シャシーにセンサー&メインボタン部とパームレストを填め込むだけという,極めてユニークな仕様で,北米時間2015年11月12日にMad Catz Interactive(以下,Mad Catz)から
発表されたゲーマー向けマウス「
R.A.T. 1」。4Gamerでは,北米市場におけるメーカー想定売価
29.99ドル(税別)と,画期的に安価な新モデルを,発表直後というこのタイミングで,極めて短期間ながら触る機会が得られた。今回は,その使用感を簡単にまとめてみたいと思う。
R.A.T. 1の実機。基本的には,左右対称形状で光学センサー搭載のワイヤードマウスである
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なお,今回4Gamerで入手したのは,開発途上版の実機だけだ。設定用ソフトウェアのようなものは(まだ)用意されていないため,あくまでもハードウェアの話しかできないことを,あらかじめお断りしておきたい。
恐ろしいほど軽いR.A.T 1
組み立てた状態で本体底面から。シャシーとメインボタンモジュールにソールが貼られている
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あらためて確認しておくと,R.A.T 1は,底面にマウスソールの貼ってあるシャシー「
Tripod Chassis」と,センサーおよびボタン部をモジュール化した「
Detachable Sensor Module」(以下,メインボタンモジュール),そして前後2段階で配置を調整できるパームレスト「
Adjustable Palm Rest」(以下,パームレストモジュール)の3パーツからなる製品だ。シャシーにメインボタンモジュールとパームレストモジュールを填め込んで使うスタイルが基本となるが,極論をいえば,メインボタンモジュールだけでマウスの基本機能は完結しているため,これだけで超小型マウスとして使うことも不可能ではない。
R.A.T. 1は3ピースから成るマウスだ。基本的にはプラスチックを噛み合わせて固定しているだけなので,各モジュールは簡単に着脱できる
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フレーム側には,パームレストモジュールを取り付けるための機構が用意されている一方,それと分かる形でのメインボタンモジュール取り付け機構はないのだが,メインボタンモジュール側面の突起部が,シャシーとうまく噛み合うような仕様になっている
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パームレストモジュールは2段階で配置を選択できる
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そのメインボタンモジュールは,左右メインボタンとセンタークリック機能&左右チルト機能付きスクロールホイール,ホイール手前側で前後に倒して入力するタイプのスイッチというボタン構成だ。入力系としては7つあるが,Mad Catzは「カスタマイズ可能なものは6ボタン」としているので,おそらくは左メインボタン以外がカスタマイズ対象なのだろう。
搭載するセンサーは,Mad Catzによると,PixArt Imaging(以下,PixArt)の「PMW3200」。これがPixArtの製品情報ページにある「PMW3320DB-TYDU」のことだとすれば,最大トラッキング速度80IPS,最大加速度20Gという仕様になるので,30ドルという価格に見合った,エントリー向けモデルということになる。
ケーブルはかなり柔らかい
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その公称サイズは119(W)×75(D)×43(H)mm,ケーブル抜きの公称重量は60g。実際に確認したところ,ケーブル込みの重量は約76g,ケーブルを重量計からどかした状態の参考値では約51gだった。参考値なので,実測重量が50g強だと言い張るわけではないが,恐ろしく軽いのは確かだ。
実測重量を計測したところ。ケーブルを重量計からどかした状態は,ケーブルのテンションの影響を受けるので,あくまでも参考値となるが,それでも十分に軽いことは確認できよう
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何をもってゲーマー向けとするかはともかく,面白いマウスだ
Mad Catzは,今後,異なるセンサーユニットを搭載するメインボタンモジュールや,カラーバリエーションを展開予定と予告しつつ,公開予定のモデリングデータをエンドユーザーが自らカスタマイズし,3Dプリンターで打ち出すことによって,パームレストモジュールの形状を大きく変更できることも,その大きな特徴に挙げている。要するにR.A.T. 1はカスタマイズのベースモデルというわけだが,ベース状態での握りやすさはどうか。試してみた結果をまとめたものが,下の写真とキャプションである。
なお,筆者はかつて「かぶせ持ち」派だったが,10年くらい前に「つかみ持ち」派へ転向したタイプで,「つまみ持ち」はほぼ無経験だ。その点はあらかじめお断りしておきたい。
つまみ持ちの例。軽いため,親指と薬指だけでかんたんにつまめる。小指がやや手持ちぶさた――という表現も変だが――になるものの,握っていて,それほど違和感はなかった。念のため,4Gamerきってのつまみ持ち派である御月亜希にも握らせてみたが,「これ,ボタンモジュールだけでもいけそうですね」と言っていたくらいなので,問題ないと思われる
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つかみ持ちの例。パームレストモジュールを後ろ寄りにして,親指と手のひらの付け根部分,薬指の3点で握るとしっくりくるのだが,しっくりきすぎて,小指の行き場がなくなってしまった。ある程度力を入れて3点支持しつつ,小指の存在も意識しなければならないため,疲れやすい印象である
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かぶせ持ちの例。つかみ持ちでダメだったので期待していなかったのだが,深めにかぶせ持ちすると,薬指も小指も,意外と違和感なく側面に配置できた
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つまみ持ちに関しては責任を負えないため,今回はつかみ持ちとかぶせ持ちのみ,「
World of Warships」の空母プレイで実戦投入してみたが,つかみ持ちだと,極めて軽量なR.A.T. 1を制御するのが難しくなり,「操作の精度を確保しようとして,無駄に疲れる」という状況に陥った。つかみ持ちのテストのはずなのに,途中でかぶせ持ちに握り直したくらいである。かぶせ持ちでは違和感なくプレイできた。
時間をかけて慣れれば,つかみ持ちでもそこまで力を入れずに持てるのかもしれないが,ただ,R.A.T. 1の場合,こういう「持ちにくい」という事態を迎えた場合は,積極的に3DプリンターでなんとかしろというのがMad Catzによるメッセージのはずなので,そこは,文句を言う前にエンドユーザー側で動くべきなのだろう。
というわけで,面白いマウスが出てきたなあというのが,ファーストインプレッション的な感想である。3Dプリンター云々が,ゲーマーのニーズとマッチしているかといえば,必ずしもそうは言えないと思うが,ひとまず30ドルというハードルの低さは,大いに評価していいのではなかろうか。
国内でも,うっかり買ってしまえる価格で出てくることを期待したい。