レビュー
バンクーバーオリンピックを観ていたら急にスノボがやりたくなった人は要チェック
ストークト
1月28日,ラッセルよりXbox 360用スノーボードゲーム「ストークト」が発売された。本作は,雪山のバックカントリー(自然のままの状態)での豪快な滑りを楽しめるスノーボードゲーム。世界各地にそびえ立つ山を舞台にトリック(技)を決めてスコアを競ったり,実在のプロスノーボーダーと対決したり,大会に参加してメダルを狙ったりといったことができる。リアルタイムで時刻や天候が変化するシステムも特徴の一つだ。
本作は欧米では2008年に発売されていたが,ディスクにリージョン規制がかかっており(Xbox 360タイトルは大抵そうだ),輸入版で遊ぶには北米仕様の本体が必要という,日本のファンにとってはハードルの高いタイトルだった。今回発売された日本版は,諸般の事情で,欧米版では8人いたプロスノーボーダーのうち3人が収録されないという残念な変更はあったものの(そのぶん価格は安くなった),欧米版と比べて,システムやゲーム内容における変更は一切ないとのことだ。つい最近までバンクーバーオリンピックが盛り上がっていたということもあり,久しぶりに登場したスノーボードゲームに迫ってみたい。
一スノーボーダーとしてキャリアを積んでいく!
最初の壁はチュートリアルか
ストークトには実在のプロスノーボーダー5人が登場する。五つある山に一人ずつプロ選手が登場する仕組みで,いわば「ボスキャラ」的な存在となっている。彼らを使ってのプレイはできないが,勝てばトリックを教えてもらえるというメリットがある。それでは一人ずつ紹介していこう。
■トラビス・ライス
■ウォール・ナイヴェルト
■ニコラス・ミューラー
■アニー・ブーランジェ
■タダシ・フセ
ゲームのメインとなる「キャリアモード」では,まずゲーム内で自分の分身となるスノーボーダーを作成する。性別は男性/女性から選び,顔はテンプレートから選択,ウェアやブーツなどで見た目のカスタマイズも可能。名前にはゲーマータグが使われるようだ。登場するウェアやボードは架空のものが中心だが,ゲームならではのオバカなウェアやアクセサリーはなく,いたってまじめ。ゲームを進めていけば最大で三つのスポンサーを獲得でき,「DAKINE」や「QUICKSILVER」「VOLCOM」といった実在のブランドのギアを身につけられる。ゲーム開始後もウェアやアクセサリーの変更は可能だが,性別や身長,顔の変更はできないので注意。
最初はスポンサーがついてない無名のスノーボーダーだが,知名度が上がりスポンサーがつけば,左端にスポンサーのブランドロゴが表示され,持っているウェアやアクセサリーの種類も増えていく |
スポンサーから提供されたウェアやボードなどは,実在のモデルが登場する。ちなみにこのスノーボーダーが着ているBURTONのジャケットは,2008年に実際に販売されたものだ |
スノーボーダー作成後は,チュートリアルでゲームの遊び方を学べるのだが,これがなかなかの曲者だ。プロスノーボーダーがお手本を見せてくれるのだが,カメラが遠くて何をやっているのか分かりにくいのである。しかもチュートリアルと銘打っているものの,難度はなかなか高い。とくに,あとで触れる「ハッカー」「スタイリッシュ」のチュートリアルに関しては,正直「ここで投げ出す人がいてもおかしくないのでは?」と感じるほどの難関だ。しかし一連のチュートリアルをクリアしなければ先に進めないので,ここはなんとか頑張ってクリアしよう。
実在の山(?)を舞台にしたリアルなスノーボーディング
ゲームの舞台となる五つの山は,すべて実在する山の名を冠している。ゲーム開始時はチリの「Mt.Almirante Nieto」,日本の「Mt.Fuji」(富士山!),スイスの「Mt.Diablerets」の三つの山にアクセスでき,ゲームを進めると残り二つにも入山できるようになる。残り二つはアメリカの「Mt.Shuksan」と「Alaska」だ。
整備されたゲレンデではなく,誰も足を踏み入れていないような雪山の山頂にヘリコプターで降り立ち,パウダースノーを感じながら滑る,というのが本作の特徴だ。自然の山が舞台なので,岩が転がっていたり氷の塊が顔を覗かせていたりと,なかなかアグレッシブなステージが待っている。
山の再現度に関しては,例えばMt.Fujiの場合,そこら中に鳥居や石灯籠,狛犬の像があったりして,どうもかなり怪しい。実際の富士山にも鳥居はあるようだが,本物の富士山を忠実に再現したというものではなさそうだ。海外の映像作品で日本が舞台として出てくる場合,我々日本人の視点で見ると「なんじゃこりゃ」と叫びたくなるようなトンデモ日本だったりするが,ストークトの日本ステージもそれに近いものがある。
各山には,滑り始める場所となる「ドロップポイント」が8か所ずつ用意されており,このポイントごとに「セッションチャレンジ」という課題が10個ずつ用意されている。課題は特定のトリックを決めたり,自由にトリックを出してスコアを塗り替えたりといった内容で,クリアすると「フェイムポイント」というポイントを得られる。
フェイムポイントが一定数溜まると,カメラマンの前でトリックを決めて撮影させる「メディアチャレンジ」のほか,スポンサーの獲得,スポンサー代表選手として大会に参加するイベントなどが集まる「フェイムチャレンジ」といった要素が解除されていく。どれもクリアすることでフェイムポイントを得られ,集めれば集めるほど,やれることが広がっていく。
また「プロチャレンジ」というものがあり,こちらは「1回のセッションで8万点獲得しろ」「グラブトリックで3000点獲得しろ」といった内容。一つの山につき10個のプロチャレンジが用意されており,すべてクリアすれば,いよいよプロスノーボーダーの一人に挑戦できるようになる。
プロとの勝負では,エリアごとに特定のトリックを出して,プロが作った記録を塗り替えれば勝利となる。例えばA区間では「StalefishとFrontside 540を決めろ」,B区間では「Switch Backside 360を決めろ」というふうに,どんどんトリックを出していかなければならない。指定されたトリックを確実に決めなければならないうえに,設定されたスコアもかなり高く,クリアするのは非常に難しい。
条件は厳しいが,もし勝てば,プロが使う高度なトリックを教えてもらえる。いずれも高得点を出しやすい特別なトリックなので,覚えられればチャレンジをクリアするのに有効な武器となる。挑戦する価値は大いにあるだろう。
チャレンジは,だいたい一発でクリアできる簡単なものから,複数のトリックを素早く決めないといけないような難しいものまで,数多く用意されている。難しいものは必然的にリトライ回数が増えるのだが,失敗したときでもBACKボタンを押せば,一瞬でスタート地点まで戻れるのは素晴らしい。もしリトライするときに,わずか数秒間でもロードが発生する仕様だったら,テンポが悪くて投げ出していたかもしれない。
チャレンジをクリアするにはトリックを覚えることが必須だ。慣れないうちは付属のトリックマニュアルとにらめっこして,どういう操作をすればいいかを頭に叩き込まなければならない。ゲーム内でもトリックは確認できるが,こちらは一度出したトリックでないと表示されない仕組みだ。
なお,公式サイトからリンクされている「ワールドラッセルブログ」で,3月1日より「トリックリスト」がこっそり公開されている。もともとはスタッフが作業用に作成したものらしいが,ぜひ活用しよう。
そのほか,山にあるすべてのドロップポイントでハイスコアを更新すると,なぜかヘリコプターのライセンスを獲得でき,自分でヘリを操作して好きな場所から滑ることができるようになる。空から地上を観察し,面白そうな場所を見つけたら,そこへ直接ダイブして滑ってみたり,チャレンジが行われる場所の間近までヘリコプターで近づき,移動の手間を省いたりといったことができる。麓からヘリを飛ばせたら,もっとよかったかもしれない。
また「カメラ」が隠し要素としてあり,これもチャレンジをクリアしていくことで入手できる。カメラがあればスナップ写真が撮れるほか,オールインワンという動きのある写真も撮影可能だ。こちらはXbox Liveでのプレイ中に,カメラでほかのプレイヤーを撮影して「ベテラン・フォトグラファー」の実績を解除するとアンロックされる。一つ注意してほしいのは,ゲームスタート時はカメラを持っていない点。説明書を読むと最初から撮影ができるというふうにも読めるが,そうではないので注意してほしい。
時間によってさまざまな顔を見せる山
ストークトには「時間」と「天候」の概念があり,毎日毎時間,天候が変化している。山頂から定点観測してみたところ,太陽がしっかり東から昇り,西に沈む描写が見られた。天気に関しては,モード選択画面にある「Forecast」の週間予報によって確認可能だ。
山に入ってチャレンジに挑戦し続けていたら,いつの間にか太陽が落ち真っ暗闇になって視認性が落ちたり,天気が悪くなって吹雪いたりといったリアルな表現を実現している。なお,吹雪が起きてしばらく経つと,むき出しだった岩肌が雪に覆われ,そこを通過できるようになるといった仕掛けもあり,積雪してからでなければクリアできないチャレンジがいくつも用意されている。積雪がこのような形で影響するというのは,これまでのスノーボードゲームにはなかった(と思われる)要素で,とても面白い。
なお,時間に関してはXbox 360本体の時計と連動しているわけではなく,ゲーム独自の時間で時が進むようだ。
ただトリックを出せばいいわけじゃない
画期的な採点システム
ストークトの主な操作方法は,左スティックは雪上ではライダーをコントロールし,空中にいるときは倒した方向にライダーが回転する。右スティックを下から上に弾くと「オーリー」(いわゆるジャンプ)となり,宙に浮かんでいる最中に右トリガーまたは左トリガー,もしくは両方を引くと「グラブトリック」(手でボードをつかんで行うトリック)を行う。
さらにグラブトリック中に右スティックを指定された方向に倒せば,トリックが変化していく。ほかには地上で右スティックを倒せば「テールライド」(ウイリーのようにボード前部を浮かせて滑るトリック。ノーズ側ならノーズライド)となり,オーリー中にトリガーを引かず,右スティックを上下左右のいずれかに倒せば,「シフティトリック」を繰り出せる。
意外と重要なのが,滑っているときのスタンス。デフォルトでは「レギュラースタンス」(左足を前にして滑る)となっているが,ボーダー作成時の設定で右足が前に出ている「グーフィースタンス」にもできる。スピントリックで半回転したときなど,足の位置が切り替わったときのことを「スウィッチ」といい,スウィッチ状態でトリックを決めねばならないチャレンジなどもある。ボード系のスポーツに馴染みのない人には聞きなれない用語が多く,説明書にある用語解説を読んで覚えるということも必要になるだろう。
山肌には,積雪で自然に作られたコブや,人工的に作られたジャンプ台があり,ここから飛べばグラブトリックで高得点を狙える。グラブトリックは出した時間が長いほど多く得点を得られるが,グラブ状態のまま着地すると転倒する点に注意。また,倒木やレールを「ジブ」といい,この上に乗って滑ることを「グラインドトリック」という。こういった,さまざまなトリックを駆使してポイントを稼いでいくのだが,トリックを出し続けていけば得点レートが最大で3倍まで上がり,ポイントをより多く得られる。
ストークトで面白い点は,「ハッカー」「スタイリッシュ」という二つのスタイルが設定されているところだ。ハッカーとは,溜め動作をして通常より回転速度を上げるというもの。回転してるときに複数のグラブトリックを出せば,着地時に「Hucked」と表示される。通常では出しにくい「720」(2回転するトリック)や「900」(2回転半するトリック)を決めたいときに有効なテクニックだ。ただ,勢いがある分,きれいに着地するのが少々難しいというデメリットがある。
スタイリッシュとは,溜め動作をせずに左スティックをゆっくり倒し,緩やかに回転しつつトリックを出すというもの。着地時には「Styled」と表示され,見た目はシンプルだがきれいなエアを見せられる。どちらがいい悪いはなく,好みで使っていい。
ハッカー,スタイリッシュのどちらかを使い続けるとボーナスを獲得でき,例えばハッカーを決め続けた場合,ボーナスで回転速度がよりアップする。こうなると「1080」(3回転),「1260」(3回転半)といった,現実のスノーボードではなかなか見られない高回転スピンも出せるようになる。スタイリッシュの場合は,ゲームスタート時には使えないトリックがアンロックされる。
また,ハッカー,スタイリッシュとは別に,ランディング(着地)の姿勢もスコア獲得の際に作用している。きれいに着地できればスコアが50%加算され,逆にひどいと20〜50%分減らされてしまう。高難度のトリックを決めようが,着地がダメならスコアも低いというのは,現実のスノーボードの大会と同じで,なかなかシビアだ。
シームレスにXbox Liveに移動可能なオンラインシステム
タイトル画面からXbox Liveのメニューを選ぶか,もしくはキャリアモードを進めている途中で,十字キーの上を押してXbox Liveのメニューを開けば,オンライン上にあるゲームルームへアクセスできる。最大で8人まで同時参加可能で,出入り自由のパブリックマッチや,招待でのみ入れるプライベートマッチを作成できる。
オンライン上では,部屋に入ると「フリーライド」モード(?)になっていて,ホストがイベントを開始しない限り,そこにいるプレイヤー達は自由に滑っていられる。実はこの状態でもセッションチャレンジに挑戦可能で,ここでクリアしたものは,オフラインに戻ってもクリアしたことになっている。また,ほかのプレイヤーのライドをカメラで撮影することも可能だ。カメラでの撮影は実績にも絡むので,プレイヤーが多いうちにやっておくといいだろう。
ホストがイベントを選択すれば,プレイヤー同士での対戦ができる。イベントには,スキーのアルペン競技のように,決められた場所を通過して一番でゴールした人が勝ちとなる「レース」や,お互いに同じトリックを出し続け,先に5回失敗した人が負けとなる「T.R.I.C.K.」といったものがある。
発売からまだ日数の経過が少ないため,そこそこオンラインには人がいるようだ。欧米では2年前に発売されたタイトルゆえ,外国人と会うことは稀だが,ときどき滑っているのを見かける。
とっつきにくさはあるものの,楽しいタイトル
海外ではバリュープライスのタイトルとして登場したストークトだが,実在のプロ選手やギアが登場するのはリアルでいいし,天候が常時変化するというのは面白いシステムだ。山は頂上から滑っても,数分で麓に着いてしまう程度の広さだが,ドロップポイントごとに違った顔を見せるので,なかなかバラエティに富んでいる。ヘリコプターでいろいろな場所を飛んでみて,面白そうな場所を探すのも楽しい。
チャレンジはとても豊富でやり応え十分。Xbox Liveに接続した状態ならセッション終了時にスコアがアップロードされ,ランキングで競えるのもいい。ただ,似たようなチャレンジが多く,山が変わっても同じことを繰り返すことになるので,ちょっと単調に感じてしまうかもしれない。トリックを決めるだけでなく,スノーボードクロスやハーフパイプ競技など,ほかにもチャレンジがあれば,もっとよかったのだが。
問題点としては,やはりチュートリアルの不親切さが気になる。ゲームの基礎を学ぶはずの場所なのに,そこが分かりにくいというのは残念だ。ゲームとしては面白いのに,この導入部分の完成度がイマイチなせいで,最初からとっつきにくさが出てしまっている。
メディアチャレンジでカメラマンに撮ってもらった写真は,あとで雑誌に掲載されたり,広告になったりすることもある。その場合,フェイムポイントを大量に得られるのが嬉しい |
スポンサーからライディングを頼まれることもあるが,これをやらずに放置しておくと,スポンサーが機嫌を損ねてチャレンジが終了することもある。できるだけやっておきたい |
ゲームの難度は全体的にはマイルドなものの,プロチャレンジは別格。キャリアモードではプロに勝つことでアンロックされる要素もいくつかあるのだが,クリアするには,とにかくトライ&エラーを繰り返すことになる。ここで心が折れる人もいるだろう。
ほかにマックツイストやコークスクリューといった,3D系のエア(縦・横回転を合わせた三次元スピン)がないのは残念だった。これがあればトリックの幅も広がり,よりリアルさを出せたのではないかと思う。あとは,せっかく自然の山が舞台で,天候の変化も実装されているのだから,晴れの日が続くと雪が溶けて雪崩が起きるとか,そういった自然現象があってもよかったのではないだろうか。
ゲームとしては,どちらかというとリアル志向で,過去にXboxで発売された「天空」シリーズに近い印象を受ける。とくにトリックの項で触れた「スタイリッシュ」などは,天空からの影響が大きいように思う。エレクトロニック・アーツの「SSX」シリーズのように,ド派手なトリックと驚異的なスピードで,アドレナリン全開で遊べるというような方向性のタイトルではないが,値段のわりにしっかり作られたゲームだ。バンクーバーオリンピックの種目でもあったスノーボードを,ストークトで楽しんでみてはどうだろう。
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ストークト
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