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日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
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印刷2010/05/15 10:30

レビュー

日本市場再上陸を果たしたブランドの上位製品を試す

Cyber Snipa Silencer Mouse

Text by fumio


Cyber Snipa Silencer Mouse
メーカー:Cyber Sport
問い合わせ先:ダイヤテック(サポートページ
実勢価格:5900〜6500円程度(※2010年5月15日現在)
画像集#002のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 いきなり失礼な話になるが,Cyber Snipa(サイバースナイパ)といえば,「輸入ゲーム専門店などの片隅に,並行輸入版が存在感薄く置かれている」という印象の,言ってしまえばパッとしないブランドだった。実際,数年前まで筆者が勤務していた秋葉原の某ショップでも,取り扱いこそあったものの,ほかのブランドと比べると,販売数ははるかに少なかった。

 メカニカルタッチを好むゲーマーから支持を集めるキーボード製品「Majestouch」など,「FILCO」ブランドのPC周辺機器で知られるメーカー兼販社のダイヤテックが,そんなCyber Snipaの国内販売代理店として名乗りを上げたのは2009年12月のこと。並行輸入版でしか入手できなかった頃と比べると,取り扱い店舗数も目に見えて増えている。ダイヤテックによる奇抜な紹介文が,PCゲーマーの間で話題になるほどには。

 「奇抜?」と思ったかもしれないが,そう,奇抜である。ダイヤテックは,取り扱い製品ごとに製品紹介ページを設けており,今回取り上げる「Cyber Snipa Silencer Mouse」(国内製品名:Cyber Snipa Silencer Laser Mouse,以下 Silencer)にも用意されているのだが,そこにある紹介文は,下記のとおりの案配なのだ。

「漆黒のカルマ:“Silencer”……通称「The Quietness Genocide」

5000dpiという暴力的なまでの精度を持つセンサーと,最大63モードのマクロを登録可能という異能力を宿した故,戦場では多くの敵を死に至らしめ,終わりの始まりを告げる烙印者。

臓腑に塗れたその姿は敵からは恐れられ,味方からは疎まれる。漆黒のカルマを背負うSilencer。

神よ我に祝福を,我に仇なす敵に死を。神とは?……我とは?
SILENCERを持つ者にだけに神である資格と権限が与えられる。

 ええと,何かの決めゼリフでしょうかと,思わず下手に出てしまいそうになる文章だが,もちろん,Cyber Snipaの英語版公式サイトに,漆黒のカルマとか,そういった文言は一切ない。おそらく,ダイヤテック担当者がノリノリで書いたのだと思われるが,ぜひこれからも突き抜けていっていただきたいと思う。


右手用で,右サイドのラバーグリップが交換可能

つかみ心地,操作性ともにかなりよい


 Cyber Snipaというブランドが国内市場に復活した経緯をまとめるつもりが,脇道に逸れて行数を使ってしまったが,冷静になって,Silencerというマウスをチェックしていこう。

Silencerと,製品ボックスに付属の交換用グリップ
画像集#003のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 Silencerが持つ外観上の大きな特徴として,本体右側面のグリップパーツを交換可能になっていることが挙げられる。底面に用意された取り外し用ボタンを押し込むとグリップパーツが外れるようになっており,製品ボックス付属の交換用グリップを装着することで,違った持ち心地&操作感が得られ,1台で2度おいしい(?)という仕組みだ。Logitech(ロジクール)の「G9x Laser Mouse」にある交換用グリップを,右側面限定で採用したようなイメージになる。
 必要性については賛否あるが,錘(おもり)による重量調整機構を備えており,交換式グリップパーツを外すことでカートリッジへアクセスできるようになっているのも,ゲーマー向けマウスらしいといえばらしい。

本体底面の写真向かって左に見えるのがグリップ交換用ボタン(左)。押すとグリップユニットが外れ,さらに,錘をセットするカートリッジと,それを取り出すためのボタンスイッチが現れる(中)。錘は4.9g重のものが6個付属しており,最大で29.4g重くできる
画像集#004のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが 画像集#005のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが 画像集#006のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが

画像集#007のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
段々タイプ装着時
画像集#008のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
シンプルタイプ装着時
 交換用グリップにはとくに名前が付けられていないため,本稿では標準で取り付けられているものを「段々タイプ」,付属の交換用を「シンプルタイプ」と呼び分けることにするが,オススメは段々タイプのグリップだ。このグリップを装着した状態で「つかみ持ち」した場合,親指と薬指,小指の3本を使うことで,かなり高い操作性が得られた。上下左右に細かく動く的をトレースするようなAIMも行いやすい。見栄えからは想像できない,意外な使いやすさに,正直,驚いた次第だ。

 一方,シンプルタイプのグリップは,段々タイプと比べてクセが少なく,他社製品から乗り換える場合に違和感を覚えないのはこちらだろうと思われたのだが,実際に使い比べてみると,FPSにおける操作性では,段々グリップのほうがはるかに優れている。むしろ,シンプルタイプを目的にするなら,Silencerを選ぶ必要はなく,他社製品で十分ではないか。そう思えるほど,段々タイプの操作性は独特かつ好印象である。

4Gamerの比較用リファレンスである「G5 Laser Mouse」(型番:G-5T,以下 G5T)と並べて,左サイドから見たカット。G5Tと比べると,“山頂”が前寄りで,かつ,手首側に向かう傾斜が直線的になっているため,深く握っても手のひらに当たりにくい
画像集#009のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 本体サイズは,段々タイプのグリップ装着時に実測84(W)×126(D)×42(H)mm。
 いかにもゲーマー向けマウスらしい大きめサイズだが,ただ,大きさからすると意外なことに,「かぶせ持ち」よりも「つまみ持ち」「つかみ持ち」のほうが操作しやすい。というか,最も背の高い部分が本体の中央よりも前側(=ケーブル側)にあるため,手のひらをかぶせること自体が難しく,相当深めに握っても,手のひらは浮くことになる。結果として,かぶせ持ちしようとすると,深い位置でつまみ持ちするような格好になるのだ。

画像集#010のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 左サイドには,摩擦力の強いゴム部品がはめ込まれ,さらに親指の収まる部分が の形に窪んでいる。
 特徴的なのは,この窪みに設けられたカーブがかなりきつく,左サイドボタンの真下あたりを押さえようとすると,親指が所在なさげな感じになること。筆者が試した限り,かなり奥側,トラッキング解像度インジケータLED(※詳細は後述するが,右の写真で青く三つ光っている部分)の手前あたりに指先を当て,親指の関節を曲げた状態で操作するのが,最も操作しやすかった。

上が段々タイプ,下がシンプルタイプのグリップを取り付けた状態。縦方向の長さはG5T並みで,横幅は,上から見る限りSilencerが圧倒的に太いのだが,実際に指が触れる部分だと,段々タイプの場合,薬指部分はG5Tと同程度で,小指部分は薬指1本分太く感じる。逆にシンプルタイプだとG5Tよりやや細い印象だ。右サイドはラバーコートされた樹脂が用いられており,さらさらした手触り。左サイドに比べると劣るものの,十分なグリップ力はある
画像集#011のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが 画像集#012のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
画像集#013のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが 画像集#014のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが

ケーブルはビニール皮膜仕様。特別太くも細くもない,ごく普通のケーブルだ。その分,取回しには若干気を揉む必要があるというか,何度も折り曲げてクセをつけてやったうえで,ケーブルアンカーを用意してやらないと,ケーブルの反発力が操作に影響する可能性がある
画像集#015のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 なお,重量は標準状態でケーブル込み実測約174g。グリップは段々タイプ,シンプルタイプとも同10gだった。また,ケーブルを秤からどかした参考値は同127〜129g。内蔵のウエイトカートリッジは同5gなので,これを取り外せば若干の軽量化は実現できるものの,総じて,大型のゲーマー向けマウスとして,若干重い部類に入るといえる。
 両サイドに指を引っかけるための窪みや段差が設けられているので,持ち上げるときには数字ほどの重さを感じないが,30分ほど集中してゲームをプレイしていると,疲労を感じ始める程度には重量感がある。低センシティビティでぶんぶん振り回すプレイスタイルだときつそうだ。


ボタンの質は他社製品と遜色なし

カスタマイズ周りは“使えない”可能性大


画像集#016のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
スクロールホイールよりも本体中央寄りのところに二つ並んでいるのが[Mode][Lift]の両ボタン,写真で左サイドボタンの右下に見えるのが,シーソー的に動作するトラッキング解像度変更ボタンだ
画像集#017のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
上下スクロールは,ノッチが少し緩い印象は受けるものの,おおむね許容範囲内。ホイールクリックは若干柔らかめで,ごくわずかにストロークがある
 Silencerで用意されているボタンは基本的に,左右メインに左サイド×2,センタークリック機能および左右チルト機能付きスクロールホイールの計7個。これらとは別に,トラッキング解像度変更用のボタンと,後述するプロファイルを変更するための[Mode]ボタン,そしてSilencerにおけるウリの一つである,リフトオフディスタンス自動調整用の[Lift]ボタンも用意されている。

 このうち,ゲームで主に使うことになるメインボタンとサイドボタン,ホイールの操作感は,他社製のゲーマー向けマウスとまったく遜色ないレベルだ。マイクロスイッチ的な,カチカチしたクリック感のメインボタンはもちろん,サイドボタンも高い品質にまとまっている。
 気になったのは,本体をホールドするとき,親指が左サイドボタンに被さるため,左右に振った勢いで,前側(=ケーブル側)のボタンを押し込んでしまいがちな点や,センタークリック時に,チルトを誤って入力してしまいやすい点など,意図に反して反応しかねないボタンがあることくらい。これらは,他社製品でも割とよく見られるうえ,筆者のように,サイドボタンやチルトにクリティカルな機能を割り当てるのを嫌うゲーマーからすると,それほど問題ではなかったりもするので,目くじらを立てるほどではないだろう。

 専用のドライバソフトウェアをインストールすると,トラッキング解像度は100〜5000DPIの範囲から,100刻みで最大四つを割り当て可能。割り当てた解像度設定の段階は,左メインボタン脇のLEDインジケータから確認できる。

画像集#018のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
ドライバソフトウェアから,トラッキング解像度の選択肢4パターンを設定するメニュー。X軸Y軸を単独で設定できる
画像集#019のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
設定内容は,左メインボタン脇(※写真では左)に用意された4連の青色LEDインジケータから確認可能だ

ボタンへの機能割り当てメニュー。上下スクロールにドライバソフトウェアから機能を割り当てられるのは,実は結構珍しい。なお,上下スクロールには一部マクロを割り当てられないとか,[Lift]ボタンに別の機能を割り当てると,リフトオフディスタンス自動調整機能を利用できないとか,細かな制約はある
画像集#020のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 また,右メインボタンと左サイドボタン,ホイールのクリック機能とチルト機能,ホイールの上下スクロール,そして[Lift]ボタンの9ボタンに,機能割り当ても可能だ。
 割り当ての組み合わせは最大9パターンを登録できるようになっており,[Mode]ボタンを押すごとにプロファイル1→プロファイル2→プロファイル3→……プロファイル7→プロファイル1といった具合で,順繰りに切り替えながら使うことになる。トラッキング解像度インジケータ脇の丸いLEDが何色で発光するかによって,「いまどのプロファイルを使っているか」は判断できるようになってはいるのだが,正直,七つを順繰りに切り替えるというのは少々面倒くさい。

 さてこのトラッキング解像度とプロファイル周りだが,面白いのは,

  1. トラッキング解像度の4段階は,一度設定すると,(ドライバソフトウェアがインストールされていない)別のPCに持って行っても,その設定で利用できる
  2. プロファイルにかかわらず,トラッキング解像度設定は共通
  3. プロファイルの設定内容は,基本的に別のマシンへは持ち越せない(※ファイルで書き出し,移動先でインポートするという手間をかければ可能)

こと。筆者が調べた限り,Silencerのスペック表,そしてマニュアルには,設定内容をマウス本体に保存するためのフラッシュメモリを搭載するとは書かれていないのだが,トラッキング解像度設定だけは,Silencer本体側でハードウェア的に設定を切り替えるようになっているようだ。

 なお,以上の説明で想像が付くように,マクロはいわゆるソフトウェアマクロ。機能的には,単発実行のほか,押している間入力を繰り返すループモード,一度押してから,次に押すまで入力を繰り返すファイアキーモードと,マクロ設定でおなじみのものが一通り揃っているのだが,ソフトウェア(≒ドライバ)ベースなので,オンラインゲームだと規約やアンチチートツールとバッティングする可能性があるなど,相性はよろしくない。ゲームでは利用できない機能だと思っていたほうが安全だ。

画像集#021のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
マクロ設定メニュー。記録できるのは,キーボードのキーやマウスボタンの組み合わせとディレイ時間だ。マクロは実際の操作を自動で記録させて作成するのは当たり前として,編集に当たり,ドラッグ&ドロップを多用するUIになっているのは独特
画像集#022のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
他社製マウスでよくある「単機能の割り当て」はなく,単機能であっても,マクロエディタでマクロとして作成してから割り当てることになる。割り当て操作も基本はドラッグ&ドロップで,割り当て解除は,テキストボックスの内から外へポイッと捨てればOK


センサー性能は残念ながら今ひとつ

リフトオフディスタンス自動調整機能が原因か?


[Lift]ボタンを押すと,トラッキング解像度のLEDインジケータが1〜2秒点滅するので,それを確認したら,ターゲットとなるサーフェスに置いて素早く動かす。すると,もう一度LEDが点滅し,リフトオフディスタンス自動調整完了となる
画像集#023のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 さて,ここまでとくに説明もなく紹介してきたが,Silencerには,マウスを持ち上げたときに,センサーが読み取りを停止する距離であるリフトオフディスタンスを自動で調整できる機能が用意されている。
 これは,最近,一部のゲーマー向けマウスで実装が始まっているもので,Silencerが初採用というわけではない。調整方法は,サーフェスを自動認識するフルオートだったり,設定ツール上のスライダーを動かして手動設定したりと製品によってまちまちだが,Silencerが採用しているのは,本体側に用意された[Lift]ボタンを押すことによる半自動の最適化である。

 Silencerが搭載するレーザーセンサーのカタログスペックは,トラッキング速度最大150IPS(※公式サイトより。ただし製品ボックスには65IPSとの表記がある),フレームレート7200fps,レポートレート1000Hz。他社のハイエンドモデルと比肩するものを有する本製品について,今回は,リフトオフディスタンスの自動調整機能を活用しつつ,複数のマウスパッドで動作をチェックすることにした。
 テストに用いたPCシステムは表1のとおりだ。

画像集#025のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが

 そして,詳細なテスト条件は下記のとおりとなる。

●Silencerの基本設定
  • ドライババージョン:2.03
  • トラッキング解像度設定:5000DPI
  • ポーリングレート:1000Hz(※選択肢がなく,1000Hz以外には変更不可)
  • Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
  • Windows側設定「ポインタの精度を高める」:オフ

●テスト方法
  1. ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
  2. マウスパッドの左端にマウスを置く
  3. 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速動作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速動作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速動作」の3パターンでマウスを振る
  4. 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
  5. 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる

 テストに用いたゲームタイトルは「Warsow 0.5」。本テストにおいて,ゲーム内の「Sensitivity」設定は,「180度ターンするのに,マウスを約30cm移動させる必要がある」0.2(5000DPI)に設定した。マウスに厳しい条件を設定し,読み取り異常の発生を分かりやすくさせているわけだ。
 なお,上に示した「Silencerの基本設定」でも断っているように,Silencerには,レポートレートを1000Hzから別の値に変更する方法が用意されていなかった。筆者のマウスレビューでは通常,500Hz設定を行っているが,今回はそういった事情により,1000Hz設定でのテストになることをあらかじめお断りしておきたい。

 というわけで,結果は表2のとおりとなる。

「相性の程度」は,高速/中速/低速操作において問題がなかったか,あったとすればどういう問題が生じたかを示した項目。○は「問題なし」,△は「基本的に問題ないが,まれにおかしな動作が見られる」,▲は「ポインタの移動中,異常な動作が高確率で見られる」,×は「使い物にならないレべルの異常が発生する」ことをそれぞれ示す。なお,ここでいう「異常」とは,「動作中にポインタが反応しなくなる」「ポインタがあらぬ方向へ飛んでしまうような動きをする」「動かす速度によってマウスの実際の移動距離と画面上でのポインタの移動距離が変化する」のいずれかをもってそう判断している
画像集#026のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが

 一目瞭然なのだが,カタログスペックからすると信じられないくらい悪い結果が出てしまった。今回のテストに当たっては,ダイヤテックから入手した貸出機とは別に,秋葉原のPCショップ店頭で購入した個体も用いているのだが,結果は同じである。
本体に埋め込まれた赤色LEDは,純然たるイルミネーション。機能との連動はない
画像集#027のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 具体的に発生した“症状”は,軽くサッと振る程度の中速動作でも,ほとんどのマウスパッドで,ポインタが動かなくなるというもの。また,表で「○」とした組み合わせでも,画面の動きに遅延が感じられるというか,マウスをぴたっと止めてから,画面上の動きが止まるまでの間に,わずかなギャップが見られた。

 マウスのソールを重ね貼りするなどして,センサーとサーフェスの距離が長くなった場合,一般にセンサーの追従性は落ちる。また,手動でリフトオフディスタンスを調整できる他社製品の場合,設定値を極端に小さくすると,今回の表で示したような結果になったことがあるので,Silencerが持つ,自動設定機能がシビア過ぎるという可能性はある※。もちろん,「センサーの実性能がその程度」という,身も蓋もない可能性も捨てきれない。

※筆者の調整方法が不完全だった可能性もあるが,マニュアルや日本語サポートページの表記に従い,サーフェスごとに何度か設定し直したうえで,これといって挙動に改善が見られないことを確認している。

画像集#028のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 念のため,トラッキング解像度を1800DPIまで下げ,ゲーム内の「Sensitivity」設定を0.55に上げた状態で,「Zowie Gear G-TF」と組み合わせたテストも行ってみたが,結果は表2とまったく同じ。ハイセンシでプレイする限り,ゲーム中にポインタが飛ぶようなことはなかったので,筆者と同じように,普段からハイセンシを好む人なら堪えられるはずだが,しかしミドル〜ローセンシを好む人からすると,この結果は相当に厳しいと言わざるを得ない。


個性的な“段々グリップ”が魅力的なだけに

センサー周りの完成度不足が悔やまれる


製品ボックス
画像集#024のサムネイル/日本市場へ再上陸した「Cyber Snipa」のマウス「Silencer」レビュー。その形状は魅力的だが
 総括すると,「重量が120g強と重めではあるものの,つかみ持ち時に高い操作性が得られる独特な形状は良好。一度触ってみてもらいたいレベルだといえるが,センサー性能の未熟さが大っぴらに勧めることを躊躇させる」といったところ。今回のテスト結果が,「マニュアルが間違っていて,いきおい,筆者のリフトオフディスタンス調整方法が誤りだった」とか,「製品の仕様だが,ドライバなりファームウェアなりのアップデートで改善できる」というのであれば,後日あらためて再評価できそうだが,少なくとも現時点で,Silencerを広く勧めることはできない。

 センサーの挙動に関して何らかの対策を施す余地はあるはず。個人的に,このままで終わらせるには惜しいという印象を,Silencerの形状からは強く受けたので,Cyber Sport(=Cyber Snipa)には,どうにかなるのなら,ぜひどうにかしてほしいと思う。
  • 関連タイトル:

    Cyber Snipa

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