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海外ゲーム四天王 / 第38回:「I'm Not Alone」
オーストリアの人里離れた山の中に建つ古びた館と聞けば,もう幽霊やクリーチャーが出るしかないいわくつき物件だが,今回の「海外ゲーム四天王」は,そんな館を舞台に,現代のエクソシスト(悪魔祓い師)が幽霊やクリーチャーと戦う三人称視点のアドベンチャー,「I'm Not Alone」を紹介しよう。うわー,怖い。あ,まだ早い?
本作はイタリア生まれという珍しい感じのゲームで,荒削りな部分はまだ残っているものの,サウンドやグラフィックスなど,プレイヤーを怖がらせるための演出はなかなかのもの。うわー,怖い。そんな一本を,“オーストリアの山”と聞くと,つい「♪The hills fill my heart〜」とジュリー・アンドリュースが歌いあげる「サウンド・オブ・ミュージック」の一節を口ずさんでしまうという,ライターの朝倉哲也氏がお届けしよう。
オーストリアの人里離れた山中に,一軒の古びた館があった。地獄への入り口があるという噂のその館は,ひとたび足を踏み入れて,生きて戻って来た者はないといわれる,呪われた館だった。
主人公のPatrick Webwerは,その館の主である老婆にエクソシスト(悪魔祓い師)として招かれ,館にかけられた呪いを解き,その秘密を解き明かすことになる。だが,そこには想像を絶する恐怖が待ち受けていた……。というのが,イタリアのデベロッパPix Revが開発したホラーアドベンチャー「I'm Not Alone」だ。パブリッシングはドイツのThe Games Companyが担当しており,ちょっと前だったら,こうした生まれも育ちもヨーロッパなアドベンチャーを手に入れるのはなかなか困難だったが,Valveの「Steam」など,デジタル配信システムの発達により,手軽に購入できるようになったことに拍手を贈りたい。
さて,主人公Patrickは超自然現象を専門に扱う現代のエクソシストだけに,精神を集中することで,普通の人には見えない悪霊を見たり,戦ってヤツらを退治したりなど,電波……じゃなくて,すごい特殊能力を持っている。
また,本作の舞台となる古びた邸宅だが,ここは,はるか昔に住んでいた音楽家が,死んでしまった愛する女性を甦らせるため,10数名の村の若い娘を生け贄に悪魔と取引を行い,その後,忽然と姿を消してしまったという因縁がある。つまり,本作は典型的な幽霊屋敷モノというわけだ。
本作は基本的には三人称視点の3Dアドベンチャーだが,館の内部を探索していく途中で館に住みつくクリーチャーと戦わなければならない場面がたびたび発生するという,アクション要素がミックスされており,純粋なアドベンチャーではない。
武器としてはナイフとボウガンが用意されており,両手に持ったナイフで敵を切り刻んだり,距離をとったところからボウガンで狙い撃ちする。といっても,トゥームレイダーシリーズのようなスピーディで激しいアクションではなく,敵はただ真っ直ぐこちらに向かってくるだけであり,比較的簡単。ナイフで切りつけると敵がのけぞるので,それに合わせてタイミングよくナイフを振っていけば,ザコ敵に対してはノーダメージで戦いを終わらせられるだろう。
もっとも,要所に出現するボスクリーチャーはかなりの強敵で,体力がザコクリーチャーとはケタ違いなため,倒すのにかなり苦労するはず。このように,敵の強弱の付け方がいささか極端で,戦闘シーンのゲームバランスは今一つという印象だ。
また,戦闘シーンになると,途端にゲームが「重く」なってしまうのもマイナスポイントかもしれない。通常はとくに問題はないのだが,主人公が特殊能力を発揮してクリーチャーと戦う場面になると,明らかにゲームが重くなって操作しづらくなる。
これは筆者のハードウェアの問題かと思ったが,海外のフォーラムでも同じような現象が報告されているので,ゲームに何かしらの問題がありそうだ。パッチなどによる今後の修正に期待しよう。
さて,アドベンチャーゲームで忘れてならないのが「パズル」や「謎解き」。本作にもいたるところに登場し,パイプのコックを決められた回数だけ回したり,アイテムを組み合わせることで,何も書かれていない紙に文字が浮き出てきたりといったものがある。難度はあまり高くなく,総じてシンプルなものばかり。ただし,ゲーム序盤に詰め将棋ならぬ「詰めチェス」が登場するのだが,チェスのルールと駒の動かし方を知らないと,少し苦労するかも。パズルそのものは,数手で終わる簡単なものだ。
スクリーンショットを見ても分かるように,グラフィックスのクオリティは普通のレベルだが,薄暗い館の中を懐中電灯の明かりで歩き回っていると,前方を何かがサッと横切ったりなど,怖がらせる演出が巧みだ。館の地下に広がる広大なダンジョンや,厳重な扉で封じられた謎の部屋,森の中にたたずむ廃墟と化した寺院などの雰囲気もなかなか良好で,バイオリンの不協和音を使ったBGMなども効果的。ホラーゲームとしてのムードはなかなか良くできている。たわむれにピアノを弾こうとすると,いきなりクリーチャーが襲ってきたり,部屋に入ったとたんにゾンビのようなヤツが斬りかかってきたりなど,プレイヤーをドキリとさせる仕掛けも満載で,お腹いっぱい。
筆者はたまたま真夜中に本作をプレイしたのだが,地位も名声もあった音楽家が,死んだ者を甦らすという狂気に次第に取り憑かれていく経過がこと細かに書かれた日記を読んでいるうち,背中がゾクゾクしてきたのだった……。
ゲームを一通りプレイしてみたところ,全般に詰めが甘いというか「悪くはないが,格段に良いというわけでもない」といった印象で,戦闘シーンがもっとスピーディでダイナミックなものだったら,かなり印象が変わったような気がする。Steamでは,現在39.99ドルで購入ができるが,この価格で「ぜひプレイしてみよう」とは言いづらいのが正直なところだ。ゲームの雰囲気は良いだけに,ちょっと惜しい。ホラーゲームがものすごく好きで,なんでもやってみたいというのであれば試してみよう。
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