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FFシリーズの吹奏楽コンサートツアー「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2017」がスタート。初日となった東京公演をレポート
このコンサートツアーは,FFシリーズの楽曲を吹奏楽で演奏するもので,今回で3度めの開催となる。本稿では,ツアー初日の4月2日に東京オペラシティ コンサートホールにて行われた昼公演のレポートと,公演終了後に行われた,作曲家の植松伸夫氏,指揮者の栗田博文氏,コンサートマスターを務めた榮村正吾氏へのメディア合同インタビューの模様をお届けしよう。
本コンサートの演奏を行ったのは,シエナ・ウインド・オーケストラ。また,セットリストは,3月15日に発売されたFFシリーズの吹奏楽アレンジCD「BRA★BRA FINAL FANTASY / BRASS de BRAVO 3」に収録された楽曲を中心に本編15曲,アンコール2曲が披露された。
「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2017 with Siena Wind Orchestra」特設サイト
●セットリスト
※【】内は出典元ゲームタイトル
<第一部>
1.FINAL FANTASY V メインテーマ【FINAL FANTASY V】
2.ティナのテーマ【FINAL FANTASY VI】
3.Ami【FINAL FANTASY VIII】
4.モーグリのテーマ【FINAL FANTASY V】
◆ボディーパーカッション「ラテン de モーグリ」
ボディーパーカッション:東 佳樹
5.FINAL FANTASY メインテーマ【FINAL FANTASY】
◆リコーダーで奏でるFFメインテーマ
6.いつか帰るところ【FINAL FANTASY IX】
7.クレイジーモーターサイクル【FINAL FANTASY VII】
8.反乱軍のテーマ【FINAL FANTASY II】
<第二部>
9.Force Your Way【FINAL FANTASY VIII】
10.グルグ火山【FINAL FANTASY IX】
◆アンケート「あなたにとって30歳の自分は?」
BGM:街角の子供達【FINAL FANTASY VI】〜花火に消された言葉【FINAL FANTASY VIII】
11.親愛なる友へ【FINAL FANTASY V】
12.水の巫女エリア【FINAL FANTASY III】
13.Vamo'alla Flamenco【FINAL FANTASY IX】
14.エアリスのテーマ【FINAL FANTASY VII】
15.片翼の天使【FINAL FANTASY VII】
<アンコール>
16.ビッグブリッヂの死闘【FINAL FANTASY V】
17.マンボ de チョコボ【FINAL FANTASY V】
◆みんなで吹こう BRA★BRA FINAL FANTASY
演奏の合間には,植松氏が今回のコンサートツアーや各楽曲にまつわるエピソードなどを披露した。それによると,2015年に本ツアーを企画したときには47都道府県すべてで演奏することを目指したとのことで,3回めとなる今回,ようやくゴールが見えてきたとコメント。
また1曲めとして演奏された「FINAL FANTASY V メインテーマ」については,「ファンファーレのような感じで,コンサートやCDの冒頭を飾るのにふさわしい」と話していた。
恒例の観客参加企画も行われた。観客がボディパーカッションで演奏に参加した「モーグリのテーマ」は,前回までとは趣向を変えてラテンアレンジが施されており,慣れないリズムに戸惑った人も多かった模様。
また前回と同じく,観客が客席にてリコーダーで参加する「FF メインテーマ」の演奏も行われた。植松氏によると,前回は参加者が数名しかいない会場もあったそうだが,この東京公演では多くの観客が参加してくれて楽しかったとのこと。
続く「いつか帰るところ」は,シエナ・ウインド・オーケストラのメンバーによるリコーダーのアンサンブルに,パーカッションが加わった形で演奏された。この形式での演奏は植松氏の夢だったそうで,「リコーダーは音を出すことこそ簡単だけれども,実は表情を付けるのが難しい楽器」「合奏がうまくいくと皆と仲よくなれた気がする」と話していた。
「Force Your Way」はロック調で演奏されるケースがほとんどで,植松氏によるとオーケストラアレンジは珍しいとのこと。
また「グルグ火山」はもともとFFIの楽曲だが,今回はFFIXで使われたバージョンに吹奏楽アレンジを施して演奏された。
トークコーナーでは,開演前に行われた「あなたにとって30歳の自分は?」というアンケートに対する,観客の回答が読み上げられた。このアンケートは,FFシリーズ30周年にちなんだもので,観客の中にはリアルタイムでFFIをプレイしていたという人もいた。
ちなみに植松氏が30歳の頃は,その前後にFFII,FFIIIがリリースされ,スクウェアに勢いがつき始めた頃だったという。また「20歳の頃は,30歳というと“大人”というイメージだったが,実際には全然そんなことはなかった。結局,いつまで経っても中身は子どものまま」とも話していた。
こちらも恒例となっている少人数編成の演奏では,まずビッグバンド形式でジャズアレンジの「親愛なる友へ」が演奏された。植松氏によると,今回この形式を採用したのはスクウェア・エニックス 代表取締役社長の松田洋祐氏の発言がヒントになったという。
また「水の巫女エリア」はFFIIIで使われた短い楽曲だが,植松氏自身が思い入れを抱いている曲とのこと。会場ではピアノを含めた6人のアンサンブルで,透明感のあるアレンジで演奏され,観客も聴き入っていた。
そして「Vamo'alla Flamenco」は四重奏にパーカッションが加わった形式で,勢いのある演奏が披露された。
コンサート本編の最後は「エアリスのテーマ」「片翼の天使」,アンコール1曲めは「ビッグブリッヂの死闘」と人気の楽曲が次々に演奏された。
そしてアンコールの最後は,これまた恒例となった観客参加の「マンボ de チョコボ」が飾った。ステージ上は,木管楽器や金管楽器など自前の楽器を手にした観客で埋まり,植松氏もサックスでの演奏を披露。客席に残った観客も手拍子や「ウッ!」という掛け声で演奏に加わり,会場全体が楽しい雰囲気に包まれた。
終演後には,植松氏らへのメディア合同インタビューが行われた。以下にその模様をお届けしよう。
──初回公演が無事終了しました。まずは感想をお願いします。
植松伸夫氏(以下,植松氏):
お客さんが最初から熱かったですね。東京公演だと後半は盛り上がるんですけれど,一発めからあんなに盛り上がることはなかなかなくて。
また通して聴くと前回,前々回以上にバリエーションに富んだ構成で,「いいなぁ,楽しいなぁ」と感じました。
栗田博文氏(以下,栗田氏):
植松さんがおっしゃるように,最初からお客さんが盛り上がっている感じの中,いい緊張感を持ってシエナの皆さんが集中した演奏をしてくださったので,初回からバーンと行けました。とても楽しかったです。
榮村正吾氏(以下,榮村氏):
今回で3回めですから,お客さんも乗り方や参加の仕方をつかめてきており,最初からテンションの高い演奏会となりました。演奏する側としては,いろんな編成があったり転換が多かったりするので,さまざまな緊張があるのですけれども,それも回を重ねるごとによくなると思います。
──今回のツアーや,セットリストのテーマを教えてください。
植松氏:
正直,そういったテーマは意識したことがないんですよね……。前回よりもバリエーションに富んだものにしたいという気持ちは常にありますけれども。
栗田氏:
「BRA★BRA FINAL FANTASY」のツアー全体を通してなら,「まずいビールはあるのか?」というテーマがあるじゃないですか(笑)。
植松氏:
そうそう,僕らツアーの行く先々で,まずいビールをずっと探しているんですよ。まずいビールに出会ったら,ビールを飲むのを止めるんです。でも出会えないから,毎晩飲み歩くことになる(笑)。
それはともかく,セットリストに関しては,これまでFFのオーケストラや管弦楽であまりやっていない,かつファンの皆さんが聴きたいという曲や,地味でもいい曲を選んでいます。たとえば「水の巫女エリア」は,地味なので演奏すると予想していなかった人もいるでしょうが,美しいものは美しいですからね。「いつか帰るところ」もそうです。
そういった感じで,いわゆる“FFクラシックス”のような曲ばかり集めるつもりはまったくないです。
──少人数編成の演奏が増えていますが,何か理由はあるのでしょうか。
植松氏:
まずバリエーションを増やしたいという気持ちがあります。オーケストラはバッと音を出す迫力があるけれども,カルテットだったら4つの楽器の音がお客さんに明確に伝わるといったように,それぞれ味わいが異なりますから。
あと吹奏楽だと,なぜか軽いフットワークでバリエーションを作れてしまうんですよ。管弦楽でもそんなに変わらないはずなんですけどね。
──今回も23公演で全国と台湾を行脚することになりますが,意気込みを教えてください。
栗田氏:
前回,前々回のツアーを振り返ると,残りの22公演は回を重ねるごとにいい意味で熟成していくんじゃないかと。皆の思いもツアーが進むにつれて変化していきますし,それと同時にいろんな出会いや楽しみがあります。今日はまさに船出ということで,今後の展開に自分自身期待しています。
植松氏:
初回公演は,僕らにしろ裏方さんにしろ,どうしても手探りになってしまいます。でもそれが,ツアーを続けていくうちに楽しくなっていくんです。そのタイミングが早く来ないかな,と思っています。
榮村氏:
公演を待っていらっしゃるFFファンの皆さんに,いい演奏を届けられればと思います。WBCの侍ジャパンが1試合1試合強くなっていったように,僕らにも一つ一つの公演をこなすことで新しい何かが生まれるという部分があります。ぜひ公演に来てくださる皆さんは期待してください。
──「マンボ de チョコボ」には,植松さんもサックスで参加していましたが,感想を教えてください。
植松氏:
いや,酷いもんでした(笑)。でも演奏前は,途中で戦線離脱することになるんじゃないかとまで予想していたので,何とか最後まで演奏できて楽しかったです。これなら公演を続けていくうちに,多少はうまくなれるかも。
あと,さっき榮村さんにお借りしたマウスピースとリードが,僕の使ってるヤツと全然違って音が出しやすいんです。その意味でも僕の演奏はまったく変わりますよ。
──では,3回めのツアーだからこその聴きどころなどを教えてください。
栗田氏:
ツアーごとに変化しているので,面白いです。今回のコンサート本編は,前半後半それぞれ1曲ずつ前回と同じ曲を演奏していますが,それ以外は全部入れ替わっていますし,アレンジも全然違いますので,毎回来ているという方も絶対楽しめるでしょう。
──ちなみに前回,前々回で演奏した楽曲の再演は考えていないのでしょうか。
植松氏:
やりたい気持ちはあるんですけれど,コンサートの尺との兼ね合いが難しいんです。やっぱり,リリースしたばかりのCDに収録した曲は聴いてほしいですし。
でも,「BRA★BRA FINAL FANTASY」として,もう3枚のCDを出していますから,たとえば次回のツアーはその中から選曲するということもあるかもしれませんね。
──前回,前々回,そして今回とツアーを重ねるごとにパワーアップしていると感じる部分はありますか。
植松氏:
スタッフの皆さんと深く知り合うことによって,どんどんやりやすくなっています。やっぱり前々回のツアーでは,栗田さんやシエナの皆さんとは初対面でしたから,それぞれの人となりが分からなかった。それが休憩時間を一緒に過ごしたり,酒を飲みに行ったりしているうちに,お互いを知り合った結果,結束力がすごく高まったと感じています。
栗田氏:
人間同士がチームを組んでやることですから,ある意味で社会の縮図ですよね。最初は,お互い何を考えているのか分からない。
その中で僕が最初に感じたのは,全員が正直な人だということです。植松さんもシエナの皆さんも「自分はこう思っている」ということを,言葉はもちろん音楽でも表現している。たとえばボールを投げたらそのままということはなく,必ず全力で投げ返してくれますし,その反応もどんどんよくなっています。人間同士がお互いを尊重し合うと,こんなにも音楽はよくなるんだと,いつも感じています。
榮村氏:
普段違う場所で異なることをやっている人達が,パッと一堂に会して演奏するというチーム力のよさを感じます。バカな話をしたり,一緒に酒を飲んだりといった普段の生活の中でもそれを感じますから,いいチームに育っていると思いますね。
最初にあった部外者的な気持ちもなくなっていますから,お客さんも「ただ演奏しているだけの人達ではない」と感じてくださっているんじゃないでしょうか。
──最後に,公演を聴きに行くかどうか迷っている人に向けてメッセージをお願いします。
植松氏:
いつも言っていることですが,僕らがやろうとしていることは一般的なオーケストラコンサートのような堅苦しいものではありません。「ゲーム音楽なりのオーケストラコンサートがあっていいんじゃないか」と考えていますので,僕ら自身も含めて会場全体が楽しめる内容を考えています。そして来た以上は,絶対楽しんでください。
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