プレイレポート
MMORPG「ArcheAge」は,そこに住んでみたいと思わせる仮想世界だ。プレイヤーの誰もが開拓者になったファミリーテストに参加してみた
このファミリーテストは,いわゆるβテストではなく,また韓国ですでにサービスが始まっているものがベースなので,αテストともまた違う。では,何のために行われるテストなのかと言うと,ArcheAgeを日本で本格展開するにあたり,現在の仕様が日本のプレイヤーに受け入れられるものかを確認するためのものなのだ。
テストの前半後半で,細かなアンケート調査も行われており,プレイヤーからのフィードバックの内容次第では,大規模なカルチャライズが施される可能性もあるだろう。
第1回アンケート(5月7日時点)
第2回アンケート(5月20日時点)
それほど重要なテストになると,どれだけプレイヤーが本気になって遊んでくれるのかがポイントになる。とくに本作は,韓国でのサービス開始からそれほど時間が経っておらず,ゲームの詳細はあまり広く出まわっていない状況だ。当然,ファミリーテストにおける多くの参加者も詳細なゲーム内容を把握はできていないと思われる。そのため,今回のテストで重要になったのは,本格的に遊ぶ――自ら開拓してくれるプレイヤーであること。まさに“最初の遠征隊”を募集していたわけだ。
今回,そんなファミリーテストに4Gamerも参加してみたので,改めて基本システムを紹介すると共に,今回のファミリーテストを振り返ってみたい。まだ完全ではないものの,日本語化されたUIが確認できるのもポイントだ。
「ArcheAge」公式サイト
ベースシステムは誰でも迷わず遊べる「王道的なMMORPG」
これまで4Gamerでは,ArcheAgeの独自性や自由度の高さを強調してきたが,本作のベースシステムは「王道的なMMORPG」をきっちりと踏襲している。懇切丁寧なチュートリアルや各種サポート機能など,2013年の新作オンラインゲームとしてあるべき要素は押さえられており,MMORPGに不慣れな人でも迷わずに遊べるはずだ。
その中でもクエスト周りは,プレイを円滑に進めるための,さまざまな工夫が施されている。
例えば受注したクエスト情報を画面に常駐表示させられるのは当たり前だが,クエストの目的地の方向が地面に矢印で示されたり,クエスト情報にマウスカーソルを当てることで詳細説明がポップアップしてくれたりと,とにかく進め方が分かりやすい。
また,モンスター討伐やアイテム収集などのクエストは,指定数に満たなかったり,あるいは逆に超過したりといった状態でも完了でき(状況により報酬も変化する),プレイヤーのテンポでクエストが進められるようになっている。
気持ちとしては,超過状態でクリアして,より多くの報酬を手に入れたいところだが,目的地の混み具合によっては,あえてさっさとクエストを完了させてしまって,次の目的地に向かうなり,ほかのモンスターを狩るほうがいい場合もあるのかもしれない。
次にプレイヤーキャラクターの職業について紹介しよう。本作では,全120種類の職業名が用意されているが,これは10種類用意された“適性”と呼ばれる戦闘スキルから三つを選び,その構成によって決まる。そしてプレイヤーキャラクターのレベルアップで獲得したスキルポイントと引き換えに,選択した適性の中からスキルを習得していくのだ。
また,キャラクターのレベルとは別に,適性のレベルも存在し,適性がレベルアップすることで取得済みのスキルが強化されていく仕組みとなっている。つまりスキルポイントは,使いたいスキルを選ぶためのもので,ポイントを振ってスキル強化していくものではないわけだ。
なお,スキルの選択に使ったポイントは,ゲーム内マネーを使って取り戻すこと(リスペック)が可能。また,特定のNPCにゲーム内マネーを払うことで,選択している適性を選び直すこともできる。レベルが上がった適性は,そのままレベルが維持されるので,国産RPGでいうところの“ジョブチェンジ”のように,お金がある限りいろいろな組み合わせが試せるわけだ。
このように,さまざまな適性ごとのレベルを上げながら,状況や気分転換でプレイスタイルを気軽に切り替えられるのは面白い。
近接系の適性。アクティブスキルで発生するエフェクトに対して,指定されたアクティブスキルを発動することで,さまざまな連鎖ボーナスが発生する。連鎖の発生条件は,それぞれのスキル説明で詳細に書かれているので,習得時に参考にしてみよう |
魔法系の適性。一つの適性における戦い方は比較的シンプルで,職業(=適性の組み合わせ)によって個性が出てくる |
好きなだけ“寄り道プレイ”が可能
ゲームの可能性はプレイヤー次第だ
レベル上げに要する労力は,近年のMMORPGと比べると同程度か,ファミリーテスト独自のバランスでなければ,正直なところ若干緩いのではと感じている。クエストに沿ってプレイしていけばレベルはサクサクと上がり,活動エリアも順調に広がっていくのは快適だ。そうやって普通にプレイするだけなら,ArcheAgeは「いまどきの良くできたMMORPG」なのだが,わざわざ独自性を強調するほどのタイトルだとは思えない。
それでは,ArcheAgeのいったい何が凄いのかというと,プレイの道中,いたる所に膨大な数の導線,遊びが散りばめられていることにある。それらはプレイするうえで必須ではないものの,どれも異様に作り込まれており,プレイヤーがその気になればいくらでも寄り道できるのだ。プレイヤーのアイデアを組み合わせることで,遊び方の幅がどんどん広がっていくのではないだろうか。
“寄り道”の中でも比較的分かりやすいのが,生産関連のシステムだろう。むしろ,生産こそ本道というプレイヤーもいるだろうけれど。以前,ハウジングにおける素材集めを例に,生産における一連の流れを紹介したが(関連記事),ほかにも武器/金属/革/裁縫/工芸/木工/料理/錬金といったさまざまな生産活動が行える。本作ではさらに,そうした生産を行うために必要な素材を作り出す,第一次産業にまで参加できるのが面白い。
木を伐採したり石を採掘するといったものは,ほかの作品でもよく見かける(ただ,実際に木を切り倒すのは珍しい)ものだが,伐採するために自分で木を植えるというのは,ありそうでなかったものだ。本作では,そうした手間暇をかけて収穫物を自分で育てるといった要素が数多く用意されている。
例えば「苺」の場合,種を植え,水を与えてから30分程度待つと収穫できる。「ヒヨコ」を育てると鶏に成長し,そのまま待って「卵」を得てもいいが,料理したい品によっては,屠殺して「鶏肉」を得るのもアリだ。羊や牛で畜産を行えば,羊毛や乳牛が定期的に得られるし,それを市場に流すだけでも安定した収益となる。
第一次産業だけでも数十〜百以上の品目が存在するが,第二次産業になるとさらに品目が増える。木工の中の一種類に過ぎない“タンス”だけで,20種類以上が用意されているのが,ArcheAgeというMMORPGなのだ。
生産に関する,もう一つの大きな目標と言えるのが「特産品」の貿易である。作れる特産品は地域ごとに決まっており,例えばソルスリード地方なら「ソルスリードのイチゴジャム」といった具合だ。こうした特産品を遠方まで運んで売ると,大きな利益が得られるのだが,これがなかなか大変。特産品を担いでいる間は,移動速度がかなり遅くなってしまうのである。モンスターからの危険を避けるべく,街道をてくてくと歩くキャラバンを時折見かけたが,これもなかなか微笑ましい光景だ。
ちなみにこの貿易は,家などの設計図と交換できる「デルフィナードの星」を獲得するための数少ない手段の一つでもある。以前取材したときには,一番小さな家でもある程度の苦労は覚悟が必要だと思えたが,ファミリーテストの終盤にはこじんまりとした集落がちらほらとできるくらいには,家が建っていた。
先述したとおり生産できる品のバリエーションが半端ではない本作だが,それは家の飾り付けにも如実に反映されている。それぞれの家に,家主の個性が表れており,それを見て回るのも楽しい。今回のテストでは,家を建てるまでに至らなかったので,こんな飾り付けもあるのかと感心しきりだった。次の機会には家を建ててみようと決意した次第だ。
一番小さな家であれば,コツコツ頑張れば誰にでも手が届く。レベル上げや戦闘に明け暮れなくてもいいというところが嬉しい |
家に飾り付ける品は,木工などで作り出せる。しかも単なる置物ではなく,何らかのアクションが発生するものも多いのだ |
自由だが法もある世界。抱腹絶倒の裁判システム
ArcheAgeはいろいろな意味で自由なMMORPGだが,その中には“悪事を行う自由”も含まれている。エリアによってはPKが行えるし,他人の作物を盗むことだってできる。いざ自分がやられてみて初めて気付いたのだが,手塩にかけて育てた作物を収穫間際に盗まれるのは,PKよりも腹が立つものだった(PKされたときのペナルティが,それほど大きくはないこともあるかもしれない)。
とはいえ,この世界は無法地帯というわけではなく,きちんとした法が存在するのだ。それを代表するのが「裁判」システムとなる。
例えばPKや泥棒などが行われると,犯行現場に“血痕”や“足跡”が残り,これを見たほかのプレイヤーは“通報”ができる。通報された人は不名誉ポイントが増加し,それが積み重なることで犯罪者として召集を受け,裁判にかけられるのだ。
裁判はArcheAgeの中でも指折りのユニークなシステムで,犯罪者を裁く陪審員がプレイヤーの中から選出され,しかも裁判の様子がオープンチャットを通じてライブ中継される。陪審員を説き伏せることができれば刑は軽くなるかもしれないので,犯罪者にとってはある意味腕の見せどころだ。
裁判におけるチャットの模様をスクリーンショットで掲載できないのが残念。実際にプレイする際にはぜひ注目してほしい |
クエストをこなすことで陪審員の資格が得られる。裁判が始まると資格者の中からランダムで選ばれ,どこにいても裁判所に召集されるという仕組みだ |
ところで,PK/窃盗といった犯罪要素は,やはりゲーム中でネガティブな印象を持たれやすいシステムと言える。同様に裁判もネガティブなイメージを持たれないかと少し心配していたのだが,ファミリーテストではこの裁判の存在によって,ゲーム中でなんとも“ゆるい”雰囲気を演出することになっていたのだ。
というのも,冒険している最中にチャットで流れてくる裁判のやりとりは面白いものばかり。ときに声を出して吹き出したこともあるほどだ。例えば,
陪審員1「あなたは酷いことをしましたね」(罪状の数々が通報のリストで確認できる)
被告「すみません。でも,苺を取っただけなんです……」
陪審員2「なんて重罪を……有罪」
被告「えー!?」
といった会話から,そのゆるさを想像してほしい。もっとも,このときは陪審員ではない筆者も「それは重罪だよな」と頷いてしまったものだが。
ほかにも,PKを行った理由を問い詰められた被告が「自分がデザインしたマントをバカにされたから」だったり,いろいろな事情があるものだと感心することも。
このようにファミリーテストにおける被告は,とかくサービス精神旺盛なプレイヤーが多かったのか,裁判という雰囲気がそうさせるのか,その様子はあたかもテーブルRPGのセッションのようで,RPを自然と楽しんでいたように思えた。
ちなみに,有罪となったプレイヤーは牢獄に放り込まれるのだが,そこから「脱獄」することも可能。犯罪後にも,波乱万丈のプレイが待ち受けているようだ。
筆者は今回のプレイでは犯罪には手を染めなかったので,その中身までお伝えできないのが残念なところ。次の機会には,何らかの悪事に手を染め,そして裁判で披露する一発ネタを熟考したいと考えている(※おまわりさん。この人です)。
その世界に「住んでみたい」と思えるMMORPG
近年リリースされたMMORPGは,レベルを上げたり,インスタンスダンジョンを攻略したりといった,開発側が想定した遊び方を楽しむ作品が大半だ。一方のArcheAgeは,どちらかというと,遊び方を自分自身で見つける作品になる。
そのためか,本作におけるレベル上げは,おまけ――とは言い過ぎかもしれないが――のような印象で,それだけを追っていると本当の魅力にたどり着きづらいと感じた。これだけ,プレイヤーへ能動的に動くことを求める作品に出会ったのは久しぶりだ。
今回,ファミリーテストに参加してとくに思ったのは,この仮想世界に「住んでみたい」ということだ。MMORPGに慣れてしまったこともあるのか,近年のMMORPGに対して「遊んでみたい」と思うことはあっても,「住んでみたい」とまで思うことはなかった。それこそ,思い出せるのは「Ultima Online」のβテスト時代にまで遡ってしまう。やはりどんなものでも,最初に触れた体験と衝撃を越えることは難しいものだ。若干,記憶も美化されているし。ともあれ,今回のテストでは,この世界で生きたいと,久しく忘れていた冒険者魂が再燃したのだ。
さて,ArcheAgeのファミリーテストでは,最初のテスター募集以外にも,さまざまな参加方法が後に用意されていたが,それでもまだ多くの人はこのMMORPGに触れられていない。筆者としては,何より実際に体験してみてほしい作品だ。今後のサービススケジュールはまだ明かされていないが,MMORPGや仮想世界にわずかでも興味を持つ読者は,次を見逃さないよう「ArcheAge」の動向に注目しておこう。
「ArcheAge」公式サイト
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