連載
【ミートたけし】人から妬まれやすい職業
ミートたけし / 川村 竜 / ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー
ミートたけしの「世界の平和が俺を守る!」ミートたけしYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@meatalk |
第6回:人から妬まれやすい職業
人から妬まれやすい職業って何だろう? そんな疑問がふと,頭をよぎった。
皆さんはどんな職業が妬まれやすいと思いますか?
政治家? YouTuber? スポーツ選手? ホスト?
とくに日本では嫌儲思想を目の当たりにする事が多い気がするが,ただただ単純に収入の大小が妬みに直結するかというと,実はそうではないんじゃないかと思っている。
では何が妬まれやすいのか,ということを考えると,「好きなこと」で「稼いでいる」という合わせ技一本が,(一体何人いるのか分からないが,確実に一定数はいる)心のさもしい人々に妬まれるのではないだろうか。
ちょっと前まではミュージシャンもそんな妬まれる,言い換えれば憧れられる職業だった時代もあったのかもしれないが,最近ではミュージシャンが皆,順風満帆に稼げているわけではない。ということが一般の方にも広く知れ渡ることで,むしろミュージシャンに向けられる視線は蔑みに近い場合も少なくない。
かくいう私の母親も近所のご婦人達から,「川村さんちの息子さん,ミュージシャンなんですってねぇ」と言われ,その末尾には口にこそしないものの「お気の毒に……」というセリフが聞こえてきたものだ,と話してくれたことがある。
「ミュージックステーション」や「題名のない音楽会」などに出演させていただけるようになるまでは,自分の母親がこのような悔しい思いを抱き続けていたのかと考えると,胸が痛むような気もしなくもなくもない。
そのほかにもミュージシャンのデメリットは意外と多く,例えば,どれほど稼いでいようと住宅ローンなどはなかなか審査が通らない。共働きで大企業勤めの配偶者などがいる場合を除いて,独り身のミュージシャンは担保になるようなものは何一つ持ち合わせていない,という評価がされているわけだ。
また,収入も確実なものは何一つなく,今年稼げたとしても来年は何一つ仕事がない,なんてことも往々にしてあり得る。しかも,そんなことにはお構いなしに納税の義務が襲いかかってくる。
この記事を書いているのは,納税というものに対して幾ばくかの怒りを通り越した虚しさのようなものに心が包み込まれてしまう時期なので,このぐらいの愚痴は許してほしい。
文字数を出来るだけ稼ごうとして何を書こうとしていたのか思い出せない。
……そうだ,人から妬まれやすい職業の話だった。
そんな一昔前なら妬まれやすいランキングの上位に入ったかもしれない「ミュージシャン」という仕事の代わりにランクインしてくるのが,「プロゲーマー」なのではないか,と私は思っている。
ちょっと話が逸れるように思われるかもしれないが,ちゃんと戻ってくるので付き合ってほしい話がある。
ミートたけし,を検索するとサジェストに「年収」とか「ベース」とか付いてくるのだが,ちょっと前までは「炎上」というものもあった。配信中に対戦相手に対して暴言を吐いた,という内容だ。これに関しては思うところもあるが,今回のテーマとは関係ないので触れずに置いておこう。興味深いのは叩かれ方のほうだった。なんと「プロゲーマー」として叩かれたのだ。
「これだからプロゲーマーはダメなんだ」
「社会に出てないプロゲーマーらしい」
「ゲームばかりで働いたこともないとこうなる」
などなど。一体彼らは誰のことを叩いていたのだろうか?
プロゲーマーを目指して頑張っている若者達に向けて,最短でプロゲーマーになれる方法を聞かれたら,私は「炎上」をここに記しておく。「炎上」さえすれば,勝手にプロゲーマーだと思ってくれる人達が一定数いるのだ!
……冗談はさておき,このように私が何者かなどは関係なく「プロゲーマー」という職業に対し,ある種の恨みのような感情を抱いている人間が存在することを知る出来事だった。
プロミュージシャンとプロゲーマーを比較してみたときに,おそらく楽器を手にする機会よりもゲームのコントローラーを手にする機会のほうが,一般的には遥かに多いはず。つまり娯楽や趣味として,音楽よりもゲームのほうが確実に市民権を得ていることには異論を挟む余地はないだろう。
裏を返すと「大人になる」「社会に出る」という過程において,多くの人が「ゲームからの卒業」を余儀なくされているはずだ。ところがその「ゲームからの卒業」をせずに,それどころかゲームを仕事として生きていくことを許された,いわばネバーランドの住人がプロゲーマーなのである。
そう,人は誰だって大人になんかなりたくない。
ずっとネバーランドに居続けたいのだ。
これこそが人々がプロゲーマーに抱く妬みの正体だったのだ!
と,まぁここまでやたら主語をデカくしてみたけど,そう思う人達もまぁいるよね,くらいの感じで見ている。別にみんながみんなそうだってわけじゃないのは分かっておりますので,苦情は受け付けません。そこんとこヨロシク。
しかしながら好きなことを仕事にしなければならない苦悩というのも確実に存在していて,それはミュージシャンという職業からも援護射撃はしてあげたい。
そんな自分がどのように音楽と向き合っているかというと,「たかが音楽」ということを誰よりも自分に言い聞かせて生きている。まぁその後に「されど音楽」と続くわけだが今は置いておこう。
かのウメハラ氏も「たかがゲーム」という思いを持っているはず。人のことなので彼が誤解されないようにもう少し書くならば,「本来,たかがゲーム,と思われるもので生かさせてもらっているということをしっかりと正面から受け止めている」という意味だ。彼の誹謗中傷を意にも介さない精神構造のヒントは,おそらくここら辺にあるんだろうな,と私は思っている。
”妬まれやすい職業”などというふざけた導入から一転,プロミュージシャンとして,プロゲーマーとして生きていくうえでの秘訣とも言える部分にフォーカスしてしまうのは,やはり私の文才の恐ろしいところでもあると言えよう。
たかがゲーム。アマチュアの場合。
ではプロではない人達にとってゲームはどんな存在なのか? 面白いことにここでもまた「たかがゲーム」なのである。最近,「ストリートファイター6」(PC / PlayStation 5 / Xbox Series X|S / PlayStation 4。以下,スト6)が大ヒットを記録し,今まで格ゲーを触ったことのない人達も多くプレイしてくれている。
これは非常に喜ばしいことなのだが,同じくらいSNSなどで散見されるのが挫折勢,引退勢のお気持ち表明だ。
挫折勢とは? 引退勢とは?
ゲームも音楽と同じで向き不向きがある。早くうまくなる人もいれば,当然なかなかうまくならない人もいる。そんな後者の方達がの抱えるフラストレーションが限界を迎え,SNSなどで「スト6引退します……」などと,お気持ちを表明することがある。
当然,これはただの構ってちゃんである。誰がなんと言おうと,ただの構ってちゃんである。どれだけ私が叩かれようが4Gamerに苦情が送られようが,構ってちゃんである。
リプ欄にも非常に手厳しいコメントが大量発生する。「黙ってやめろや」「いちいち言うことじゃない」「引き止めてほしいのが見え見え」などなど,人の心を持たざるもの達で溢れかえる。
そんな彼らにも,くだんの構ってちゃんにも,この言葉を送りたい。
たかがゲームじゃん。
イヤになったらやめればいい。
たかがゲームなんだから。
やりたくなったらやればいい。
たかがゲームなんだから。
そして構ってちゃんを叩いているお前ら。
構ってあげなさいよ。
引き止めてあげなさいよ。
そのくらいの余裕持ちなさいよ。
たかがゲームなんだから。
プロじゃないんだから。
アマチュアなんだから。
たかがゲームなんだから。
人生を楽しく過ごすためにゲームは存在しているという,当たり前のことを少し忘れちゃっていませんか? 音楽だって同じ。好きなときに好きでいて,嫌いなときには嫌いでいればいい。人生において自分に都合良く音楽を,ゲームを振り回すことができるのが,アマチュアの特権なのだ。我々プロからしたら羨ましすぎてもう光り輝いてすら見える。
だからお願い。妬まないで。怒らないで。憎まないで。
我々をもう少しだけネバーランドの住人で居させておくれ……。
だけど俺みたいに,人からの妬み恨み嫉み憎しみを原動力に変えられちゃうタイプの人間もいるから,まぁ極論,好きにしてください。
つまり,プラスの感情もマイナスの感情もぜーんぶ栄養にしてしまう俺は,全対応の幸せ者ってわけ。
つまり,世界の平和が俺を守る,ってわけ。
今日も楽しくコラムを書くことができました。
ありがとう! また来月お会いしましょう!
■■ミートたけし / 川村 竜(ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー)■■ ベーシストとして国内外各所でライブやコンサートで演奏活動をしつつ,配信活動も活発に行っているミートたけしこと川村 竜さん。現在は主にYouTubeチャンネル「ミートたけし-MEAT TAKESHI-」とTwitchチャンネル「ミートたけしの『太くてニューゲーム』」で,雑談配信をしたりゲーム配信をしたりと大忙しの様子です。 |
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