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いい仲間が集まれば,いいゲームが作れると信じている――新たに始動したゲームデベロッパ,ブラウニーズの亀岡慎一氏に,その信念や今後の展望を聞いた
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印刷2013/03/26 00:00

インタビュー

いい仲間が集まれば,いいゲームが作れると信じている――新たに始動したゲームデベロッパ,ブラウニーズの亀岡慎一氏に,その信念や今後の展望を聞いた

もっと冒険してもいいのに!


4Gamer:
 しかし,仮にスマートフォンでゲームを作るにしても,ソーシャルゲーム的なもの以外となると,ブラウニーズが作るゲームはどういった方向性になっていくんでしょうか。

画像集#008のサムネイル/いい仲間が集まれば,いいゲームが作れると信じている――新たに始動したゲームデベロッパ,ブラウニーズの亀岡慎一氏に,その信念や今後の展望を聞いた
亀岡氏:
 まずはシステム的に楽しんでもらえるゲームですね。お金を使わないと楽しめないのではなく,「ゲームとして面白いから,もっと遊びたい」という人達がお金を出してくださるような方向を目指したいです。そういう意味では,ガンホーさんの「パズル&ドラゴンズ」の成功はありがたいですね。

4Gamer:
 「スマートフォンのゲームといえばカードバトル」みたいな風潮を一変させたのは確かですよね。ガンホーの例を見て,スマートフォン向けゲームの開発に対する意識が変わったクリエイターは多いんじゃないでしょうか。

亀岡氏:
 僕もその一人です。

4Gamer:
 ただ,コンシューマ出身のゲーム開発者がスマートフォンの分野になかなかうまく適応できていないと思うこともありますよね。

亀岡氏:
 そんなに簡単ではないぞ,というのは理解しているつもりです。コンシューマ畑にいた人が作ったスマートフォン向けゲームを見て,「何でこうしちゃったのかな」と思うことも多いですし,仮に僕らがスマートフォン向けのゲームを作るとしたら,もっと短時間で遊べて,すぐ結果が出るという内容にしなければならないとは考えています。コンシューマゲームを作ってきた人達は,どうしてもボリュームを増やして,豪華にしてしまいがちなんですよね。そういった先達の例を踏まえつつ,僕もきちんとチャレンジしたいとは考えています。

4Gamer:
 コンテンツを提供するプラットフォームとして,亀岡さんはスマートフォンをどう見ているんでしょう。

亀岡氏:
 いつでもどこでも遊べるというモバイルの手軽さは,大事だと思います。また最近では,据え置き機でゲームをプレイするとなると,テレビや,環境によってはAV機器の電源も入れなければならなかったりと,いろいろ準備が必要ですから。より手軽な機器が溢れている現在,以前より心構えが要りますよね。

4Gamer:
 いざ「やるぞ!」と思ったら,ゲーム機のシステムやゲーム本体のアップデートが始まって「今日はもういいや」となったり(笑)。そういう意味では,電源を落とさずにスリープ状態にして,いつでも再開できる仕組みが採用された携帯機は有利ですよね。

亀岡氏:
 今後のゲームにとって,そうした手軽さはより重要になるでしょうね。

4Gamer:
 しかし,お話からは現状のゲーム制作に対する不満というか,問題意識みたいなものを感じるのですが,やっぱり,そういう部分が独立する動機になっているんですか?

亀岡氏:
 こんな事を言うと「またオッサンが……」と老害扱いされてしまいうかもしれませんが,今の若い人達は“モノを作りたい”という意識が少ないんじゃないかと思えることがあって,個人的には少し残念に感じています。

4Gamer:
 どういう意味でしょう?

亀岡氏:
 なんというか,若いのに保守的なんですよね。「もっと冒険してもいいのに!」って僕なんかは思うんです。今の若い世代には,前例がないものを受け付けない雰囲気がちょっとあるような……。

4Gamer:
 ああ……。

亀岡氏:
 もう結構昔の話になりますが,以前僕が会議で新しいシステムを提案したら,「それは何のゲームで使われたんですか?」と質問されたことがあって。その場では「いや,違うでしょ。僕達は新しいモノを作ろうとしてるんでしょ」と答えていたんですが,個人的には結構ショックだったんですよね。

4Gamer:
 見たことのないもの,体験したことのないものだと,なかなか想像できないものなんですね。

画像集#011のサムネイル/いい仲間が集まれば,いいゲームが作れると信じている――新たに始動したゲームデベロッパ,ブラウニーズの亀岡慎一氏に,その信念や今後の展望を聞いた
亀岡氏:
 今の若い人達にとって,ゲームって生まれたときから「すでにある」存在なんですよね。そういった世代の人は,ゲームで使われていない何かを,ゲームに取り入れようとする感覚が薄いのかもしれないとは思います。今までのゲームで使われた素材だけを使って,再構築するみたいな考えになってしまうことが多くて。

4Gamer:
 実は,受け手側も「新しいゲームが欲しい」と口では言いつつ,実際にはかなり保守的な消費行動をとったりしがちですよね。斬新過ぎたりあまりに奇抜だったりすると,それだけで拒絶してしまうんですよね。ゲームの内容が保守的になってしまうのは,作り手だけの問題ではないとも感じます。

亀岡氏:
 そこのバランスは難しいですよね。たとえば「ファンタジーライフ」にも,飛び抜けて斬新な要素はあえて入れていませんから。というのも,その背景には「RPGとは,こういうシステムで,こういうバトルがあって」という部分を打ち出さないと,プレイヤーさんに受け入れてもらえないという意識があったんですね。

4Gamer:
 よくも悪くも,「ゲームってこういうもん」っていう固定観念があるのは確かですよね。

亀岡氏:
 そう。「これがゲームでしょ?」って(苦笑)。

4Gamer:
 そういった話は,大手ゲームメーカーにそこの看板シリーズを作りたいと言って入社を志望する若者が多くなった,みたいな話と被りますね。もうずっと昔からある問題意識ですけれど。

亀岡氏:
 それはそれで否定はしないんですけどね。ただやっぱり,若いならもっと冒険すればいいのにとは思っちゃう。実は新会社に付いてきてくれたスタッフも,ブラウニーブラウンの中でも上の役職だったスタッフが多くて……。

4Gamer:
 昔と比べてプロジェクトが大規模化して失敗できないだとか,環境的な理由で冒険できないって背景もありますし。

亀岡氏:
 そうなんですよねぇ……。でも,僕のように40を過ぎた人間でも「失敗してもいいや」と思っているんだから,若い人ならなおのこと,もっと新しいことに果敢にチャレンジしてほしいんですよ。まぁこんなことばっかり言っていると,ありがちな「近ごろの若いもんは」って話になっちゃうんですけど(苦笑)。

4Gamer:
 そうですね(笑)。

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会社が大儲けしたら劇団を作りたい


4Gamer:
 そういえば,これは一度お聞きしてみたかったことなんですが,亀岡さんが作るゲームには,独特の雰囲気というか,なにか“フワッとした優しい感じ”がありますよね。あれは意識して入れているものなんですか?

亀岡氏:
 ああ,そこはかなり意識していますよ。たとえば,僕らがずっと2Dグラフィックスにこだわっていたのも,それが理由ですしね。ニンテンドーDSくらいのスペックで3Dグラフィックスを使うと,何か冷たい感じになってしまうんですよね。3DSくらいの表現力があると大丈夫なんですけれど。

4Gamer:
 ちなみに亀岡さんの作風に影響を与えた作家や作品というと,どんなものがありますか?

亀岡氏:
 漫画家を目指していた頃は,松本零士さんや永井 豪さんには大きな影響を受けましたね。僕は,ストーリーよりも,まず絵に惹かれるタイプなんですが,とくに松本零士さんの緻密な絵には,本当にワクワクさせられました。あとは映画を観たりするとすぐに影響を受けて,自分でも絵を描いたり。

4Gamer:
 なるほど。絵でワクワクして,ストーリーでさらにワクワクするような作家から影響を受けた,ということですね。なんとなく亀岡さんが関わってきた作品に通じるものがあるように思います。

亀岡氏:
 ただ……最近は,歳のせいか,何かに触れて感動したり,ワクワクドキドキすることが少なくなりました。自分でもまずいとは思っているのですが(笑)。

4Gamer:
 どうしたって,過去に触れてきた作品と比べたりしてしまいますしね……。
 ふと気になったんですが,仮にゲームが大ヒットしたら,亀岡さんって何がしたい人なんです?

亀岡氏:
 会社が大儲けしたら……僕は,劇団を作りたいですね(笑)。

4Gamer:
 劇団って,芝居とかをやる?

亀岡氏:
 そう!

4Gamer:
 えーと……それはなぜですか?

画像集#017のサムネイル/いい仲間が集まれば,いいゲームが作れると信じている――新たに始動したゲームデベロッパ,ブラウニーズの亀岡慎一氏に,その信念や今後の展望を聞いた
亀岡氏:
 なんででしょうねぇ(苦笑)。僕はもともと漫画家で,「お話」や「世界」を描いていたせいかもしれません。昔は,芝居や舞台にはあまり興味がなかったんですが,ちょうどブラウニー・ブラウンを立ち上げた頃に芝居に出会って,感動しちゃったんですよね。僕は,一回興味を持つと一直線な人間で,こういうものを作っているのはいったいどんな人達なんだろう?と,気になって仕方が無くなってしまったんですね。で,自分から役者さん達にアプローチしていって,いろいろなお話を聞いてみたんですが,やっぱり凄いんです。そのモチベーションというか,情熱が。

4Gamer:
 現役の役者さんのお話を聞くと,いろいろ大変らしいですよね。

亀岡氏:
 ええ。普段はバイトをしてお金を貯めて,芝居が始まる時期になると,それまでの貯金をばーっと使って稽古に専念して。大変な思いをして公演に漕ぎ着けるわけだけど,それで儲かるわけでもなく……。僕自身,もしゲーム制作で同じことになったらできるだろうかって,考えさせられちゃいますよね。

4Gamer:
 ただ,エンターテイメント系の産業って,生活必需品を作っているわけじゃないので,どうしてもそういう流れになりがちですよね。映画にしても,あるいはアニメとかにしても。

亀岡氏:
 でも僕は,もうずっと前から,ゆくゆくはゲーム業界も,こういう芝居の世界やアニメ業界のような流れになっていくんじゃないかなって危機感を持っていたんです。もちろん大きく成功するところは,劇団四季やスタジオジブリみたいにドカーンと尖るんでしょうけど,それ以外は細々とやっていく感じというか。あまり儲からないかもしれないけど,「ゲームが作りたいから」とやりたい人だけが残っていくようなイメージでした。

4Gamer:
 ゲーム業界も,すでに大作とインディーズの2極化の流れは出てきていますしね。
 では,亀岡さんから見て,最近たびたび話題になる「インディーズゲーム」の分野はどう映っているんですか?

亀岡氏:
 いいですよね。非常に楽しそうだなと思います。まあ,僕の勝手なイメージなので,実際は辛いのかもしれませんけれど(笑)。

4Gamer:
 ブラウニーズから小規模なゲームを直接ダウンロード配信していくようなことは考えていないんですか?

亀岡氏:
 今のところは,あまり考えていません。今は,ブラウニーズで企画を作って,パブリッシャに持ち込んだり,先方から依頼を受けたりというスタイルを取っていますから。

亀岡氏が描いた,ブラウニーズのイメージイラスト
画像集#004のサムネイル/いい仲間が集まれば,いいゲームが作れると信じている――新たに始動したゲームデベロッパ,ブラウニーズの亀岡慎一氏に,その信念や今後の展望を聞いた

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