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[CEDEC 2011]「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4」の成功から探る,スマートフォン普及期の開発手法
長原氏は自身の経歴を簡単に紹介したあと,代表作の1つである「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4 エピソードI」(PS3 / Wii / Xbox 360 / iPhone,以下,ソニック4)を例に挙げ,開発中のエピソードを交えた講演をスタートさせた。
最初に長原氏は,ソニック4を「スマートフォンとデジタル配信時代を見据えた,ソニックシリーズ“初”のダウンロード専売タイトル」と紹介した。
セガ 第二CS研究部 ゲームディレクター 長原俊之氏 |
ちなみにMetacriticとは,さまざまなゲーム雑誌やゲームサイトのレビュースコアを平均したのちに,補正をかけて独自の点数を出しているサイトだ。それを踏まえ,長原氏は「サイトや雑誌によって,数値にバラつきがある」と言いつつも,平均で70点前半というスコアは決して悪くなく,結果的に本作は“成功”しているタイトルだと語った。そして氏は,ソニックシリーズの強みを「欧米市場でいまだに根強い人気を持っている部分」であるとし,長いスパンで売れるタイトルだと強調した。
iPad2とPlayStation Vitaのアーキテクチャはほとんど変わらない。すべてをシェーダーで描画する時代に
続いてはトピックは,スマートフォンの存在を踏まえて開発された,ソニック4の開発背景に移る。
ここで長原氏は,ハードについて触れ,「iPad2とPlayStation Vitaのアーキテクチャはほとんど変わらない」とコメント。続けて,「家庭用ゲーム機及び,現在市場に出ているWindows Phone7,Android端末,iOS端末のゲームは,すべてシェーダで描画する時代に突入している」と語った。
これは,「ハードの境界線が完全に取り払われてしまった」ということ意味しており,長原氏は,スマートフォンやタブレット端末など,“日常”に存在するデバイスが登場したことによって,「現世代機水準のゲームを手軽に遊べる環境が形成された」と言う。
「開発者にとってこの状況は願ったり叶ったり」と話す長原氏だが,しかしその一方で,解決しなければならない問題もある。それが以下の4つだ。
・スマホアプリは単価が低い
・娯楽トレンドの変化 小さい/短い/易しい
・開発費高騰に伴う利益率の低下
・娯楽の多様化による国内市場の縮小
こういった状況に対応するにはどうしたらいいのか,長原氏はその対応策を以下のように示した。
・スマホアプリは単価が低い:配信本数でカバー
・娯楽トレンドの変化 小さい/短い/易しい:物量に頼らず,繰り返し遊べるスタイルへ
・開発費高騰に伴う利益率の低下:複数機種で配信,移植は安く仕上げる
・娯楽の多様化による国内市場の縮小:国外市場でも回収
上記した方針にのっとって開発されたソニック4だが,どのように4機種同時発売を実現させたのだろうか。ここで長原氏は,コンソール開発者とモバイル開発者の違いを説明した。それによると,コンソール開発者は「いいものを作れば売れるんだ」という考えがあり,納期の優先度は下がってしまう傾向なのだとか。それに対してモバイル開発者は,コストとスピードを重視し,決められた予算の中でゲームを完成させ,アップデートで辻褄を合わせる傾向があるのだという。
なお長原氏は,ソニック4開発時,プライオリティとしては納期が一番で,その範疇で品質にもギリギリまでこだわったと,開発時の気持ちを明かす。
しかし現実として,プライオリティを付けたことで,その犠牲も生まれた。その一例が,開発納期を優先させたために,ゲームボリュームを抑えなければならなくなってしまったことだ。しかし,これは単価を抑えるという側面もあり,先にも述べた「短く手軽に遊べる」という昨今のゲームトレンドを取り入れることにも繋がったので,必ずしも問題というわけではない。
ちなみにソニック4は,通常のアプリに比べるとかなり高額になっているそうで,これを挽回するには,マルチハード開発と移植作業を低予算で済まし,トータルの販売本数を増やすことでカバーするという戦略が必要になったそうだ。
「小さな組織」を作り,プロデューサーやディレクターがチーム全体を見わたせる環境を構築
とはいえ,さすがにすべてを同時に進行させることはできない。iOS版は,インタフェースがタッチパネルであることと,グラフィックス処理の軽減対策がかなり必要だっため,コンソール3機種版に少し遅れる形で対応していたという。
また長原氏によると,開発体制はスピード感をかなり重視して構築したそうで,プロデューサー,ディレクター,テクニカルディレクター,アートディレクターの4人による最小単位の運営チームにさまざまな作業を集約させたそうだ。あえて小さな組織にしたことによって,情報共有が円滑なり,判断/決定が速やかに行われ,結果としてうまくいったと長原氏は説明していた。
ちなみに各クリエイターは,現世代コンソールのメイン級開発者であり,いわば少数精鋭で開発に挑んだことになる。経験豊富な開発者達を集めたことにより,壁にぶつかったときなどもスムーズに乗り越えられたそうだ。
またローカライズは,プロデューサーやディレクターにすべての情報を集約させることで,精度の高いフィードバックが実現したという。
商品の誘導方法をしっかりと研究
またメガドライブ版「ソニック」では,画面中央からソニックが動かないが,「懐かしさ」を考慮して,ソニック4でも同じ仕様にしたという。結果,画面に表示されるコントローラ部分に指を置いても,常にソニックが見える位置にいるため,ゲーム性の確保に繋がったと開発時のエピソードを話していた。そして最後に長原氏は,今後の展望として以下の三つを挙げた。
・本格的なシェーダ表現
・ダウンロード販売,如何にお客様に商品を買ってもらえるか? 誘導の方法
・さらなるマルチハード展開
「XBLAだったら,どうやったら体験版から製品版を買ってもらえるか」や「どうやって自社製のアバターを買ってもらえるか」など,購入の誘導方法をしっかり研究し,次回作でそれを活かしたいと目標を語っていた。そして,マルチハード展開についても,今よりさらに推し進めていく考えだとアピールして,セッションを締めくくった。
「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4 エピソードI」公式サイト
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