イベント
[CEDEC 2010]企画と現場指揮に,予算確保から回収までがプロデューサーの仕事。「ゲームにまつわるヒト・モノ・カネ 本音で語ろう! ビジネス視点の『ゲームプロデュース論』」レポート
しかし,CEDEC 2010の2日目(9月1日)に行われた,SAMURAIゲームファクトリー 代表取締役 照山茂行氏によるショートセッション「ゲームにまつわるヒト・モノ・カネ 本音で語ろう! ビジネス視点の『ゲームプロデュース論』」では,そうしたイメージとは異なる側面からプロデューサーの役割が紹介された。
それはすなわち,「ゲーム開発をコンテンツビジネスとして捉える視点」と「論理的に説明して企画を通し,予算を確保する手腕」である。
次に照山氏は,プロデューサーは企画を実現するために,まず「ヒトを見る目」が必要であると述べたが,これは腕のいい開発スタッフを集めるといった類の話ではない。社内で決裁権を持つ人物,あるいは投資するパブリッシャのバックボーンを見極めて,それに合わせたプレゼンテーションをしようという話である。
たとえば玩具業界の出身の相手なら,低年齢層に需要があるといった流通向けのアピールに重点を置くべきだし,メディア業界出身の相手なら,著名クリエイターの起用や人気アーティストの参加といった事柄を強調すべき……といった具合に,ケースに応じて論理の切り口を変えることが必要だということである。
またそうしたプレゼンをしたとしても,相手から返ってくるのはネガティブな意見が当たり前と照山氏は話す。この理由は,「成功すると言ったのに実際は失敗した」ケースよりも,「失敗すると言ったが成功した」ほうが印象がいいという考え方に基づいていることが大半なので,ネガティブな意見に負けないよう,しっかりと反証材料を用意しなければならない。そうやって周到な用意をし,企画が通って初めてスタッフを揃えるという段階になるのである。
一次創作(自社IP)ではリスクも大きいが,ヒットした場合のリターンもそれに見合ったものになるという特徴を持つ。二次創作(この場合は原作付きのゲームという意味)の場合は,原作の人気や売上を根拠にリスクを軽減することができ,ある程度リターンも予測できる。
ただし権利料などが発生する,ゲーム内容に規制・制限が課せられることが多いといった点を考慮しなければならない。加えて,原作の人気がそのままゲームの売上に比例するとは限らないだろう。
続けて照山氏は「プラットフォーム間の移植」や「メディアミックス」,「他社コンテンツの運用協力」といった展開について言及したが,いずれにしてもゲームそのものの魅力をきちんと用意しないと成功は見込めないと指摘した。
また照山氏は,競合タイトルの分析をしておくことも重要であると述べる。これは出荷ベースだけでなく,実際に店頭に足を運んで在庫の量を確認したり,あるいはネットで発表される売上ランキングを常にチェックしたりして,実際に購入している人がどのくらいいるのか把握しておくべきとのこと。
上記のプレゼンのような場で売上の見込みを聞かれた場合に,競合タイトルの数字を出せるか出せないかで説得力が大きく変わると,照山氏は述べる。
そのほか照山氏は,プロデューサーには,商品としてのゲームに対する原価の妥当性を検討する「モノゴトを見る目」,そしてリクープ(回収)について考える「カネを見る目」が必要であると述べる。これは,ビジネスでやっている以上,常に収益を出すことを考えなければならないという指摘である。
そのためには単に儲けばかりを追いかけていてもダメで,どんな人がそのゲームを買っているのか,プロファイル的に人物像を作り上げ,それに沿った内容と価格の設定をするといったような試みも必要とのこと。
照山氏は,プロデューサーの資質を「ネゴシエーション(交渉)能力」「コミュニケーション能力」「情報収集能力」とする一方で,何よりも諦めない「情熱」が必要であるとまとめた。
- この記事のURL: