連載
【ミートたけし】人生における“楽しい”の見つけ方
ミートたけし / 川村 竜 / ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー
ミートたけしの「世界の平和が俺を守る!」ミートたけしYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@meatalk |
第4回:人生における“楽しい”の見つけ方
皆様,新年あけましておめでとうございます。
このコラムが掲載される頃には新春ムードも落ち着いているとは思いますが,私は近所のコーヒー屋さんが営業を開始した新年5日目にこの原稿の筆を進め始めているので,今この瞬間の気分はバリバリ新春です。あけおめ! ことよろ!
年が明けたあとは明治神宮に行ってすさまじい参拝の列を見守り,一の鳥居の辺りで二礼二拍手一礼をして初詣をした気になって帰る,というのが例年のパターンなんだけど,今年は幸運なことに全然並ばないで本殿までたどり着けたので,ちゃんとした初詣ができた。運が良い!
今年の初詣は皆さん,どんなお願いごとをしましたか? なんてのは野暮な質問だなぁと思うので,答えは胸に秘めておいてね。ちなみに僕はこういうとき,「〜〜できますように!」とか,「〜〜してください!」といった,いわゆる神頼みはしないと心掛けている。
普段から無神論者な自分がこんなときだけ図々しいだろう,というのもあるが,それよりは自分の中での神様との付き合い方,距離感というものは,決して交わることもなく,ただただ見守ってもらうだけ,というのが良いと思っている。
だからこういうときも「楽しい1年にしようと思っているので見ていてください」的な,自分からの宣言みたいな感じにしている。そんな神様への宣言も無事に済んだので,あとはそのとおり,楽しい1年にするだけなんだが,やはりそれが一番難しいよね。
さぁ,というわけで新年一発目は楽しい人生を送る工夫について考えてみる。
日常生活のゲーム性を意図的に上げてみる
自分の中での具体例として,よく挙げる思い出話がある。
仕事でスペインに行ったときに食べて,とても美味しかったパスタをお土産に買った。いつもの仲間達でさぁ食べてみようと思った矢先,誰かがこう言い出した。
「この最高のパスタ,最高のカプレーゼと一緒に食うべきでは?」
震えた。この状況下,なんてことを考えつきやがる……。俺は目の前のパスタを茹でて食うことしか考えていなかった……。だけどこいつは,目の前の最高なこいつは,その数歩先まで考えてやがる!!
当時のアシスタントYに俺は叫んだ。
「やまざきぃぃぃ!!!! 今すぐ車回してこいやぁぁぁ!!!!」
「アイイイイイ!!!!!!!!」
と叫びながら車庫へ駆け出すアシスタントY。
時間は23:15。
六本木の某高級スーパーならば最高のカプレーゼの材料をそろえられるが,閉店は23:30。いける!!!! 山ざk……Yが回してきた車に飛び乗るアラフォー4人。
当時の弟子だったNが恐る恐る口を開く。
「竜さん,○○だったら24時間開いてますし,確実ですよぉ」
これを聞いた俺は,この日,一番の怒気を孕んで叫んでいた。
「だからテメェのベースはつまらねええんだよおおおお!!」
間違いなくパワハラである。しかしNよ,これだけは分かってくれ。絶対に開いているスーパーで,絶対に買えるチーズとトマト,調味料を買って出来上がったカプレーゼに,お前は一体何を感じるというのか? 俺達が食いたいのは「カプレーゼ」じゃないんだ。「生きている喜び」にむしゃぶりつきたいんだ。
そんな中,山ざk……Yが叫んだ。
「アイイィィ! 着きました!!!! でも駐車場に車を入れていたら間に合いません!」
「山崎ぃぃ! テメェは車で走ってろ!!!!
こっちは正面から入ってトマトとオリーブオイルだ!
永m……N! お前は裏から入ってチーズと塩こしょう探せや!!」
「オス!!!!!!」
「蛍の光」が鳴り響く六本木の高級スーパーを,アラフォーのおっさん達がキラキラ汗を振り撒きながら駆け回る。これがロマンスでありファンタジーなんだ。俺達はその夜,最高のカプレーゼを食べることができた。今後,あれを超えるカプレーゼに出会うことは恐らくないだろう。
ちなみに,メインのパスタは茹ですぎてデロデロになってしまい,とてもじゃないが食えたもんじゃなかった。
〜キミが俺らにくれたモノ〜
終
いや,終わらない。ちょっと取り乱しました失礼。
要は,これが日常生活の中で「ゲーム性を上げる」ということなんです。何もここまでイカれた状況を作る必要はないが,
「いつもならやらない事をやってみる」
「いつもなら選ばないものを選んでみる」
そんなひとつまみのスパイス的な感覚でもいいので,いろんな場面,いろんな状況で自分の中の「ゲーム性を上げる」行動をとってみることをオススメしたい。
すると微々たる違いかもしれないが,それでも確実にそれまでと違う人生が始まって,それが積み重なれば,やがて大きな変化になる。こういったことを意識的に行うと,本来だったら開くことのなかった扉を開けることができる。
「有言実行」という言葉があるが,これは元々「不言実行」という言葉から生まれた造語だということをご存じだろうか? 「不言実行」というのは「つべこべ言わずに行動する」という意味だ。俺はこの本来の四字熟語の持つ意味のほうがしっくりくるし好きだ。
「有言実行」は,何となく言ったからには「責任」が生じる,みたいなニュアンスを感じてしまうが,「不言実行」には何となくバカっぽさを感じる。このバカっぽさが本当に愛おしくて尊い。
YouTubeの内容やこのコラムから見える俺のイメージは,割とロジカルで合理性を追求している人間というものかもしれないが(まったくそう思われていなかったらめっちゃ恥ずかしい),心の奥にあるのはロマンチシズムであり破滅型の快楽主義者である。
今こうやって音楽で生計を立て,毎日ゲーム配信をし,執筆活動と称して自己の承認欲求を満たしに満たすような日々が送れるのは,ただただ運が良かったんだ,とすべてに感謝を忘れないようにしている。
かのウメハラ氏曰く
「ミートさんは運が良かっただけのクズ人間だ,ということを自覚しているから仲良くできる」
とのこと。
さぁ,そんな運が良かっただけのクズ人間からのありがたいお話を続けようじゃないか。
合理主義の先に見つけた非合理の尊さ
40代に突入するまでは徹底して時間を無駄にしないように生きてきた。前回のコラムでも書いたとおり,“無駄な努力”を徹底的に排除してきた。では何のためにそうやって生きてきたのか,自分に問うたときに,とても面白い結論に至った。
それは,“無駄な時間を過ごすため”だったのだ。
初めて出来た趣味,格ゲー。
プロを目指すでもなく,それで稼げるわけでもなく,それでも純度100%で格ゲーに費やす時間を楽しめる。それは今までの時間の過ごし方とは真逆だが,物事はすべて相対的で表裏一体なのだと考えると,真逆であるがゆえに等しい価値を持つものなのかもしれない。
ごめん,難しく言いすぎた。
とにかく最高に楽しい。
人生の後半に突入した今,時間を無駄にしないことに楽しさを見出していた時期は終わり,今は時間を無駄にすることに楽しさを見出している。
いや,もっといい言葉にしよう。
「時間をぜいたくに使う」ということに,楽しさを見出している。これが徹底した合理主義の先にたどり着いた非合理な幸せなのだ。
……ここで原稿を終わらせちゃうと,ちょっときれいごとというか,現実味のない話になっちゃうので,もう少しだけ突っ込んだお話をさせてもらうね。
俺は音楽は大好きだし自分の仕事に誇りを持ってやっているんだけど,とくに演奏するということについては近年,確実に“飽き”を感じていた。だけど格ゲーに出会ってから,配信を始めてから,本業(あえてこう言わせてもらう)にハリが出てきたことに驚いている。
もちろん自分の演奏,曲を聴いた格ゲー仲間からの,「あの曲もミートさんがやってたの!?」「この人のバックでミートさんが弾いていたのを見た!」「やっぱりあの人すごい人だったんだ!」という感想がうれしいというのもあるんだけど,本当に俺の心を震わすのはその後だ。
「でもあいつ,格ゲー弱いよな」
「でもあいつのゲーム配信,人少ねぇよな」
コレ。
コーレが最っ高に俺を興奮させる。
ふざけるなよ,と。
今に見てろよ,と。
そしてこの心のマグマが仕事へのモチベーションにつながり,趣味へのモチベーションへとつながっていく。徹底的に合理主義を貫いて仕事をして,作り上げた時間を趣味でぜいたくに浪費する。
これが生きるってことなんだ!
って,もしかしてみんなずっとこれやってる? まったく無趣味のまま音楽だけをやってきたからさ,気付けなかったんだけど,みんなそうやってんの? え,どうしよう。
何か偉そうにつらつら書いちゃってごめんね……。
えーと……これからもいろいろ教えてください。よろしくお願いします。
っつうわけで
今日も世界の平和が俺を守るってお話でした。
次回は何が俺を守るのか? 乞うご期待!
■■ミートたけし / 川村 竜(ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー)■■ ベーシストとして国内外各所でライブやコンサートで演奏活動をしつつ,配信活動も活発に行っているミートたけしこと川村 竜さん。現在は主にYouTubeチャンネル「ミートたけし-MEAT TAKESHI-」とTwitchチャンネル「ミートたけしの『太くてニューゲーム』」で,雑談配信をしたりゲーム配信をしたりと大忙しの様子です。 |
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