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世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー
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印刷2010/07/31 15:18

インタビュー

世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー

海外向けに作ったPC版

悩みの種は違法コピー


画像集#021のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー
4Gamer:
 コンシューマ,そしてアーケードとお話を聞きましたが,もうひとつ。「BLAZBLUE」シリーズはPC向けにも発売されていますよね。どういった狙いがあってのことなんでしょうか。

モリ氏:
 ぶっちゃけ,PC版は海外……とくに欧州の格ゲーファンを意識したものです。

4Gamer:
 なるほど,しかしPC版となると,違法コピー問題がとくに無視できませんね。

モリ氏:
 そこなんですよ。そこが一番気になっているんです。欧州あたりでは,ゲームプラットフォームといえばPCがぶっちぎりなので,そういう人達のためにもPC版は出さなきゃいけないと思っているんですが……悪いヤツがいるんですよね。だって,どんなに強固なプロテクトをかけても無駄なんだから。あの天下のマイクロソフトでさえ無理だって言ってるんですもん。

4Gamer:
 デベロッパ,プラットフォーマーレベルの手に負える話ではないですからね……。

モリ氏:
 最大の問題がプロテクトなんですよね。強固にすればするほど,プログラムの展開が遅くなってしまうので。ゲームが“重く”なっちゃうんですよ。
 アーケード版「CONTINUUM SHIFT」に関しても,違法コピーのデータが流出して,ネット対戦まで可能になっちゃってますから。

4Gamer:
 それは酷い。

モリ氏:
 もうどうにもならないですよ。一応食い止める努力はしたんですが,イタチごっこです。ミラーサイトとかすぐ作られちゃって,データがバンバン流れている。
 だから,今回はそれを踏まえてDLCの内容も考えました。だけど結局,本編とはあまり関係ないので……難しいなぁ。

4Gamer:
 難しいですねぇ。

モリ氏:
 すごく難しいですよ。この問題に関してはもう僕らだけの問題じゃないので。

4Gamer:
 マジコンなども社会問題になり,任天堂を中心にさまざまな対抗策を講じていたりもしますが,それでも駆逐はできていない。偶然,可愛い子供が使っているのを見かけると,非常に悲しくなります。

モリ氏:
 あれ,もう明らかに親が買い与えてますよね。だって量販店とか行くと,普通のおばちゃんがいきなり「マジコンってどこで売ってるんですか?」って聞いてるんですよ。罪の意識がない。ゲームという日本が誇る産業を守るために,ゲーム業界出身者が政治家にでもなってくれないですかね(笑)。


原作モノの格闘ゲーム化にも定評のあるアーク


画像集#022のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー
4Gamer:
 そういえば,アークは他社作品を2D格闘ゲーム化することがありますよね。

モリ氏:
 「これちょっと格ゲーにしてくれませんか?」という話はけっこう来ますね。

4Gamer:
 やっぱり,他社の作品だと色々と気を使いますか?

モリ氏:
 そうですね。仮にもし僕が他社の作品を扱うという話になったら,「僕らのやりたいようにやらせてください」という条件を出します。その代わり絶対面白いものにしますと。

4Gamer:
 ネタとして,もしモリさんが好きな作品を格闘ゲーム化できるとしたらどうします? 「むしろやらせてください!」くらいのテンションですか。

モリ氏:
 えー。けっこうあるんですよねぇ。漫画の「無限の住人」とか。

4Gamer:
 渋い!

モリ氏:
 やりたいですね。その代わり,規制を全部とっぱらってほしいですけど(笑)。

4Gamer:
 フェイタリティ(笑)。でも確かに「無限の住人」って格ゲー向きですもんね。

モリ氏:
 あとは……「ホーリーランド」とかも好きだけどちょっと地味ですよね。「餓狼伝」と「バキ」はもう出ちゃってるし。あと,「エアマスター」と「一騎当千」も。好きな作品,結構すでにゲーム化されてるんですよね。

画像集#023のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー
画像集#024のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー
4Gamer:
 キャラゲーは多いですよね。でも,モリさんが作るとガチゲーになりそうな……。

モリ氏:
 ガチゲーにします。やっぱりやるんだったら,絶対に面白くしたいんで。またカプコンさんの話になっちゃいますけど,「ジョジョの奇妙な冒険」という凄い作品を使われちゃってるんですよね。あれは多分,原作再現率では最上位です。

4Gamer:
 あー。愛がありましたね。

モリ氏:
 はい。格闘ゲームとしてどうかと言われると,ちょっと色々ありますけど。あんなに原作の雰囲気をしっかり出した格闘ゲームはほかにないと思います。
 だって,ディオがザ・ワールドしても,承太郎だとザ・ワールドを返せるんですよ?

4Gamer:
 格ゲーとしてはありえない(笑)。

モリ氏:
 ありえないですね(笑)。それでも,あれは本当に面白かったです。原作ファンは納得だし,格闘ゲームファンもある程度取り込める,良い意味で非常に優れたバカゲーかなと。

4Gamer:
 やっぱり原作ものをやるからには,愛がないとダメですよね。

モリ氏:
 この人達は本当に好きなんだなっていう。原作ものとかキャラものを作るときは,そういう姿勢で臨まないといけないですね。「分かってるわ〜!」って言ってほしいじゃないですか。

4Gamer:
 なるほど。自分が他作品をゲーム化するとしたら,そういう姿勢で挑むぞと。

モリ氏:
 ええ。だからドンドン依頼してください(笑)。その代わり,さっきも言ったとおり僕がやりたいようにやらせてもらいますが。

4Gamer:
 記事を読んだ人から依頼来ないですかね(笑)。

モリ氏:
 ゲームとしての面白さは保証しますよ!


目に見えるコミュニティの広がり

モリ氏の思い描く最終的な理想像とは?


画像集#025のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー
4Gamer:
 「BBCS」に話は戻りますが,売り上げはかなり好調ですね。

モリ氏:
 新規タイトルでは十分成功した部類に入ると思いますよ。だって「CALAMITY TRIGGER」が出た年って,格闘ゲーム何本くらい出ましたっけ?

4Gamer:
 ちょうど盛り上がっていた頃でしたからね。けっこう多かったですよね。

モリ氏:
 その中で生き残ったのって「BLAZBLUE」だけだと思うんですよね。「ストリートファイター4」は別格として(笑)。

4Gamer:
 そうですねぇ。今回もしかしたら20万本とか!

モリ氏:
 行かないですよぉ。格闘ゲームは現状,MAXが15万本くらいかなと思ってるんで。

4Gamer:
 15万なら,今回もう行きそうな雰囲気じゃないですか?

モリ氏:
 どうですかね。僕は楽観しないんで。胡坐をかきたくないんですよ。ユーザーってすごく鼻が効くから,こっちが手を抜くとすぐ気付く。

4Gamer:
 「BLAZBLUE」から格ゲーに入ってきたという人は,どれだけいるんでしょうね?

モリ氏:
 ファンの2割くらいは,普段格ゲーなんて遊ばなかった人なんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 「ぶるらじ」などの影響もあってか,女の子のファンも沢山いますからねぇ。

モリ氏:
 多いですね。そういえば「CONTINUUM SHIFT」のロケテストをやったときに,すごく申し訳ないんですが,お客さんを8時間も並ばせるという記録を作ったんですよ(笑)。

4Gamer:
 8時間!?

モリ氏:
 それまで,ロケテストの待ち時間で最長だったのが「GUILTY GEAR」の7時間半だったんです。ちなみに,「CALAMITY TRIGGER」のロケテストでは30人しかこなかったんですよね(笑)。僕,すごい悲しい気分になったんですよ。で,そのイメージがあったから「CONTINUUM SHIFT」のロケテやるときには「贅沢言わないから80人〜100人ぐらいはきてほしい……!」と願っていたんです。

4Gamer:
 そしたら記録更新しちゃったと。

モリ氏:
 何百人も来てくれたらしいです。で,「『BLAZBLUE』が最長記録出したぞ!」って言った瞬間,「Project DIVA」に抜かれました(笑)。

4Gamer:
 初音ミク強い(笑)。

モリ氏:
 うん。僕も見ながらドキドキしちゃいましたし。面白れぇなこの野郎,可愛いな初音ミクって(笑)。

7月3日にAKIHABARAゲーマーズ本店にて行われた「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT」の発売記念抽選会&サイン会にも,多くのファンが集まった
画像集#026のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー
4Gamer:
 でも「CONTINUUM SHIFT」も相当なもんですよ。

モリ氏:
 そうですね。そのときゲームセンターの人に「見たことのないお客さんが多い」と言われたんです。で,聞いてみると「ぶるらじ」を見て来たとか,友達にススメられてとか,色々なところからコミュニティが広がっているんですよ。この間の体験会でも「今ここで知り合った」というグループが結構いたんですよね。そうやって輪を広げていくのはとても大事なことなので,嬉しかったですね。
 僕の理想では,このままコミュニティが広がって,最終的には「BLAZBLUE」というものを格闘ゲームだけじゃなく,ひとつのコンテンツとして色々な人に楽しんでほしい。だから,ちょっと人にはPRを任せられないんですよね。

4Gamer:
 理想を叶えるためには自ら全国を飛び回るしかないと。

モリ氏:
 格闘ゲームが好きな人に任せちゃうと,格闘ゲームの部分しか推さないんですよ。そうすると,初心者が入ってこられなくなっちゃう。どんな形でもまずは楽しんでもらって,ネタにしてもらえればいいんです。モノの楽しみ方って色々あると思うので。

4Gamer:
 そうですよね。勝つことだけが格闘ゲームの楽しさではない。

モリ氏:
 ないですし,じゃあアドベンチャーゲームにするかって言われたら,アドベンチャーゲームにしても良いんですよ,別に。どんな形でも,エンターテイメントとしてみんなに楽しんでもらいたい。

4Gamer:
 エンターテイメントといえば,最近「戦国BASARA」がアニメ化されてヒットしているじゃないですか。モリさん的にはゲームのアニメ化ってどうでしょう?

画像集#027のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー
モリ氏:
 いや,全然良いんじゃないですか。やっぱアニメ化すると強いですよ。ファン数が一気に増える。

4Gamer:
 「BLAZBLUE」もアニメ化の予定とかないんでしょうか? 見たいですねぇ。

モリ氏:
 僕も見たいねぇ。もうこれ募集しておいてください本当に。どこかアニメ作ってくれるところありませんかって。マジで話し合い応じますよ(笑)。

4Gamer:
 モリさんアニメ詳しいじゃないですか。制作会社に希望とかあります?

モリ氏:
 そこまで詳しくないけど,やっぱりボンズさんだね。

4Gamer:
 詳しくないとか言いつつ,即答ですね(笑)。

モリ氏:
 「ラーゼフォン」とか「鋼の錬金術師」好きですし,ボンズはクオリティが安定してますからね。あと,ついでに秘書も募集したい(笑)。

4Gamer:
 「BLAZBLUE」をアニメ化してくれるところとモリさんのハードスケジュールについていける秘書,両方募集中です!


今後もコンセプトを大事にしていく「BLAZBLUE」

東京ゲームショウでは新タイトルを発表か?


画像集#028のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー
4Gamer:
 そろそろ東京ゲームショウが近いですけれども,どうでしょう。アークは何か出すんですか?

モリ氏:
 出しますよ。

4Gamer:
 「BLAZBLUE」で?

モリ氏:
 違います。ニヤリ。

4Gamer:
 まさか「神宮寺」が格闘ゲーム化……!?

モリ氏:
 それはないわ。もう神宮寺はタバコを額に押しつけるのが必殺技で(笑)。まだ一切情報出てないですね。まぁ,僕はそっちにはあんまり関わっていないんですが。多分,「えー!」って言うと思いますよ(笑)。まぁ期待していてください。

※インタビュー時点では発表されていなかったが,7月23日,以下の情報が公表された

アークシステムワークス,アーケードで絶賛稼働中の2D格闘アクション「アルカナハート3」をPS3,Xbox 360で今冬発売

画像集#029のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー

4Gamer:
 では,しばらくモリさんの仕事はプロモーション中心ですかね?

モリ氏:
 プロモーションと小説版チェックとドラマCDと……あと新キャラのシナリオ(笑)。あとは続編の企画を立てないと。

4Gamer:
 早くも次を考えないといけないんですね。

モリ氏:
 そうですね。まぁ,続編に関しては本当に「CONTINUUM SHIFT」が売れてくれないと。

4Gamer:
 かなりいい調子ですけれども,もっと上を見たい感じですか。

モリ氏:
 もっと売れてほしいですね。アークだって「BLAZBLUE」だけやってるわけじゃないですから。ほかの作品に迷惑かけつつ「BLAZBLUE」を作っているので,どんどん還元しないといけないんですよ。

4Gamer:
 もし続編が出るとして,「BLAZBLUE」シリーズは今後もコンセプトを変えず,間口の広さを大切にしていくつもりでしょうか?

モリ氏:
 変えません。エンターテイメントという部分を大切にしていきたいです。

4Gamer:
 チュートリアルモードなども入れたまんまに?

モリ氏:
 はい。僕はクオリティを下げたくないので,今あるものをなくすというのは嫌なんですよ。今までの要素はすべてぶち込みます。

画像集#030のサムネイル/世界に通用する日本ならではの2D対戦格闘は,いかにして生まれたのか。「BLAZBLUE」シリーズプロデューサー モリ トシミチ氏へロングインタビュー

4Gamer:
 では最後に,ファンに向けてのメッセージをいただければと思います。

モリ氏:
 今年いっぱい頑張りますんで,よろしくお願いします。DLCとかもありますし,期待してお待ちください。

4Gamer:
 お忙しい中,本日は本当にありがとうございました。

「BLAZBLUE」オフィシャルサイト

  • 関連タイトル:

    BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT

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    BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT

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    BLAZBLUE CALAMITY TRIGGER

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