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Khronos Group代表者とDavid Kirk氏への記者会見レポート,Tegraの新情報が明らかに
Tegraアクセラレーション対応のFlash 10.1がリリース
注目に値するのはTegraに関する情報だろう。TegraはNVIDIAが開発するARMベースの組み込みプロセッサで,低消費電力での高速な3Dやメディア処理を特徴とし,Microsoftの携帯プレイヤーZuneHDに採用されたことは記憶に新しい。
Trevett氏によると「Tegraに対応するアクセラレーション対応のFlash Player 10.1が2010年第1四半期にリリースされる」というのである。
Windows版のFlash Playerでは,すでにGPUを使ったビデオアクセラレーションにフル対応するFlash Player 10.1 Betaがリリースされ,NVIDIAのドライバも対応済みなのは4Gamerでもお伝えしているとおりだ。そのため,どこが新しいのかと思う読者もいそうだが,モバイル版のFlash Player 10.1に関するリリース時期が明確に語られたのは……筆者が知る限りという条件付きではあるが……今回が初である。
そもそもモバイルの世界では動画のAPIが定まっていないという状況があり,アクセラレーションに対応させようにも,どのAPIを使うべきなのか,というケースも少なくない。Trevett氏が明らかにしたところによると,動画のアクセラレーションにはOpenMAX ILが用いられるようだ。
OpenMAX ILはKhronos Groupが策定しているモバイル向けの動画関連APIで,WindowsのDirectShowにあたる機能を持つものと考えればいいだろう。Linux(Android)やWindows Mobileでの利用が想定されており,双方をターゲットにするTegraには最適だ。ちなみにLinux/AndroidにはオープンソースのGstreamerという同種のAPIがあり,Flash Playerはどうなるのかという疑問があったが,今回の記者会見ではっきりしたことになる。
ちなみに,Tegraの搭載機だが,「すでに15機種がデザインインを果たしている」とTrevett氏は述べていた。どういった機種が出るのかはNVIDIAの立場上,明らかにできないようだったが,そう遠くない将来にZuneHD以外の搭載機がお目見えすることになりそうだ。4Gamer的には,Flashで作成されたゲームがサクサク動くケータイが出るかも? と期待しておきたい。
GPUから固定機能はなくならない〜David B.Kirk氏は語る
まず,講演で触れられたようにレイトレーシングをGPUで行うといった展開になると,よりプログラマブルなGPUが求められることになる。NVIDIAのGPUはG9x,GT200,そして次のFermiと,プログラマブルな方向へと機能を拡張し続けてきた。だが「GPUから固定機能(※プログラマブルでない機能)はなくなることはないだろう」とKirk氏は語る。理由は,簡単にいえばグラフィックスの処理において固定機能が有利な部分があるからである。
プログラマブルなGPUという方向を,NVIDIAよりラディカルに進めたのがインテルのLarrabeeだったが,4Gamerでもお伝えしているようにLarrabeeをGPUとしてリリースする計画は変更を余儀なくされており,一説には十分なパフォーマンスが出なかったからとされる。NVIDIAはそうした方法は取らないと言明しているわけだ。
もう一つ,Fermiで強化されるといわれている64bit演算についてだ。この機能はシミュレーションなどを行うHPC向けの機能といわれることもあるが,そうではなく「シミュレーションとグラフィックスに,もはや区別はないのだ」(Kirk氏)と述べていたのが興味深かった。
このことは先の基調講演で物理シミュレーションを紹介していた下りでも筆者は感じていたのだが,Kirk氏はシミュレーションを含めたGPUの持つ可能性のすべてを総合的に「グラフィックス」と取らえているようだ。こうしたKirk氏の考え方が,NVIDIAの製品や技術に反映されているといっていいだろう。一線を退いたとはいえ,Kirk氏はいまだNVIDIAに強い影響を与えて続けていることが感じられた。
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