レビュー
人気レースシム「RACE 07: Official WTCC Game」に新たなレースカテゴリを追加
RACE ON: WTCC’08 & US MUSCLE 日本語マニュアル付 英語版
最新作といっても完全な新作ではなく,ズーが2007年に発売したFIA公認のWTCC(世界ツーリングカー選手権)を題材としたレースシム「RACE 07: Official WTCC Game 日本語マニュアル付 英語版」(以下,RACE 07)をベースに,いくつかの要素が追加されたパッケージとなっている。
本パッケージにはRACE 07本体が含まれており,本体を含まない拡張パックのみのパッケージ販売はないものの,位置づけとしては“拡張パック第三弾”になるだろう。
パッケージの内容としては,RACE 07本体に含まれるWTCC 2006年,2007年,1987年に参戦しているツーリングカー,F3000,Formula BMW,MINI チャレンジカップ,ケーターハムなどのレースカテゴリに加え,「WTCC 2008年シーズン」データ,北米の「US MUSCLE」,そしてRACE 07の拡張パック第二弾として登場したスウェーデン・ツーリングカー選手権が題材の「STCC The GAME」が追加されることになる(拡張パック第一弾は「GTR: Evolution」)。
ほかのレースゲームでは登場することのないレアサーキットも収録されており,さまざまなレースカテゴリのマシンで走り回れるのが,本作&拡張パックの良いところである。
というわけで,本作のメインとなる部分は拡張パック(追加データ)であり,ゲームとしての基本的な部分はRACE 07本体と何ら変わっていない。そのため,RACE 07については当サイトのレビュー記事をご覧いただくことにして,本稿では追加される要素について見ていくことにしよう。
「RACE 07: Official WTCC Game 日本語マニュアル付 英語版」
レビュー
「GTR: Evolution 日本語マニュアル付 英語版」
レビュー
日本初開催となった世界ツーリングカー選手権
「WTCC 2008年シーズン」を再現!
RACEシリーズのメインであるWTCC(世界ツーリングカー選手権)は2008年データが追加され,参戦したチーム,レースカー,ドライバー,コースが実名で収録されている。残念ながらすべてとはいかず,一部のチーム,マシン,ドライバーは収録されていないものの,2006年から2008年のWTCC 3シーズン分を体験できるのは嬉しいところだ。
ところで,WTCC 2008年シーズンは岡山国際サーキットで「WTCC Round 21/22」が開催されて,スポット参戦とはいえ日本人ドライバーが参戦したこともあり,日本のWTCCファンにとって特別なシーズンとなった。もちろん,本作でも岡山国際サーキットがきちんと再現されており,ほかのレースゲームやレースシムでもあまりお目にかかれない,レアな国内サーキットを体験できる。日本ラウンドほか数戦にスポット参戦した青木孝行選手,谷口行規選手も収録されているので,日本人ドライバーを使ってWTCCシーズンを戦ってみると気分も盛り上がるはずだ。
また,マニアックなことにWTCCのサポートレース(前座レース)であるインターナショナル・フォーミュラ・マスター(International Formula Master)のマシンも収録されている。フォーミュラカーはF3000マシン,Formula BMWマシンも収録されており,乗り比べてみればレースカテゴリによるエンジンパワー,挙動特性の違いなどが感じられて面白い。
もちろん,参戦マシンは2008年仕様になっているが,マシンスペックは大きく変わっていないせいか,今までのWTCCマシンと比べても挙動の違いなどは感じられなかった。しかし,各チームのマシンカラーリングが前シーズンとは異なっているせいか,リプレイなどを眺めていると意外と新鮮だ。
アメリカン・モータースポーツの醍醐味を
アメリカン・マッスルカーで体験しよう
WTCCマシン,IFMマシン以外には,5700〜6100ccのV8エンジンを搭載するキャデラック,シボレー・カマロ,ダッジ・チャージャーといったアメリカン・マッスルカーが収録されている。「加速しない,止まらない,曲がらない」の三拍子揃った市販車仕様と,各部がレース用にカスタマイズされたレース仕様が収録されており,それぞれの走りの違いを体験できる。
コークスクリューで有名な“ラグナ・セカ”と,“ロード・アメリカ”という,アメリカを代表する二つのサーキットが収録されており,アメリカン・モータースポーツの醍醐味を存分に味わえるのだ。
もちろんレースカテゴリに関係なく,収録されているすべてのコースでアメリカン・マッスルカーを走らせることができるが,ブレーキングポイントはほかのレースカテゴリのマシンと比べでずっと手前だし,しっかりスピードを落とさないと簡単にコースアウトしてしまうなど,走り慣れたコースでさえ相当苦労することになる。思っているよりも乗りこなすのが難しい,アメリカン・マッスルカーの挙動を存分に楽しもう。
スウェーデン・ツーリングカー選手権を再現した
「STCC - The Game」も収録
そして,もう一つのお楽しみとなっているのが,「GTR: Evolution」に続く拡張パック第二弾「STCC - The Game」も収録されているところだ。
これはSTCC(スウェーデン・ツーリングカー選手権)を再現した拡張パックで,WTCC同様にSTCC 2008年シーズンのデータが収録されており,2008年シーズンに参戦したチーム,ドライバー,マシン,サーキットが実名で登場する。舞台となるサーキットがスウェーデンとノルウェーにある七つのサーキットということもあり,ほかのレースゲーム&シムでは滅多にお目にかかれないサーキットを走れるのは大きな魅力だ。
WTCCに参戦しているマシンはSTCCにも登場するのだが,STCCのみに参戦しているマシンもあるため,参戦マシンの数はSTCCのほうが多い。使用するマシンの基本スペックはWTCCマシンとまったく同じだが,WTCCとは異なるカラーリングのマシンばかり。STCCのみに参戦しているマシンでWTCCコースを走る,逆にSTCCのコースをほかのレースカテゴリのマシンで走りまわる,といったことができるのも本作ならではの要素だろう。
コースレイアウト表示と走行ライン表示で
さて,レースカテゴリ,コースといった拡張データのほかの新要素として,「TOGGLE TRACK MAP」(コースレイアウトの表示)と「TOGGLE RACELINE」(最速ラップの走行ラインを表示)が利用できる。
TOGGLE TRACK MAP(コースレイアウトの表示)は,その名のとおり,画面上に小さなコースレイアウト図を表示させられる機能だ。これにより,次のコーナーは右,左のどちらに曲がるのか,どんな角度になっているのかが分かるので,初めて走るコースやコースレイアウトを覚えていないコースでも,それなりに走れて大助かりだ。
また,コースレイアウト上にライバル車の位置がリアルタイムに表示されるので,常にライバル車との間隔を把握しておける。先行するライバル車に徐々に追いついてくると自ずと熱くなってしまうし,逆に離されたり,詰められたりするとプレッシャーに襲われることになる。ちなみにこのコースレイアウト表示は,今回の拡張パックに含まれていない「GTR: Evolution」で導入された機能なので,すでにGTR: Evolutionを導入済みの人は目新しさはないかも。
もう一つのTOGGLE RACELINE(最速ラップの走行ラインを表示)は,自分で出した最速ラップの走行ラインを表示させておける機能で,ADDITIONAL EVENT(追加イベント)の中のTIME ATTACK(タイムアタック)のみで使用できる。走行ラインは「緑色」がアクセルオン状態,「黄色」がアクセルオフ状態,「赤色」がブレーキ状態を表し,フルブレーキしたところにはマークが付く。そのラインを参考にしながら,さらにタイムアップできるラインを探っていけるのだ。
この走行ライン表示,最近のレースゲーム&レースシムでは定番となっているが,タイムアタックだけでなく通常レース時にはブレーキングポイントやコーナー進入速度の目安になるような,推奨走行ラインを表示してくれたらなお良かったかもしれない。収録コースが非常に多いため,目安になる走行ラインを表示できれば上級者でも役に立つ機能になったと思うだけに少々残念だ。
さまざまなレースカテゴリのマシンを乗り回せる
コテコテのレースシムを楽しもう
本作は,RACE 07を未プレイで,多くのレースカテゴリのマシンを忠実に再現したコテコテのレースシムで遊んでみたい人が,新たに購入するのであればオススメできるパッケージだ。収録されているコースは全部で47コースもあり,いろいろなレースカテゴリのマシンでセッティングを煮詰めてタイムを刻み,熱いレースシーンを楽しめるだろう。
ご存じのようにコテコテのレースシムなので,マシンごとの挙動の違いを楽しむのであれば,ステアリングコントローラでのプレイがお勧めだ。アシスト機能があるのでゲームパッドでもプレイできないことはないが,本格的に本作をプレイしようと思うのであれば,ステアリングコントローラを購入する良い機会だと思われる。
また今回は残念ながら,ニュルブルクリンク・サーキットやGTカーなどのレースカテゴリが追加される,拡張パック第一弾「GTR: Evolution」は収録されていない。これがあればニュルブルクリンク・サーキットをGTカーで走り回るだけでなく,WTCCマシン,STCCマシンで走ったり,アメリカン・マッスルカーでのんびりドライブ? なんて楽しみ方もできるので,個人的には本作+「GTR: Evolution」を導入するのが良いと思う。
と,ここまではRACE 07を持っていない人用である。すでにRACE 07や「GTR: Evolution」を持っている人(筆者を含む)にとって,本作は手を出しにくいはずだ。というのも,今回も拡張データのみのパッケージが用意されておらず,RACE 07本体と所有している拡張パックがダブるのを承知で購入するか,デジタル配信システム「Steam」で拡張パックのみを購入するかしかない。拡張パックが出るたびに書いていることだが,やはり既存のRACE 07プレイヤーのために,拡張パックのみのパッケージも用意してほしかったところだ。
とはいえ,今回の拡張パックによって新たなレースカテゴリが追加され,今までとは異なるレースを楽しめるようになったことは素直に喜ぶべきだろう。すでにRACE 07を楽しんでいる人も,今回の拡張パックで追加されるレースカテゴリに興味があれば,文字通り拡張しておいて損はないと思う。
最後に一言付け加えておきたいのだが,拡張パックでレースカテゴリを増やしていけるものの,基本的なゲームエンジンはRACE 07から変わっておらず,ある意味“使い回し”になっている。挙動特性などは大きく変える必要もないと思うが,やはり最近のレースゲームなどと比べてしまうと,グラフィックス面やクラッシュ時の演出&ダメージ再現などで,残念ながら見劣りしてしまう。次の拡張パックが予定されているのかは不明だが,そろそろグラフィックスまわりの強化にも力を入れてほしいところだ。もちろん,SimBinレースシムファンの一人としては,新たなレースシムの登場にも期待したいところである。
追加されるマシンとコース
(ズーの公式サイトより)★追加マシン
■ WTCC 2008・BMW 320si e90
・Chevrolet Lacetti
・Honda Accord Euro R
・Lada 110 2.0
・Seat Leon TDI
・Seat Leon TFSI
・Volvo C30
■ STCC 2008
・Alfa-Romeo 156
・Audi A4
・BMW 320si e90
・BMW 320i e46
・BMS Incognito
・Chevrolet Lacetti
・Honda Accord Euro R
・Peugeot 308
・Seat Leon TFSI
・Volvo C30
・Volvo S60
■ International Formula Master
・IFM 1.0
■ US Track Racers
・'09 Cadillac CTS-V
・'08 Dodge Challenger SRT8
・'09 Chevrolet Camaro
・'08 Dodge Charger
・SRT8 "Super-Bee"
■ US Street Cars
・'09 Cadillac CTS-V
・'08 Dodge Challenger SRT8
・'09 Chevrolet Camaro
・'08 Dodge Charger
・SRT8 "Super-Bee"
■ Camaro Cup
・'99 Chevrolet Camaro SS
★追加コース
■ WTCC TRACKS・Curitiba
・Puebla
・Valencia
・Pau
・Brno
・Estoril
・Brands Hatch
・Oschersleben
・Imola
・Monza
・Okayama
・Macau
■ STCC TRACKS
・Knutstorp
・Sturup
・Gothenburg
・Falkenberg
・Karlskoga
・Valer
・Mantorp
■ US TRACKS
・Laguna Seca
・Road America
- 関連タイトル:
RACE ON: WTCC'08 & US MUSCLE 日本語マニュアル付 英語版
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