レビュー
惑星パンドラを支配するのは人間か,それともナヴィか
アバター THE GAME
ユービーアイソフトは,2010年1月7日にPlayStation 3/Xbox 360/ニンテンドーDS用のアクションゲーム「アバター THE GAME」(以下,アバター)をリリースした。本作のベースになっているのが,2009年12月23日から全国でロードショウ公開され,世界的にも大ヒット中の,ジェームズ・キャメロン監督の新作映画「アバター」……というのは読者の皆さんもとっくにご存じだろう。
22世紀,地球から遠く離れた惑星パンドラで発見された鉱物は,所有するものに莫大な富をもたらす貴重なものだと判明した。それを独占しようとするRDA社は,完全武装の傭兵部隊をパンドラに送り込み,採掘の邪魔となる原住民族「ナヴィ」の根絶を図っていた。そして,その作戦の切り札となるのが,人間とナヴィのDNAをミックスして生み出された,“アバター”というナヴィそっくりの人造生命だった……というのが,ゲームと映画に共通するバックストーリーだ。
映画は飛び出す映像がウリの一つだが,ユービーアイソフトがその映画に技術協力しているということもあり,本作でも対応するディスプレイ(とメガネ)を持っているリッチなプレイヤーなら,立体視を楽しむことができる。ただ,残念ながら筆者は必要なハードウェアを持っていないので,今回,試すことはできなかった。
完全オリジナルストーリーで
映画を見ても見なくても楽しめる
さて,映画版のアバターでは,ナヴィの社会に潜入して工作を行うべく,人間の精神を投影したアバターが活躍するが,ゲームは映画に先立つこと2年という設定になっているため,序盤ではRDAとナヴィの間にまだ争いは起きていない。だが,人間がなんのためにやって来て,これから何をしようとしているのかナヴィは感づいており,両者の間では緊張が高まっている。
そんな危険な状況のパンドラにやって来たのが,暗号解読係を勤めるゲームの主人公,エイブル・ライダーだ。暗号解読の腕は一流だが実戦経験はほとんどなく,本来ならパンドラのような危険な場所に来るべき要員ではないのだが,アバターの体に精神を投影できる希少な適合性を備えていたため,派遣されたということになっている。
やがて,資源確保の障害となるナヴィの殲滅作戦が開始され,RDAとナヴィの間に全面戦争が勃発,プレイヤーもその渦中に飲み込まれ翻弄されていくのだ。
いくら新米だからって「ザコ」呼ばわりされるとは……。ほかに言い方はないのかと,ムッとする |
ナヴィと人類の大きさの違いがよく分かるシーン。運動能力はナヴィのほうが圧倒的に上 |
人類とナヴィのどちらを選ぶか? それが問題だ
主人公のキャラクターはゲーム開始時,20種類以上用意された中から選択することになる。選べるのは,アジア系,欧米系,アフリカ系といった人間の男女で,RPGのように体型や髪型を変えたり,背丈を調節したりといったことはできない。キャラクターはすべて海外ゲームらしい「濃い」顔立ちで,当たり前だけど萌え系はいない。
またプレイヤーキャラクターとして選択した人間と,アバターとなってプレイするときのキャラクターはセットになっており,別々には選択できない。アバターの外見上の差異は人間ほど大きくはないが,どうせならアバター側のキャラクターもいろいろ選べるとよかったかも。まあ,アクションゲームですので。
掲載したスクリーンショットからも分かるように,ゲームは三人称視点で進行していく。着任してきたばかりの新米兵士であるプレイヤーは,最初のうちは壊れたフェンスの点検や野生動物との戦闘など,簡単なミッションばかり命じられるが,やがて,RDAの中にナヴィに通じるスパイがいることが判明し,そのあぶり出しを命じられるあたりから物語が動き出すのだ。
スパイを見つけ出したプレイヤーには,一つの選択が突きつけられる。それは,RDAの一員としてナヴィ排除の命令を遂行していくのか,あるいはアバターとしてナヴィの仲間となり,侵略者であるRDAを敵として戦っていくかというものである。
要するに,この選択場面までがチュートリアルとなっているわけで,なかなか映画的な演出だ。RDAとアバターのどちらでゲームを進めるかは,完全にプレイヤー次第だ。RDAを選んだ場合は,惑星パンドラを手に入れるため,じゃまなナヴィを絶滅させる作戦に参加し,アバターとして生きる道を選ぶと,ナヴィ達には仲間としてなかなか受け入れられないながらも,パンドラの自然を破壊するRDAの傭兵達を敵として戦っていくわけだ。
本作では基本的にセーブが任意にできず,特定の場所でのオートセーブのみとなっているが,嬉しいことに,この選択の直前で二つオートセーブされる。というわけで,例えば最初はRDA側でプレイして,あとでもう一つのセーブデータでアバター側のプレイをしていくことができるのだ。筆者はセーブが二つできるなど知らなかったので,どちらにすべきかかなり悩んだのだが,そのような心配はいらなかったので,いまさらながら悔しい。
一度ゲームをクリアしてからプレイし直すだけでなく,両方を交互にプレイしていくのもいいだろう。RDAとアバター,それぞれが辿る運命を体験しよう。
選べるキャラクターは,全24種類。いろいろな人種が男女別に用意されている |
この装置でアバターと人間の精神をリンクする。すごい機械だが,日焼けマシンのようにも見える |
RPGのように成長していくキャラクター
RDAとアバターのどちらを選んでも,プレイヤーキャラクターが戦闘やミッションをこなして経験値を獲得し,新たな武器/防具をもらったり,新しいスキルを覚えて成長していったりするという基本は一緒だ。
とはいえ,武器や防具は,当然ながらRDAとアバターではかなり違う。RDAの場合はマシンガンやショットガン,火炎放射器を持ちハイテク戦闘服を着込むが,アバターは弓,棍棒,剣や動物の皮で作られたような鎧になる。
スキルとしては「体力を一定量回復」「走る速度を上げる」「一定の時間姿を見えにくくする」などがあり,これは両者ともに似たような内容のものが用意されている。これらのスキルは,一回使用すると再使用できるまで時間がかかるので,スキルを連打して戦闘を楽に終わらせるといった使い方はできないが,どれもかなり強力で,各場面で有効に使いたいところだ。
経験値のアップによって獲得できる新たな武器/防具やスキルは,覚えた時点ですぐに使用できるので,わざわざ武器庫に新しい武器を取りに行ったりとか,スキルマスターのところへ行って教えてもらうといった面倒な手続きは必要ない。
武器は,RDA,アバターともに4種類まで携帯できる。一つは固定だが,それ以外の3種類は自分のプレイスタイルや,そのミッション内容に応じたものを選んで装備が可能だ。弾薬は補給装置から,矢は植物からそれぞれ入手でき,これらはマップ上に豊富にあるので,銃や弓を思う存分撃ちまくる,派手な戦闘がたっぷり楽しめるのだ。
接近戦用の武器がないRDAの場合は,銃器による距離をとった戦闘が基本になり,逆にアバターの場合は,二刀流の剣など,強力な近接武器による肉弾戦が痛快。プレイした感じでは,裸に近い格好のアバターのほうが,わずかに防御力において劣るように思うが,そのぶん,走る速度やジャンプ力は人類より上なので,敵を見つけたら弓で攻撃し,仕留め損ねた相手に走りよって剣で切り刻むという(武器の持ち替えは一瞬だ)アグレッシブな戦い方が楽しめるだろう。武器や防具,スキルは,レベルが上がるにつれて強力になっていくので,RPGのようにキャラクターが強くなっていくのが楽しい。
RDAでプレイすると,バギーやボート,航空機といったビークル類や戦闘用パワードスーツが使えるのだが,アバターには無理。その代わり,マップ上をうろつくダイアホースという馬のような動物や,バンシーという翼竜のような生き物に乗って移動できる。この点もまあ好き好きだが,RDAとアバターを選択する際の参考にしてほしい。
アバターの遠距離武器は弓。原始的だが強力で,レベルが上がれば一発で敵を仕留められる |
RDAでは,さまざまなビークルを操縦できるのが楽しみの一つ。もちろん航空機の操縦もできる |
それなりの盛り上がりを見せるマルチプレイ
マルチプレイでは,攻撃側と守備側に分かれたチームが,マップ上にあるオブジェクトを破壊していく「ファイナル・バトル」,マップ上にあるオブジェクトの所有権を争う「キャプチャーホールド」といった本作ならではのモードと,敵陣にある旗を持ち帰る「キャプチャーフラッグ」,チーム同士の倒し合いとなる「チームデスマッチ」,マップ上の司令部を制圧する「キングオブザヒル」といったおなじみの3種類を加えた計5種類が用意されている。
マップはそれぞれのモードに2種類ずつあり,ジャングルや山岳地帯,RDAの基地やナヴィのコロニー周辺など,シングルプレイで目にした場所ばかりとなっている。ゲームスタート前に,武装と倒されたときの復帰場所を選択できるので,作戦に応じた装備に変更したり,好みの武器に持ち替えて戦闘に臨むといいだろう。
RDAでプレイすると,木の上の思わぬところに隠れたナヴィ側のプレイヤーから狙撃されてアッという間に倒されたり,ナヴィでプレイすると逆に,RDAプレイヤーが操縦するパワードスーツに蹴散らされたりと,シングルプレイにはない面白さが詰まっている。やられる話ばかりで恐縮だが。
筆者がプレイしたのはXbox 360版で,しかも平日の夜ということもあってか,マルチプレイを楽しんでいる人はやや少なめだったが,どのゲームモードでも一通りプレイできるほどの人数は集まっている。日本時間の午前中という,北米のゴールデンタイムにあたる時間帯には,海外のプレイヤーと思われる人が多くおり,マルチプレイを楽しみたいなら,休日のこの時間帯を狙ってプレイするのがよさそうな感じ。
「キャプチャーザホールド」では,このクリスタルのようなオブジェクトの所有権を争う |
人間相手の対戦は,やはり難しい。思わぬ場所から奇襲されると,慌てるばかりだ |
アクションゲームが苦手でも,惑星パンドラで大活躍できる
大ヒット映画をベースにしたゲームだが,誰でもが気軽に楽しめるライトなアクション&シューティングゲームに仕上がっている。
マップ上に弾薬が豊富にあるため,弾切れの心配なく撃ちまくれたり,キャラクターのレベルが上がっていくにつれ,装備できる武器/防具が強力になり,通常の戦闘ではほとんど苦労しなくなるなど,アクションゲームが得意でない人でも苦労なくプレイを続けられるだろう。
ただし,パンドラの情景は美しいものの,ほとんどがジャングルのために道が分かりにくかったり,いま一つストーリーの盛り上がりが欠けたりといった残念なポイントも見受けられた。
個人的にはRDAを,利益追求のためならなんでもやる悪の権化のようにして,もっと極端に描いてほしかった。そうすればRDAでプレイするときはワルとなって「グハハハ,下等生物は死んでしまえ!」と言いながらプレイしたり,逆にアバターでは「パンドラの平和を乱す悪党ども,おまえらはこの星から出て行け!」といった感情移入がしやすいかと思うが,単純すぎる? やはりベースとなる映画があるため,いろいろな制約があるのは想像に難くはない。
ちなみに,同時発売されているニンテンドーDS版のアバター THE GAMEは,ナヴィ族の若者となったプレイヤーが惑星パンドラで人類と戦うという,映画ともPlayStation 3/Xbox 360版とも,まったく違うストーリーになっているので,本作が気に入った人は,DS版も試してみるといいだろう。
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(C)2009 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. James Cameron's Avatar: The Game, James Cameron's Avatar and the Twentieth Century Fox logo are trademarks of Twentieth Century Fox Film Corporation. Licensed to Ubisoft Entertainment by Twentieth Century Fox Film Corporation.
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