紹介記事
コアゲーマーの琴線に触れる新作MMORPG「ArcheAge」の韓国サーバーに潜入してみた。MMORPG黎明期を知るプレイヤーの心を引くものは何だったのか
比較的年齢層の高い4Gamer読者であれば,遊んだことはなくても,名前すら知らないという人はまずいないだろう。そして,やや美化されている気もするが,いまも伝説のように残る面白いエピソードの数々に,MMORPGというジャンルの可能性を垣間見たゲーマーも少なくないはずだ。
プレイヤー自身が商店を開いて,森で木を切って,海で釣りをして,鉱山で採掘して,家を建てて,PKができて……とにかく何でもできた。そんな前評判を聞いたゲーマーは,なんて凄いゲームが出てきたんだと驚嘆し,実際に遊んで,また驚いた。
結局のところ筆者は,まだ日本サーバーがないころから5年近くUOをプレイし,自他共に認める廃プレイヤーになっていた。この業界に入ったのも,元を正せばこれが要因だった。
つい昔話をしてしまったのは,満を持して登場した「ArcheAge」の情報を追えば追うほど,これは「生活系」MMORPGの真打ちが現れたかもしれないと思えてくるからだ。では,そう感じる理由とは,何なのだろうか。
現在「ArcheAge」は,韓国で正式サービスが行われている。そこで今回,筆者が上記のように感じる理由を探るため,韓国サーバーに潜入してみることにした。ただ,正直なところ,ハングルはまったく読めず,何が書いてあるのかさっぱりだ。しかしまあ,それはそれ。これまでのMMOのプレイ経験で乗り切ってみようではないか。あと,iPhoneの韓国語キーボードと翻訳サイト万歳!
※韓国サーバーでは頻繁にバランス調整を含めたアップデートが行われており,筆者がプレイした状態のままで,日本サービスが行われるかどうかは未定であることは注意してほしい
「ArcheAge」公式サイト
そもそも“生活系”ってなんだろう?
4GamerでMMORPGを紹介するとき,よく“生活系”という表現を使う。件のUOのほか,「マビノギ」「Second Life」,国産MMORPGでは「Master of Epic: The ResonanceAge Universe」,「大航海時代 Online」なども該当するだろうか。では,そもそも生活系とは,どういったジャンルなのだろう。
一般的に,そのMMORPGがどんな作品なのかを考えるとき,重要なのはエンドコンテンツが何を目的にしているかだろう。例えば,レイドコンテンツ(EQなど)だったり,戦争コンテンツ(DAoC,FEZなど)だったりといった具合だ。では,生活系のエンドコンテンツとはなんだろう?
生活系のMMORPGというものを漠然とイメージしてみると,フィールドやダンジョンの探索を楽しむことはもちろん,素材を集めながら,生産一筋で遊ぶこともできるゲームを思い浮かべる人は多いはずだ。ただ釣りをして暮らしてみたり,ほかのプレイヤーと取り引きしながら家を建てたりして,その世界で生活する作品,いわゆる「仮想世界を生きる」というものになる。
こう書くと,ほのぼのとしたイメージを浮かべてしまうのだが,生活(現実)を体験するということは,当然,争いも内包する。例えば土地であったり,資源であったりは基本的に早い物勝ちで,そこからの取り引きも生じたりする。さらに,プレイヤー同士の戦争が起こるし,もっと小規模な,個人的な戦いになればPK(Player Killing)も起こる。犯罪がシステムとして設けられていて,それに対するペナルティも発生する。なんというか,ゲームでも現実は甘くないのだ。
ともあれ,プレイヤーはそうした世界の中で,まだ見ぬ秘境を目指さなくてもいいし,別に戦争をしなくてもいい。生産だってやる気がなければしなくてもいい。お金を稼ぐ手段くらいは何か見つけたいが,とくに明示された目的はない――強いて言えば,レベルやスキルを上げることくらい――ので,その世界で自分の好きなように「生活」していけばいい。それが“生活系”のエンドコンテンツであり,そうしたエンドコンテンツを持っているMMORPGが“生活系”と呼ばれるのだろう。そしてArcheAgeには,それらを許容する「生活系」の匂いがするのだ。
いろいろできて理解するのが大変。でも,それが楽しい!
ArcheAgeの世界に入ってまず感じるのは,インタラクティブなオブジェクトがとにかく多いということだ。
そこにイスがあれば座れるし,カンテラや街灯に自分で明かりを灯すこともできる。フィールドに自生する植物を採集したり,木を切り倒したり(実際に木が倒れる)するのは,意味があろうとなかろうと,それが世界に反映されるということが楽しい。
植物の採集や木を切り倒しての丸太の調達には,素材集めという理由はあるが,街灯やカンテラのオン/オフというアクションは,ゲームとして見れば無駄な機能だ。だがその無駄さ加減は,生活系を求めるプレイヤーにとって重要なものだったりもする。なんとなく触れて,反応がある。何気ない小さなオブジェクトひとつひとつの動きが,大きな意味で生活感につながってくるのだ。
さて,ArcheAgeは,クエストをどんどん進めていく,最近のMMORPGでも一般的なゲームスタイルに仕上がっている。韓国語が分からなくても,目的地が矢印などで表示されているのでなんとかなる。
序盤を触った感じでは,クエストが途切れることはなく,レベルはすぐに上昇する。戦闘も,相手をターゲットしてスキルを使うEQ系譜のインタフェースだ。途中,農場を使った植物栽培の方法や生産のチュートリアルもプレイできるが,これはあちこちにある農場でも受けられるようなので,素通りしてもたぶん問題ない。読めないし。基本的な進行は,MMORPGの王道的なものなので迷うこともないだろう。ただ,できることが山ほどあるのだ。
今回のプレイでは,およそ10時間ほどを使って,いろいろな種族(スタート地点が異なる)やスキルを試してみた。当然,キャラクター単体では短い時間しか遊べていないので,MMORPGのプレイとして見れば,まだまだ序盤もいいところ。にも関わらず,できること,選んでいくことがとても多いのでなかなか悩ましい。
その一つが戦闘スキルなのだが,本作には,「クラス」という概念がない。10種類のスキル系統から3つを選び(キャラ作成時に6種類から一つ,レベル5以降,レベル10以降にそれぞれ一つずつ選択できる),その組み合わせでキャラクターが120通りの職業のいずれかに決まるというシステムになる。ただ,スキル系統やスキル自体は,お金を使って選択し直せるので,取り返しがつかないというわけではない。いろいろなスキル構成を試してみるといいだろう。
そしてもう一つ迷うのが,ゲーム中の行動だ。先述のとおり,本作ではいろいろなオブジェクトにアクセスして,生産に使う素材などを収集することができる。なので,道すがら,拾えるものは拾っておこう……と思うはずだが,ここに本作における重要な要素「労働力」が関わってくるのだ。
労働力は採集や生産などを行うときに消費するポイントで,回復は非常にゆっくり。目的もなく,いろいろな物を採集しまくっていると,ここぞというときに足りなくなってしまう。いうならば,ロングスパンのスタミナのようなものなのだ。
序盤こそあまり労働力を気にする必要はなさそうだが,家を建てようと思うと,労働力を大量に使うことになるので,無駄使いはできない。さらに素材も必要だし……と,もう時間(=労働力)が掛かって仕方がない。ちなみに,ほかのプレイヤーから労働力を借りられるので,大きな労働力を必要とするときは,協力者を捜すのが近道なのかもしれない。
ほかにも,大量にレシピが存在する生産や,船に関する要素,グライダーを使った飛行やアクション,戦争,交易,裁判など,説明を始めるとキリがないほど多くの内容が本作には詰め込まれている。そのほとんどが序盤から体験できるので,やり込んでいくと大変だ。しかし,この悩んでいる時間がとにかく楽しいし,だからこそ長く遊べる=生活できる内容になりそうだと期待したくなる。
競争への不安と,早く日本語で遊びたくなる期待感
冒頭で述べたとおり,今回は韓国語バージョンで遊んでいるため,とにかく細かな部分はまだ理解できていないのが現状だ。その中で,不安になったのは,やはり競争が激しそうなことだろうか。
とくに今回のプレイで感じたのは,丸太の確保の大変さだ。本作では,船を作るにしても,家を建てるにしても,とにかく木材が必要になる。しかし,フィールドに自生する木々は有限で,切り倒して丸太にすると,当然その木は消滅してしまう。もちろん,ちゃんとリポップはするのだが,苗木→若木→木→成木といった感じで,数時間ごとに段階を経て成長し,しかも若木以下の場合は切り倒せない(丸太が得られない)。そのため,タイミングが悪いとほかのプレイヤーが切り倒したあとで,延々と苗木と若木を見るハメになってしまう。
もちろん自分の畑を所有して木を植えることで,一定量の資源は確保できると思う。しかし,畑の広さの限界もあるし,畑に置きたいのは木だけではないだろう。やはり,フィールドの資源は必要になってくるはずだ。
もっとも,木を切るというアクションは労働力の消費が大きく,ずっと続けられるものではない。とは言え,オープン初期となると資源争奪戦は激しくなることも予想され,あせらず根気よく遊ぶ覚悟は必要かもしれない。
そうしたこともあり,オープン初期は,一つのサーバーにおける最適な人数バランスの調整が重要になりそうな気がする。過密になりすぎても土地や資源確保を考えると辛い。逆に人が少ないと大規模参加型コンテンツが寂しくなる。土地がないけどより大きな家を建てたい,立地のいい場所に建てたいといった悩みから,新サーバーができるたびに,ギルドごとサーバーを移動する人も現れてきそうだ。
さて,先に例示してはいるが,個人的には日本で遊べる日が,より待ち遠しくなっていたりする。というのも,プレイヤー同士が競い合うという部分で,これだけ手応えがありそうな作品も久しぶりだからだ。家を建てるために土地をさまよい,PKに怯えながら資源を求める。家を建てたとき,PKから無事に逃げ延びられたときの喜びや安堵感は,その苦労に見合うだけの報酬になるのではないだろうか。また“あの感触”が味わえるのなら,そりゃもう飛び込まんばかりの勢いで遊んでやろうと思ってしまう。
繰り返しになるが,今回プレイした範囲はゲームの序盤も序盤,ほんの触りの部分なので,ArcheAgeの“生活”が体験できたかというと,それはまだまだといったところだ。インタフェースも複雑なうえに韓国語なので,理解しきれていないシステムが多い。しかし,複雑な……言い換えれば奥が深そうなゲームシステムは,理解できればこの世界を楽しむための強力なツールになってくれることだろう。そのためにも,より早い日本語版の登場に期待したくなるというもの。本作が日本で,生活系MMORPGの真打ちとなれるのか,じっくりと見定めたいと思った次第だ。
「ArcheAge」公式サイト
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