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【ヒャダイン】「Spider-Man」新作はやっぱり最高だったよねPS4版で遊んだんだけれども
ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第80回「『Spider-Man』新作はやっぱり最高だったよねPS4版で遊んだんだけれども」
ども。「Marvel’s Spider-Man」の新作「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」(PlayStation 5 / PlayStation 4)が発売されましたね。と言ってもけっこう前,去年の11月に。しかもPlayStation 5のローンチタイトルの一つとして。
しかしまあPlayStation 5って手に入らないもんですねー。俺,駆け出しの頃はね,そこそこ名前が売れたら,きっといろいろと優遇してもらえるとか思っていたんですよ。入手困難な商品でも「ヒャダインさんには特別ですよ……」なんて具合に,裏でこっそりみたいなこと,考えていたんです。しかし,そんなうまい話はないんだよ。PlayStation 5だってまぁ,抽選に落ちるわ落ちるわ。しゃあないね。そりゃそうだよね。職業に貴賎なしです。愚直に応募し続けましょう。
てことでMarvel's Spider-Man: Miles MoralesはPlayStation 4版をプレイしました。前作をクリア率100%までやり込んでいた自分としては,続編となる今作をやらない理由がない。本当はPlayStation 5でやりたかったので,プレイ開始までに時間がかかってしまったけれども。
結論から言うと最高!! 文句なし! 星10個あげちゃう!! ネガティブな評価をしている方がいらっしゃるのも承知しておりますが,そんなのこちとら関係なし! 現代の最新技術の煮こごり,それが今作! オープンワールドの最高峰と言っても過言ではないです。
前作と同じく舞台はニューヨークのマンハッタン。そこを新人スパイダーマンとして動き回るのですが,街のディテールはパワーアップ! 前作よりもさらに微細なところまでキッチリと作り込まれています。
何がすごいってこのゲーム,基本は街をウェブ・スイングで高速移動することもあって,ビルの側面や天井部までもが丁寧に描かれているんですよね。一方,普通のオープンワールドだったら一番重要視される地上は一番使わない。なぜならスパイディはほとんどウェブ・スイングで移動しているから。しかし前作も今作も地上の作り込みも完璧。忠実にニューヨークの街並みを再現しています。ほとんど歩かないスパイディ,ほとんど見られることのない地上風景すらも丁寧に作り込むクリエイター達の,これでもかと言わんばかりのこだわりっぷりには頭が下がります。
今回の主人公は新人スパイダーマンであるマイルズ・モラレスなんですが,原作コミックを履修しておらず,あくまでゲームでこの作品に接している者としては,この前作とのつながりっぷりに震えました。
だって,前作の途中でプレイ可能なキャラクターとして出てきていた,あのマイルズですよ。確かに前作のエンディングで彼がスパイダーマンになる伏線は張られていたものの,次があるにせよたまに操作できるぐらいの主要な脇役の一人なんじゃないの? と高をくくっていたら,まさか新作の主人公という形で回収してくるかね。好きだ! 大好きだ!
物語はマイルズがハーレムに引っ越してくるところからスタートするわけですが,マイルズとプエルトリコ系の母親が半分スペイン語で会話するあたりも,ニューヨークのリアルさを描いていて、ますます作品が立体的に見えてきます。前作もそうでしたが,貧困層やマイノリティに関しても大仰ではないけれどちゃんと触れていて,社会の描き方もきっちり考えて作られているんだなといった印象です。
アクション面も前作とは若干異なり,マイルズだけが使える「ヴェノムパワー」という電気技。これが爽快なんですよ。チャージがたまったら使える強パンチみたいなもんですが,まあ相手がビリビリしてくれて最高。最終奥義みたいなやつのスパーク感もたまらんです。
あと,「カモフラージュ」も素敵です。自分の体を一定時間消すことができるんですね。透明人間状態。正直無敵ですよ! もちろん相手を攻撃したりすると,カモフラージュ用のエネルギーが切れるのが早くなるんですが,スパイダーマンの魅力といえばやはりステルス攻撃。そう。相手に見つからないようにハングフィニッシュやウェブストライクフィニッシュで隠密のように倒していく。あのアサシン感がたまらんのですよね。
カモフラージュはそれをやりやすくしてくれるんです。相手がワーワーいる中,カモフラージュで透明になって敵を倒し,また高架に飛び乗ってやり過ごす。というのを繰り返していたら,あら不思議。敵が誰もいなくなっちゃった! 終盤には,カモフラージュを探知するゴーグルを付けた敵も登場するんですけどね。
正直,前作と比べるとボリューム面では物足りない部分はあります。だいたい12時間ぐらいでクリアできました。まあ,このクオリティのゲームとなると,長けりゃいいってもんでもありません。とはいえ,もっとやっていてかった,もっとこの世界に浸っていたいという気持ちはあります。……が,それは次回作に期待しましょう(しっかり次回作へのフラグも立っているし)。
にしても,今回もストーリーがしっかりしていて楽しめました! 近年のアメリカヒーロー映画の特徴である「悪にも悪なりの正義がある」が踏襲されていて,みんな自分なりの正義を軸に生きているんだなあと痛感しました。
ネタバレになるから具体的には書けませんが,分かり合っているようでいても,分かり合えない部分もある。それが人間ってもんなんでしょうね。国際紛争とか内戦とかもそうなんでしょう。完全に相手を憎めない辛さは切なさも生みます。争いのない世の中はどこにもないものでしょうか。
そして今回,前作と大きく違うのは主人公マイルズが,黒人とヒスパニック系のハーフであることだと思うんですね。その描き方も素敵で,なんというか,それをことさらに強調していないんですよね。黒人だからこうだとか,マイノリティだからこうだとか,そこにフォーカスが置かれていません。
また,ストーリーの途中には耳の不自由な女性が出てくるんですが,スパイディは自然と手話で彼女と会話をします。彼女の耳が聞こえないこと自体はストーリーに影響を与えず,あくまで「普通の一コマ」として描かれていることに非常に好感を持ちました。作中,でかでかと「BLM」の文字が出てきたりはするのですが,具体的な差別であるとか,それに対する動きなどはとくに描かれていません。
個人の意見ですが,肌の色やLGBTQ,障がい者,その他のさまざまな差別はもってのほかだし,断固反対するべきことだと感じています。しかし作品内に彼らを出すとき,ことさらに「マイノリティである」という部分をフィーチャーしすぎるのも,おかしな話だとも思うのです。その時点で雑に線引きをしていることになるわけだし。
新人スパイダーマンが黒人であることなんて当たり前なことだし,親友の黒人女性が首席で卒業するのも当たり前。女性がメカに強くても当たり前。あと,幼なじみの親友が異性でも恋に落ちない,ってあたりも当たり前(こういう設定だと,だいたい恋仲になるもんですよね)。
今まで「普通だ」と思っていたことなんて,何も普通じゃない。浅い歴史の中で何となく勝手に決め込んだことです。この価値観の塗り替えは,とくにここ1年のコロナ禍で多くの人が経験したと思います。「普通」なんてどこにもない。逆に「変なこと」だってどこにもない。大勢が決めつけた常識なんてどうでもいい。そんな時代の空気感みたいなものが,今作では見事に描かれていると感じました。もちろん開発期間は長いでしょうから,受け止る側の変化も大きいと思うんですけど。
ともあれ,パラダイムシフトがえげつない時代に生まれたアクション作品が,見事に時代を反映してくれているように見えて,感動すら覚えました。スパイダーマン,やはり名作でした!
まあ,一つだけ文句を言うとしたら,PlayStation 5でやりたかったよお!!!!!!
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ ヒャダイン氏は先日,YouTubeで配信された「桃鉄GP (桃太郎電鉄グランプリ) エキシビションマッチ」に出演。「公式のこういう大会に特別解説として出られるなんて,過去の自分に伝えてあげたいです」と喜んでいる様子でした。 |
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Marvel's Spider-Man: Miles Morales
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