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    Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係
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    印刷2012/08/11 00:00

    インタビュー

    Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係

    EVO2012 Mad Catzブースの謎の着ぐるみ。Mad Catzのイメージキャラクター?
    画像集#011のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係
     Mad Catzといえば,HORIと双璧を成すアーケードスティックメーカーとして,またウメハラ選手,マゴ選手,ときど選手を擁するプロゲーマーチーム「Team Mad Catz」のスポンサーとして,日本の格闘ゲームプレイヤーにはお馴染みの周辺機器メーカーだろう。
     またEVO2012を始めとした多数のゲーム大会をスポンサードするなど,海外のトーナメントシーンをけん引する存在としても,昨今の対戦格闘ゲームシーンを語るうえでは外せない企業となっている。

     4Gamerでは,EVO2012会場にて,Mad Catzのアーケードスティック制作に関わりながら,Community & Sponsorship Managerを務めるMark Julio(マーク・フリオ)氏――格闘ゲームファンにとっては愛称である“マークマン”の方が馴染みはあるだろうか――にお話を伺った。
     Mad Catz自体がそうであるように,現在の格闘ゲームシーンを語る時には,外すことのできないキーパーソンの一人であるマークマン氏だが,その氏が今何を考え,どこへ向かおうとしているのかは,国内の格闘ゲーマーにとっても,興味深い話だろう。

     Mad Catzのアーケードスティックユーザーはもちろん,マークマンって,顔は見たことあるけど何やってる人なんだろう? という人も,ぜひチェックしてみてほしい。

    ■関連記事

    Mad Catz Community & Sponsorship ManagerのMark Julio氏(左)と,通訳を務めてくれた,Mad Catz日本法人 代表取締役社長の松浦武敏氏(右)
    画像集#001のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係

    Mad Catz公式サイト

    マークマン氏のTwitter



    すべてはガールフレンドのプレゼントから始まった


    4Gamer:
     本日はよろしくお願いします。今回のインタビューでは,マークマンさんがいったいどんな人なのか,というのをお聞きしたいと考えています。というのも,マークマンさんは日本の格闘ゲームファンの間でも有名ですが,その人柄までは知られていないと思うんです。

    Mark Julio氏(以下,マークマン氏):
     ああ,そうかもしれません。

    4Gamer:
     恐らくですが「格闘ゲームイベントにときどき現れる,ちょっと怖い外人さん」くらいに思っている人が多いのではないかと。なので,その辺りを明らかにしたいのです。

    マークマン氏:
     なるほど。分かりました(笑)。

    4Gamer:
     ありがとうございます。ではまずマークマンさんの個人的なお話から伺わせてください。今は米Mad Catzでアーケードスティックの制作に深く関わっているマークマンさんですが,同時にアーケードスティックのコレクターであるとも聞いています。これはMad Catzに入る前からですか?

    画像集#002のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係
    マークマン氏:
     そうです。まずきっかけからお話すると,2000年頃に,当時付き合っていたガールフレンドからプレゼントされたアーケードスティックが最初なんですよ。その見た目の美しさに惹かれて,以来さまざまなデバイスを集めるようになりました。

    4Gamer:
     ガールフレンドから! ということは,当時から対戦格闘ゲームは遊ばれていたわけですね。

    マークマン氏:
     そう,あの頃は「鉄拳」ばかりプレイしていました。

    4Gamer:
     アーケードスティックのどういうところに魅力を感じたんでしょうか。

    マークマン氏:
     機能とデザインが両立されているところです。アーケードスティックにはさまざまな機能やデザインがあって,プレイするゲームによって使いやすさが変わるじゃないですか。だから,スティックの数だけ遊び方があって,ワクワクできる。それこそがアーケードスティックの魅力です。

    4Gamer:
     なるほど。鉄拳は自分もかなりプレイしてまして……。

    マークマン氏:
     もちろん知ってますよ! あの頃は,まだYouTubeのような動画共有サービスがなかったから,ハメコさんの動画をダウンロードして,皆でよく見てました。スゴイスゴイっていいながらね(笑)。

    4Gamer:
     おおっと。それは……とても光栄です(笑)。鉄拳シリーズを始めたのはコンシューマ版からですか?

    マークマン氏:
     アーケード版から。でもアメリカのゲームセンターは,日本人のイメージするものとは,かなり違うんじゃないかな。

    4Gamer:
     というと?

    マークマン氏:
     日本のゲームセンターって,規模が大きくて筐体の並びも整然としているじゃないですか。レバーやボタンのメンテナンスもしっかりしているし,それが当然ですよね? でもアメリカのゲームセンターは規模が小さいし,何よりレバーやボタンの状態が良くないことが多い。当時は日本製パーツも流通していなかったしね。

    4Gamer:
     そういえば,アメリカのゲームセンターはいわゆる「ナスレバー」が標準ですよね。マークマンさんは日本製のレバーとどちらがお好みなんですか?

    ※ナスレバー……海外のディファクトスタンダードであるレバーの一種。握りの部分がなすび型の形状をしていることからこう呼ばれる。Happcontrolsの「Ultimate Joystick」などが有名。

    マークマン氏:
     どっちも同じくらい好きですね。最初にガールフレンドからプレゼントされたのは,日本製のレバー(Hori Tekken 3 Real Arcade Stick)でした(笑)。でも今でこそアメリカでも日本製のパーツが手に入れやすくなったけど,あの当時はそう簡単に手に入るものじゃなかったんですよ。

    4Gamer:
     日本製パーツの魅力は,どういうところでしょうか。

    マークマン氏:
     日本製パーツは,品質や機能面,精度や使いやすさ,寿命なんかが高水準でまとまっているのが素晴らしいと思います。アメリカに普及する前は,個人輸入で入手して,個人的に自分のアーケードスティックに組み込んだりしていました。当時アーケードスティック好きの友人達とも良く情報交換していたんだけど,日本製パーツの評判は,とても良かった。そういった下地があったからこそ,Mad Catzのアーケードスティックに三和電子製のパーツを採用することになって,それでアメリカでも広く出回るようになったんです。

    画像集#003のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係

    4Gamer:
     ようやくMad Catzの話にたどり着きました(笑)。そもそもMad Catzがアーケードスティックを手がけるようになったのは,どういうきっかけだったんでしょうか。

    マークマン氏:
     CAPCOMが「ストリートファイターIV」を開発し始めた頃,特別仕様のコントローラを開発する契約をしたので,そこからですね。

    4Gamer:
     それがフラッグシップとなった「ARCADE FIGHTSTICK Tournament Edition」(以下,TE)ですね。Mad Catzとしては,これが初めてのアーケードスティック製品だったのでしょうか。

    マークマン氏:
     いや,1990年代初頭にPlayStation用アーケードスティックを発売したことがあります。といってもそれはごく普通のスティックで,特別な仕様は何もなかったんだけど。

    4Gamer:
     マークマンさんが製品開発に関わるようになったのも,TEから?

    マークマン氏:
     そうですね。当時私は別の部署にいたんだけど,その頃の製品開発グループには「特定のゲーム専用のコントローラ」を開発するノウハウを持った人間がいなかった。そこで,私が対戦格闘ゲームが好きということを知っていた製品開発のボスから,声がかかったんですよ。最初は単にアドバイスを求められてレポートを提出したんだけど,それが評価されて製品開発に直接関わるようになったという。

    4Gamer:
     おお,それは願ったり叶ったりですね。

    マークマン氏:
     うん(笑)。趣味と仕事が一致して,毎日楽しくてしょうがなかったですね。しかも発売後は自分がこだわった部分への反響が思ったより大きくて,「自分のやってきたことは間違っていなかった」って,以前よりもさらに仕事に打ち込むようになりましたね。

    4Gamer:
     TEはスタートボタンが本体の背面に付いていることや,コードが収納できる点など,アーケードスティック製品としてとても革新的だったと思います。これらのアイデアが,マークマンさんが考えて,こだわった部分ということで良いのでしょうか。

    マークマン氏:
     ああ,そのとおりです。私は日頃から対戦格闘ゲームをプレイしていたし,Evolutionにも参加していたから,対戦中に間違えてスタートボタンを押してしまう不安や,ケーブルをスティックに巻いて持ち運ぶと断線の危険があるといった問題を,身を持って知っていた。だからそういった不満を解消すべく,開発したのがTEだったんですよ。

    4Gamer:
     日本国内において,とくにガチなプレイヤーにとっては,アーケードスティックは自宅での練習用という意味合いが強いと思います。一方で,TEに盛り込まれたアイデアは,アメリカのトーナメントコミュニティを下敷きにせずには生まれなかったように感じます。

    EVO会場では,誰もがアーケードスティックを持ち歩く。ゆえに可搬性は,製品に求められる重要なファクターとなる。会場では,アーケードスティックどころかゲーム機やモニタまで持ち込んで,野試合があちこちで行われていた
    画像集#006のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係

    マークマン氏:
     そうかもしれません。でもデザインには日本のマンガやアニメの影響をかなり受けているし,そもそも日本で対戦格闘ゲームが生まれたからこそ,私もアーケードスティックに興味を持ち始めたのだから,やっぱり日本のおかげですよ(笑)。

    4Gamer:
     そう言っていただけると,日本人としては嬉しいですね。ではマークマンさんが日本通だということで,ちょっと趣向を変えた質問なんですが……聞くところによると,マークマンさんは大の日本食――それもB級グルメがお好きだとか。

    マークマン氏:
     そう! とくに日本のカレーが大好物なんですよ。

    4Gamer:
     それはえーと……「ココイチ」とか?

    マークマン氏:
     Yes! あそこのカレーは素晴らしい。アメリカにも日本のチェーン店がいくつか出店されているけど,日本で食べた方が,ずっと美味しいよね(笑)。

    4Gamer:
     そ,そうなんですね。ちなみにカレー以外だと何かありますか?

    マークマン氏:
     デニーズ! 実は昨年の東京ゲームショーで幕張メッセに行ったんだけど,仕事が夜遅くまでかかってしまって。日本法人の人にデニーズに連れていってもらったんです。その人は「もうこんなところしか開いてないんです」って,すまなそうに言ってたんだけど……。

    4Gamer:
     ええ。

    マークマン氏:
     あそこのカレーも最高だった! あんなに美味しいカレーが食べられるなら,夜遅くまで頑張った甲斐があったってもんです。

    4Gamer:
     カレー好きでファミレス好き,と(笑)。言われてみれば,格闘ゲーマーにとってのファミレスって,すごく重要な場所なんですよ。日本ではゲームセンターが閉店したあとに,皆でファミレスに行くことが多くて。そこでああだこうだと話し合って,攻略が進んだりとか。もちろんゲーム以外の話もしますけど。

    マークマン氏:
     アメリカも似たようなものだね(笑)。ただ,最近はコンシューマがメインだから,友達の家に皆で集まって遊んだあと,車でどこかにご飯を食べに行くという流れになっているかな。そこで知り合って,食事をともにした仲間達が,今では方々でゲームのために仕事をしているのだから,不思議なものです。

    4Gamer:
     私も一緒です。ゲームセンターとファミレスを通じたつながりが,今の自分の大部分を作っている。例えばEVO創始者のJoey氏(関連記事)とも,2000年頃に新宿のゲームセンターで出会ってますし,閉店後のファミレスで語り合った仲間が,今ではメーカーで格闘ゲームを作っています。その当時は,考えもしなかったけど,それって素晴らしいことですよね。

    マークマン氏:
     うん。ゲームセンターにもファミレスにも,感謝しないとね(笑)。

    画像集#004のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係


    コミュニティから生まれ,共に歩み続けるMad Catz


    4Gamer:
     ではアーケードスティックに話を戻して。先ほどもかなりの数のアーケードスティックをお持ちだという話をお聞きしましたが,実際のところ,コレクションは今どれぐらいの数になっているんでしょうか。

    マークマン氏:
     うーん,最近は数えていないけど,少し前に数えたときは340本以上あったかな。

    4Gamer:
     340本! 日本の住宅だったら,それだけで家が埋まりますよ(笑)。いったいどうやって買い集めているんですか?

    マークマン氏:
     通販で手に入れたり,日本に出張したときに買ったりすることが多いね。型式の新旧に関わらず,とにかくいろんなスティックを集めているんです。もちろん他社製品の研究という意味合いもあるけれど,やっぱりコレクション――趣味として集めてる感じですね。

    4Gamer:
     では,その中でもズバリお気に入りの一本というと?

    マークマン氏:
     えーと,それはすべてのアーケードスティックの中で,ということ? それともMad Catz製品での話かな(笑)。

    4Gamer:
     ではまず,Mad Catz製品の中から選んでみてください。

    マークマン氏:
     Mad Catz製品の中では,春麗のスティックがお気に入りですね。

    4Gamer:
     ああ,あれイイですよね。日本で発売されなかったのが残念です。

    EVO2012のMad Catzブースに展示されていた 「Street Fighter 4 FightStick for Xbox 360 - Chun Li Limited Edition」。ボタンを発光タイプに変更したカスタムVer.だ
    画像集#005のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係

    マークマン氏:
     当時は日本法人がまだなかったし,販売ルートもなかったから,日本で販売するのは難しかったんです。日本の皆が欲しがっていることは良く耳にしているから,今後は日本でもこういったリミテッドアイテムを販売したいと考えています。もちろん,これは私の独断でできることじゃないから,いろいろなところと話をしないとダメですけど。

    4Gamer:
     楽しみにしています。ではすべてのアーケードスティック製品からならどうでしょうか。

    マークマン氏:
     それなら「鉄拳2」のときに出た「ナムコジョイスティック」かな。これだけで12台持ってるよ(笑)。

    4Gamer:
     12台も! ちなみにどの辺りがポイントなんでしょうか。

    マークマン氏:
     「鉄拳3」「鉄拳タッグトーナメント」の頃,アメリカではまだアーケードスティック製品のバリエーションが乏しかったんだけど,このアーケードスティックは,アメリカでも簡単に入手できたんです。だから自然と愛用品になって,どんどん愛着が湧いていった。もちろん使いやすさで言えば,それ以降に発売されたものの方が優れているんだけど,一番初めに好きになったスティックだから,思い出がたくさん詰まっているんですね。

    4Gamer:
     ああ,自分も一つの製品を長く使うたちなので,その気持ちはすごく分かります。後から発売されたものの方が優れているという話が出ましたので,これは聞いておかなければと思うのですが……先日HORIから発売された「ファイティングエッジ」をどう思いますか?

    画像集#008のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係
    マークマン氏:
     ファイティングエッジはもちろん買ったよ!

    4Gamer:
     ええ,マークマンさんが(4Gamerのファイティングエッジの記事を)リツイートしてくれていたので,そうだろうと思ってました(笑)。それでHORIのスタッフA氏はすごく喜んでいましたし,@MadCatzJPの中の人は,すごく悲しんでいましたよ!

    (一同笑)

    マークマン氏:
     僕はMad Catzの社員だけど,それ以前にアーケードスティック業界のいちファンだからね。だから業界全体が盛り上がってくれれば,それでいいんだ(笑)。
     本題のファイティングエッジについてだけど,とてもいい製品ですね。個人的には改善してほしいポイントがいくつかはあるけど,新しいアイデアはすごくいいと思う。ただサイズや重量からすると,Mad Catzの製品とは方向性が違うかな。

    4Gamer:
     では「Hit Box」はどうでしょうか。

    マークマン氏:
     非常に革新的なコントローラで,個人的にはすごく好きだよ。でも実用性を考えると,賛否両論はあるでしょうね。

    4Gamer:
     なるほど。実はファイティングエッジとHit Boxについて伺ったのは,これらが「アーケード環境の再現」とは違う方向を向いているという点で,共通した製品だからです。これはMad Catzの製品に限らずですが,これまでのアーケードスティックは,アーケードと同じパーツを使って,自宅の中にアーケードと同等の環境を再現することを目指して来ました。でもファイティングエッジとHit Boxは,アーケードスティックをその“くびき”から解き放とうとしている。個人的には,それが最大の革新だとおもうのですが,マークマンさんはその辺りをどう考えですか。

    画像集#013のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係
    アーケードの再現ではなく,最高のコンシューマ環境を目指したHORI「ファイティングエッジ」。アーケードの定番パーツではなく,独自開発のレバーとボタンを採用している
    画像集#012のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係
    世界初のレバーレスアーケードコントローラ「Hit Box」。レバーのない特徴的な外観は,その特異なコンセプトを如実に表している

    マークマン氏:
     なるほど,言いたいことは分かります。ただMad Catzは,常にコミュニティからの要望を取り入れることで,成功を収めてきた背景があります。なので今後もこの姿勢を崩すことはないでしょう。もしコミュニティがそういった製品を望むのなら,Mad Catzはそれに応える製品を作るはずです。それがMad Catzの使命ですから。

    4Gamer:
     あくまでユーザーからの視点にこだわり続けると。しかしそれは,アーケードスティックの可能性を狭めることにならないでしょうか。

    マークマン氏:
     いや,そうは思わないな。ファイティングエッジやHit Boxも含むアーケードスティック業界全体の中で,より「求められているもの」を作ることこそが,私達の仕事ですから。もちろん「新しい機能のスティックを開発してほしい」という声は常にあるし,真剣に検討していますよ。ただ,今はまだそのときではない,ということです。

    4Gamer:
     分かりました。真摯なご回答ありがとうございます。では最後に,日本でMad Catz製品を愛用しているプレイヤー達に,メッセージをいただければと。

    マークマン氏:
     僕がアーケードスティックに関わってから4年が経つけど,その間にMad Catzの製品は,アメリカで大きく成功して,愛されるようになりました。大好きな日本の文化に触発されて開発した製品が,こうして受け入れられていることは,すごく嬉しく思います。
     次は日本のユーザーの声を聴きながら,製品をもっともっと良いものにして,日本でも愛されるアーケードスティックを作り上げたい。それが,私が愛してやまない日本への恩返しですから。というわけで今後も,Mad Catzをよろしくお願いします!

    4Gamer:
     はい,本日はお忙しいところ,ありがとうございました!

    大盛況だったMad Catzブース
    画像集#007のサムネイル/Mad Catzが何を考え,アーケードスティックを作り続けるのか。米格闘ゲームシーンのキーマン,マークマン氏に聞く,コミュニティとメーカーの理想的な関係



     Mad Catzの製品開発に深く関わりながら,他社製品のファンでもあり続けるマークマン氏。他社製品についての,本来なら答えにくい質問に対しても,「あくまでもアーケードスティックのいちファン」という立場を崩さずに,快く返してくれたのが印象的だった。
     インタビューを通し,歯切れ良く紡がれる返答からは,Mad Catzとマークマン氏,そしてアメリカの対戦格闘ゲームコミュニティが,どれほど理想的な関係を築いているかもうかがい知れるだろう。

     またアーケードスティックについていえば,日本と海外で製品に求められる要素が違うということに,筆者は改めて気付かされた。それは端的に言えば,可搬性の重要度ということになるのだが,実際に会場で運用される様子を目にすると,実感と共に感じられる。プレイシーンが変われば,求められる要素が変わるのは当たり前ではあるが,これなら海外でMad Catz製品がこれだけ支持されるのも,納得の結果だろう。

     コミュニティと共に歩み,シーンと製品を同時に作り上げることを続けてきたMad Catz。それは格闘ゲーマーにとって理想的な環境のように思えて,筆者の目にはうらやましく映る。そのノウハウを使って日本市場の開拓に乗り出そうというのだから,期待せざるを得ない。今後も格闘ゲームシーンをけん引するMad Catzの製品から,目が離せない。

    瞬く間に完売となったEVO 2012限定スティック
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    • 関連タイトル:

      Mad Catz

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