レビュー
「三國志DS 3」は説明書いらずの親切設計。戦争に特化され,短時間でも遊べる「英雄バトルロード」で武将を育てよう
初出が15年前(1995年)に登場したPC-9801シリーズ版とはいえ,オリジナルである「三國志V」自体の持つ魅力や完成度の高さに加えて,DSでのプレイを前提にしたインタフェースの変更やチュートリアルの導入,また新たなゲームモードの追加などさまざまな新要素が,数多く盛り込まれている。登場する武将数もベースとなった「三國志V」の武将に加えて150人以上が追加され,さらに100人もの武将をエディットしてシナリオに登場させることも可能だ。
本稿では,「三國志DS 3」を実際にプレイした感想を交えて紹介していこう。
初心者に向けた親切設計。チュートリアルと兵法教書のおかげで説明書いらず
コーエーの歴史シミュレーションといえば,「信長の野望」や「三國志」を思い浮かべる人は多いと思う。長年シリーズを続けてきたことによってブラッシュアップされたこれらのシリーズは,歴史好きやシミュレーションが好きなプレイヤーにはたまらないタイトルだと言えるだろう。しかし,“長年続いてきたシリーズ”であるがゆえに,まったくの初心者にとっては「難しそう」「何をしていいかわらない」という印象を持たれてしまいがちだ。
そんな初心者プレイヤーを考慮し救済するために,チュートリアルや兵法教書といったものが充実していることが,携帯機向けに作られた本作の特徴と言っていいだろう。
チュートリアルは,その名のとおりゲームの基本的な流れを紹介してくれるモードだ。
君主となった孫策を,周瑜を始めとした呉の武将達が教育していくというストーリー仕立てで,本作のゲームシステムを学ぶことができる。システムの紹介自体はとても真面目なのだが,ストーリーはコミカルに展開していくので,初心者ならずとも楽しめる内容になっている。上級者を自認するプレイヤーにも一度は見てもらいたい内容だ。
ツッコミ同士による漫才のようなチュートリアル。無駄に熱い孫策を囲んで呉の武将達がレクチャーを進めていく。しかし,これで大丈夫なのか,呉は |
レクチャーに合わせてコマンドを実行し,その結果を見ることができる。会話中に出てくる赤い文字の内容にはとくに注意して覚えておきたい |
兵法教書は,いわば説明書を詰め込んだもの。ゲームの基本的な遊び方から各コマンドの説明だけでなく,プレイのヒントも載っているなど至れり尽くせりの内容だ。この兵法教書は,プレイ中いつでも確認することができるため,外出して遊んでいるときに非常に便利。実際,武将の陣形や技能の詳細を確認するために,どれだけお世話になったのか分からないほどだ。
単なる説明だけでなく,ゲームを進める上でのヒントも掲載している。迷ったときは,兵法教書を確認してみよう |
今作の戦闘では陣形が重要。戦闘中に兵法教書を確認し,対策を考えよう |
そのほかにもインタフェースをタッチペンで操作しやすくしたり(もちろん,十字キーでもプレイできる。個人的には併用がオススメだ),ビジュアル面の強化によって画面の見やすさがアップしたりと,快適にプレイできるようになっている。また,武将登用時に獲得できる「武将カード」には武将の能力だけでなくプロフィールや性格などが記録されており,より三國志の世界を楽しむ助けとなってくれる。さらに武将カードを集めることでBGMの変更が可能になったり,アイテムが手に入ったりと,やりこめばやりこむほど,さまざまなご褒美を得ることができるのだ。
領土を拡大し,勢力が大きくなると宮廷内のグラフィックも変化! より豪勢な宮廷内へと変化していくのだ | |
武将を登用すると得られる武将カードは,タイトルメニューのギャラリーで確認できる。武将のプロフィールは,史実と三国志演義の2種類が掲載されている |
戦争に特化した英雄バトルロードを搭載。自分だけの軍団を育て上げ,中国を統一せよ!
本作の移植にあたって,DS版オリジナルのモードとして搭載されたのがこの「英雄バトルロード」だ。
コーエーの大半の歴史シミュレーションにおいて内政と戦争は切り離せない関係だが,「英雄バトルロード」は戦争部分のみを切り出したモードで,「黄巾の乱」や「赤壁の戦い」など三國志において代表的な戦いを模したステージが設定されており,クリアするごとに戦えるエリアが増えていく。自分の軍団を編成して,全ステージをクリアすれば中国統一となる。
プレイヤーは最初に武将を選んで軍団を編成する。シナリオモードとの違いは,武将にコストと登用のための宝玉数が設定されていることだ。
コストはその武将の出陣コストのことで,各ステージには合計コストが設定されていて,この合計コスト内の武将しか出陣させることができない。例えば合計コストが15ならば,コスト3の武将なら5人まで,コスト2の武将ならば7人まで出撃させることができる。基本的に能力の高い武将のコストは高く,能力の低い武将のコストは低い。しかし,所持している技能や陣形によってはコストの差をひっくり返す使い勝手を発揮するので,コストにとらわれず登用するとよい。
なお,その登用には一定数の宝玉が必要となる。宝玉はステージをクリアすることで入手できるものだが,能力の高い武将ほど消費する宝玉が多い。
コストが高い武将は,確かに強い。だが,コストが高い武将ばかりだと,出陣できる数が減ってしまう。バランス良く編成するのがポイントだ | |
コストが低い武将は文官系が多い。中にはレアな特殊能力を持っているものもいる。コスト2の中では,治療を使える鄒氏と騎射を持つ馬鉄がオススメ | |
武将を登用するのに宝玉は必要不可欠だが,プレイを続けていると余りがちになる。強そうな武将を見つけたら,どんどん登用してしまおう |
軍団の武将は,ステージクリア時に入手したアイテムを使って育成することもできる。育成できるのは能力値だけで,陣形や技能の変更はできないが,その気になれば全能力100のスーパー武将を作りあげることも可能だ。前述したコストの低い武将も,集中的に育成すればコストの高い武将を凌ぐ能力を手に入れられるだろう。さらに,この英雄バトルロードで育成した武将の能力は,シナリオモードに反映できるので,お気に入りの武将をシナリオモードで活躍させられるのは嬉しいところ。……嬉しいのだが,陣営によっては敵として登場することもあるので,そのことを忘れないように。
これらの宝玉,育成アイテムは,ステージクリアの内容によって決まる評価が高いほど多く入手でき,また高コストの武将が登用できるようになる。また,ステージに設定された特殊条件を満たした上でクリアすると,特別褒賞が得られる。特別褒賞によって陣形をパワーアップできる兵器が手に入ったり,SP武将が手に入ったり,新たなシナリオがプレイできるようになったりするので,積極的に狙っていこう。なお,評価の高ランクと特別褒賞の獲得は,ステージクリア後でもチャレンジできるので,まずはこれらを気にせずクリアを目指し,軍団が強くなったら狙うというプレイがオススメだ。
ステージをクリアするまでに,ある条件を満たすと,特別褒賞が手に入る。戦闘開始前の敵の会話に注目しておこう | |
武将を育成するなら高いランクでステージをクリアして,より多くアイテムを入手しよう |
お馴染みのシナリオモードも健在。全12本のシナリオで中国統一を目指せ!
シリーズの本編ともいえるシナリオモードも充実しており,「三國志V」のシナリオが7本,「三國志Vパワーアップキット」に収録されていたシナリオが4本,完全新規のシナリオが1本の全12本のシナリオが収録されている。このうちの5本は隠しシナリオとなっていて,シナリオモードをクリアしたり英雄バトルロードをクリアしたりすることでプレイ可能になる。
また,シナリオ開始時には難度の選択のほか,作成した新武将やSP武将の登場,英雄バトルロードで育成した武将の能力を反映させるかを設定できる。
下画面にシナリオ,上画面にそのシナリオ開始時の勢力状況がマップとテキストで表示される |
シナリオを選ぶと難度や史実,仮想の選択などのほか,SP武将や作成武将,新君主の登場を設定することができる |
アルゴリズムやバランスの変更以外にも,兵士のタイプを廃して陣形が取り入れられていたり,その陣形をパワーアップさせる新兵器などのシステムが取り入れられたりしている。とくに陣形は,本作の戦闘においてかなり重要なポイントとなり,使いこなせば武将の武力の差はもちろん,兵数の差すら覆すほどだ。新兵器は外交の研究などで手に入れることができる。
また,武将の特殊能力も増えており,能力値以外での個性化も図られている。能力値の高い武将よりも,便利な特殊能力と有効な陣形を持つ武将のほうが役に立つ場合が多いので,これまでのシリーズ以上に武将の運用を楽しめるのではないだろうか。
陣形だけでなく,敵の陣形が向いている方向を見切るのも戦いのポイント。背後からの一撃は,かなりのダメージを与えられる | |
武将の特殊能力は計略と特殊で使うことができる。どちらも使用に体力を消費するが,その効果は戦局を左右するほどだ |
携帯機としての遊びやすさを重点に置きながら,じっくりと遊ぶことも考慮された安定感
とかくプレイ時間が長くなりがちなシミュレーションゲーム。とくに複雑なゲームになると「あー,あれなんだっけー?」などと,プレイしながら説明書を見直すことがままあるものだ。携帯機はどこでも遊べる半面,移動中は手元に説明書が置けないので,説明書を要するタイプのゲームではこの点に不安を残すものだが,「三國志DS 3」ではいつでも兵法教書を参照できるようにしたことで,これを解消している。
また,1プレイ5分〜30分で終われる英雄バトルロードのおかげで,外出先でも気軽にプレイできるのが嬉しい。少し難度は高いが,育成などを繰り返せば必ずクリアできるので,挫けずに最後までチャレンジして欲しいモードだ。実のところ,シナリオモードよりも長く遊んでいたぐらい,楽しめるモードだ。
一方のシナリオモードは,さすが歴史シミュレーションゲームのコーエーといったところか,安定感のある出来映えだ。こちらは外出先で遊ぶよりも,家でじっくりと腰を据えて遊んでほしいモードになっている。
シリーズ物のゲームでは,前作を遊んでいないから……と尻込みしてしまいがちだが,「三國志DS 3」はシステム的な面でいえば,前作「三國志DS 2」をそれほど踏襲しているわけではないため,シリーズであることを気にする必要はないだろう。
「三國志」に興味を持っているならば,尻込みせずにぜひプレイしてもらいたい一本だ。
「三國志DS 3」公式サイト
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