【ヒャダイン】ゲームしながら罪悪感で凹むって何なのよ

ヒャダイン /  音楽クリエイター

ヒャダインの「あの時俺は若かった」 ブログ：http://ameblo.jp/hyadain/

第42回「ゲームしながら罪悪感で凹むって何なのよ」

　ども。ゲームって楽しいですね。ゲームを全否定する人って何なんでしょう。ゲームを楽しめる分，人生得するのになって思ってます。
　でね。面白いゲームはないもんかね，と最近仲が良いスターダストのダンスボーカルグループ「超特急」のリョウガ君に聞いたんです。このリョウガ君，20歳そこいらにして，「バイオハザード5」（PC / PlayStation 3 / Xbox 360）のオンラインモードで世界ランキング2位になったことがあるという生粋のゲーマー。最近じゃスケジュールがギッチギチのはずなのに，ゲーム活動を怠らない見上げた青年であります。
　そんなリョウガ君に，自分の好きなゲームの傾向などを伝えたところ「『inFAMOUS Second Son』はいかがでしょう？」とのお言葉。ほうほう。さっそくダウンロード版を購入。家から出ないでゲームが買える2015年。ごきげんだぜ。


　inFAMOUS Second Sonは，PlayStation 4の性能を最大限に活かしたオープンワールドアクション。舞台はシアトルですよ，シアトル。行ったことないけど超綺麗。グラフィックスのレベルがアホですよ！　どれだけのお金と時間を費やして作ってんの，と心配になるレベル。
　そのグラフィックスで描かれたシアトルで，超能力を駆使して駆け巡る！　スモークになったりネオンになったり。……。こんなん，男の子絶対好きやないか!!　中二病の具現化やないか!!　たまらん。たまらんぞ!!!!　しかも操作も簡単だからすぐに慣れる。すなわち！　あたかも自分がデフォルトで超能力を使えてるかのような気になっちゃう。
　ちょい自慢なんですが，うちのTV，50inch 4KのREGZAなのね。もうね。めっちゃキレイ。動きによどみがない。「アンチャーテッド」シリーズもそうだったんだけど，イベントシーンとアクションとの間にロード時間がほとんどないのも素晴らしいと思う。すーっと次の展開に移れるので，やめどきが分からない！　罪なゲームやで。


　ストーリーも秀逸です。序盤で善の道か悪の道かを選択しなきゃいけないんです。まず，悪の道を選ぶためには穏やかな顔をした育ての親の老婆を，敵による拷問折檻の目に合わせて自分が生き残らなきゃいけない。んなこと，できるわけねえだろ!!!!　家族は大切に，って教わってきたんだよ！
　本当はゲームの中でぐらい，悪いことをしてみたいという気持ちはあるんですが，自分の中のモラルに負けて善の道へ。この選択によってゲームの展開がガラリと変わるところがこのゲームの素敵なところで，全クリしたあとも，違う形でまた楽しめる。一粒で二度おいしいってやつですね。
　善の道は厳しくて「善のカルマ」を溜めるためには人助けをしたり，麻薬ディーラーを退治したり，美観を損ねないスプレーアートをしたり。民間人を誤射したり爆発に巻き込んじゃったりすると，カルマは下がっていきます。
　逆に「悪のカルマ」を溜めるのは楽勝で，そこら辺に歩いている民間人をひたすらボコりつづける。鬼畜だ。悪だ。悪いことをするのって，簡単なんですね。現実社会とまったく一緒。悪いことは簡単だし効率もいいけど，問題はプレイヤーのモラルのチクチクです。やっぱり心が痛むよ！　やっぱ善の道だな！


　実は俺，同じオープンワールドアクションでも「グランド・セフト・オートV」（PC / PlayStation 4 / PlayStation 3 / Xbox One / Xbox 360）は途中でリタイアしてしまったんですよ。だって心が痛むんだもの。ゲームという非現実社会だから大丈夫とは分かっているのですが，それでも捨てきれない正義感。あれ。このチクチク，なんか覚えがあるぞ。記憶をたどるたどる……。思い出した！　ガラハドだ!!　「ロマンシング サ・ガ」だ！

　スーパーファミコンの名作，ロマンシング サ・ガ。イトケンさんの音楽の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。そして斬新なマルチストーリーシステム。決まったストーリーをなぞるのではなく，自分のしたいように動いてダンジョンをクリアしていく。敵の強さも自分のレベルと比例して上がっていくので，「このダンジョンは敵が強すぎるからまだ行けないな」ということもないわけです。斬新だよなあ。
　そんなロマンシング サ・ガ。可視化できるポイントではなかったのですが，inFAMOUS Second Sonと同じく善行と悪行でストーリーが変わっていくのです。ダンジョンをクリアして王様を助けたら善行ポイント◯ポイント，命乞いをしている悪者を殺して制裁したら悪行ポイント◯ポイント，という具合に，善行悪行を自分が選択できるんですね。
　まあ善行を張り切ってやりまくったらいきなりラストダンジョンへのフラグを立ててしまうことになって，強い武器が売られている巨人の里に行けなくなるという罠もあったんですけどね。善行もほどほどにってことかなあ。ちなみに悪行を重ねると罪を償うために冥府に行かなきゃいけないんですけどね。言ってみれば地獄行きです。悪いことをしたら地獄行き，とは昔の人も言ってますものね。

　で，ですよ。ロマンシング サ・ガ最大の悪行といえば，ガラハド殺害強奪事件。ロマサガには斧とかレイピアとかいろんな武器の種類があって，それぞれに最強武器があるわけですが，両手剣の最強武器は「アイスソード」。
　なかなか手に入れるのが難しい武器なのですが，ある程度レベルが高くなったとき，今までスルーしていた何もない過疎町にこつ然と一人の兵士の姿が。あれ。前までいなかったよな，こいつ。てか，ガラハドじゃね？（主人公にグレイを選んだら序盤で仲間としてくっついてくるんですこいつ）

　話しかけてみると，

「ねんがんの アイスソードを てにいれたぞ！」

　自慢ですよ。なんなのこいつ。
　しかし，主人公の返答が3パターン。

「そう かんけいないね」
「ゆずってくれ たのむ」

　この二つを選んだら何も起きません。ゆずってもくれません。そりゃそうだ。

　しかし，

「殺してでも うばいとる」

これをぽちっとおしたらば，

「な なにをする きさまらー！」

という絶叫を聞きつつ殺害。

　いきなり流れるイトケンさんの哀しいメロディー。
　まるでイトケンさんに哀しく見つめられているようです。

　アイスソードは手に入るのですが，一発で冥府行き。物盗り目的の殺害ですからね，情状酌量の余地などございません。その後，冥府のデスにガラハドを生き返らせてもらうこともできるのですが。
　そうそう，デスには「強い剣と鎧が欲しかったら仲間の命を一人差し出せ」なんてことも言われます。つまり，プレイアブルキャラの一人を永遠に葬り去るのが条件なんですよ!!!!　もちろんそれも悪行カウントに入るんだけど，やっぱり欲しいよね……。あんまり使ってないキャラを引き連れて行っちゃうよね……。
　強さのことを考えると悪の道は楽です。ゲームだからいいんじゃね的に考えればいけちゃうかもしれない。だけど，ダメだーーー。罪悪感で凹んじゃうよ。ガラハドごめんよう。苦心して苦心してやっと手に入れた夢の武器を殺して奪うなんてさ。痛かっただろうに。冥府のデスよりも悪魔に見えただろうね，僕らのことが。嗚呼ごめんよ，嗚呼嗚呼……。

　となるわけで。GTAVもinFAMOUS Second Sonもそうだけど，CEROレーティングZの洋ゲーのモラルの低さって，凄いよね！　ぺぺぺーって選ばせるもの。バーチャルとリアルの線引がパチコーンって出来てるんだろうね。

　しかし，

「な なにをする きさまらー！」
　断末魔からのイトケンさん泣きメロ。

　罪悪感をこれでもかと刻みつけるのが，日本人らしい正義感なんだなあ，と今回思ったわけです。この国に生まれてよかった。健全に生きていこう。

■■ヒャダイン（音楽クリエイター）■■ 6月25日に放送された「アメトーーク！」に，「スーパーマリオ芸人」として出演したヒャダイン氏。スタジオでマリオのBGMを弾くシーンでは，緊張のためなかなかうまくいかず，冷や汗をかいたそう。なお，その模様のほんのさわりの部分が「テレ朝動画」にて，公開されていますので，放送を見逃した方は，そちらをチェックしてみてください。