特定の人物の保護」「要人の暗殺」「食料や装甲車を奪って届ける」といったもののほか,飛行機や自動車を使ったタイムアタックなども用意されていて,バリエーションは豊富。それぞれに趣向が凝らされていて,飽きることはない。ちなみに,車両には少々クセがあり,操縦が難しかったりするが,息抜きにはちょうどいいだろう。
暴れまくるのがカオスを素早く貯めるコツなのだが,あちこちぶっ壊していると「ヒート」と呼ばれるゲージが上昇していくはずだ。これは政府の警戒レベルを示しており,低いうちは軽装甲車と兵士数名がやってくる程度だが,警戒レベルが上がっていくと,やがて戦闘ヘリや重装甲車など強大な戦力が襲いかかってきて,戦闘がハードになってくるのだ。
ヒートゲージは政府軍の追跡から逃れることで減っていく。発見されているときはゲージは赤色で,逃れた場合はオレンジ色になる。これが空っぽになれば逃亡成功というわけ。
ブラックマーケットのアクセス画面 |
回収要請 |
支援物資は信号強度ゲージの反応を頼りに探してみよう |
そのほか,ブラックマーケットにアクセスして武器や兵器を購入することも可能だ。ブラックマーケットもカオスポイントと関係しており,一定ポイント貯めることでさまざまな装備がアンロックされる。装備の購入のほか「回収要請」という,一度訪れたことのある場所へ短時間で運んでくれるサービスもあり,広すぎるフィールド移動の時間を短縮できるため,利用価値は大きい。
また,あちこちに「武器パーツ」「マシンパーツ」「アーマーパーツ」といった支援物資が落ちていたりもする。これらのパーツを利用すると,武器の威力や持ち運べる弾薬の数をアップしたり,車両の最高速度を上げたりできる。武器,車両ともにアップグレードのレベルは6段階あり,レベルが高いほど必要なパーツの量が増えていく。また,アーマーパーツは5つ揃えることで体力の上限がアップするので,ぜひ集めておきたい。
リコ自身は銃で何発か撃たれた程度なら倒れることはないが,ピンチになると画面が赤く点滅する。体力は特定の場所にある回復キットを使うか,一定時間放置しておくことで回復する仕組みだ。ミッション中に倒された場合は,チェックポイントからの再スタートとなるが,場合によってはかなり巻き戻されることもあり,ちょっとストレスを感じた。
広大なフィールドに散らばった膨大なアイテム
すべて収集することができるか
マップを見ると,黄色や青い点などが確認できるはずだが,黄色は街や基地など人々が集まる場所,青い点は反政府組織が探している「落し物」がある場所を示している。フィールドに散らばったアイテムを回収するのは,オープンワールドのゲームの定番要素だが,黄色い点は最初から表示されており,青い点は勢力図内であれば表示される。これがもし,「地道に自分で探してね」という仕様なら,あまりに広い世界に絶望して,途中で挫折するプレイヤーが続出しそうなので,この仕様は嬉しい。
街や基地などでは,上記の武器パーツやマシンパーツといった支援物資も入手できる。それらは画面左上のミニマップの信号強度ゲージに場所が表示され,近づくほど信号の反応が大きくなる。さらに近づくとカーソルで場所を示してくれるので,探し出すのは比較的簡単。
それぞれの街や基地には個別に「達成率」が設定されており,これは「街/基地にある支援物資を完全に収集する」「街/基地の政府施設をすべて破壊する」という,二つの目標をクリアすることで100%まで上げられる。クリアすればボーナスとしてカオスやお金がもらえるが,とはいえ,街や基地などは合計で300以上,支援物資は1000個以上あるので,すべての街/基地の達成率を100%にするのは,かなり根気のいる作業になるだろう。
ちなみに,フィールドは移動制限がされていないので,一通りのチュートリアルが終われば,ゲーム開始当初からパナウ共和国全域にアクセス可能。ミッションを受けるタイミングは自由なので,まず落し物の収集に力を注いだり,なにか面白いものはないかと,観光してみたりと,どう遊ぶかは完全にプレイヤーにゆだねられている。
ローカライズにはやや残念なところもあるが
ゲームの完成度は高い
日本語版には日本語と英語の音声および字幕が収録されているほか,欧米で初回購入特典として配信されたDLC(新たな武器や車両など)が,最初から収録されている。
ただし,日本語版の場合,一般市民は無敵となっており,グラップリングフックを当てても,ひっかけられない。ほかに勢力ミッションが4つ削られ,制圧した拠点には反政府組織が登場しないという変更が施されている。公式サイトには,削除されたミッションなど,海外版に比べての変更点が掲載されているので,興味のある人は確認してみよう。
前作に比べ,ジャストコーズ2のグラフィックスクオリティは格段にアップした。操作もシンプルで,誰でも楽しくプレイできるゲームに仕上がっているのは間違いない。筆者は,本作で追加されたダブルフックがお気に入りで,敵をオートバイにつないだり,飛行機に自動車をひっかけて飛ばしてみたりなど,いろいろなアイデアを試している。
ちなみに,一度クリアすると状況を引き継いだ形で,「マーセナリーモード」というモードに自動的に移っていくのだが,こちらでは,レースミッションをクリアしたり,支援物資を入手したりするたびに,達成度がどれくらい上がったかをすぐに確認できるようになっている。「まだまだ青いね」と言われているようで,自ずとやり込み心に火がつくといった感じだ。
まだまだ訪れていない場所もたくさんあり,一度クリアしたあとが本番といってもいいくらい,やりこみ要素は豊富なのだ。
日本語版でいくつかの要素が削られるなど,やや残念な点もあるものの,色鮮やかな南国を舞台に派手な戦いを繰り広げたり,国内の各所にあるジャンプ台を使ってスタントを決めたり,さらにはスカイダイビングをしたりなど,面白いことがたくさん用意されているリッチなタイトルだ。
「グランド・セフト・オート」や「セインツ・ロウ」などとは一味違ったオープンワールドゲームとして,とくにアクションゲームファンに遊んでほしいと思う。
キーワード
(C) 2010 Square Enix Ltd. All rights reserved. Published by SQUARE ENIX CO.,LTD. Developed by Avalanche Studios.
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